「建蔽率(建ぺい率)」「容積率」とは? 知っておきたい建物の規制

最終更新日 2023年05月23日
「建蔽率(建ぺい率)」「容積率」とは? 知っておきたい建物の規制

「どんな住宅を建てるか」を考えるうえで、土地の広さに対して建築物の規模を好きに決めていいかというと、そうではありません。施主はもとより、周辺に住む人たちの快適さや安全を考えて、法律などでさまざまな規制が設けられています。

そうした規制の代表格ともいえるのが、「建蔽率(建ぺい率)(以下、建蔽率)」と「容積率」です。この2つを知らずに土地を決めてしまうと、規制によって予定よりも狭い家になるケースもあり、後悔することにもなりかねません。そこで、「建蔽率」と「容積率」とはどんなものなのか、それぞれが何を指してどう違うのか、不動産教育のスペシャリストである中村喜久夫さん監修のもと、詳しく説明してみたいと思います。

「建蔽率」は風通しや防災のための規制基準。調べ方(計算方法)

建蔽率とは簡単にいうと、「敷地面積(建物を建てる土地の面積)に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合」のこと。計算式は次のようになります。

建蔽率

例えば、132平米(約40坪)の敷地面積に、66平米の建築面積の建物を建てた場合、その建蔽率は50%になります。

せっかくの土地を無駄なくギリギリまで建物に使いたいと考える人もいるでしょうが、建蔽率が高すぎる家は防災や風通しの観点から望ましくないとされています。そこで、ある程度の空地を設け、ゆとりある建物を建てるように誘導する目的で、建築基準法によって建蔽率に制限が設けられているのです。

なお、建蔽率の制限は地域によってパーセンテージが異なります。というのも、地域ごとに都市計画は異なり、そこを住宅地域にするのか、はたまた商業地域にするのかといった使い道は各市町村により細かく分類されているためです。その使い道は「用途地域」として「平成30年4月1日より田園住居地域が追加され、13種類になりました」に分かれており、それぞれ建蔽率の制限が微妙に異なっています。ここで、住宅にかかわる用途地域について紹介します。

用途地域別の概要

●第一種低層住居専用地域 → 低層住宅専用地域

●第二種低層住居専用地域 → 小規模な店舗の立地を認める低層住宅の専用地域

●第一種中高層住居専用地域 → 中高層住宅の専用地域

●第二種中高層住居専用地域 → 必要な利便施設の立地を認める中高層住宅の専用地域

●第一種住居地域 → 大規模な店舗・事務所の立地を制限する住宅地のための地域

●第二種住居地域 → 大規模な店舗・事務所の立地を一部制限する住宅地のための地域

●準住居地域 → 自動車関連施設など沿道サービス業と住宅が調和して立地する地域

建蔽率(用途地域別)

【建蔽率 30・40・50・60%】

用途地域
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域

【建蔽率 50・60・80%】

用途地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域

住宅に関連する用途地域(7種類)を例に比較。30%から80%まで、用途地域によって建蔽率は大きく異なる

建蔽率50%の場合、80%の場合

建蔽率(建ぺい率)の要件緩和

また、建蔽率を上乗せできる緩和条件というものがあります。建蔽率80%の地域以外(30・40・50・60%)で、火災を防いだり危険を除いたりすることを目的にした「防火地域」の「耐火建築物」であれば、用途地域で規定されている建蔽率に10%加えることが可能。また、「角地」の敷地であれば、延焼を防止して、風通しにも支障がないと考えられるため、建蔽率を10%加えることができるなど、土地や建物の条件によって制限が緩和されることも。
例えば、「防火地域」「耐火建築物」「角地(※1)」の3つを満たしているケースでは、建蔽率に計20%を上乗せできることになります。できる限り広い家に住みたいと考えている人であれば、こうした緩和条件は覚えておきたい知識のひとつです。

(※1)都道府県や市町村によって、角地の定義は異なります。

なお、土地の仲介業者は購入希望者に対して、その土地がどの「用途地域」に属するかとあわせて、建蔽率も必ず伝える義務があります。しかし、それをきちんと理解できていないまま購入してしまうと「希望する建物の広さは50平米なのに、30平米の広さでしか建てられないことが後から分かった」なんてことも無きにしもあらず。建蔽率は理想の住まいを考えるうえで、欠かせない知識だといえるでしょう。

