土地探しに慣れている人はなかなかいないもの。マイホームを建てるために土地探しをしなければいけないけれど、探し方のコツや失敗しない選び方がわからないという方も多いでしょう。そこで、土地探しのコツや失敗事例、よく聞く用語の意味などについて、不動産コンサルタントの田中歩さんに伺いました。ぜひ参考にしてみてください。
土地を探す方法は、大きく分けて4つです。
1. インターネットで探す
2. 自分で売り地を探す(チラシ、人の紹介、歩いて見つけるなど)
3. 不動産会社に依頼して探す
4. ハウスメーカー、工務店に依頼して探す
「インターネットで探すのは、最も主流の探し方ですね。たくさんの情報を見ることができますが、インターネットに載らない土地もあるので、ネットの情報を活用しつつ、他の方法を併せて調べるのがオススメです。
不動産会社は、土地の売買仲介をやっているところとやっていないところがあります。売買仲介をしている会社かどうか調べて依頼しましょう。ハウスメーカーや工務店も、戸建分譲事業(土地を取得し、住宅を建築したうえで販売する事業)を行っている会社なら売地の情報を持っています」(不動産コンサルタント 田中歩さん。以下同)
土地探しの整理の仕方は、基本的に以下の流れで行います。
1. エリアを決める(交通利便性、生活利便性、自然環境など)
2. 予算制約を確認する
3. 建てたい家をイメージする
4. 土地を探す
5. 実際に土地を見に行く
6. 不動産会社が土地の調査をする
7. 希望のサイズの建物が建つかハウスメーカー・工務店・建築士などに確認する
8. 買付証明書を提出する
9. 土地売買契約
10. 土地購入
「土地や住宅を買う前に、自分たち家族の収入だといくらくらいの土地・住宅が望めるのか計算しなければなりません。
自分で計算することもできますが、プロに頼みたい場合はファイナンシャルプランナーに依頼しましょう。不動産会社にファイナンシャルプランナーが在籍していることもあります。
ただし、人生でかかるお金は住宅資金だけではありません。子どもの教育資金や自分たちの老後資金も必要。住宅資金にかたよらない意見が欲しいのであれば、自分で信頼できる独立系のファイナンシャルプランナーを探して相談するのがオススメです。
ファイナンシャルプランナーに依頼するにはお金がかかるので、厚生労働省が出している教育費のデータなどを参考に自分で計算してみるのも良いでしょう」
エリアが確定し、予算の上限がわかったら、「納得のいく土地探し」をすることです。そのためにはどうしたらよいのでしょうか。
イメージしている暮らしを実現するには?費用の抑え方、災害・防災などの土地のチェック方法など、次の章で詳しく紹介します。
土地を探すことは、自分の人生を送る場所を決めるということ。30代、40代、50代……と、家族は何人でどのような生活をしたいのかをイメージして、それの生活をかなえる家はどのようなものかを整理しましょう。
例えば、
・子どもが小さいうちは伸び伸び遊んでほしいので広い庭が欲しい
・夫婦で車出勤なので2台分の駐車場が欲しい
・家族のくつろぎや趣味のための地下スペースが欲しい、などです。
実現したい要望をイメージしておけば、土地の候補をみたときに、自分たちに合う・合わないの判断がしやすくなります。
実現したい暮らしをイメージしたら、下記の流れで土地選びの準備を進めましょう。
実際の土地選びで妥協せざるを得ない場合、優先順位が低いものは諦めることも検討しましょう。
例えば、「子どもが伸び伸び遊べる広い庭」と「駐車場2台分のスペース」の確保は限られた土地だと設計を工夫しても難しいケースも出てきます。
その場合、どちらの暮らしの優先順位が高いのか、譲れない条件なのか、考えてみましょう。
もし、「庭でなくても近所に広い公園」があれば希望がかなえられるかもしれません。
「庭は広い方が良い」と考えるのではなく、実現したい暮らしをイメージしておくことで、代替案も考えやすくなります。
