注文住宅で土地購入をする場合には、税金や諸費用などさまざまなお金がかかる。土地購入時にかかるお金について把握しておかないと、思わぬ出費になってしまうことも。
そこで、土地購入の流れとタイミングごとにかかる諸費用や税金の種類と金額の目安、土地購入の際の注意点について解説。タイミングごとにかかるお金の種類と金額の目安について、不動産コンサルタントの田中歩さんに取材した。
土地の売買契約では、契約の証を残す目的で土地売買契約書を作成し、両当事者が記名押印するのが一般的。
売買取引に不動産会社が介在する場合、宅地建物取引業法では、不動産会社が、代金または借賃の額、その支払方法、引き渡しの時期など法律に定める主要な契約内容を記載した書面に、宅地建物取引士が記名押印した上で売買両当事者に交付しなければならないことになっており、この書面が土地売買契約書となっている。
下記、土地の売買契約書に記載されている項目になる。
主な事項 | 内容 |
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売買物件の表示 | 土地の住所や面積など |
売買代金や手付金の額、支払日 | 土地、手付金の価格や支払日について |
所有権の移転と引き渡し条件 | 所有権の移転と引き落とし期日。期日が遅れる場合は理由が明記されている |
土地の実測面積および土地代金の精算 | 登記簿面積と実際に測って違う場合、売買代金の精算についての取り決め |
契約不適合責任について | 土地が契約の内容に適合しないものである場合、契約解除などの条件や引き渡し後に発覚した場合の取り決め |
危険負担 | 地震や台風などで引き渡しができない場合の取り決め |
費用の負担 | 印紙税などの費用について |
税金の精算基準 | 固定資産税などの負担、清算に関するルール |
契約違反による解除 | 契約が解除される場合の説明と取り決め |
いきなり土地を探そうとしても、どのくらいの広さと予算のものにすればいいのかわからない。まずは実現したいライフスタイルを考え、どのくらいの居住空間が必要になるかをイメージすることが大切だ。家の専門家である建築会社に相談し、自分たちに必要な土地面積の目安を把握しよう。
ハウスメーカーや工務店などと間取りプランについて議論しながら、具体的な土地のサイズ感がイメージできたら、並行して土地探しも行う。
土地を見学する際は、建築会社の設計担当者も一緒に来てもらい、プラン上の制約についても確認してもらうようにしよう。気に入った土地があったら徒歩で周辺環境も確認しておくと安心だ。
気に入った土地を見つけたら、購入申込書を提出する。不動産仲介業者やハウスメーカーなどに依頼して、金融機関に対して住宅ローンの事前審査手続きを依頼する。
事前審査は3営業日~7営業日程度かかる。事前審査で問題なければ、購入意思を伝えるために売主、または仲介業者に買付証明書を提出する。
土地の取引を行う場合、契約内容がまとまったら不動産会社から「土地売買契約書」と「重要事項説明書」を交付してもらい説明を受け、契約書に署名、押印をして契約を取り交わす。この際、買主は手付金として売買代金の5~10%程度の金額を売主に支払う。これらの書類は契約日前にもらい、事前に確認しておくようにしよう。
また、契約手続きの際に、書類忘れや不備があると契約が結べないので、注意が必要だ。
ちなみに、ある程度プランが固まっていないと、土地と建物を合わせてローンの借り入れをすることができない場合も。資金に余裕がある場合は、土地はキャッシュ、建物はローンにすると、プラン検討に時間をかけられる。
不動産売買契約の締結後、住宅ローンの本審査を行う。審査期間は1~2週間ほど。
審査が通ったら、住宅ローンの借り入れをする金融機関と金銭消費貸借契約(金消契約)を締結し、契約後に融資が実行される。融資実行までの日数は金融機関によって異なるので確認しておこう。
銀行によっては、建物プランが固まっていれば、土地・建物に対して融資をしてくれる。
そうでない場合は、土地代だけつなぎ融資を受け、竣工したら住宅ローンを借りてつなぎ融資を返済する。
融資が実行された後に、買主は売主に残代金を支払う。売主はその支払いを確認したら土地を引き渡す。このとき土地の所有権が買主に移転する。
土地購入にあたり、それぞれのタイミングで必要になる諸費用は下記の通り。現金で支払うため、あらかじめ予算を確保しておこう。
売買代金の5~10%程度を手付金として支払う。1カ月後に残代金を支払う(手付金は代金の一部に組み込まれる)
・仲介手数料
不動産仲介会社に支払う手数料。土地売買代金の3%+6万円(消費税別)。一般的に、契約時50%、決済時50%で支払うことが多い
かかる費用 | 金額の目安 |
