シニアに優しい平屋の間取りは?高齢者向けの家づくりのコツ

公開日 2024年01月26日
シニアに優しい平屋の間取りは?高齢者向けの家づくりのコツ

段差が少なくバリアフリーな平屋はシニア世代の住まいとしても人気です。家づくりをする際、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。ニッケンホームの設計士である大村涼登さんにお話を伺い、間取りや建築時のポイント、高齢者が平屋で暮らすメリットとデメリットなどを紹介します。老後に向けて家の新築を検討している人はぜひチェックしてください。

高齢者に優しい平屋の間取りは? おすすめを紹介

1LDK

「LDKと寝室が1部屋のシンプルな間取りです。一人暮らし、または二人暮らしの夫婦に適しています。それぞれの自室(寝室)は不要なので1LDKにしたという夫婦も多いです」(大村さん、以下同)

1LDKの平屋の間取り
一人、または二人暮らしに適した1LDKの平屋(画像提供/ニッケンホーム)

2LDK

「LDKと夫婦それぞれの自室(寝室)を設けたい場合は2LDKがおすすめです。シニアになってからも一人の時間を大切にしたい方に人気の間取りです」

2LDKの平屋の間取り
2LDKの平屋の間取り。LDKを挟んで夫婦の自室(寝室)を設ければプライバシーを守ることができる(画像提供/ニッケンホーム)

3LDK

「夫婦二人で生活するならば2LDKの間取りで十分ですが、さらに客間をつくりたいという方もいます。LDKと夫婦それぞれの寝室に客間を設けて3LDKにするパターンもあります」

もしくは、夫婦+親のように二世帯三人暮らしの場合も3LDKの間取りが適しています。

3LDKの平屋の間取り
夫婦と母が暮らすことを想定した3LDKの平屋の間取り。和洋室は母の居室になる(画像提供/ニッケンホーム)

平屋を建てるときに知っておきたいこと

必要な広さ

「シニア世代が住む1LDKや2LDKのコンパクトな平屋を建てる場合、土地面積は50坪ほどあったほうがよいでしょう。50坪あれば駐車場と庭もつくることができます」

国土交通省が発表している誘導居住面積水準によると、一人暮らしの場合に必要な延床面積は55m2(約16坪)とされています。また、二人以上で暮らす場合は25m2×世帯人数+25m2という算定式に基づいた延床面積が、豊かな住生活の実現のために必要な広さといわれています。

二人暮らしの場合は、25m2×2+25m2 = 75m2(約22坪)の延床面積があれば暮らしやすいということです。

平屋の広さのイメージ
その家で暮らす人数によって、快適に暮らすために必要な広さは異なる(画像提供/ニッケンホーム)

本体価格の目安

建物や設備の仕様、グレードによって本体価格は変動します。ここでは、ニッケンホームのプランを参考に、平屋の本体価格の目安を紹介します。

「延床面積22~24坪の平屋の場合、本体価格は1740万円になります。この金額にオプションや諸費用などを上乗せし、総額2000万~2200万円ほどになる場合が多いです(※)」

※2023年11月時点の情報です。今後、変更になる可能性もあります。

本体価格の見積もりのイメージ
使用する建材や水まわり設備のグレードによって本体価格は大きく変わってくる(画像提供/ニッケンホーム)

タイニーハウスとの違い

近年、一人または二人暮らし向けのタイニーハウスも人気です。タイニー(tiny)という言葉通り「小さな家」を意味し、延床面積は10~25m2(約3~8坪)ほどになります。水まわり等の設備も必要最低限で、コンパクトかつシンプルさに特化した住まいといえるでしょう。また、一般住宅のように基礎からつくるタイプもあれば、車台の上に建てられたトレーラータイプもあります。

こういった点から、暮らしやすさを重視して生活動線や設備を工夫する注文住宅の平屋と、タイニーハウスは性質が異なるものといえます。

タイニーハウスのイメージ
アメリカ発祥のタイニーハウス。日本でも知名度が高まりつつある(画像/PIXTA)

平屋が老後の住まいに適している理由は? 平屋のメリットを紹介

バリアフリーで安全

「上階への移動がなくバリアフリーな空間を実現できるのは平屋に住む大きな魅力です。高齢になると階段での転倒リスクが高くなります。平屋は一階だけで生活できるため、体への負担が少なく、安全に暮らすことができます」

平屋で車椅子生活をする人
上下移動のない平屋は車椅子の生活にも適している(画像/PIXTA)

動線がコンパクト

「シニア向けの平屋はLDKを中心に据えて各居室を配置する間取りが大半で、通路も最小限です。そのため生活動線や家事動線がコンパクトになり便利です」

一階だけで家事が完結するので、「洗濯物を干すために二階のベランダに移動する」といった手間もありません。

ウッドデッキのある平屋の間取り
LDKと繋がるウッドデッキは洗濯物を干すのにも便利。掃き出し窓にはフラットレールを採用し、車椅子での出入りも楽に(画像提供/ニッケンホーム)

ワンフロアの生活が高齢者の暮らしに合っている

「子どもが巣立って夫婦二人暮らしになったときに、二階にある子ども部屋がデッドスペース化してしまうケースは珍しくありません。また、二階建てに住んでいる方も高齢になってからはLDKのある一階を中心に生活したり、介護が必要な場合は一階に寝室を移設することも。こういった将来を見据え、平屋を選ぶ方もいます」

寝室での介護のイメージ
平屋は一階部分に寝室があるため介護がしやすくなる(画像/PIXTA)

修繕費用を抑えることができる

「外壁や屋根の修繕をする際、一階部分しかない平屋は足場を高く組む必要がありません。そのため二階建ての住宅よりも修繕費用を抑えることができます」

大規模修繕のイメージ
大規模修繕のときの費用を抑えることができる(画像/PIXTA)

シニアが平屋に住むデメリットは?

