分譲とはどんな意味?分譲住宅を選ぶメリット・デメリットや購入時の注意点などを解説

最終更新日 2025年09月12日
分譲とはどんな意味?分譲住宅を選ぶメリット・デメリットや購入時の注意点などを解説

住宅の購入を検討していると、「分譲住宅」や「分譲マンション」という言葉を目にします。「分譲」とは、具体的にどのような意味があるのでしょうか? この記事では、分譲住宅のメリットやデメリット、向いている人、購入時の注意点や分譲住宅と建売住宅、売建住宅、注文住宅、規格住宅の違いなどを、あゆみリアルティーサービスの田中 歩さんに伺い解説します。

分譲とはどういう意味?

「分譲」とは、「分割譲渡」を短縮した言葉で、文字どおり「何かを分割して譲渡する」ときに用いられます。通常「譲渡」は有償・無償を問いませんが、不動産においては「有償」、つまり対価が発生するのが一般的です。土地を分譲するのであれば「分譲地」、マンションを住戸ごとに分譲するときには「分譲マンション」と呼ばれます。

それでは「分譲住宅」とは具体的にどのような住宅を指すのでしょうか? 建売住宅や注文住宅、規格住宅との違いなどとあわせて田中さんに伺いました。

分譲住宅、建売住宅、注文住宅、規格住宅の違い

分譲住宅とは? 建売住宅や注文住宅とはどう違う?

「分譲住宅は、広い土地を宅地として整備・分割した分譲地に、譲渡する目的で建てた住宅のことです。完成した住宅を購入する『建売』がほとんどであるものの、建築中から購入するパターンや建築前に購入する『売建』もあります。

建売は、建築済みの住宅を購入するため設備や建材を選ぶことはできません。売建となる場合には、設備や建材の色やグレードなどに多少選択できるケースもありますが、基本的には一定の規格・仕様に沿って建てられます。建築条件付き土地も売建になります。

広い土地を購入するには資力が必要であるため、大手ハウスメーカーや不動産会社の取り扱いが多いことも分譲住宅の特徴です」(田中さん/以下同)

分譲住宅と建売住宅との違いは?

「建売住宅は、『土地付きで譲渡される住宅』という意味です。そういう意味では、分譲住宅は建売住宅の一種といえます。

一般的に分譲される戸数の規模が大きいときには『分譲住宅』、小さいときには『建売住宅』と呼ばれる傾向があります。例えば2~3軒がまとめて売られている場合は、分譲住宅とはいわず建売住宅と呼ばれることが多いです。ただ、具体的に『○棟以上なら分譲住宅、○棟以下なら建売住宅という』といった定義はありません。

なお分譲住宅は大手ハウスメーカーなどが手がけるのに対し、建売住宅は中小工務店などの取り扱いが多い印象です」

注文住宅との違いは?

「注文住宅は、すでに所有している土地やこれから新しく購入する土地に、間取りや設備のメーカーから使用する建材の種類まで自分で選んで好みの家を建てられます。分譲住宅が既製品もしくはイージーオーダーだとするなら、注文住宅はオーダーメードと考えるとよいでしょう」

規格住宅との違いは?

規格住宅とは注文住宅の一種で、建築会社が事前に用意した一定の『規格』に沿って建てる住宅を指します。

自由設計ができる注文住宅では施主が間取りや設備・建材などを選ぶことができますが、規格住宅ではあらかじめ用意された間取りや外装・内装、設備などをチョイスして組み合わせていきます。ちょうど注文住宅と分譲住宅の中間のイメージです。

住宅の種類と違い
※1 仕様を限られた中から選択できるケースもある
※2 建ててから売る販売方法
※3 売ってから建てる販売方法。建築条件付き土地も売建
分譲住宅は建売住宅よりも規模が大きく、土地と建物を同時に購入することが特徴(画像/SUUMO編集部にて作成)

分譲と賃貸の違いは?

「分譲はあくまで譲渡であり、お金を支払い譲渡される、つまり所有権の移転がともないます。対して賃貸はあくまで賃料を支払い借りるだけであり、所有権が移転しない点が分譲とは異なります」

分譲賃貸とは?

「最近耳にすることが増えた『分譲賃貸』は、なんらかの理由によって賃貸に出されている分譲マンションを指すのが一般的です。

分譲用に立てられたマンションは、賃貸を前提に建てられるマンションよりもグレードが高いことが多いため、賃貸マンションと対比するために用いられるようになった言葉です」

分譲住宅のメリットは?

分譲住宅を選ぶことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?

