著者:イーピャオ

ライター。週刊少年ジャンプのコラム「巻末解放区!WEEKLY週ちゃん」を執筆・制作、現在連載中。小山ゆうじろうとの漫画『とんかつDJアゲ太郎』(少年ジャンプ+)で原案を担当。個人冊子レーベル「いきいき発信プラザ21」にて少部数の出版物を制作しています。
X: @yipiao_tw
普段はライターの仕事をしております。
いや、そう言い切っていいのかと迷っちゃうほど、どうにも要領が悪いのが悩みです。もともと休む予定のはずが、仕事をやり残して持ち越しちゃう週末がよくあるのです。そんな日は、自宅じゃ絶対捗らないし、違う町に身を置くことで少しの非日常感を得るぞ!って魂胆で、リュックにPCを突っ込んで外へ飛び出します。
行く先は〈総合的な町〉。
それはどんなものかと言われれば、そうですね〜、新宿みたいな副都心ほどは巨大すぎないけど、ターミナルで駅ビルも充実、大型書店や家電量販店もある。銭湯やサウナがあって、ビルの隙間にチェーンから赤提灯までそろった繁華街もあるような町、を私はそう呼んでいます。
そんな町の(経験則上)机の広いコワーキングスペースに陣取って、作業に飽きたら散歩を繰り返し、よき頃合いで切り上げて入浴→飲酒→帰宅、という流れが好きなんです。
〈総合的な町〉の中でも、とりわけ水が合うのか反射的に行っちゃうのが、「八王子」と「立川」。中央線の特快の停まるこの2都市。東京・多摩地域のライバル同士なんて言われてたりすることもありますが……安心してください、ちゃんと両方の素敵なポイントを書きますから!
で、新宿方面から中央線に揺られて立川駅に近づくと、降りようか、八王子まで行こうか迷います。ここからはマルチバースシステム(?)で、両駅それぞれで過ごしたパターンをご紹介します。
人懐こくて、メチャクチャ実力派な八王子
「今日は八王子まで行く!」と決め、中央線のドア脇に寄りかかった私。冬晴れだと、立川あたりでは富士山が進行方向左に見えるんですが、しばらく走るとなぜか富士山が右手に……世紀のイリュージョンみたいであっけに取られてるうちに、八王子駅に着きました!思い返せば、初めて八王子に来たのはもう10年前の新卒時代。出版社の営業部にいて書店さんを回っていたころ、本当に短期間ながら「多摩全域」というエリアを受け持ちまして。私は車の免許がないのでバスを乗り継いで訪問してたんですが、八王子(たしか陣馬街道沿い)のお店では次のバスが来るまで冷房の効いた店内で待たせていただいたり、ほんとうにお世話になりました。

八王子は古くから絹織物で栄えた町。このあたりの歴史について知るには、駅チカにできた「桑都日本遺産センター 八王子博物館」を訪ねるのがオススメ。養蚕や高尾山などのキーワードがよくわかります。昔からの花街・中町も最近整備され、車人形(人形芝居)などの鑑賞イベントも催してるのだとか。町中の随所から、伝統的なものに対するシビックプライドを感じます。

JR八王子駅北口の市街地は、駅を要として、野球のダイヤモンドみたいな形をしているような気がします。今日はその一塁側、京王八王子駅周辺のコワーキングスペースに拠点をとりますか。……そこそこ働きまして(そこをちゃんとやれよ!)、休憩がてらちょっくら外に出ましょう!

