【俳優・大泉洋さん】北海道で30年、東京で10年過ごして、いま一番住みたい街とは?

インタビューと文章: 榎並紀行(やじろべえ)

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さまざまな方に「街」にまつわるエピソードについて伺うインタビュー企画。今回ご登場いただくのは2017年12月1日(金 ※映画の日)に、最新作「探偵はBARにいる3」の公開を控えている大泉洋さん

北海道の人気タレントとして確固たる地位を築いていた大泉洋さんが、東京で暮らし始めたのは30歳を過ぎてから。俳優としての自分を磨くため、役者の仕事が集まる東京で勝負することを決めたといいます。それから10年。全国放送の連続ドラマや映画で経験を重ね、主演映画『探偵はBARにいる』(11)では第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、第35回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞されました。

生まれ育った北海道での30年。俳優として大きな飛躍を果たした東京での10年。今では、どちらも大事なホームタウンになったと語る大泉さん。暮らして分かった東京の良さ、離れて気づいた北海道への想い。大泉さんが過ごした「街」のことを語っていただきました。

東京には憧れも先入観もなかった

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――東京で暮らし始める前は、どんな印象をもっていましたか?

大泉さん(以下、大泉):これといった印象はなかったんですよね。というのも、僕の場合、俳優として成長するために役者の仕事が多い東京へ来たのであって、東京に住むこと自体が目的ではなかった。なので、特別な憧れや先入観はなかったんですよ。北海道で役者が続けられるなら、ずっと北海道にいたいと思っていたくらいなので。

ただ、なんか「不思議な街」だなとは思っていましたね。仕事があるからみんな集まってくるけど、東京の人はここに住みたいと本当に思っているのだろうか? 家賃は高いし、みんな無理して住んでいるんじゃないかな、って思っていました。

僕自身も、上京したてのころは狭いワンルームで暮らしていて、たまに北海道に帰ると後輩たちが僕よりも全然いい家に住んでるんですよね。「ええっ? お前、一軒家建てちゃったの?」って。当時はどっちの生き方がいいんだろうって悩んだりもしました。

――しかし、それから10年、今も東京に住み続けておられます。

大泉今は、東京と北海道、どちらも「帰る場所」という感覚になっています。映画の撮影で1カ月ずっと北海道へいて、久しぶりに東京へ帰ってきたら、こっちはこっちで落ち着くなあって。羽田空港から車でレインボーブリッジを渡って都心に入っていく景色って、東京にしかない。世界の東京って感じがしますよね。巨大なビル群の間に東京タワーが見えて、夜景の中に滑り込んでいく感覚がすごく好きなんですよ。

――今まで住んだ東京の街ではどこが好きですか?

大泉:事務所が最初に家を借りてくれたのが東銀座だったんです。歌舞伎座のすぐ近くのマンション。だから、銀座は身近だったし、今でも好きな街ですね。道行く人もタレントを見て騒いだりしないし、大人の街だからラクで心地いい。渋谷とかはいまだに怖いですよ。

銀座にいたころ、夜の街で飲み歩いたりはしなかったけど、おいしいお店は多いし築地も近いので朝ご飯を食べに行ったりしました。札幌でいう「一丁角」くらいのスペースに小さな店がひしめき合っていてね。僕は“食道楽”なもんで、そういうのが楽しかったんですよね。

東京は便利だけど、僕には札幌がちょうどいい

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――東京で暮らすようになってから、故郷に対する思いは変わりましたか?

大泉:2005年ごろから連続ドラマの撮影で東京に長くいるようになって、北海道を、札幌を客観的に見られるようになりました。客観的に見て、あらためて札幌はよいところだなあって。

――例えば、どんなところですか?

大泉:もちろん生まれ育った街の風景だから落ち着くっていうのもありますし、それに、僕にとって札幌という街は“ちょうどいい”のだと思います。今はまだ、何にもない田舎に住みたいとは思いませんが、東京だと人が多すぎて疲れてしまうときもある。札幌は都会なんだけど、人の量も、お店の数もちょうどいいと感じます。

だから、今でも札幌でレギュラーの仕事があって、帰る理由があるっていうのは有難いですよね。いつでもすぐ帰れるように、できることなら羽田空港のすぐそばに住みたいくらいです。

――東京と札幌を行き来する二拠点生活は大変じゃないですか?

