玄関のリフォームの最大のポイントは収納です。機能的な収納で清潔感と使いやすさをアップさせれば、リフォームでおしゃれな玄関をつくることができます。今回は玄関リフォームで重要なポイントとなる収納のほか、玄関の内装コーディネートのコツや、玄関まわりの設備の選び方などについて、生活デザイン設計室サンクの代表でインテリアコーディネーターの古屋茂子さんに伺いました。おしゃれな玄関リフォームの実例も併せて紹介します。
記事の目次
リフォームでおしゃれな玄関をつくるポイントは収納
おしゃれな玄関の条件は、使いやすさ、清潔感、デザイン性など、さまざまありますが、それらをリフォームで叶えるには機能的で使いやすい収納を設けることが不可欠です。
「玄関に収納するものとして最低限考えておきたい靴、傘などは、それぞれ使用する頻度やサイズなどで区別して収納する場所が必要です。それに加えて、玄関に置いてあると暮らしやすくなるものとしてはベビーバギー、ショッピングカート、外出用の車椅子、外遊びの道具、レインコート類など。さらに、スリッパや靴磨きなどのお手入れグッズ、靴ベラ、宅配用の印鑑。そして、外出時に忘れがちなカギ、メモ類、ハンカチやマスクなども置いておける場所があると便利です。
また、必要なものを収納するだけでなく、花や小物、絵画などを飾っておける場所もあるとうれしいですね」(古屋さん、以下同)
細々としたものまで含めると、意外と収納しておきたいものが多い玄関ですが、家族人数やライフスタイルなどによって、ものの量やしまいやすい収納は異なります。どのような収納にするのかプランニングする上で、玄関に収納しておきたいものの点数やそれぞれのサイズも考えながらリストアップするのもいいでしょう。
- 靴(普段履き、冠婚葬祭用など履く頻度の低い靴、長靴やブーツなど収納サイズが異なる靴)
- 傘(折り畳み傘、長傘)
- スリッパ
- 外で使う大きなもの(ベビーバギー、ショッピングカート、外出用の車椅子)
- 外で使う汚れやすいもの(スコップなど外遊びの道具、レインコート、杖)
- 靴磨きなどのお手入れグッズ
- 靴ベラ
- 小物類(宅配用の印鑑、メモ、カギ、ハンカチ、マスク)
おしゃれな玄関リフォーム・内装コーディネートのコツ
すっきり片付いた状態であることはおしゃれな玄関の必須条件ですが、リフォームをするなら内装に自分らしさも加えて、デザイン性も高い素敵な空間にしたいものです。リフォームの際、玄関の内装のポイントとなる土間・床や壁のコーディネートのコツについても見ていきましょう。
土間・床
玄関の土間・床は汚れやすい場所。部屋全体の内装とのバランスを考えて選ぶことも大事ですが、汚れが目立たないような素材や色を選ぶのが安心です。一般的にはタイルやコンクリート、モルタルなどの素材がよく使われます。
「玄関土間は雨でぬれたり、土や泥で汚れた靴が持ち込まれたりする場所なので、汚れが付きにくく、滑りにくい丈夫なもので、掃除がしやすい素材を選ぶのがオススメです。
小さな子どもがいたりすると、どうしても泥などが土間に持ち込まれるものですが、黒っぽい色の土間は泥を拭き取っても、乾いた後に泥汚れが気になることもあります。汚れが目立たないということを考えるのであれば、ベージュ系のタイルなどを選ぶと安心です」
こまめなお手入れが気にならず、土汚れなどをあまり持ち込まないようなライフスタイルの場合は、ツヤのある大理石や大理石調の塩ビタイルなどの素材を用いると、高級感がある空間を演出することもできます。
「マンションの場合は、共用部のエントランスから専有部の玄関まで距離があるので、一戸建てほど、外の汚れが玄関に持ち込まれる心配も少ないでしょう。汚れがそれほど気にならない場合は、白っぽくてツヤのある素材を使った土間は、広々としてホテルライクな雰囲気になります」
また、タイルを選ぶ場合、タイルのサイズは小さいほど目地が滑り止めの役割を果たす一方、お掃除のしやすさも気になるもの。滑りにくさとお手入れのしやすさを考えると、20センチ角や30センチ角のサイズのタイルを選ぶことが多いそうです。
玄関の壁
玄関の壁も、土間や床と同じく、汚れや傷などがつきやすく、ニオイなども気になる場所です。汚れが目立ちにくい色を選んだり、防汚性、耐水性、抗ウイルス性などの機能を持った壁紙やタイルなどを採用する人も少なくありません。
「汚れや傷のほかにも、ニオイやデザイン性なども気にしたいポイントです。ニオイなどを吸着する多孔質セラミックタイルやデザイン性の高いタイル、木材などをポイント的に使うのもいいと思います。玄関であれば壁の面積も小さいので、少しグレードや意匠性の高いものにチャレンジしてみるのもいいですね。
シューズクローゼットや土間収納など、見えない部分の壁は、吸湿性のあるボード張りや機能性クロスなどにすれば、タイルなどよりは価格を抑えることもできます」