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手付金 | 売買代金の5~10%程度 |
仲介手数料 | 土地売買代金の3%+6万円(消費税別) |
ローン契約時にかかる事務手数料。金額は金融機関によって異なる。金利を低くし、事務手数料を取るケースもある
かかる費用 | 金額の目安 |
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融資事務手数料 | 借入金額の2.2%、定額5万5000円、固定額33000円+借入額の2.2%という例など、金額は金融機関によって異なる |
固定資産税評価額×15/1000
借入額×1/1000
土地所有権移転登記、抵当権設定は通常司法書士に依頼するが、その際司法書士に支払う報酬。10万~20万円程度が目安
かかる費用 | 金額の目安 |
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土地所有権移転登記費用(マイホーム用) | 固定資産税評価額×15/1000 |
抵当権設定費用(マイホーム用) | 借入額×1/1000 |
司法書士報酬 | 10万~20万円程度が目安 |
次に土地購入時にかかる税金の種類と金額を紹介しよう。こちらは、令和4年度の税制改正大綱の内容も含まれる。なお、税制改正大綱の内容は今後の国会審議を経て、2022年3月末までに正式に決定する予定だ。
印紙税は、日常の経済取引に伴って作成する契約書や金銭の受取書(領収書)など、特定の文書に課税される税金のこと。不動産売買契約書に貼付する印紙の額は個別に定められており、契約金額によって変わる。
記載された契約金額 | 税額 |
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10万円を超え、50万円以下のもの | 200円 |
50万円を超え、100万円以下のもの | 500円 |
100万円を超え、500万円以下のもの | 1000円 |
500万円を超え、1000万円以下のもの | 5000円 |
1000万円を超え、5000万円以下のもの | 1万円 |
5000万円を超え、1億円以下のもの | 3万円 |
1億円を超え、5億円以下のもの | 6万円 |
5億円を超え、10億円以下のもの | 16万円 |
10億円を超え、50億円以下のもの | 32万円 |
50億円を超えるもの | 48万円 |
不動産取得税とは、土地や家屋の購入、贈与、家屋の建築などで不動産を取得した際、取得した方に対して課税される税金のこと。
税率は原則4%だが、令和6年3月31日までは、土地および住宅家屋は3%となっている。
また、令和6年3月31日までに宅地等(宅地及び宅地評価された土地)を取得した場合、当該土地の課税標準額は価格の1/2となる。
さらに、住宅用の土地を取得し、一定の要件を満たす場合、土地の税額から一定額が軽減される。軽減の計算方法は次の通りとなる。
以下のいずれか多い額が不動産取得税の税額から控除される。
(1)4万5000 円
(2)土地 1m2 当たりの固定資産評価額×1/2×住宅の床面積の 2倍(200m2 が限度)×税率(3%)
・有償・無償の別、登記の有無にかかわらず課税対象
・納税先は都道府県で、不動産を取得した日から30日以内に、当該不動産の所在地を所管する税務所へ申告
※ただし、課税標準となるべき額が10万円未満の場合、不動産取得税は課税されない
固定資産税は、1月1日(賦課期日)時点の土地、家屋および償却資産(固定資産)の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額を、固定資産の所在する市町村が課税する税金のこと。
住宅用地には課税標準の特例措置が設けられており、税負担が軽減される。住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分に応じて算出。小規模住宅用地の場合、固定資産税は1/6という軽減ルールが適用される。
■小規模住宅用地(住宅1戸につき200m2までの部分):1/6に軽減
■一般住宅用地(小規模住宅用地以外):1/3に軽減
都市計画税とは、1月1日(賦課期日)時点における市街化区域内の土地・家屋の所有者に課せられる税金のこと。
都市計画事業や土地区画整理事業に必要な費用に充てるために設けられた目的税であり、市町村に対して納付する地方税のひとつで「市街化区域」内に土地・建物を所有している場合にのみ課される。
小規模住宅用地の場合、都市計画税は1/3という軽減ルールが適用される。
クレジットカードによる税金の納付が可能になっていることもあるため、自治体が対応しているかどうか確認してみよう。
■小規模住宅用地(住宅1戸につき200m2までの部分):1/3に軽減
