25坪程度の広さの平屋を建てるとき、どのような間取りをつくれば、快適かつ便利な暮らしを楽しめるのでしょうか。平屋のプランのコツについて、一級建築士事務所 秋山立花の秋山怜史さんに教えていただきました。25坪の平屋の間取りも3つ紹介します。
25坪はおよそ83m2、約50畳。面積が25坪の平屋であれば、4人家族程度までならば十分に暮らせる広さといいます。
「例えば子どもが2人いる4人家族の場合、25坪の平屋であれば子ども部屋を2つ、主寝室を1つ設けるような3LDKも可能です。3人家族であれば、ゆったりと過ごせる広さの家になると思います」(秋山さん、以下同)
25坪の平屋で4LDKとなると、各個室が4畳程度など、かなりコンパクトなプランになってしまうそう。25坪の広さで平屋を考えるのであれば、3LDK程度までと考えておくといいでしょう。
家づくりの際、風水や家相などから玄関の方角を気にする人も少なくありませんが、”〇〇の方角に玄関をつくりたい”と考えていても、家を建てる土地と道路の位置関係などによって、ある程度玄関の方角は限定されてしまうものです。
具体的に“25坪の平屋”というイメージで家づくりを考えている場合、すでに土地を持っていたり、購入を検討している目ぼしい土地があるケースが多いかもしれませんが、その場合は、玄関の方角にこだわりがあったとしても、家を建てる予定の土地の形や立地条件などを考慮する必要があります。
一方で、“南側に庭やリビングをつくりたいから、玄関は反対側の北側に配置するもの”などと考えている場合は、玄関の位置を北側に配置できないからといってがっかりする必要はありません。
南面道路で玄関を南側に配置することになる場合でも、日当たりを求めて南側に庭などを配置することは可能です。また、周囲の目を気にせずに屋外空間を楽しみたいということであれば、道路に面した玄関とは異なる方角に庭やウッドデッキを配置することもできます。
「平屋の特長として、地面に近い位置で暮らせるということがあります。ですので、平屋を建てたいと希望する人の中には、“庭で家庭菜園をしたい”、“ウッドデッキで子どもと遊びたい”、“ガーデニングを楽しみたい”など、日当たりのよい屋外空間を求める方も少なくありません。
そのような場合、日当たりの良い南側に庭などをつくりたいと考える人も多いと思いますが、玄関を庭の反対側に配置しなければいけないということはありません。
平屋は階段がないため、2階建てよりも、間取りのプランニングの自由度が高くなります。あまり決められた間取りにとらわれずに、自分たちのしたい暮らしや、住まいに求めるものは何なのかを考えて、それに沿ったプランニングをするのが、良い平屋をつくるコツだと思います」
3人家族であれば、20坪の平屋でも暮らせない広さではありませんが、25坪の平屋は、20坪の平屋よりも5坪(約17m2)広くなることで、間取りのプランニングはどのように変わってくるのでしょうか。
「5坪違うことで、リビングや居室などを広くできたり、土間スペースや収納を少し増やすなど、空間を豊かにすることにスペースを使うことができます」
リビングで過ごす時間が長い家族はリビング空間を充実させたり、土間スペースにアウトドアグッズなどを効率よく収納したいという人は、土間を広くしたりするのもいいでしょう。5坪違うことで部屋数を増やすという選択肢もありますが、それぞれのライフスタイルに合わせて、生活空間にゆとりをつくるというプランニングも可能になります。
暮らす人の求める暮らしによって、同じ25坪でも間取りプランはさまざまです。今回は25坪の平屋を建てた実例を3つ紹介。間取りを考えるヒントにしてみましょう。
ビルトインガレージ付きのアメリカンスタイルの平屋を希望していたSさん夫妻。土地探しでは周辺の景観にもこだわり、近隣に輸入住宅が多いエリアに新居を建てることにしました。
こだわりのつまったSさんの新居は50’sのアメリカンハウスのような佇まいで、1970年代製の愛車のためのビルトインガレージも設置しました。アメリカンスタイルに欠かせない、ファサードのカバードポーチは雨の日に子どもが遊んだり、ちょっとした作業に使ったりと、便利なスペースとして活用しているそうです。
インテリアは白を基調としたシンプルな空間に色鮮やかなアクセントクロスが映え、以前からコレクションしていたヴィンテージ家具も上手く溶け込んでいます。間取りはキッチンを中心に水まわりを集中させ、スムーズな家事動線を実現。玄関からすぐにリビングにつながるアメリカンハウスらしい間取りによって、コンパクトながら開放的雰囲気が漂う平屋になっています。
家を建てるなら、夫妻二人暮らしにちょうどいい、広すぎない家を希望していたというOさん。シンプルで、開放感があり、掃除しやすい家にしたいと考えていたことから、平屋という選択に至ったそうです。
リビングの一角には土間をつくり、欲しかった半屋外のようなスペースを確保。外のテラスとフラットにつながり、窓を開ければ、屋外でくつろぐような爽やかさを感じられる空間です。また、天井付けのハイサッシを採用したことで、南面からの光をたっぷりとりこみ、リビングは明るく開放的な雰囲気になっています。
LDK、ウォークインクローゼット、ライブラリーなど、家の中のそれぞれのスペースに間仕切りはほとんどないため、掃除もスムーズ。家中が心地よい温度に保たれ快適に過ごせるそうです。
平屋を建てるには敷地の広さに不安があったというSさんは、コンパクトでも居住空間は広々と使えるよう、廊下をほとんどつくらない間取りにしました。
LDKと居室や水まわりはダイレクトに移動できるため、家事動線は快適。また、洗面室の隣には勝手口がついている収納庫があるので、買い物から帰ってからすぐに収納することが可能です。
デザインは室内も外観もナチュラルな雰囲気で統一。開放的なLDKの床にはむく材のフローリングを採用し、壁は自然素材で仕上げるなど、温かみのある居心地のよい空間になっています。おしゃれなログハウスのような雰囲気の平屋では、友人とバーベキューをしたり、庭いじりをしたりと、新しい暮らしを楽しんでいるそうです。
同じ25坪の平屋でも、空間の使い方はさまざまです。家族構成や自分たちのライフスタイル、敷地状況をふまえると、理想の平屋の間取りが見えてくるかもしれません。
25坪の平屋の部屋数の目安は3LDK程度まで
3人家族ならゆったり、4人家族でも快適に暮らせる広さ
よくある間取りにとらわれ過ぎず、自由にプランニングをするのが、良い平屋をつくるコツ