独身OLだった私にも優しく住みやすい街「池袋」

著: 小沢あや 

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社会人生活の序盤から、独身OL時代のほとんどを池袋で過ごした。

 

はっきり言って、最初は妥協から選んだ街だった。本当は、吉祥寺や三軒茶屋に住んで毎日カフェラテを飲みたかった。恵比寿とか中目黒とかに住んで、アーバンな地元住民が集うバーなどに通うなどしたかった。

 

しかし、オシャレなイメージがある駅はどこも家賃がべらぼうに高い。さらにはその土地に見合った生活をする甲斐性も、新卒OLにあるわけがなかった。

 

実家は都内にある。「なんで? 実家でよくない?」と友人にも言われた。確かにその通りなのだが、「女の子はそんなに働かなくてもいいんじゃない?」「XXちゃん、結婚したんだって!」「おばあちゃんが元気なうちに、ひ孫を産んであげてね」と話す母に対して、心がズキズキしてしまう瞬間が確かにあった。よくある話である。

 

母を傷つけず、またわたし自身の自由を守るためには適度な距離も必要だと思い、あえてひとり暮らしを選んだわけだ。多少金銭的にキツくても、わたしは自分の聖域を確保したかった。

 

気を取り直して、利便性を最優先して住むべき街を探すことにした。交通アクセスが良いこと、遅くまで営業しているスーパーがあること、大きめの本屋があること、ひとりでも入りやすい飲食店がそろっていること……これらの条件を全て満たすのが池袋だったのだ。

 

しかも、東京屈指の巨大ターミナル駅ながら、徒歩15分圏まで対象を広げれば、6万円台からバストイレ別の物件がある。なぜこんなに安いのか? それはおそらく、池袋にまとわりつく「ダサい」「ガラが悪い」「何かごちゃごちゃしている」というネガティブイメージが原因であろう。

 

まさにその通りだったが、想像していた以上に住みやすい街だった。

 

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学生時代から漠然と「文章を書く仕事がしてみたい」と思ったものの縁はなく、新卒で飛び込んだのは音楽業界。インディーズアーティストの営業や宣伝を担当していた。いきなり好きなことを仕事にできたことはとても幸せだったが、きちんと意識してプライベートの時間をつくるのは難しい……。

 

当たり前ながら、土日も仕事が入るし、ライブハウスに通う日々なので帰りだって遅くなる。地方出張もある。しかし、池袋に引越したことで生活の全てが好転した。

 

 

圧倒的な利便性と適度なダサさを兼ね備えるブクロ

まずは交通アクセス。埼玉郊外はもちろん、山手線・東京メトロ各線を使えばサクサク気軽に移動できる。なんとお台場も乗り換えナシで行ける。とくに副都心線は最強で、渋谷新宿だけでなく、代官山も中目黒も横浜までも直通だ。

 

アーバンな土地に住むにはそれ相応の年収と気力が必要だが、池袋を拠点に、無理せずその日の気分で歩く街を選べばいい。

 

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そして池袋には巨大な商業施設がそろっている。「西武百貨店」「東武百貨店」「ルミネ」「パルコ」「マルイ」「サンシャインシティ」、この全てが徒歩圏内にある生活だ。

 

後から「エソラ」もオープンしたし、UNIQLOを筆頭に各種プチプラブランドもズラリ。しかも街全体が適度にダサいため、「服を買いに行く服がない」という現象に陥ることもない。新宿伊勢丹に行くときには相応の武装が必要だが、池袋のファッションビルを攻めるくらいなら、無課金初期アバター状態でもなんら問題ない。

 

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渋谷、中目黒、新宿、丸の内、下北沢、高円寺、吉祥寺……これらは土地によって、街を歩く人々のファッションがだいたいイメージできると思う。

 

しかし、池袋は縦横あらゆる方向から人がやってくるし、カルチャーがごった煮ハードコアなこともあり、「池袋系」というスタイルは確立されていない。よって、どんな人でも街に溶けこめるのだ。

 

 

夜こそブクロの本領発揮 働きOLに寄り添う眠らない街

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西口から北口は、夜の繁華街。東口にくらべて家賃も格段に安い。わたしはずっとこのエリアに住んでいた。まあはっきり言ってガラは悪い。風俗店のネオンがギンギンに光っていて、住むのに抵抗を覚える人も多いだろう。しかし、女性が夜遅く歩くには、真っ暗な住宅街より人の気配がある街の方が断然良い。

 

24時間営業している安価なスーパーが複数あるのも心強い。「生活がおざなりになっているな……」と後ろめたさを感じたときには、深夜でも「肉のハナマサ」に駆け込み、おかずを大量生産していた。パンを焼いたりもした。小麦粉をこねていると「丁寧な暮らし」をしているという自己肯定感で心がとても落ち着くのだ。

 

自炊が習慣化したころには、友人に手料理を振舞う会を開催するようになった。

 

ホームパーティーなんて言えたレベルではなく、ようするに宅飲みである。大人になると、どうしても勤務地や行動時間・生活レベルが近い友人以外とは疎遠になってしまう。しかし交通アクセスが良い池袋なら、各所から人が集まりやすいのだ。飲み代が浮くし、気を使わないし、いいことづくめだった。

 

みんなそれぞれ仕事も忙しく、約束にもパラパラ遅れてやってくるので、店を予約するより勝手が良かった。この交友関係は、今でも続いている。

 

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終電後でも焼きたてが買える不思議なパン屋もある。西口を抜けたエリアにある「みつわベーカリー」は、深夜2時まで営業している。