駅近など利便性の高いエリアで土地を見つけにくい

「高齢になると電車やバスなど公共交通機関を利用する機会も多くなるでしょう。そのため利便性の高いエリアを希望する方も多いです。総二階の住宅と比較すると平屋を建てるには広めの土地が必要です。そのため駅近など好条件の土地を見つけるのが難しく時間がかかってしまう可能性があります。期限にゆとりを持って、できるだけ広範囲で土地探しをすることをおすすめします」

駅近の土地を探す夫婦
平屋を建てるには、広めの土地が必要。利便性の高いエリアでは見つけにくい(イラスト/イチカワエリ)

音が伝わりやすい

「廊下を設けずLDKと各居室が隣接する間取りの平屋は、音が伝わりやすいというデメリットがあります。そのため家族間でプライバシーを守りにくいことが課題といえます。ただし、設計の際の工夫によって音が伝わりにくくすることは可能です」

また、音の伝わりやすさは生活リズムが違う家族がいる場合にもデメリットとなります。寝室で休んでいるときにリビングの生活音や話し声が聞こえて、うるさく感じる人もいるかもしれません。

平屋の音の伝わりやすさのイメージ
通路を設けないと動線は短く便利になるが、話し声や生活音が伝わりやすくなる(イラスト/イチカワエリ)

防犯性が低い

「一階建てのため窓やドアから侵入されるリスクが高いことや、周辺の高い建物から覗かれやすいことは平屋のデメリットといえます。安全ガラスの採用や外構のつくりを工夫し、防犯対策をする必要があります」

平屋の防犯性の低さのイメージ
すべての開口部が一階にあるため外部からの侵入リスクが高い(イラスト/イチカワエリ)

【場所ごとに紹介】高齢者の住まいだからこそ設計時に留意したいことは?

リビング

コンパクトな平屋であっても、天井を高めに設計したり、大きな窓を取り入れることでLDKに開放感が生まれます。また、リビングのテレビの位置にも注意しましょう。

「寝室と隣接する位置にテレビがあると、音が筒抜けになりゆっくり休めなくなってしまいます。テレビは寝室側の壁から離したほうがよいでしょう。家の中で長時間過ごすライフスタイルの人や、寝室が生活の中心になっている家族がいる場合は特に注意が必要です」

リビングの実例
勾配天井を取り入れたリビング。4mの天井高で空間に開放感を演出(画像提供/ニッケンホーム)

寝室

「一般的には、寝室は夜しか使わない部屋のため日当たりを優先して配置することはありません。しかし、高齢になると寝室で過ごす時間が増える方もいると思います。寝室で長く過ごす場合は、日当たりのよい南側に寝室を配置したり、大きめの窓を設けて採光を確保し、明るい部屋にすることをおすすめします」

また、シニア世代ならではの間取りの注意点もあります。

「トイレや洗面所などの水まわり設備を寝室の近くに配置して動線を短くしましょう。年齢を重ねたときの生活も便利になります」

寝室の実例
大きな窓を設けた寝室。昼間は明るい光が差し込む(画像提供/ニッケンホーム)

玄関

「玄関は転落、転倒事故が発生しやすい場所。上がり框(かまち)の高さを18cm以下に設計すると、高齢者も昇降しやすくなります」

車椅子の乗り入れを考慮して玄関扉を引き戸にしたり、土間を広めに設計するのもポイントです。

玄関の実例
車椅子の乗り入れを想定した広い玄関ホール(画像提供/ニッケンホーム)

お風呂

「浴槽と洗い場、脱衣所を広めに設計すると、介助者も身動きを取りやすくなります。ヒートショックを予防するために、浴室と脱衣所、居室の温度差を少なくするのも大切です」

お風呂の実例
引き戸を採用し、ゆったりとしたバスルーム。段差もないので脱衣所との行き来も安全(画像提供/ニッケンホーム)

トイレ

「車椅子でトイレに入ることを想定し、横幅は1.4mほど確保しておくとよいでしょう」

フタの開閉や洗浄を自動で行うフルオート機能付きのトイレを採用すると、さらに便利です。

トイレの実例
車椅子でも入ることができるバリアフリーのトイレ(画像提供/ニッケンホーム)

駐車場

「駐車場を設ける場合は、将来的にデイサービスの送迎車などが乗り入れる可能性を考慮し、少し広めにスペースを確保しておくことをおすすめします。
通常、横幅が2.3mほどあれば自家用車の駐車には十分ですが、車椅子の乗降を前提にすると幅が3.5mほどあったほうが便利です」

広い駐車場
広い駐車場があれば、車椅子での外出も楽になる(画像提供/ニッケンホーム)

スロープ

「アプローチから玄関までスロープをつくっておくと、車椅子や足の不自由な人の移動が楽になります。車椅子が通行するためには120cmほどの通路幅がいるため、スロープをつくるには広めの土地が必要になります。急勾配にならないように注意して設計することも大切です」

スロープの実例
手すり付きの緩やかなスロープを採用した住まい(画像提供/ニッケンホーム)

老後の住まいづくり。後悔しないためのポイントは?

