
こんにちは、mihozonoと申します。普段は会社員として、サービス企画の仕事をしています。
2023年、念願のフルリノベーションをしました! 完成までにはいくつもの壁と長い道のりがあったため、これからリノベーションをする方の参考になればと思い、私の体験談を紹介します。
すてきな友人宅を訪れて、リノベ熱が高まる
私は以前から「リノベーション」という考え方や文化が好きで、台湾のリノベーション建築を巡る旅をしたり、リノベーションスクールに参加したこともありました。元の物件を活かすことで唯一無二の空間が出来上がったり、昔の面影やストーリーを感じられるところに新築にはない魅力を感じます。
そんな私が自分でもリノベーションをしてみたいと思い始めたきっかけは、フルリノベーションした友人宅を訪れたことでした。自分の暮らしに合わせて自由に設計をしているのを見て、賃貸に自分の暮らしを合わせるのではなく、自分のためだけに家をつくりたいと思うようになりました。
たとえば私は読書が趣味なのですが、賃貸で暮らしていた当時、収納が追いつかずに本棚からあふれてしまって床に平積みしている状態でした。どうにかしたいと思いつつも見て見ぬふりをしていましたが、改めて自分が好きなものを大事にできる空間で暮らしたいと思い直し、リノベーションプロジェクトを始めようと決意しました。

しかし、いくらリノベーションが好きと言っても、自分でやるとなると初心者です。まずはいくつかのセミナーに参加したり、本やブログを片っ端から読んだりして、リノベーションのプロセスの全体感や注意点を理解することから始めました。また、雑誌やPinterestでどのような家で暮らしたいかのイメージを膨らませつつも、ファイナンシャルプランナーと相談して現実的な予算を見据え、理想と現実のバランスを取りながらリノベーションプロジェクトを開始したのでした。
フルリノベの最難関、物件探し
フルリノベーションの夢をかなえるまで、一番大変だったのは物件探しでした。私は当時暮らしていた賃貸物件のある狭いエリアに絞って探していたのもあり、結局物件探しに9カ月もかかってしまいました。
まず、はじめに検討していた条件はこちら。
・自宅近隣エリア
・中古マンション
・駅徒歩10分以内
・55平米以上
・予算内に収まる物件
今後ライフプランの変化に伴って売却する可能性もあるため、戸建てよりもマンションのほうが売却がスムーズにいくのではないかと考えていました。また、戸建ては物件によってリノベーション費用が変動しそうだと思ったのも避けた理由のひとつです。駅までの徒歩分数や広さはその当時の賃貸と同等の条件を希望しており、それ以外の細かい条件はどうせ全て壊してスケルトン状態にしてしまうのを考えればこだわりませんでした。
他にも気になっているマンションについてあらかじめ不動産に問い合わせをしておき、新着物件が出たら案内をもらうようにもしていました。しかし、毎日新着物件を探してもなかなか見つからず……。血眼になって物件を見過ぎたせいで、近所を散歩していると「このマンション、リノベーション済みの物件が出ていたけどすぐ売れてたな……」「このマンション住みたいけど、予算オーバーなんだよな……」などと思い浮かんでしまう始末。
途中で心が折れそうになり、リノベーション済物件を見に行ったりと気持ちが揺らいだときもありましたが、「なんのために家探ししていたんだっけ?」と原点に立ち返り、なんとか踏みとどまることができました。
スピード勝負の中、物件を即決するためのポイント
リノベーション向きのマンション購入は、スピード勝負! 再販業者をはじめとするライバルに負けずに理想の物件を手に入れるためには、数千万円もの大きな買い物を短期間で意思決定する必要があります。実際に、私の今の物件は初めて内覧した日のうちに即決し、ローンの事前審査申し込みに進みました。
スピード勝負に勝つために、まず大切なのはデータを集めることです。私はExcelで物件比較表をつくって、近い築年数の物件と比べて相場感から大きくハズレていないかチェックするようにしていました。このようなデータがあれば、値下げ交渉をするときの材料にもなります。
また、事前に何度かローンの仮審査を出していたため、自分の借り入れ可能額をおおよそ把握できていたこともスムーズに進める一因となりました。
さらに、自分の感性もとても大事だと思います。私は9カ月にわたる物件探しの中でかれこれ20件以上の内覧を重ね、譲れない条件や、自分の気持ちが高まるポイントが明確化されつつありました。たとえば何度か大通りに面した物件を見に行ったのですが、内覧の間ですら騒音が気になってしまい住めそうにないと感じました。
また、過去に気に入った物件を振り返ってみると、いずれも眺望がよいという共通点がありました。家探しを始めるまではあまり意識していませんでしたが、自分にとっては眺望が大事であったことに気付かされたのです。このあたりは物件情報サイトを見ているだけではわからず、実際に内覧に足を運んでみるのが大事だと思います。
今住んでいる物件は売主さんとお話しする中で「風が抜けて気持ちいいんですよ」「夜はベランダに椅子を出して、月を眺めるのもいいですよ」と教えてもらい、この家での暮らしを楽しんでいたのが伝わってきたのも後押しとなり、物件そのもののポテンシャルを信じて即決できました。