大泉:もちろん、スケジュール的にはきついですけど、北海道に帰ったら、年老いた両親にも顔を見せにいきたいですしね。

でも、やっぱり楽しいですし、恵まれていると思います。同じように北海道から上京してきた友人たちは、まとまった休みでもなければ帰れないわけで……。お前はしょっちゅう行けていいよなってうらやましがられることは多いです。みんな、もっと地元に帰りたいんでしょうね、本当は。

――これまでさまざまな街で暮らしてきた大泉さんですが、いま、仕事や家族のことを抜きにして、東京のどこでも好きな場所に住んでいいといわれたら、どの街を選びますか?

大泉:東京で、ですか?……うーん……そうですねえ……。(沈黙10秒)

――北海道でもいいですよ

大泉札幌の円山*1ですね(即答)。

――北海道だとすぐ出ましたね(笑)。円山のどんなところが魅力ですか?

大泉:札幌の端っこなんだけど、いい街なんですよ。街並みがきれいだし、落ち着いているし。僕は夜の街で遊びたいタイプでもないから、程よくおいしい店があって、穏やかに暮らせる街がいいんです。

4年ぶりの「探偵」札幌ロケ。ぜひ、現地の映画館で見てほしい

――12月1日公開の映画「探偵はBARにいる3」はススキノが舞台です。札幌の街の至るところでロケをされていると思いますが、特に見てほしい、感じてほしいところはありますか?

大泉:まずは雪に覆われた歓楽街ですね。雪っていうのは映画の中でこれ以上ない演出効果なんですよね。あれだけの規模の街が雪で覆われるというのは、それだけで大きな見せ場になっていると思います。

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――北海道というと大自然というイメージですが、「探偵」では札幌の都会の街並みが数多く登場します。

大泉:道外の人って、北海道民は全員が牛を飼っていると思っているフシがあるんですけど(笑)、実際には札幌の都市部に住んでいる人が圧倒的に多いんですよね。だから、地元の人たちにとっては、自分たちの街の身近な風景が出てきて楽しめるんじゃないかと思います。

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――4年ぶりの「探偵」での札幌ロケ。地元の方々の反応はいかがでしたか?

大泉:それはもう温かかったですし、映画に対する期待も感じました。特に、クライマックスのシーンはサッポロファクトリーに二日間で延べ2000人のエキストラが集まったんですけど、平日で、しかも1日がかりの撮影なのに「探偵が好きだから」って参加してくれる人も多くて……。本当に有難かったですね。

「探偵」っていうのはもう北海道の方々には認知されていますし、ありがたいことにファンもいっぱいいるんですけど、あらためて「みんな、待っててくれたんだなあ」って感じましたね。

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――映画を見ると、札幌の街を歩きたくなるかもしれませんね。

大泉:はい。なので、ぜひ道外の人も札幌の映画館で見てもらえたらうれしいですね。そのまま映画に出てきた街を歩いて、すすきのに繰り出して飲むっていうのが最高に贅沢で楽しいと思いますので。



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『探偵はBARにいる3』について

舞台は妖しいネオンが瞬く、アジア最北の歓楽街=札幌・ススキノ。街の裏も表も知り尽くした「探偵」(大泉洋)が、相棒の高田(松田龍平)とともにススキノを縦横無尽に駆け回る―。満を持してのシリーズ第3弾では、探偵史上最も切ない過去を背負う依頼人(北川景子)が登場。緊張が走る裏社会、巨額の薬物取引、2つの殺人事件など、物語は予想もつかない展開へ。探偵ファンの期待をはるかに超える“シリーズ決定版”と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。2017年12月1日(金 ※映画の日)より全国の映画館にて公開

www.tantei-bar.com

お話を伺った人:大泉洋(おおいずみ・よう)

1973年4月3日生まれ、北海道出身。北海道発の深夜番組「水曜どうでしょう」(HTB/96~)でブレイク。演劇ユニット“TEAM NACS”に所属。主演映画『探偵はBARにいる』(11)では第24回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、第35回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。2017年12月1日(金)より、シリーズ最新作となる『探偵はBARにいる3』が公開。

聞き手:榎並紀行(やじろべえ)

榎並紀行(やじろべえ)

編集者・ライター。水道橋の編集プロダクション「やじろべえ」代表。「SUUMO」をはじめとする住まい・暮らし系のメディア、グルメ、旅行、ビジネス、マネー系の取材記事・インタビュー記事などを手掛けます。

Twitter WEBサイト:50歳までにしたい100のコト

*1:円山公園駅周辺は、古くからの住宅街があり、落ち着いた雰囲気。円山公園、北海道神宮など自然も身近に感じられるエリア。都心へのアクセスも良く、大通駅へは地下鉄で乗り換え無しの3駅。新千歳空港や札幌駅へのバス便もある。「札幌 住みたい街ランキング 2017」SUUMO調べ より