子育てを終えた夫婦やシングルライフを楽しみたい方のなかには、1LDKのコンパクトな平屋を検討している方もいるのではないでしょうか? 今回はライフスタイルに合わせたおすすめの間取りや1LDKの平屋を建てるメリット・デメリット、坪数別の建築費用の目安などをGREEN STYLEの羽鳥 諒さんに伺い解説します。コンパクトな1LDKの平屋の実例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
コンパクトな1LDKの平屋は一体どのような人に向いているのでしょうか? 適切な広さとあわせて羽鳥さんに伺いました。
1LDKの平屋となると、1人か2人で暮らすことが前提となります。
「弊社でご相談が多いのは、子育てを終えられたご夫婦です。『これからは庭がある家で暮らしたい』『家族が増える予定もないので家は広くなくていい』といった方々です。最近では、お子様を持たない若いご夫婦から小さな平屋のご要望をいただくことも多いですが、若いご夫婦には、1LDKですと、お仕事やライフスタイルの変化に対応しきれないことを考えると積極的にはおすすめしておりません。
1人であれば、アパートなどでは楽しみにくい音楽鑑賞や楽器演奏、ペットと暮らすこと、車やバイクなどの趣味を持っているシングルの方にもおすすめです。ほかは広い土地を持つ方が多い地方であれば、親の家の敷地内にシングルライフを楽しむ子どもの家を建てる、あるいは結婚した子世帯が広い母屋に移り住み、親が住む小さな家を隣に建てるといったケースも考えられると思います」(羽鳥さん/以下同)
「1LDKの平屋の平均的な延床面積は、18~20畳程度のLDKと6~8畳程度の寝室を配すると考えた場合で、18~20坪(約60~66m2)程度になります。1人で住む場合も2人で住む場合も、最低でも18坪程度の延床面積は確保したいところです。
それより狭い家を建てることもできますが、それではアパートやマンションに住むのとあまり変わりがありません。一戸建てを選択したのですから、平屋での生活を満喫するためにも、18坪以上の広さがあったほうがよいと思います」
「バリアフリーにするのであれば、介護ベッドを置くことや介護のしやすさを考えて、寝室は最低でも8畳程度はほしいところです。さらにトイレや浴室を広くする、玄関を引き戸にすることなどを考えると、延床面積は18坪にプラス5坪程度、最低でも23坪以上で考える必要があるでしょう」
コンパクトな1LDKの平屋を建てるとき、間取りはどのように考えるとよいのでしょうか? 実際に建てられた延床面積約18坪の1LDKの事例をもとにお話を伺いました。
「1LDKの平屋の間取りを考えるときには、まずは理想の暮らしや好み、趣味を明確にすることが大切です。ご夫婦で老後に備えるのであればバリアフリーを意識する必要がありますし、趣味を楽しみたいのであればそれにあった設計が求められるためです。
こちらの家は、趣味とする自転車を楽しみたいというご夫妻のご要望を受け、玄関土間を広くして自転車の整備ができるようにしました。さらにLDKとの間にホールを設けず、玄関土間に置かれた愛用の自転車を室内から眺められるよう工夫しています」
「キッチンは対面カウンター式にし、カウンターで食事を取るスタイルにするとダイニングテーブルが不要になるので省スペースで、リビングを広く取れます。一人暮らしであれば壁付けキッチンにすると、さらに空間が広がります」
「小さな1LDKであってもできるだけ開放感を出したい場合は、勾配屋根にして吹抜けをつくると縦空間が広がります。周囲に家があるようなケースでも、高い位置から採光を確保しやすくなるのもメリットです。
1LDKの平屋で開放感を出すには、ロフトを設けるのも有効です。こちらの事例は天井を上げ、奥の階段からロフトへ上がれるようにしました※。その結果、ハイサイドライト(高窓)から日が差し込む明るいリビングになっています」