この八王子は周辺に大学が多いからか、駅前に魅力的な古書店がいくつもあって! 一塁側(アイロード)から三塁側(ユーロード)にかけハシゴするのが絶妙にいいんです。また、地元・多摩の郷土本がどこも充実してるんですよね。新刊書店なら、大手「くまざわ書店」さんの創業地がズバリ八王子。駅前の本店ビルは谷内六郎氏の壁画が見事で、風格がありますね。
地元のストリートフードといえば、つるや製菓さんの「都まんじゅう 」。1個45円、白あん入りのミニ今川焼みたいな饅頭なんですが、その製造機械を眺めてると、ま〜飽きないこと。「あれ? 焼印を押す所はわかったけど、その前にいつ生地を焼いてんだ?」。なんて……またたく間に時間が溶けてしまいます。ヤバイ! とさすがにコワーキングに戻ってしばしの作業をして……窓の外では、奥多摩の山稜が夕焼けにくっきり染まってきました。このへんで切り上げましょう。

仕事終わりにまずひとっ風呂。南口から近い銭湯で高水圧のジェットバスに当たってシャッキリ!
その後の一杯をどこにするかが悩ましくて……。養魚場直営で新鮮なイワナやヤマメが味わえる「小川の魚」さんに、多摩の巨木から切り出した机が出迎えてくれる「多摩一」さん……、山を背後に控えた都会・八王子ならでは!のいいお店も多いんです。
思案の末、本日は南口の「やきとり小太郎」さんに入ると店内は盛況! 焼き台の正面のカウンターに着くと、マスターが串を焼きつつ、不慣れな私に「ゆっくりやりましょう、急ぐもんじゃないし」なんてメニュー選びのコツを教えてくれました。
名物は煮込みで、とりわけ珍しい「塩煮込み」の味が好きなんですが……そこへオプションでキャベツも追加可。マスターに「またキャベツがいい仕事するんだぁ」なんて言われたら迷わず入れちゃいますよ…甘味が出て、本当にいい仕事する〜!
その後も「生小太郎焼き(つくね)につける温泉卵は崩しすぎないほうがいい」なんてアドバイスをスタッフさん総出で教えてくれるもんだから、人情に酔っちゃいますよ〜。

八王子の〆にもう一発、その名も「壱発ラーメン」さんへ。
こちら、独特のコールが名物で、例えばチャーシューメンができたら「丼に咲いた〜一輪の花〜」という発声とともに提供。私の頼んだ、めかとろラーメン(めかぶ&とろろ)の場合は、「海と山のハ〜モニ〜」でした。千切りの山芋が絡んだスープを完飲すれば、満面の笑みで「お兄さん、いい飲みっぷりで!」……やっぱり褒められるって嬉しいですよ。
漫画でいえば、「一見ひょうきんで、メチャクチャ実力派なキャラ」。
そんな役者も揃った、親しみやすくてパワーある町だよな…駅ビルのモコモコした外壁を見ながらそんなことを考えるまでが、八王子に出かけることにした残務日の世界線です。

町全体に進取気鋭の精神があり、変化することをおそれぬ立川
時間を巻き戻しまして、「やっぱ立川で降りる!」と決めた私は駅北口のペデストリアンデッキに颯爽と現れます。
この立川、テレワーク空間の選択肢は多いです。今日は、地元の信金「たましん」が旧本店ビルをリノベしたコワーキングスペースをお借りしましょう。内装も超素敵だし、フリードリンクの水にまで輪切りのフルーツやハーブが入っている! 若い方やスタートアップで働いていそうなビジネスマンにも人気で、すごく今っぽいんですよ。
テレビなどでも、ここ最近の北口一帯の再開発スポットが紹介されるようになりました。話題の複合施設「GREEN SPRINGS」には芝生やビオトープもあり、もう緑とカルチャーのハ〜モニ〜!って感じの見事な建築。そこへ向かう道すがらも、IKEAの横にはスケートパークがあると思えば、頭上にはシルバーの多摩モノレールが駆け抜けて……近未来的で抜け感が抜群です!
近代以降、飛行機産業で栄えた立川。関連する敷地は戦後に米軍基地となり、返還後の跡地を大胆に転換できたからか? なんて、よそ者が推察するのもおこがましいですが、とにかく町全体に進取気鋭の精神があり、バリッバリに変化することをおそれぬ勢いを感じます。

立川で仕事をするときの気分転換は一択! 縦横無尽に張り巡らされたペデストリアンデッキをウロウロすること。地上に降りずしてデパートに入ったり、「ファーレ立川」という点在型の現代アート群を眺めて空中散歩を楽しめます。(その魅力は、DJ JINさん・島晃一さんたち〝デッキ界隈〟の先達が発信されていますよ!)

