落ち着いた趣と高級感がある和風の玄関。家を建てるときには、おしゃれな和風玄関にしたいと考えている方もいるのではないでしょうか? この記事では、注文住宅の玄関を、和風でおしゃれに仕上げるために扉や内装、インテリアなどにできる工夫を、川口建設の川口隆さんに伺い解説します。
和風玄関とは、日本家屋の特徴を持った玄関のことです。
「具体的には無垢(むく)材を使った引き戸、格子や欄間(らんま)、塗り壁などが用いられ、和の雰囲気のある玄関を指します。無垢材にはヒノキや杉など国産の木材を使うと、より和のテイストが強まります」(川口さん/以下同)
和風玄関は引き戸を使うため洋風玄関よりも広くなる傾向があり、見栄えするのが魅力です。
「一般的な玄関の間口は1300mmから広くても1800mm程度です。
しかし、和風玄関で引き違いの引き戸にするような場合、2700mmほど取ることも少なくありません。
宅配業者さんなど家を訪れる人は多くいても、玄関より先に進むような客人はあまりいないというご家庭が多いのではないでしょうか。そういった人たちにも、家そのものの風格を伝えられる。『素敵な家だな』とちょっとした驚きを持ってもらえるのも、和風玄関ならではだと思います」
まずは、おしゃれな和風玄関にするために「扉」にできる工夫を伺いました。
和風玄関は、引き戸にするのが一般的です。
「引き戸は開き戸と違い、開きっぱなしにしていても品があって絵になります。曇りガラスが入った格子戸を選ぶと、人の視線を遮りつつ光を取り入れ明るい玄関にすることが可能です。ガラスは複層ガラスを選ぶと、広々とした玄関が寒くなることもありません」
引き戸にするスペースを取れず、片開き戸にする場合でも、和風デザインに合うような格子が入ったタイプを選ぶと和モダンの玄関に違和感なく溶け込みます。
おしゃれな和風玄関にするには、壁や天井、床などの内装にどのような工夫をすればよいのでしょうか?
壁は柱を見せる真壁にし、漆喰や珪藻土などの塗り壁や砂壁にしたり、塗り壁風や和紙クロスを張ったりして仕上げるとおしゃれな和風玄関になります。
「壁の色は木材が映えるよう、薄く淡い色合いを選びましょう。塗り壁は手がかかりますが、最近はローラーで仕上げるタイプもあります。まずは相談してみるとよいでしょう」
天井は壁と同じく塗り壁や和風デザインのクロスで仕上げる以外に、透かし天井にするとおしゃれです。
「こちらの天井は備長炭で黒く仕上げた上に格子を張り、透かし天井にしました。真っ黒だと重々しくなり、白と黒のコントラストも強すぎますが、木材の格子で透かすことで柔らかな雰囲気になっています」
「透かし天井のほか、梁見せ天井にすることもあります。太く立派な梁を見せると、堂々とした風格ある和風玄関を演出できます」
「土間はタイルを使うこともありますが、より和の雰囲気を出したいときには、砂利風の樹脂やたたき土間で仕上げます」
たたき土間とは、土や砂利などと消石灰、天然にがりを混ぜ合わせてつくる土間のことです。たたき土間にすると、古きよき和風玄関の印象を与える仕上がりになります。
「最近は下駄箱を置かずにシューズクロークを設けるケースも増えました。そういったときも、入口は格子戸にすると、ぐっと和の雰囲気になります」
ほかには職人の手業が光る組子や欄間などを取り入れるのも、和風玄関のよいアクセントになります。
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「玄関にはアクセントとして飾り窓、特に丸窓を設けたいとのご要望も多いです。明かりを取るだけではなく、外の風景を楽しむことが目的で、四季を楽しむ日本の玄関らしい工夫だと思います」
「和風小物や生け花を飾ると想定し、ニッチや飾り棚を設けることもあります。間接照明を合わせると、スタイリッシュです」