デザイン性にこだわりたくても、予算的に難しいという場合は、こだわりの素材を部分的に使用しながら、見えない部分で少しグレードを落とすなど、メリハリをつけることでコストの調整も可能です。
また、玄関の壁には壁面をくぼませた「ニッチ」を設ける人もいます。ニッチにはちょっとした物を置いたりすることができるので、カギなどの小物を置く場所として利用したり、ちょっとした装飾品などを飾る場所として活用することができます。ニッチは省スペースながら、自分らしい空間を演出するのに便利です。
さらに、玄関の壁面には鏡を設置しておくと、姿見として利用できて便利なことに加え、空間を広く見せる効果も期待できます。
「鏡を付ける位置については、靴を履いた状態で全身を確認したいのであれば、玄関土間の収納のないほうの壁に設置することになりますが、靴を履いていない状態でもいいのであれば、廊下の壁など、設置する場所の選択肢は広がります。
空間を広く見せる効果を狙って、天井から床までの高さの鏡を採用することもありますが、1m程度の高さの鏡でも、全身を映すことはできます」
リフォームでおしゃれな玄関をつくる設備の選び方
玄関ドアや照明などの設備も玄関の印象を左右するもの。最近では帰宅後すぐに手を洗えるような手洗いスペースを玄関に設けるようなリフォームも少なくありません。玄関まわりの設備の選び方についても、ポイントを見ていきましょう。
玄関ドア
玄関の暗さが気になる場合は、リフォームのタイミングで窓が付いているドアなどに変更することで、ドアを閉めた状態でも光を取り入れることができます。また、玄関ドアについている鍵も多様化しているため、リフォームはドアの新しい機能を検討してみるよいタイミングかもしれません。
「玄関ドアのリフォームは既存の玄関ドアの枠の上に新しいドアを取り付けられるカバー工法が広く採用されています。カバー工法の場合は、既存の枠に合わせたサイズのものを選ぶ必要がありますが、費用も工期も抑えて、手軽にリフォームをすることが可能です。
また、ドア自体の機能は進化していて、通風、採光、断熱に優れたものが開発されています。また、カギについても手動で施解錠するものだけでなく、リモコンキーやスマートフォンなどを使う電気錠や顔認証のものなどさまざまなものがあります。荷物が多いときなどはとても便利なので、検討してみるのもいいでしょう」
ただし、マンションの場合玄関ドアは共用部に当たるため、このようなドアごと変更するというリフォームは通常行うことはできません。ドアの内側については、フィルムを張ったり、塗り替えたりすることは可能というケースは少なくないそうですが、リフォームの際には管理組合や管理会社に必ず確認をするようにしましょう。
照明
一戸建ての場合は屋内の玄関照明に加え、防犯面を考えて屋外の照明も計画したいものです。
「屋外の照明については、軒下などにポーチライトやダウンライトを付けるのに加えて、防犯面を考えると通路や外構などにも照明を取り入れておきたいですね。周囲の明るさによって点灯する明暗センサー付きのものや、タイマー付きのもの、人感センサー付きのものなどもあります。
人感センサーについては、屋内の玄関照明にも取り入れると、荷物を持っていても自動で電気がつき、消し忘れも防げるので便利です。照明器具によってはセンサーを別に付ける必要があるので、その場合はコート掛けなどの陰にならない壁に取り付けるように気を付けましょう」
手洗い
手洗いは必ず玄関に設置されているものではありませんが、帰宅後すぐに手洗いできるよう、洗面スペースを玄関に設けておくと便利かつ衛生的です。来客時にゲストを洗面所に通す必要もなくなり、プライベートとパブリックを分ける意味でも重宝します。
「手洗いは帰宅したらすぐに使いやす場所にあると便利なので、玄関土間や玄関ホールなどに積極的に取り入れたい設備です。最近ではさまざまなデザインの洗面器があるので、インテリアに合わせて選びやすくなっています。例えば、カウンターの上にお洒落な洗面ボウルを置いたり、ある程度水が跳ねてもいいように周囲にタイルを張ったりと、デザイン性や機能性も考えてコーディネートすることができます。玄関ホールの一部をニッチのようにくぼませて、その部分に手洗器を取り付けるのも良いですね」
おしゃれな玄関リフォームの実例/下駄箱・シューズボックス
ここからは実際にリフォームでおしゃれな玄関を実現した実例もご紹介します。
まず、玄関収納として思い浮かぶ下駄箱やシューズボックスは、狭い玄関などでも設置しやすく、設置することで靴の出しっぱなしを防ぐことができます。
「玄関のスペースは限られているので、天井いっぱいの高さのトールタイプのものや、吊戸棚と下の収納が分かれたセパレートタイプのものなどを取り入れることが多いです。キャビネットの一部が引き出しで小物が収納できたり、長傘や杖などが入れられるスペースがあったりするものもあるので、収納するものや量に合わせて選ぶといいですね」