※ロフトに階段を設けられるかは自治体によって異なるため、建築会社に確認しましょう。
「こちらの住宅では寝室として使う個室が4.5畳と狭く、2台ベッドを入れるとそれだけで部屋が埋まってしまうため、あえて和室にしました。布団は奥のクロゼットに収納することで、日中は多目的に使えます。
さらに小上がりにしたことで、段差を収納として活用できるようにしました。来客があったときには腰掛けとして使えるので便利です」
「面積の限られる平屋では、生活に直結する『収納量の確保』が課題となります。とくに、コンパクトな1LDKの平屋にするのであれば、収納計画をしっかり立てることが重要です。
例えば趣味を考えてつくった平屋なら、趣味に応じた道具の収納が、老後二人暮らしをするための1LDKの平屋であるなら、頻繁に買い物に出られなくなることも考え、備蓄できるスペースが必要だと思います。
しかし、単純に収納を増やすと延床面積が広くなり、その分建築コストも高くなってしまいがちです。延床面積を増やさず収納を確保するには、縦空間を活用してロフトを計画する、段差を利用して収納を設けるなどの工夫が必要です」
1LDKの平屋を建てることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
「1LDKの平屋はすべてが同じフロアに、しかもコンパクトにまとまっているので、動線が短く暮らしやすいことが最大のメリットです。2階がないので上下移動が不要で、さらに面積が狭いため掃除の負担も少なくて済みます」
「1LDKの平屋で家族と暮らす場合には、どこにいても家族の様子がわかりやすくなります。とくに介護が想定される場合には、目が届きやすく安心です。
また平屋は防犯性が気になる人もいるようですが、1LDKの平屋は室内外に目が届きやすいのでかえって安心だと思います。2階建てだと2階で過ごしている間は1階の様子はわかりませんが、平屋でしかも1LDKだと、異常があればすぐに気がつくことができるでしょう」
「コンパクトな1LDKの平屋は外壁や屋根の面積が小さくなるので、メンテナンスコストも抑えられます。屋根や外壁は10年程度で塗り直しを行いますが、かかる費用は面積に応じて決まるのが一般的です。小さな家であれば、使用する材料や足場代が少なくて済み、工期も短くなるので安い価格でメンテナンスできるでしょう」
「土地の広さにもよりますが、家が小さければそれだけ庭を広く取れるので、家庭菜園を楽しむなど庭との一体感がある生活を楽しめます。小さな1LDKの平屋であれば、方位をしっかりと考えながら設計することで、いつでもお庭が見え、必要な手入れに気づくことができる間取りが可能になるでしょう」
1LDKの平屋を建てるかどうかは、デメリットも踏まえて検討することが大切です。1LDKの平屋のデメリットを羽鳥さんに伺いました。
「例えば都市部で敷地面積が狭く、さらに周囲に2階建てが立ち並んでいるような場所に小さな1LDKの平屋を建てると、圧迫感が生じてしまいがちです。また採光や風通しが悪くなり、お家が暗くなってしまう可能性もあります。
暗くて風通しが悪ければ、コケやカビの原因となり、健康的な暮らしができなくなるうえ、家の耐久性にも問題が生じてしまいます。そのため1LDKの平屋を建てる土地を選ぶ際には、周辺環境についてはよく確認が必要です」
「1LDKの平屋だと、家族間のプライバシーを保ちにくくなります。例えば夫婦二人で暮らす場合、ケンカしたとき、あるいは介護に疲れたときなどに、一人きりになるのは難しいかもしれません。
また1LDKの平屋をコンパクトにまとめる場合、コの字やロの字のように外に閉じて中に開く形状ではなく、シンプルな箱形になる傾向があります。そのため外からの視線を感じる位置に窓を配置してしまうと、視線が気になりカーテンを閉め切って暮らすことになりかねません。
外部からの視線をカットするためには、周辺の環境をよく調査し、道路や隣家の状況に応じて周辺の変化を予測しながら窓の大きさや位置をよく検討し、さらに植栽やフェンスなどの外構も活用してデザインする必要があるでしょう」