 

夜遅くまで飲んだ後、翌日早起きしなければいけない時には、よく買って帰ったものだ。「朝、絶対に起きてこのパンを食べるぞ!」と気合いを注入し、なんとか起きることができた。

 

映画館もたくさんあるので、レイトショーを観た後に歩いて帰れるのも最高だ。大手レコードショップチェーンも巨大な本屋もあるし、アニメ・同人系の店も充実している。演芸場も、劇場も、水族館だってある。

 

カルチャーの街といえば下北沢や高円寺のイメージが強いが、池袋だって負けちゃいない。むしろ、メジャーからサブカルまで全方向カバーしているという面では圧勝だ。池袋はとにかく手広く、色んな人間を受け入れてくれる街なのである。

 

 

池袋は、すべての「おひとりさま」に優しい

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食も強い。チェーン店は一通りそろっているし、ラーメンだって激戦区だ。

 

ベトナム料理なら「フォーベト」、中華料理なら「永利」、やきとんなら「木々家」。渋めの飲み屋にフラリと足を運ぶのも楽しい。

 

色んな店を開拓したが、中でも一番通い詰めたのは、西口にあるもつ焼き屋「とん長」だ。コンパクトな店内には地元客が多かったが、女がひとりで飲んでいても、馴れ馴れしく話しかけられたりすることはあまりなかった。

 

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2014年のソチ五輪は放送時間が深夜だったので、ひとり「とん長」のTVで観た。この感動を誰かと共有したい! という想いではなく、ただ世界が熱狂している様子をひとりで眺めるのが寂しかったのだ。浅田真央選手の演技が流れたころには、わたしも、他のひとり客も、黙ったままそっとおしぼりで涙をぬぐっていた。

 

きっと、他の地域だったらパブリックビューイングのような雰囲気になっていただろう。ただ静かに、吉野家のカウンターのような空気の中、一人なのはわたしだけではない、と安心することができた。

 

誰かに頼ることなく、寂しさを自己解決するには相応の努力と住環境が必要だ。

 

彼氏がいたとしても、仕事でクタクタになっている人に対して、自分の感情をぶつけることが出来ない日もある。「オシャレしたり人と話す元気はないが、家に一人でいると消えたくなる」という夜も襲ってくる。

 

そんなとき、もしも全てを包み込んでくれる池袋に住んでいなかったら、寂しさからうっかりヤバい男にひっかかって破滅していたかもしれないな、と思う。便利で混沌としている池袋だからこそ、夜でも自分のペースを保つことができたのだと思う。

 

 

保育園への入りやすさも豊島区が1位 ファミリーにもオススメ

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別のエリアに移り住み、家族を持った今でも、池袋は最高だと思っている。

 

豊島区が23区で唯一の「消滅可能性都市」だと報じられたことを覚えている人も多いだろう。若い女性が定着しにくく、子育て世帯が増えないため、人口が緩やかに減っているのだとか。

 

豊島区も池袋にまとわりついた「ダサい」「ガラが悪い」「何かごちゃごちゃしている」というネガティブイメージを払拭すべく、保育園を増設したり、南池袋公園を明るくおしゃれにリニューアルしたり、子育てがしやすい街づくりに尽力している。

 

ベビーカーを押しながら池袋を歩いてみると、その便利さが身に染みる。渋谷・新宿と比較して、エレベーターの導線もわかりやすいし、商業施設も各エリアに点在しているため、授乳場所に困ることもない。

 

実際に、認可保育園への入園決定率も90.8%と、他の自治体に大きく差をつけて1位だ(「2017年度版 100都市保育力充実度チェック」より)。この原稿を書いている現在、激戦区での保育園探しに疲弊している身なので、「池袋に戻りたい」という気持ちはますます強くなっている。

 

共働きだろうが、専業主婦(夫)だろうが、バリバリ働く独身だろうが、時間をうまく活用して手軽にリフレッシュしたいはずだ。完全なオフをつくるのが難しい日でも、池袋なら3時間もあれば映画を観て、コーヒーを飲んで自宅に戻れる。属性は関係なく、全ての人の「ひとり時間」に優しい街なのだ。

 

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28歳のころ、IT企業への転職を機に池袋を離れることになった。家賃手当の支給基準が「渋谷から3駅以内」だったからだ。「池袋は埼京線で渋谷まで2駅です」とおどけてみたが、社長直々に即却下された。山手線だと渋谷から7駅だから、当たり前である。

 

思いがけず、新卒当初に憧れていた中目黒に移り住むことになったが、どうもしっくりこない。気がつけば池袋を欲していることもあった。

 

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そんな“伝説の元彼”的存在である池袋への愛が爆発し、「東京カレンダー」で人気だった街をテーマにした連載小説「東京女子図鑑」のオマージュブログを書いた。「あんなにキラキラしたOLがいてたまるか」という臥薪嘗胆の思いから書きなぐったものだが、まあ驚くほどに拡散された。

 

今はOL業をしながらライターとしても活動しているのだが、未だにあのブログ経由で執筆のお声がけをいただくことも多い。学生時代からの「文章を書く仕事がしてみたい」という夢へ、池袋が押し上げてくれたような気がしている。

 

 

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著者:小沢あや

小沢あや

OL / フリーライター。ウートピ連載「女子会やめた。」「アイドル女塾」のほか、インタビュー記事を中心に執筆。

Twitter:@hibicoto

ブログ:TOKYO 3H

編集:Huuuu inc.

写真:藤原慶