資金計画を立てやすい

「分譲住宅は土地と建物を一括で購入するので、予算バランスを考える必要がなく資金計画を立てやすくなります。またローンで土地と建物を別々で購入する場合、土地を先に購入するためにはつなぎ融資や先行融資を受けたりしなければなりませんが、分譲住宅では不要なのでローンがシンプルになるのもメリットです」

住宅ローンのイメージ
土地と建物を同時に購入する分譲住宅は住宅ローンがシンプルになる(画像/PIXTA)

仕上がりをイメージしやすい

「分譲住宅は、建売であれば建物は完成していますし、売建であっても一定の規格・仕様に沿って建てられるため、仕上がりをイメージしやすくなります。モデルハウスが用意されていたり、大規模な分譲住宅地であれば区画分けして順番に建てていくケースもあり、すでに建てられた住宅を見ることができる場合も多いです」

自分で決める範囲が狭いので楽

お伝えしたように、分譲住宅は建売(すでに建築済みの家を売る)もあれば、売建(これから建てられる家を売る)もあります。このうちこれから建てる売建であっても、基本的には一定の規格・仕様に沿って建てられるため、自分ですべてを決めていく必要がありません。

「選択の余地がある場合もドアの色や、キッチンやユニットバスのグレードなど、あらかじめ決められた選択肢のなかから選ぶだけで済みます。もちろん基本の仕様そのままで、変更しなくても構いません。細部までのこだわりがなく、一定レベルの住宅であればいいと考えている人にはおすすめです」

予算を抑えやすい

「分譲住宅を建てるときには、建築会社は建築資材や設備などを一括購入するので仕入れにかかる費用を抑えられます。規格化されているため、注文住宅のように一棟ずつ設計する手間もかからず、また工事も一斉に進めるので効率も上がります。そのため注文住宅と比較すると、住宅の本体価格を抑えやすくなる傾向があります」

入居までの期間が短い

分譲住宅は土地の購入や家の設計から始める注文住宅と比較すると、入居までの期間が短くて済むのもメリットです。

「すでに建築済みの分譲住宅を購入する場合は、すぐに入居が可能です。建築中やこれから建てる場合だと入居まで3カ月~半年程度待つ可能性がありますが、分譲マンションのように1年や1年半待つようなことはありません」

手放すときに売りやすい

「こだわって建てた注文住宅は個性が強く、買主を見つけるのが難しいケースもあります。その点分譲住宅は多くの人に受け入れられるような間取りやデザインが採用されているため、いざ売却するときに売りやすいのもメリットだと思います」

調和がとれた街並みで暮らせる

分譲住宅地では、建物の色調をそろえたり、植栽を整えたりして調和を意識した街づくりが行われるのもメリットです。

「ただし分譲の規模によります。大規模分譲地であればそうですが、4~5軒で分譲住宅として売り出されている場合は必ずしもそうとは限りません」

分譲住宅の街並み
分譲住宅は計画的に宅地開発されるため調和がとれた街並みになりやすい(イラスト/杉崎アチャ)

ゼロからコミュニティーを構築できる

分譲住宅は新たに土地を開拓し、複数の家が順番に建てられていきます。新しい土地で新たにコミュニティーが形成されていくため、人間関係はみんなゼロからのスタートです。そのためすでに出来上がったコミュニティーに飛び込むわずらわしさや不安は少なくて済みます」

分譲住宅のデメリットは?

分譲住宅を購入するデメリットはあるのでしょうか?

施工会社を選べない

分譲住宅は、土地と建物がセットで売られます。そのためまだ家が建っていない場合でも、「土地は気に入ったけれども家自体は別の建築会社に依頼したい」と思ってもできません。分譲住宅を販売している会社に必ず依頼する必要があります。

間取りやデザインを自由に選べない

「お伝えしたように、分譲住宅は『既製品(建売)』だったり、場合によっては、『設備の色やグレードなどに多少選択の余地があるイージーオーダー(売建)』のようなものです。そのためすべてを自由に決められる自由設計型の注文住宅や、選択肢が豊富な規格住宅と比べると、自由度はほとんどないといえます」

完成している場合は建築過程をチェックできない

「分譲住宅は、完成した住宅を購入する建売が多く、その場合建築中の様子を確認できないことがデメリットです。

「ただし分譲住宅でもこれから家を建てる売建であれば、インスペクション(住宅の欠陥や新築時の施工不良などを調べる不動産調査のこと)に入ってもらい土壌や断熱材の施工状態などをチェックしてもらうことも可能です」

似た外観の家が多く個性を出しにくい

「分譲住宅は街並みの調和をとる、またそのエリアのターゲット層が好む住宅デザインにする、さらにはコストを抑えるなどさまざまな理由で、どうしても似たような外観の家が多くなります。建築会社のなかには外観デザインを替える、アプローチを工夫する、ドアの色を替えるなど工夫している場合もありますが、基本的に外観に個性を求めるのは難しいでしょう」

分譲住宅が向いている人は?