■一般住宅用地(小規模住宅用地以外):2/3に軽減
土地購入にあたり、それぞれのタイミングで必要になる税金は下記の通り。
タイミング | かかる税金 |
---|---|
不動産売買契約 | 印紙税 |
ローン契約 | 印紙税 |
購入後 | 不動産取得税 |
固定資産税 | |
都市計画税 |
土地を購入する場合、契約解除の条件についても確認しておこう。
手付金は、買主の手付金の放棄、または売主が手付金の2倍の額を支払えば契約の解除が可能だ(解約手付)。
手付金の種類 | 内容 |
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違約手付 | 債務不履行が発生した場合に没収される |
解除手付(解約手付) | 取引を解除したい場合に支払う ・買主:手付金を放棄すれば可能 ・売主:手付金の2倍を支払えば可能 |
そのほかに、契約不適合責任、危険負担による解除、契約違反による解除、特約による解除などがある。それぞれ契約解除の内容が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが必要だ。
売買する物件に欠陥が見つかった場合、「契約内容に合致しない」と判断され、買主が売主に対して、物件の補修や代物請求、内容によっては契約解除ができる。
天災などによって修理費が必要となる場合は、売主は無条件で契約を解除することができる。その場合、買主に対して手付金や売買代金を返金する。具体的な内容は契約時に売主と買主の間で取り決める。
売主または買主のいずれか一方がこの契約に基づく義務の履行をしない場合は、その相手方は不履行した者に対して催告の上この契約を解除し、違約金を請求することが可能だ。違約金は両当事者で決めるが、売買代金の10~20%相当額が目安となる。
契約書に含まれない特別な事項で、ローン特約などでローンが通らなかった場合などに無条件で契約を解除できる。
土地を購入する際は、土地の境界線が明確になっているかの確認を。土地の区分が曖昧な状態だと、隣接地の所有者とのトラブルになるケースもあるので、土地の面積や形状を明らかにするために、測量を行ってもらおう。
建物付きの土地を購入する場合は、解体費用なども予算に含めて検討を。道路が狭く重機が入らない場合など工事の工数がかかるケースもある(費用が高くなる)ので、それも含めた金額を把握しておこう。
また、地盤が悪い場合、地盤改良など思わぬコストがかかる場合もある。地盤調査は通常請負工事契約締結後に行うことから事前に知ることは難しいため、相談するハウスメーカーなどに近隣で工事した事例など聞いておくと良い。
土地を購入すると、固定資産税と都市計画税がかかる。住宅が建っている場合、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3という軽減ルールが適用されるが、土地の状態ではこれが適用されないため注意が必要だ。
土地取得後、住宅を建てないままだと、固定資産税・都市計画税の軽減ルールが適用されないので、土地購入後速やかに住宅を建築しよう。
土地購入を検討する際には、教育費、老後資金、住宅費などを含めて将来設計の枠組みを考えて、理想と現実をしっかり把握して予算制約を考えよう。
思わぬお金がかかってしまったように感じてしまわないよう、あらかじめ最終的な全体費用を把握しておくことが重要だ。時系列で支払う金額の目安を把握し、あらかじめ現金を用意しておこう。
このように土地購入するには、さまざまなお金がかかる。家を建てる前提で土地を探す場合には、建築会社探しと土地探しを同時並行していくことになるが、自分で両者を采配するのが大変という場合は、不動産にも詳しいハウスメーカーや工務店に依頼するのがオススメだ。また、税金関係については税理士などの専門家に必ず確認しよう。
土地探しをしながら、建物のプランも具体化していけるので、土地購入の段階で建物を含めた総額がわかることから、融資も受けやすくなる。
建築会社が決まっている建築条件付きの土地を購入する場合は、建物のプランも限定的で自由度が少なくなるが、手続きなどが簡単になるメリットも。自分たちに合った土地購入方法を選ぼう。
土地の売買契約とは、土地購入の際に書面で契約を結ぶことで、売主と買主との間で契約書のやり取りをする
土地購入にあたりかかる費用には、手付金、仲介手数料、融資事務手数料、土地所有権移転登記費用、抵当権設定費用、司法書士報酬がある
土地購入にあたりかかる税金には、印紙税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税がある
※本記事は2022年1月14日時点の情報を元に執筆しています
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