今住んでいる家や実家、祖父母などが住む家の建て替えを検討しているものの、まず何から始めればよいのかわからないという方はいませんか?そこで今回は、建て替えの手順、かかる期間の目安、どのような費用がかかるかについて、旭化成ホームズの担当者に伺いました。
建て替えと聞くと、今住んでいる家を解体して、新しい家を建てることをイメージする方は多いでしょう。しかし、建て替えとは『既に建築されている建物を解体・撤去し、新たに住宅を建築すること』という意味なので、古家付きの土地を購入し、解体後に新しい家を建てることも『建て替え』といえます。
「建築用の土地の販売が少ないエリアでは、古家付きの土地を購入し、解体後に新築するケースは多くみられます。古家付きの土地は近隣の更地相場より安く販売されていることがありますが、別途解体工事費が発生することを考慮しておく必要があります」(旭化成ホームズ 上代武人さん)
今住んでいる家を建て替える場合も、古家付き土地を購入して新築する場合も、仮住まいが発生するかどうか以外は基本的に建て替えを行う手順は同じになります。ここでは建て替えの手順と行うことを具体的にご紹介しましょう。
手順1:建築会社を探す
インターネットや情報誌などを参考にして、家の建て替えを依頼する建築会社を探します。気になる建築会社があれば、モデルハウスを見学したり、実際にその会社が建てた家を見せてもらいましょう。
手順2:プランや資金計画の相談をする
候補の建築会社を2~3社程度に絞り、営業担当者にプランや資金計画の相談をします。
「プランへの要望は、今の住まいの不満点や気に入っているところなどをヒアリングしながら、一緒に相談しつつまとめていきますので、事前にいろいろと準備いただかなくても大丈夫です」(上代さん)
手順3:敷地調査を依頼する
建築会社に、土地の周辺状況や法規制などを調べる敷地調査を実施してもらいます。測量や地盤調査を実施する場合、有料(一般的には数万円程度)で実施していますが、地盤強度に合わせた基礎で見積もりをもらえる、採光や通風などを考慮したプランの提案を受けられるなどのメリットがあります。
手順4:見積もりの提案を受ける
敷地調査の結果を反映したプランと工事費の見積もり提案を受けます。複数社で迷っている場合、見積もりの提案内容の他に、営業担当者との相性、完成後のメンテナンス・保証体制なども比較しましょう。
手順5:請負契約を結ぶ
建築会社を1社に決めて、工事の請負契約を結びます。契約書類一式は事前にもらって目を通しておき、不明点を解消したうえで契約しましょう。
手順6:仕様などの詳細を決める
契約を結んだ後、仕様などの詳細を決めます。
「工事費用が大きく変動する家の広さや階高、間取りに関することは、請負契約前におおよそ決定しておき、このタイミングでは壁紙やフローリングの色などの仕様や、照明やコンセントの位置など大きく費用が変動しない項目の詳細を決めます。新居で使う家具や家電を間取図に描き込みながら決めると、スイッチやコンセントの位置・数の失敗を防ぎやすくなります」(上代さん)
手順7:建築確認申請書を提出し、ローンの本審査を申し込む
役所に建築確認申請書を提出します。ローン借入は、請負契約前に仮審査を金融機関に申し込み、借入できることを確認しておき、建築確認申請に合格後、それらの書類を含めた本審査を行います。書類準備や提出方法に不明点があれば、建築会社にサポートをお願いするとよいでしょう。
手順8:変更契約を結ぶ
建築確認申請に合格し、ローン借入審査も無事に合格した後、手順7で決めた仕様とプラン詳細を反映した変更契約を結びます。決めた内容が記入されているかしっかりと確認しておきましょう。
手順9:仮住まいに引越しする
今の住まいを建て替える場合、解体工事の前に引越しを行います。
「大手ハウスメーカーでは、提携先の不動産会社の協力を受けて仮住まい先をご紹介しています。プラン詳細決めと引越し準備を同時に進める忙しいタイミングですし、エリアや時期によっては仮住まいOKの物件が少ないため、上手に依頼してスムーズに進めたいですね」(上代さん)
手順10:解体工事後、新築工事がスタート
解体工事後、「建物滅失登記」を法務局に申請し、新しい家の工事に着工します。地鎮祭や上棟式を行いたい場合、工事日程の調整が必要になることがあるので、なるべく早いタイミングで営業担当者に相談しましょう。
手順11:工事完成、引き渡し
建築工事中は、必要に応じて現場調査に立ち会います。工事が完成したら、建築会社と一緒に必ず竣工検査を行い、問題がない場合は家の鍵を受け取り、引き渡しとなります。