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和風に設えたおしゃれな玄関には、どのようなインテリアが似合うのでしょうか。
「下駄箱は無垢材を使って造作するのがおすすめです。耳付きの木材(木の皮の部分が残った木材)を少し入れると、素朴な和の雰囲気を演出できます。下駄箱は和風玄関の高級感を損なわないよう、扉付きにするとよいでしょう」
のれんや和風のタペストリーも、和の趣を演出しやすいインテリアです。
「例えばシューズクロークに透かし建具を使わずに、おしゃれなのれんを下げてみるのもよいでしょう」
「あらかじめ設けたニッチや下駄箱の上に、生け花を飾ると上品な和風玄関になります」
木を多用する和風玄関は、自然素材の小物と相性がいいので、焼き物やチリメン細工などを飾るのもおしゃれです。
和風玄関に似合う照明の選び方を伺いました。
「天井に細工をしないのであれば、和風玄関にはダウンライトよりもペンダントライトが似合うと思います。電球の色は白っぽい昼光色よりも電球色のほうが、ふわっと温かみのある空間を演出できるのでおすすめです」
「上からの照明を控えめにするぶん、間接照明をご提案しています。例えば玄関の隅や下駄箱の下、上がり框(かまち)の下などに間接照明を仕込むとおしゃれです」
外構にも手を加えると、和風玄関のおしゃれ度が高まります。具体的にできる工夫を伺いました。
「和風家屋は軒を深くするのが特徴なので、玄関前の軒の出も長くしています。大屋根は600mmから700mmが多いですが、玄関前の軒は900mm程度でご提案することが多いです」
和風庭園を思わせる置き石や植栽を玄関前に配置すると、和風玄関が引き立ちます。
「植栽は四季の移り変わりを感じられる、紅葉する木を選ばれる方が多いです。
こちらの施主さまは、大きな置き石をご希望されたので、奈良県まで行って石を選び、運んできました。置き石や植栽は和の雰囲気を演出するのと同時に、玄関をさりげなく目隠しする効果もあります」
玄関前に広いスペースがない場合は、格子を設けると和の雰囲気を出しながら、柔らかく視線を遮ることができるようになります。
「こちらの家は玄関を出てすぐ前が道路だったので、玄関全体をカバーする格子を取り付けました。あわせて宅配ボックスも設けたので実用的で便利です」
和風玄関のある家を建てたいときに、注意すべき点はあるのでしょうか?
和風玄関の家にするのであれば、外観デザインも和風にするのが一般的です。
「だからといって、家の内観もすべて和風で整える方はあまりいません。弊社でご相談を受けるときにも、家族それぞれの個室は洋室を希望なさるケースがほとんどです。
そのような場合は、チグハグな印象にならないよう、フロアでデザインを切り分けるとよいと思います。例えば1階は和風や和モダンで整え、洋室は2階にまとめれば、統一感が損なわれることがありません」
どの建築会社でも、玄関を含め和風に仕上げることは可能です。ただ、本格的な和風建築は、昔から培われてきた技術やノウハウが必要です。本格的な和風住宅を建てたいのであれば、和風住宅の建築実績が豊富な会社さんに相談するとよいでしょう。
最後にあらためて川口さんに、和風玄関を検討している方に向けてのアドバイスをいただきました。
「一緒に年月を過ごすうちに無垢材や塗り壁が趣のある色合いになり、より風格が増すことが、和風玄関の魅力です。大工や左官職人の手業が光る和風玄関は、はやり廃りなく、長く愛される家の顔になれる存在だと思います。
引き戸を開けると、ふわっと漂う無垢材の良い香りとともに、威風堂々とお客様をお迎えできる。そんな和風玄関がある家づくりを、一緒に楽しんでくれる建築会社をぜひ探してみてください」
和風玄関とは無垢材を使った引き戸や格子、欄間など、日本家屋の特徴がある玄関のこと
おしゃれな和風玄関にするには、無垢材と合う塗り壁やたたき土間など自然素材を使うとよい
和風玄関ははやり廃りに影響されず、長く愛される家の顔となれる