「平屋は延床面積と同じだけの屋根面積・基礎面積が必要になるため、同じ延床面積の2階建てと比較すると坪単価(建築費用を延床面積で割った価格)が高くなります。2階建てのほうが高くなるイメージがありますが、平屋にするからといって2階建ての半額で建てられるわけではない点は留意しておきましょう」
「住宅の価格は『坪単価×延床面積』が基本となりますが、坪単価は建築会社によって異なります。ローコストをうたう建築会社であれば、10坪程度の狭小な平屋であれば1000万円を切る価格で建てられるかもしれません。
ただし、近年は建築資材の価格が高騰しており、弊社であれば平屋の坪単価は100万円程度かかります。15坪であれば1500万円、20坪であれば2000万円になる計算です。また平屋には注意する点も多く、規格のパッケージプランを単純に土地に配置するようなやり方はおすすめできませんので、注意が必要です」
なお家を建てる際にはほかに土地の購入費用や設計料などの付帯工事費、登記にかかる諸費用、消費税なども必要です。建築費以外に発生する費用も含め、予算を考えましょう。
1LDKの平屋を建てて後悔しないためのポイントを、羽鳥さんに伺いました。
「小さな1LDKの平屋を建てるときには、これからのライフプランをよく考えることが重要です。1LDKの平屋はスペースが限られるので、想定外に家族の人数が増えた場合、快適に暮らすことが難しくなるためです。
そのようなケースでは、家を賃貸に出し※、自分たちはより広いアパートやマンションで暮らすといった方法もあるでしょう。しかしそうするためには、1LDKの平屋を建てる場所を含め、はじめから資産価値を高めておくことが重要になります。
一方老後も暮らし続けることを考えるのであれば、デザイン性よりバリアフリーを優先する必要があるでしょう。今後おこりうるさまざまなケースを想定し、建てる場所や家のデザイン、機能などを考えましょう」
※住宅ローンが残っている場合、賃貸に出すには居住が前提の住宅ローンが利用できないため、ローンの借り換えが必要になります。借り入れしている金融機関に相談してください。
「1LDKの平屋だと、シンプルな形状になりがちです。そのため外観デザインはていねいにつくりこまないと、事務所のような味気ない外観になってしまう可能性があります。
おしゃれな外観デザインの1LDKの平屋で快適に暮らすには、植栽や外構も併せて計画する必要があるでしょう」
「2階がない平屋は、外気の影響を受けやすい屋根が近いため、夏は暑く冬は寒くなりやすいことが特徴です。そのため屋根材はもちろん、壁や床、窓などをしっかり断熱し、家全体の断熱性を高めることも重要です」
最後に改めて羽鳥さんに、1LDKの平屋を建てるときのポイントを伺いました。
「1LDKの平屋を建てようと考えたからには、アパートやマンションでは実現できない夢や理想があったのだと思います。庭のある暮らしを楽しみたい、趣味を満喫したいなど、『1LDKの平屋で実現したい理想の暮らし』をまずは明確にして設計者に伝えましょう。
なお1LDKの平屋をコンパクトに仕上げるためには、これまでお伝えしてきたとおり、立地との関係性を考慮したり、限られた空間内に必要十分な収納を確保したり、シンプルな形状ながらも意匠性を高めたりするなどさまざまな工夫が求められます。
そのため小さな平屋を建てるのであれば、多くの建築経験があり、要望に対してリスクがある場合は、はっきりと教えてくれて、それに代わる素敵な代案を考えてくれる会社を選びましょう」
コンパクトな1LDKの平屋は、子育てを終えた夫婦や趣味を満喫したいシングルの方におすすめ
一戸建てのよさを実感し快適に暮らすなら、1LDKの平屋の広さは18坪程度は欲しい
アパートやマンションを選ばずに1LDKの平屋にした理由である、実現したい「理想の暮らし」を明確にする