だいたい吉祥寺、だいたい武蔵関。練馬区立野町の優しい人形たち|文・寺井奈緒美

手の平サイズの幸福が見つかる、行きつけにしたい街だ――。そう話すのは歌人で土人形作家の寺井奈緒美さん。20代の数年間を過ごした練馬区立野町を訪れ、寺井さんが詠んだ短歌とともに、その魅力を紹介いただきました。

演技は「普通の生活」から生まれる。滋味豊かな街、武蔵関で掴んだ演劇の種

武蔵関は東京23区内なのに地味だけれど、不便さとは無縁だったし、文句も思いつかないくらい居心地が良かった。心のわだかまりや、奨学金支払いの気苦労を忘れてしまえるほどの華やかさや、狂瀾じみた雰囲気は1ミリもない。けれど、ほかの街に引越すのが怖く…