手順12:登記手続き等を行う
建物の完成後には「建物表題登記」と、住宅ローンの借り入れに必要になる「抵当権設定登記」を行います。これらの登記手続きが完了後、住宅ローンが実行されます。
建て替えに必要な手順をご紹介しましたが、これらの手順は大きく3つのステップに分けられます。
「ステップ1は手順1から5(建築会社と契約する)まで、ステップ2は手順6から9(建てる家の詳細を決める)まで、ステップ3が手順10から12(着工から完成)までになります。
期間の目安ですが、ステップ1はケースバイケースで、約1カ月という人もいれば、1年かけてやっと建築会社と契約を結んだという人もいます。ステップ2は約3~4カ月、ステップ3は約4~6カ月を目安にしてください」(上代さん)
家の建て替えにかかる費用を、支払先と支払い方法別に、2つに分けてご紹介しましょう。
【1】工事費用
建築会社に支払う費用で、本体工事、解体工事、別途工事などが含まれます。
本体工事費は家本体を建てるために必要な費用で、坪単価を計算するときの基になるものです。解体工事は建て替えならではの費用で、古家の解体工事にかかる費用です。別途工事は、給排水や電気の屋外接続工事や、ガスの屋内外配管工事、建築現場の安全対策費、エアコン設置費などになります。
また、建築会社によっては、プラン作成に際し、測量費用、地盤調査・地盤改良工事費用、設計費用が発生するケースもあります。
【2】諸費用
諸費用として、主に以下が必要になります。
・登記費用
建物滅失登記(既存住宅の解体時に申請)、建物表題登記(新築住宅の完成時に申請)、所有権保存登記(不動産の所有権を確定)の際に必要になる登録免許税と、司法書士などに支払う報酬
・各種税金
先に述べた登記にかかる登録免許税のほか、工事請負契約書に貼る印紙税、不動産取得税。建て替えの翌年以降は固定資産税と都市計画税が必要になる
・住宅ローン関連費用
事務手数料や保証料、抵当権設定費用、ローン契約書に貼る印紙税
・火災保険料
新築住宅に対して支払う保険料。住宅ローンを借り入れる際には必須となる
・地鎮祭、上棟式の費用
神主さんやお坊さんに支払う謝礼、地鎮祭で使うお供え物の費用、上棟式に行う棟上げ式に必要な飲食代など
・照明や家具などの費用
建築工事に含まれない照明の器具代と、新しく家具を購入する場合にかかる費用
・引越し・仮住まい費用
今の家を建て替える場合、仮住まいへの引越しと、そこから新築住宅への引越しとの2回分が必要。仮住まい費用は工事期間分の家賃が目安
気になる工事費用の目安は、坪単価と建坪(延床面積)が分かれば、ざっくりと計算することができます。例として、30坪の木造家屋を解体し、坪単価70万円で40坪の家を建てる場合の工事費用の目安を計算してみましょう。
「解体工事は、1坪あたり5万~8万円が相場なので、坪7万円とした場合は7万円×30坪=210万円です。本体工事は、坪単価70万円×40坪=2800万円になります。別途工事費は、本体工事費の2割程度が目安になるので2800万円×0.2=560万円です。
解体工事、本体工事、別途工事の3つを合計した3570万円が工事費用の目安になり、それに諸費用を加えると総支出となります。ただ、軟弱地盤の場合、地盤改良費や特殊基礎工事の費用が追加されます。また、建築地に工事車両が入れず、遠い場所から職人さんが資材を運搬する場合は人件費が追加されます。つまり、建築地の状況によりさまざまなケースがあるので、あくまでも『目安』と考えてください」(上代さん)
建て替えの資金計画を立てるときには、いつまでに、いくら払う必要があるのかを確認しておきましょう。
「工事費用は契約時に1割、着工時に2割、工事中に4割、引き渡し時3割など、分割して支払うケースが多いです。これは、工程ごとに預かった資金を元に、部材などの手配を行ってきた建設業の仕組みからきています。しかし、ローン実行(自分の銀行口座に入金されること)は、家が完成して登記を行った後になります。そのため、工事費をすべてローンで払う場合、契約時にローン実行ができる『つなぎ融資』を利用することになります。
ただ、つなぎ融資は住宅ローンと比べると金利が高いため、工事費用のうち、自己資金で支払う分はつなぎ融資で借り入れないケースが一般的です。また、自己資金は、諸費用の支払いに充てるために手元に残しておいた方がよい場合もあります。
支払う時に慌てないためにも、契約時に、工事費と諸費用の支払いタイミングと金額を確認したうえで、何を自己資金で支払い、何をつなぎ融資で支払うのか計画を立てておきましょう。自分たちで計画を立てることに不安がある人は、建築会社の営業担当者に相談してみましょう」(上代さん)