いきなりたくさんの土地候補が出てきたら、絞り込みが難しいですよね。土地には、角地(かどち)と中地(なかち)があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
まずは、土地を2つの種類に分けて考えてみましょう。
角地とは、交差する2つの道路に接している、角の区間の土地のこと。
・開放感がある
・玄関の位置や駐車場の位置が選べる
・人目につきやすいので空き巣などの防犯になる
・価格がやや高め
・人目につきやすいのでプライバシーが気になる場合がある
・地域によっては人通りや車の往来がうるさい
三方が囲まれた区間の土地のこと。
・角地より安い傾向にある
・プライバシーを守りやすい
・空き巣などのリスクが角地より高くなる傾向にある
・玄関の位置や駐車場の位置が1方向に限定される
・角地に比べ開放感が少ない
土地探しをするとき、不動産会社は頼れる存在です。ですが、やはり自分で確認しなければいけないことも。
何をチェックすれば良いのでしょうか。
「土地を買うとき、不動産会社が土地についての説明をしてくれます。しかし、説明の義務があるのは宅建業法上の”重要事項説明”に該当する部分のみです。重要事項説明にあたるのは、ハザードマップ、土地の権利関係や、その土地にかかっている規制、ライフラインの有無などです。
浸水履歴などの防災面、昼夜平日休日の土地の雰囲気などの生活面は、自分でチェックしましょう」
チェック項目 | 場所 | ここをチェック |
---|---|---|
地理院地図 | 国土地理院のサイト | 「土地の成り立ち」と「この地形の自然災害リスク」 |
ハザードマップ | ハザードマップポータルサイト、自治体のサイト | 洪水、土砂災害などのリスク情報 (地理院地図を基につくられており、より見やすい) |
浸水履歴 | 自治体 | 過去の水害で浸水したことがあるか (ハザードマップ外でも浸水する場所がある) |
地震防災マップ | 自治体 | 地震防災についてのリスク情報など |
造成前の土地の状況 ※ | 現地 | 土地の高低差、敷地の境界線など |
昼夜平日休日の状況 | 現地 | 騒音、道の混雑(交通量)、治安など |
周辺施設 | 現地 | スーパーやコンビニの位置。嫌悪施設(騒音、匂い、治安)の有無など |
物価や住人の雰囲気 | 現地 | 駐車場やスーパーの品物の価格や暮らしぶり |
土地の高低差(擁壁 ようへき) | 現地 | 近所に崖崩れや土砂災害のリスクがある場所はないか |
「現地周辺の物価や雰囲気を見るのは大切なポイントです。その地域の駐車場やスーパーを見てみてください。スーパーに売っているものの品ぞろえや値段などから、その地域の生活水準がわかります。
自分の生活水準より高いにしろ低いにしろ、あまりにも差があるところに住むと、生活し続けるのがしんどくなるかもしれません。
土地の高低差(擁壁 ようへき)については、不動産会社も調査をします。
ですが、不動産会社が調べるのは、”擁壁が現在の安全基準に基づいて申請されつくられたものかどうか”です。安全かどうか?の部分は建築や擁壁などの専門家に聞いてみるのが良いでしょう。
専門家に依頼する前に自分でチェックをしておけば、初めから危ない土地を選んでしまうリスクを避けられます」
不動産会社がしてくれるのはあくまで土地の説明です。
建てられる建物の種類や大体の規模などは教えてくれますが、具体的な間取や採光、隣地建物と目線が重ならない工夫ができるかどうかなどについては説明できないことがほとんどです。そもそも不動産会社は建築の専門家ではないため、その土地で建物を建てるときの注意点やコストについて、建築士や工務店ほど詳しくない場合も。
土地を見に行く際、建築を依頼する会社のプランナーに同行してもらうと、希望する家が建てられるかどうか判断してもらえます。
土地の調べ方についてもっと詳しく