【実例】セパレートタイプのシューズボックスにしっかり収納。ニッチが玄関ホールのアクセントに
玄関の壁面に固定された木目調のセパレートタイプのシューズボックスは床から浮いていることで、空間に広がりが感じられます。
また、玄関ホールにはニッチを設け、ニッチの部分には黄色のモザイクタイルを採用。壁を斜めにすることで、リビング側からも玄関側からも、空間のアクセントになっているニッチを見ることができるようになっています。
おしゃれな玄関リフォームの実例/オープン収納
手持ちのスニーカーなどをあえて見せて収納したい場合などは、扉のないオープンなタイプの収納棚を設けることもあります。
「オープン収納は扉がない分、一般的な下駄箱やシューズボックスなどよりも、費用を抑えられるというメリットもありますが、扉がない分隠すことは難しいので、こまめにお掃除をしたり、美しくディスプレイするように収納することが必要です。使い方次第では、玄関のアクセントとしておしゃれな空間のポイントにすることもできます」
【実例】オープン棚でスタイリッシュな空間に。エコカラットや手洗いの設置で玄関の快適性もアップ
ベビーカーなどを置いても十分な広さのある玄関土間には、靴をディスプレイするようにたっぷりと収納できるオープン棚を設置しました。
さらに、玄関の壁にはエコカラットを採用し、愛犬の散歩後に足を洗えるように玄関スペースには手洗いボウルも設置。清潔感があり、ライフスタイルに合わせた使い勝手もいい空間になっています。
おしゃれな玄関リフォームの実例/シューズクローゼット・土間収納
玄関スペースに余裕があったり、リフォームを機に玄関部分の面積を広くするような場合は、土間から直接入れる土間収納やシューズクローゼットなどの大容量の収納空間を設けることもあります。
「大容量の土間収納などがあると、下駄箱などに納まらないゴルフバッグやベビーカーなどのカート類や自転車、子どもの外遊びの道具やレインコート類、外回りや玄関用の掃除道具まで、家の中に収納しづらいものもしまえて、玄関スペースもスッキリ片付きます」
なお、土間収納をつくるには広い玄関スペースが必要ですが、玄関の近くの洋室をウォークインクローゼットやウォークスルークローゼットにリフォームするという方法もあります。土間収納ではなくても、大容量の収納スペースが玄関の近くにあると、身支度から出発までの動線がスムーズです。
【実例】玄関横の洋室を大容量の収納スペースに。玄関からも寝室からもアクセスできる2WAY動線を確保
手狭だった玄関をリフォームで拡張。倍近い広さに一新しました。LDKと同じアクセントクロスを採用して、統一感を出しながら、お気に入りのアートや照明で遊び心も加えています。
玄関横の洋室は衣類や季節の家電なども収納できる大容量の収納スペースに変更。ウォークインクローゼットの入口にはシューズクローゼットを設けており、靴もたっぷり収納できます。玄関とも寝室ともつながっているため、動線もスムーズです。
【実例】既存の靴箱は傘収納にリフォームし、玄関脇にはシューズクローゼットを新設
リフォームでは玄関脇にあったトイレの位置をずらし、玄関の近くに大容量の収納スペースを確保。ウォークインタイプのシューズクローゼットは靴だけでなく、大きなものも十分にしまえるサイズです。
シューズクローゼットを新設したため、もともと玄関に設置されていた靴箱はサイズをコンパクトにして、傘専用の収納を造作。すっきり広々と使える玄関になりました。
玄関は家の顔。リフォームで自分にぴったりの収納を設けて、毎日気持ちよく過ごせるような、おしゃれな空間を実現してみてください。
【まとめ】リフォームでライフスタイルに合わせた収納を設けることで、おしゃれな玄関を実現できる
おしゃれな玄関をリフォームでつくるには、まずライフスタイルに合った収納を計画することが不可欠です。自宅の玄関に収納するものはどんなものがあるのか、ものの量や使いやすさ、玄関のサイズに合わせて、使いやすい収納をつくりましょう。また、収納に加えて、土間・床や壁などの内装をどうするかによっても、玄関の雰囲気は左右されます。デザインのほかにも、メンテナンス性や安全性なども重視して素材選びなどをするのがオススメです。また、玄関ドアや照明、洗面器などの設備についても、リフォームは交換や設置を考えるよいタイミングです。防犯面なども考慮して選べば、玄関をより、安心で快適な空間にすることができるでしょう。
●取材協力
生活デザイン設計室 サンク 古屋茂子さん
生活デザイン設計室 株式会社 サンク(一級建築士事務所)共同代表。インテリアコーディネーター。生活する人のライフスタイルに合わせ、建築設計やインテリアデザインなどを女性・主婦の目線で行っている。
●画像協力
アクアラボ
renoverocca?(リノベろっか?)
LIXIL
構成・取材・文/島田美那子