書店でいえば、地元の雄・「オリオン書房」さんの立川周辺店舗はたしか全て、デッキ経由で行けたはず。「ジュンク堂」さんも、これまたデッ直(デッキ直結)の高島屋SCにありますね。
やっぱり気になるのは、立川市長選なんてニュースの決めショットで必ず映る、北口の赤い巨大なアーチ。これもいざ作るとなると躊躇しそうな規模感と色味ですが(当初水色で、のちに赤く塗り替えたそう)、すんなりハマっちゃうのが立川のダイナミズムです。
さて、まあ仕事もひと段落させて、サッパリするとなると……サウナと漫画の蔵書量に定評のある「梅の湯」さんはまず鉄板。
南口の繁華街にある「サウナ&カプセルイン ミナミ」さんも、コンパクトでサウナはカリッカリの高温系、好みなんです。ここの浴場内に夜風にあたれるイスがありまして。いつだったか座りながら、居酒屋ビルの隙間に少しだけ現れた月をボーッと眺めたっけ……。古来、ススキの原の上に出る「武蔵野の月」は沈む山もない、なんて描かれたそうですが、今じゃにぎやかな街中にちょっと顔を出すばかり……ほんと人の世は有為転変です。
飲み処は立川も個性的でして! 赤提灯系はもちろん、洋食メインの名店多数、さらになぜか餃子の激戦区だったりもします。 それから記憶が正しければ、 あれはたしか南口の方だったか……名産・ウドの天ぷらをはじめ、立川野菜の料理が軒並みウマかった居酒屋さんも印象深いですね〜。

今日は北口デッキの真下、地下空間の大箱「酒亭 玉河」さんへ。店内のお品書き短冊が多いほど興奮する私には嬉しい、大量メニュー数! 揚げ餃子、するめいかの天ぷらと揚げ物系で固めて、老若男女による立川飲みの熱気を背後に受けながら、飲むサッポロ生がウメェ〜! 会計後、地上に出る階段を上る際、むこうにある「LUMINE」のロゴが画角にカッとキマって見えるのがいいんですよ!

よっぽど興が乗ったので、再開発エリアのもっと向こう、広域防災基地や駐屯地が整然と並んだ区域を一人歩いてテクノスケープ感に浸るか……とも思いましたが、今日のところは中央線で大人しく帰りましょう。深夜にはホームへ、高確率で石油輸送の貨物列車が滑り込んでくる……これもエモいんですよね……。

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「エモいんですよね…」なんて言っていますが、これまで多摩地域ではない駒込のあたりに住んでいながら、しばしば八王子や立川を訪れていました。もちろん駒込もすごくいいエリアなんですが、多摩の風土への憧れが募りすぎ……この度、引越すことに決めました!
その転居先とは……、八王子でも立川でもなく、西国分寺!
紹介した2都市のどちらでもないってのがスミマセン! いずれも良すぎて、どちらかに住むという腹を決められず! ただ、両タウンに普段から足繁く通おうと、中央線沿線に決めました。(なんなら武蔵野線を使って「府中」方面も射程に入れようという魂胆もありますが……)。
この原稿を書くかたわらで引越しを進め、多摩での新生活 を始めております 。超〜無精な私がついに転居を決めたのも、〈総合的な〉タイミングもありましたが、その端緒の一つはこのエッセイです。八王子と立川に足を運び、町について考えたからだと……こんな〆も妙なのですが、SUUMOタウンさん、ありがとうございましたっ!
編集:ツドイ