断熱性を高めて熱中症とヒートショックを予防する

「高齢者はヒートショックを起こしやすいので注意が必要です。ヒートショックは急激な温度変化によって起こるため、家の断熱性を高めて室内を一定の温度に保つことで予防できます。
高断熱の住宅はエアコンも効きやすくなるため、光熱費を抑えられる点も魅力です」

ヒートショック予防のイメージ
高断熱の家はヒートショックを予防できるほか、季節や時間帯を問わず快適に過ごせる(イラスト/イチカワエリ)

手すりを設ける

「玄関、浴室、トイレなどには手すりを設けることをおすすめします。身長によって適切な高さが変わるため、設計時に使用する人の身長を伝えましょう」

リフォームで後から設置することも可能ですが、工事をして壁に手すりの下地を取り付ける必要があるため新築時に導入したほうがコストも最低限で済みます。

トイレの実例
手すりを設けたトイレ(画像提供/ニッケンホーム)

防犯性を高める

「平屋の防犯性を高めるために、外構はなるべくオープンにして壁で囲わないようにしましょう。壁で囲ってしまうと不審者が家に侵入しても外から発見しにくくなるためです」

外側から覗かれるのを防ぐために、見えやすい窓は不透明ガラスにしたり、アプローチから玄関が見えないように設計する手法もあります。女性の一人暮らしの場合も安心です。

玄関がアプローチから見えないように工夫した平屋
アプローチから玄関が見えないように配慮した住まい(画像提供/ニッケンホーム)

出し入れしやすい収納をつくる

「高い位置や奥行きが深い収納は物を取り出しにくいためシニアの暮らしには向いていません。また、小屋裏収納やロフトを設ける場合、動線は梯子よりも階段がおすすめです」

稼働棚を設けた洗面室
稼働棚をたくさん設けた洗面室。稼働棚は身長に合わせて棚の位置を決めることができて便利(画像提供/ニッケンホーム)

建具は上吊り引き戸がおすすめ

「床に建具のレールがあると躓く(つまずく)リスクがあります。上吊り引き戸は上側だけにレールがあり、床はフラットになっているのでバリアフリー住宅によく採用されます」

上吊り引き戸
床に凹凸がないので転倒を予防でき、車椅子の移動もしやすい(画像提供/ニッケンホーム)

植栽を取り入れて生活を豊かに

「シニアの方々は家で過ごす時間が長くなると思います。窓の外に緑があると、気持ちよく暮らすことができるでしょう。庭でガーデニングや家庭菜園を楽しむことで生活も豊かになります。手入れの手間を省きたい場合は、アプローチにシンボルツリーを1本植えるのがおすすめです。クロモジなど、剪定が必要のない背の低い樹木もあります」

平屋に設けた庭
LDKから庭の緑を眺めてくつろぐことができる。外からの視線を防ぐ効果も(画像提供/ニッケンホーム)

スイッチやコンセントの高さに注意

「車椅子生活を想定し、電気のスイッチとコンセントの高さを決めましょう。電気のスイッチは一般的には130cmほどの高さに設けますが、車椅子の場合は少し低めの110cmが適切です。コンセントは通常は30cmほどの高さに設けますが、少し高めの40cmの位置に設けるとかがむことなく使用できます」

車椅子の人が使いやすいスイッチとコンセントの高さ
スイッチとコンセントの高さの希望は設計に入る前に建築会社に伝えるとよい(イラスト/イチカワエリ)

ライフスタイルに合わせて平屋の間取りを考えよう

最後に、シニア向けの平屋を建てるときのポイントを大村さんに伺いました。

「シニアの方が暮らすことを想定した平屋を建てる場合、暮らしに合わせて間取りを決めることが大切です。シニア層とファミリー層ではライフスタイルが異なります。寝室で長く過ごすことが多い人は、LDKよりも寝室を広めにつくったり、日常的に車椅子を使用する場合は車椅子の動線を考慮した間取り決めや設備の配置がポイントになります。実際に暮らすイメージを膨らませながら、長く快適に暮らせる住まいを計画してください」

まとめ

シニアが平屋で暮らす場合は1LDK~3LDKがちょうどよい

上下移動がなくバリアフリーなため、平屋は高齢者の暮らしに適している

介護や車椅子生活を想定した設計にするとよい

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取材・文/佐藤愛美(りんかく) イラスト/イチカワエリ
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