「容積率」は人口をコントロールするための基準。調べ方(計算方法)

次に「容積率」について。建蔽率はいわゆる平面的な広さを制限するものですが、容積率は「敷地面積に対する3次元空間の割合」を算出し、制限するための基準になります。計算式は次のとおりです。

容積率

この計算からも見て取れるように、容積率を求めるうえでは「延べ床面積」がポイントになります。延べ床面積とは、それぞれの階の「床面積」を合計した面積のこと。つまり、容積率は「土地に対して何階の建物を建てることができるのか」を定めるための基準とも言えるでしょう。

ちなみに、延べ床面積に含まれない部分は「玄関」「バルコニー・ベランダ」「ロフト」などです。また、「地下室」「ビルトインガレージ(ビルトイン車庫)」などは延床面積に含まれないため、結果的に容積率が緩和されるケースがあり、これを「容積率の緩和の特例」といいます。

「容積率の緩和の特例」とは、容積率の上限は都市計画によって決められていますが、一定の規準を満たせば、この制限が緩和されるというもの。たとえば敷地面積が狭い場合でも「容積率の緩和の特例」を利用することで、定められた容積率をオーバーする(=違法物件になってしまう)ことなく、面積を有効に活用したプランがたてられます。

「容積率の緩和の特例」の規準や具体的な例は、こちらの記事が参考になります。
容積率の緩和って何?わかりやすく解説 ~前面道路の幅員など、知っておきたいポイントも紹介~

さらに、「容積率の緩和の特例」の規準を満たしていても、自治体によって条件が異なることがあるので注意しましょう。また、容積率・建ぺい率のほかにも家の規模を制限する法律があります。

なぜ容積率の制限を設けることが必要なのか。それは、簡単に言えば人口制限のためということになります。「住宅」と「下水や周辺道路などのインフラ整備」は切っても切り離せない関係です。

仮にインフラ整備が不十分なエリアなのに、容積率の割合を高くしてしまい、階数が多い家ばかりが建ち、住み手(人口)が増加したとします。すると、たちまち処理能力がオーバーしてしまい、結果として住み良い街からかけ離れてしまうのです。そこで、容積率という基準を設けることで、建物空間のスケールをある程度制限し、その地域に住める人口をコントロールしているというわけです。

なお、この容積率も建蔽率と同様、用途地域ごとに細かく指定されています。

容積率(用途地域別)

【容積率 50・60・80・100・150・200%】
※容積率の%のうち、都市計画で定める割合

用途地域
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域

【容積率 100・150・200・300・400・500%】
※容積率の%のうち、都市計画で定める割合

用途地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域

容積率は市町村ごとの都市計画で定められていますが、そのまま適応されるわけではありません。実は、建物の前面道路の幅によって、左右されるので注意が必要です。

もし前面道路が12m未満の場合、まず次の計算式から容積率を求めます。

前面道路の幅×0.4(※)×100%=容積率

(※)住居系用途地域の場合の法定乗数。非住居系では、0.6となる。

つまり、前面道路が4mだとすると、4×0.4×100=160%となります。都市計画で容積率が200%と認められていたとしても、前面道路をもとにした計算式で出した容積率と比較して、小さいほうをその土地の容積率とすることが定められているのです。ちなみに、角地のように複数の道路に面している土地では、幅が広いほうを基準に計算します。

敷地 指定容積率200%

「自家発電設備」といった用途を目的とするスペースは、一定の割合を限度として容積率に加算しないといった特例もあります。

建蔽率と容積率の違いは? 率によって建つ家はどう変わる?

では、建蔽率と容積率によって建つ家はどのように異なるのか、イラストで比較してみましょう。

容積率、建蔽率

このように、同じ敷地面積でも、建てられる家が大きく異なることが分かります。もちろん、その土地にどのような制限があるのかを踏まえて、設計するのは建築士をはじめとするプロの仕事です。しかし、どういう家を建てたいのか、自分たちのライフスタイルを踏まえながらイメージを決め、それにあった土地を探すうえでは、こうした制限の存在を把握しておくことが、理想の家づくりの一歩ではないでしょうか。

特に注文住宅を検討している人は、ぜひ用語を覚えてみてくださいね。

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取材・文/やじろべえ 末吉 陽子
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