分譲住宅は、どのような人に向いているのでしょうか?

住宅に細かなこだわりがない、実物を見て購入したい

「住宅に細かなこだわりがなく『出来上がった家がいい』『一般的に人気のデザインで満足できる』という方に分譲住宅は向いています。注文住宅のようにゼロからすべてを決め理想の家に近づけていくのは意外と大変です。人は選択肢が多ければ多いほど、選べなくなりがちです。

家は箱として捉え、家具やインテリアデザインで理想のライフスタイルを実現したり、個性を出せばいいと考えている人には、分譲住宅がおすすめです」

限られた予算を効率よく使いたい

限られた予算を効率よく使いたい人にも分譲住宅は向いています。注文住宅は予算内で土地と住宅のバランスを考えたり、建材や住宅設備などを一つ一つ積み上げていったりする必要があり、予算が膨らんでしまいがちです。その点分譲住宅は土地と住宅がセットで販売されているので、基本的な全体予算が決まります。

「分譲住宅は、その地域の母集団として多そうな世帯年収を見極め、その層をターゲットとして計画されます。分譲住宅のターゲット層に入っていれば、自分たちの予算から大きく外れることはあまりないと思います」

分譲住宅の資金計画のイメージ
分譲住宅は総予算から先に土地と建物費用を確定できるので大きなズレが生じにくい(イラスト/杉崎アチャ)

時間に余裕がない

「分譲住宅は注文住宅のように土地を探したり、住宅の設計や建材などを一つ一つ細かく決める必要がありません。すでに建築された状態や、これから建てる場合でも、基本的には間取りやすべての仕様が決まった状態で提供されるので、細かい仕様の決定などに時間をかけずに家を購入したい人に向いています。

また建築済みの家に即入居したい人や、家の購入・引越しをスケジュールどおりに進めたい人にもおすすめです」

分譲住宅を購入するときのポイントと注意点は?

分譲住宅を購入するときに知っておきたいポイントや注意点を紹介します。

基本価格に含まれているものを確認する

「分譲住宅は規格に沿って建てられますが、建築前であれば設備の色やグレードを変更するなど、若干の選択肢が残されているケースもあります。しかし変更箇所を増やせば増やすほど価格は高くなるため、まずは基本どおりに建てたときに、どのような仕様となっているのかを確認することが大切です。

とくにモデルハウスは、オプションとなるハイグレードな設備が取り付けられているケースもあります。モデルハウスで見たものが標準だと思ってしまわないよう注意しましょう」

住宅性能の内容をチェックする

近年多くの建築会社が住宅性能の向上に力を入れています。分譲住宅がどのような住宅性能を備えているのか、内容を確認しておきましょう。具体的には耐震等級や断熱等級はいくつなのか、その内容はどのようなものなのかを説明してもらうとよいでしょう。

「ただし、住宅性能評価を受けていない住宅がダメというわけではありません。どんな家でも建築基準法が定める最低減の基準は満たしているので、安心していただきたいです」

住宅性能評価書
住宅性能評価を受けている場合は中身を詳しく確認しよう(画像/PIXTA)

これからの暮らしを具体的にイメージして考える

「分譲住宅を検討するときには、間取りをどうする、設備のグレードをどうするといった『買う前のこと』に目が向きがちです。しかし家自体はもちろん、その土地でどんな暮らしをしたいのかなど『買ったあとのこと』を具体的にイメージすることのほうが重要です。

今だけでなく、子どもたちが成長した5年後、10年後。あるいは自分たちが年を取った20年後の暮らしまで想像して、それをその地域で、その家で実現できるのかを家族でよく話し合うようにしてください」

住宅自体に細かなこだわりがなければ分譲住宅はおすすめの選択肢

最後にあらためて田中さんに、分譲住宅の購入を検討している人へ向けてのアドバイスを伺いました。

「分譲住宅は売建であれば設備の色やグレードなどを選べるケースはあるものの、基本的には決まった規格・仕様に沿って建てられます。そのため住宅自体に対して細かなこだわりがなく、個性や自分たちの理想のライフスタイルはインテリアなど別のもので表現できると考える人におすすめです。

また分譲住宅は多くの人が好むデザインとなっているため、売却しやすいこともメリットです。さまざまな可能性を考え、買い替えやすさも考慮したい方にも、分譲住宅はいい選択だと思います」

まとめ

分譲住宅とは広い土地を整備・分割した宅地の上に、譲渡を前提に建てられた住宅

分譲住宅は土地と建物をセットで購入するのでローンがシンプルになり資金計画を立てやすい

早めに入居したい、強いこだわりがない人には分譲住宅はおすすめ

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/杉崎アチャ
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