リノベーション会社と建築事務所、どちらを選ぶか?
マンションのリノベーションを行うとき、自分で設計する以外はどうしてもプロの手を借りることになります。具体的には、リノベーション会社か建築事務所のいずれかが一般的でしょう。私の場合は物件探しを始めた頃、いくつかのリノベーション会社に相談していましたが、最終的に建築事務所にお願いすることにしました。両者の違いやメリット・デメリットがよくわかっておらず戸惑ったことも多かったので、私の経験から感じたことをご紹介します。
まず、リノベーション会社のよいところは、なんといってもリノベーションプロジェクトをまるっとお任せできることだと思います。大手のリノベーション会社はワンストップと言われる形式で、物件選びから住宅ローンの申請、リノベーション設計から施工まで一貫してお願いできるところが多くを占めています。住宅ローンの書類をつくりながら設計の打ち合わせも進んだりと、同時並行でやらなければならないことも多いので、プロジェクトの進行管理もやってくれるのはありがたいポイント。特に初めてだとわからないことだらけなので心強いですよね。
ただ、これは会社にもよるかもしれませんが、先方の窓口となる方が要望をまとめて関係各所に連携してくれる形式は楽な一方で、どうしても伝言ゲームみたいになってしまいます。特に設計に関してはあまりこちらの思いをくんでもらえている感じがせず、やや不安に思ってしまいました。
建築事務所のよいところは、一緒に家づくりするパートナーを指名できること!これに尽きると思います。好きな建築家がいる方にとっては、夢のような機会ですよね。
ただ、私は建築業界に詳しくないので、自分に合いそうな建築家と出会うのがとても難しかったです。建築家のサイトやインスタグラムなどのSNSで過去の作品は紹介されていますが、気になる方を見つけても自分のように予算が限られている個人邸のリノベーションを受けてもらえるかわからず、問い合わせするのもためらっていました。また、これも建築事務所によるかもしれませんが、私の場合は不動産会社とのやり取りと、建築家とのやり取りをそれぞれ自分でマネジメントする必要がありました。人によっては大変だと感じるかもしれません。
それでも、もし次のリノベーションの機会があるとしたら、私はやはり建築事務所にお願いすると思います。ただ、以上は単に自分の目的やスタイルが建築事務所に合っていただけであって、どちらも一長一短あるので、色々と比較してみることをおすすめします。
建築家の決め手は「ものづくりへの姿勢」
先述したように私は建築家に詳しくなかったので、建築関係の仕事をしている知り合いに相談し、a.d.pの坂田 裕貴さんを紹介してもらいました。
坂田さんはもともと建築家ユニット「HandiHouse project」を運営されていて、施主も、設計士も、職人も一緒になってDIYなどを行う、参加型の家づくりを行っていました。そうしたものづくりの考え方に共感するし、自分と合いそうだなと思ったので相談してみることにしました。
打ち合わせの際に、当時の自宅に何度も足を運んでくれて、私の好きなインテリアや暮らしぶりをじっくり見てくれたことで、一緒にいいものづくりができそうだと思えるようになりました。
a.d.pの過去の作品は、ぜひインスタグラムをご覧ください。
https://www.instagram.com/anhelo_de_plantas/
解体して初めてわかる、想定外のこと
物件購入後、解体してから初めて判明することもありました。たとえば、アスベストの除去費用がどのくらいかかるかわからなかったり。トイレの位置的に、選べる機種が限られてしまったり。これらは解体前に調査するのは難しいケースもありますが、どうしても譲れないポイントであれば、物件選びの時点で考慮しておく必要があるかもしれません。
また、私は住宅ローンの支払い開始を数カ月待ってもらう交渉をしたので、解体後に1カ月ほど設計期間をゆったりと持つことができました。その期間も管理費と修繕積立金は支払う必要がありましたが、それでも住宅ローン含めて全て支払うよりは負担が減りますし、心にも余裕ができておすすめです。

そして完成! 念願だった理想の住まい
このようにいくつもの壁を乗り越えて、ようやく自宅が完成しました!


やはり自分のためだけにリノベーションした空間は住み心地も大満足です。以前は平積みになっていた本もこの通り!ソファでくつろぎながら、お気に入りの本たちを眺める時間に癒やされています。

また、建築家の坂田さんの提案で、廃材を使って寝室のヘッドボードをDIYしました。同僚にも手伝ってもらい、みんなでワイワイ作業をしながらつくったことで、とても愛着が湧きました。

個室とリビングはあえて仕切らず、行き来がしやすいようにしました。私は家で仕事をすることが多いのですが、いつでも気分転換にお茶やコーヒーを入れることができて気に入っています。このように、自分の生活動線に合わせた設計にできるのもリノベーションならではです。

リノベーションプロジェクト進行中は時間も取られ、マインドもかなり消耗して大変なことも多かったですが、本当にやってよかったと思っています。この家に似合うインテリアを集めるのも楽しくなりました。みなさんも、ぜひリノベーションで理想の暮らしを実現してみてください。
著者:mihozono
UXリサーチャー。株式会社リクルートに新卒入社し、人材領域のデジタルマーケティング、プロダクトマネージメント、UXリサーチチームの立ち上げに携わる。2019年より株式会社メルペイにて、新規事業立ち上げやUXリサーチの仕組みづくりに取り組む。著書に『はじめてのUXリサーチ』(翔泳社)
編集:はてな編集部