→ハザードマップとは? 安心な住まいを買う、建てるために知っておきたい見方や使い方
土地探しについて調べていると、「敷地調査」「現地調査」「役所調査」といった言葉を目にすることがあります。それぞれどのような意味なのでしょうか。また、自分たちでやらなければいけないことがあるのでしょうか。
「敷地調査にはいろいろな解釈がありますが、敷地に関する調査全般を敷地調査と呼んでいるという認識です。役所調査は、敷地調査のうちのひとつにあたります」
敷地に関する調査全般のこと。
役所調査、現地調査、現地測量が含まれます。
調査内容 | 誰がどこで調査するか | |
---|---|---|
役所調査 | 市区町村の役所で行う調査のこと。建物を建ててその土地に住むにあたってのルールや制限があるかを確認する。 【例】 ・用途地域 ・建ぺい率 ・容積率 ・接道義務 ・北側斜線 ・道路斜線制限 |
不動産会社が市区町村の建築課や都市計画課で行う。 |
現地調査 ※街の状況や地盤や土地の高低差などの土地状況の調査 |
・昼夜平日休日の状況 ・周辺施設 ・住人の雰囲気 ・土地の高低差(擁壁) ・境界 ・隣地建築物の配置や窓の位置 ・土地の高低差(擁壁)(2m以上の場合) ・道路との高低差(2m以上の場合) ・えっきょう ・電柱や支柱の位置 ・ライフラインの引き込み状況など |
土地購入者が現地で行う。 不動産会社が現地(調べる内容によっては役所)で行う。 |
現地測量 | 敷地の周囲を測り、土地形状を把握する。 (敷地で建物を建てるときの制約を知ることが目的。真四角の土地なら良いが、形が整っていないと建物に制約が発生することがある) |
測量図が既にある場合 →不要 測量図がない場合 境界標が一部ない場合は、塀や構築物を前提に周囲の距離を不動産会社に測ってもらう。 |
土地は大きな買い物です。土地探しで後悔しないよう、よくある失敗例と、失敗を回避する方法について紹介します。
不動産会社から土地を購入!いざ家を建てようと思ったら、間取りや窓の位置などの条件が希望と合わず、思い通りの家が建てられなかった。
●回避方法
「不動産会社は土地の専門家です。家の専門家は、ハウスメーカーや建築士、工務店です。希望の土地が見つかったら、必ず家の専門家にも意見を聞くようにしましょう」
休みの日に土地見学をしたら、かなり良い雰囲気で購入を決定。けれどもいざ住んでみたら、通勤経路に開かずの踏切があり毎日の出勤が大変だった。
●回避方法
「買いたい土地が決まったら、平日休日の両方で、昼夜の様子をチェックしに行きましょう」
土地の購入費や建てたい家の費用を足していったら、当初決めていた予算をだいぶオーバーしてしまった。
●回避方法
「自分が実現したい暮らしをイメージし、そのために何が必要なのか条件を挙げます。その条件に優先順位をつけておきましょう。予算をオーバーするようだったら、優先順位の低い条件から諦めていけば、予算オーバーを防ぐことができます」
土地の候補は見つかるけれど、なかなか一つに絞り込めず、ずるずると時間が経ってしまっている。
●回避方法
「こんな暮らしを実現したいというイメージが固まっていないせいで、あれもいいな、これもいいなと何年も土地が決まらない方もいらっしゃいます。
また、自分が住むための土地を探しているのに、『どうせなら売ったときに利益が上がるようにしたい』などいろいろな要望が出てきて、優先順位がぐちゃぐちゃになってしまうパターンもあります。中には10年近く土地を決められない方も。
“私にとっての良い土地”の譲れない条件を決め、優先順位をつけることが大切です」
土地探しのコツは、「実現したい暮らしを時間の流れでイメージする」、「角地・中地の特徴を知っておく」、「必ず自分で現地を見に行く 」の3つ
不動産会社は土地の専門家。その土地にどのような家を建てられるのかは、ハウスメーカー、建築士、工務店に相談が必要
土地を買うときは、今から将来にわたってどのよう暮らしをしたいか考え、自分たちで優先順位を決める