建て替えは、基本的に新築住宅と同じ住宅ローンを使えます。ただ、取り扱う金融機関によって借り入れの要件が異なる場合もあるので、気になる方は借入先の担当者に確認してみましょう。
建て替えのために住宅ローンを借りる場合、解体する家の住宅ローンを完済していることが前提になります。というのは、銀行は建物を担保にお金を貸しているので、建物を取り壊すなら完済する必要があるのです。
「建て替えに限りませんが、自動車ローンやカードローンを利用している人は、住宅ローンの借入額が予想より抑えられてしまうことがあります。
『自動車ローンの借り入れは100万円程度と少額だし、返済期間が短いので大丈夫だろう』と思いがちですが、返済期間が短いと毎月返済額が多くなり、年収に占める返済額の割合(返済負担率)が高くなってしまうため、借入額が抑えられてしまうのです。
これらのローンを一括返済できそうであれば、住宅ローン借入の前に完済しておくことをおすすめします」(上代さん)
古い家が火災保険に加入している場合、解体のタイミングで保険会社や代理店に連絡をして、火災保険を解約することになります。古家解体後に新居が完成したら、その建物で新たに火災保険を契約します。
「多くの金融機関は、住宅ローン契約に際して火災保険の加入を求めます。金融機関やお知り合いの代理店から勧められた火災保険に加入しても構いませんし、住宅メーカーの営業担当者にご相談頂ければ、提携している火災保険をご案内しています」(上代さん)
今住んでいる家を建て替えるか、リフォームして住み続けるか……。どちらにするか迷っている方に、建て替えをオススメするのはどのようなケースでしょうか。
「広さや間取りなどの”家の器“が、住み手の家族構成に合わない場合、思い切って建て替えた方がよいかもしれません。ひと昔前は、増築や減築をして器を合わせることもありましたが、現在は住宅の耐震基準が厳しくなり、増築/減築の建築許可を得るのは難しくなっています。仮に建築許可がおりたとしても、耐震リフォーム費用は高額になりがちなので、建て替えた方が割安になるかもしれません」(上代さん)
耐震性に不安を感じる、断熱性が足りなくて冬の寒さに耐えられない、など、住宅性能の不満を解消するならリフォームで十分だと考えている方がいるかもしれません。
「現在の日本における住宅解体時の平均築年数は築30年程度といわれています。このため、古い住宅の耐久性は築30年程度を目安と考えるのもひとつの手です。
せっかく耐震性や断熱性を向上するリフォームをしても、設備や内装材などの故障や劣化、シロアリなどの害虫被害、地盤状況の変化による家の傾きやヒビなどが生じる可能性があります。
とはいえ、100年を経過しても立派に存続し続けている家屋もあります。築30年程度を目安としつつも、建築した当時の工法や使用部材などで耐久年数は変わりますので、よく確認することをオススメします。そのうえで建て替えを決めたものの、思い入れがあり取り壊すのが惜しいと感じるなら、柱や梁、建具などの部材を新居で再利用する方法がありますので、建築会社に相談してみましょう」(上代さん)
建て替えとリフォームの違いの一つが、仮住まいが必要になるかどうかです。
「現在お住まいの家を建て替えるなら仮住まいが必要になります。一方、リフォームは構造体を残してすべてリフォームするなど、大掛かりな改装工事ではないケースでは、住みながらリフォームをすることも検討できます」(旭化成ホームズ 藤巻玲衣さん)
建て替えにかかる費用は、家を建てるために必要な費用とほぼ同じですが、古家を取り壊すための解体費用が生じるのと、登記に関する費用が若干異なります。
「建設資材のリサイクルが義務付けられて以降、解体工事に手間がかかるために費用が高くなっています。解体工事はリフォームでも必要になりますが、大規模な改築でないケースでは壊す部分が少ないので、建て替えよりは費用が抑えられます。
また、家を解体した後には『建物滅失登記』の手続きを行い、建て替え後には『建物表題登記』が必要になります。リフォームで登記費用が発生するケースは少ないので、建て替えの方が登記関連費用は高くなるといえるでしょう」(藤巻さん)
リフォームの特徴は、愛着のある家を壊さずに、気になる箇所のみ工事をして住み続けられる点です。かかる費用はリフォームの内容によって大きく変わりますが、建て替えと比較すると抑えられるケースが多いです。
「家族で過ごした思い出が詰まっている、定期的にメンテナンスを行ってきたなど、家に愛着のある方はリフォームを希望されることが多いように感じます。今の家の構造体に問題が無ければ、劣化が気になったり、使い勝手が悪いと感じたりしている箇所のみリフォームし、住み続けるという選択も良いでしょう。
ただ、リフォーム費用が2000万円程度になるなら、もう少し金額を出して建て替えた方が良いかもしれません。この先何年住むのかを考え、住み続ける間に発生するリフォーム費用と、建て替えの費用とを比較しながら検討してみてはいかがでしょうか」(藤巻さん)
建て替えのタイミングは、家の状況や住み手の事情を考慮し、住宅メーカーと相談しながら決めるケースが多いようです。
「これまで、ご夫婦が学校の先生で『8月の夏休み中に新居に引越したい』というご要望や、住宅ローン借入れの都合で結婚後に工事請負契約を結びたいというご要望を頂いたことがあります。弊社では、お客様のご要望に合わせて建て替えのタイミングを決めています。
ひとつだけ事前に確認しておいた方が良いのが、固定資産税の扱いについてです。基本的に1月1日の時点の状況で固定資産税が決まるため、解体後の更地状態だと軽減措置が受けられなくなり、土地の評価額が高くなってしまいます。ただし、建て替え中であれば考慮してもらえるケースもあるので、12~1月が工事期間に含まれるなら、お住まいの自治体に確認しておくことをおすすめします」(上代さん)
築年数による建物の劣化状態、家族の人数やライフスタイルの変化など、『建て替えかリフォームかを選ぶ決め手』はいくつかありますが、仮住まいや自治体からの補助金の有無で決める方もいるそうです。
「引越しが体力的・精神的に大変だと感じる高齢者の方は、住みながらできるリフォームを選択されるケースが多いですね。
また、耐震基準を満たさない古家を解体して建て替える場合、解体工事費の一部を補助している自治体があります。自治体によって要件は異なりますが、補助が受けられることを知り、建て替えを決心される方もいます」(藤巻さん)
再建築不可物件とは、今、建っている家を解体して更地にすると、新たに家を建てられない土地のことです。
「今の家は問題なく建てられたものの、接道や隣地境界線などの状況が変わったために再建築不可となったケースが多いようです。土地と接する道路の幅が狭かったり、隣家の屋根が自分の土地へ越境していたりする場合は、自治体の都市計画課で『建築計画概要書』や『建築許可書』を確認すると良いでしょう」(藤巻さん)
「再建築不可物件の場合、建て替えは難しくなりますが、リフォームは内容によっては可能です。立地が良く、建物の構造がしっかりしているなら、リフォームして住み続けるという選択肢もあると思います」(上代さん)
既存不適格建築物とは、建築基準法や都市計画法に適合していない建物のことです。
「建築後に建築基準法や都市計画法が変わり、既存不適格建築物になったケースが多いようです。例えば、道路拡張のためにセットバックが必要になった、その地域の建蔽率(建ぺい率)・容積率が変更になった、などでしょうか」(藤巻さん)
「既存不適格建築物は、建て替えやリフォームをするときに現状のルールに合わせる必要があるため、今と同じ場所に、同じ大きさの建物が建てられるとは限りません。新しく建てられた隣家がセットバックしていたり、家の大きさが変わっていたりする場合は、まずは自治体の都市計画課で現状の法規制を確認し、それから間取りを検討した方が良いでしょう」(上代さん)
ちなみに、言葉の雰囲気が似ている『違法建築物』は、建てた時から法に違反している建物のことです。建てた後に法が変わり適合しなくなった『既存不適格建築物』とは、意味合いが異なります。
リフォームか建て替えかを迷っている人は、家の器に家族構成が合うか、築年数を目安にしつつ建築当時の工法部材などを確認したうえで建て替えを選択した方が、先々の費用面や安全面において得策といえそうです。
家を建て替えることを決めたら、手順や費用の目安をあらかじめ把握しておくことが無用なトラブルを防ぎ、スムーズかつ満足できる新居を建てる秘訣といえるでしょう。
建て替えとは、既に建築されている建物を解体・撤去し、新たに住宅を建築すること。今、住んでいる家の建て替えだけでなく、古家付き土地を購入して新しい家を建てることも『建て替え』という
建て替えかリフォームにするかの決め手は、築年数による建物の劣化状態、家族の人数やライフスタイルの変化、仮住まいの有無、自治体からの解体工事費の補助金が受けられるかなど
建て替えにかかる費用は、大きく分けると建築工事費と諸費用。新築住宅と同様に、基本的には住宅ローンを利用することができる