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「三和土」と書いて「たたき」。読める人は少ないと思いますが、実はこの「三和土」、今の家でも言葉として使われることがあります。それは家のどこを指すのでしょう? どんな素材? 建築家の古屋茂子さんに教えてもらいました。
昔の日本家屋は、屋内ながらも土足で生活をする「土間」がありました。「土間」は玄関から炊事場へとつながる広い空間で、農作業のための道具や炊事、洗濯をする場所として便利に使われていました。
しかし、土のままではドアの開閉や人の出入りなどが原因で土埃が舞い上がり、清潔に生活ができません。そこで、その土間の表面を固めるために使われたのが、三和土です。三和土はその昔、家づくりの施工方法の一つだったのです。
三和土なら、炊事場で火を使って燃え広がることもありませんし、板間のように浸水して傷むこともありません。
三和土は「たたき」と読みますが、読み方にも漢字にも、由来があります。三和土は素材となる赤土などを叩いて固めたため、最初は「叩き土・敲き土(たたきつち)」と呼ばれていました。それが略され、現在の「たたき」になりました。
また、三和土の素材に使われていたのが、おもに赤土・砂利・消石灰など。その3種類の素材を混ぜてつくるため、「三和土」という漢字が使われたともいわれています。
前述のように三和土とは、赤土や砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って叩き固めた素材のこと。かつて日本の家屋にあった土間(文字どおり土の間のこと)の表面に、仕上げ材として使われていました。「もともと、外の土の延長として家の中にも土が続いていました。外の土→家の中の土間→上がり框(かまち)(内と外を分ける段差)→座敷、という順に人が家の中に入っていく流れです。そのなかで、同じ土でも家の中は外よりもキレイにしようと、三和土が仕上げ材として使われるようになったと思います」

土間がなくなった現在では、土間と上がり框のあった部分、つまり玄関の床を指して使われることがあります。「土間」というと現在では、土ではなくモルタルなどを使って「土間」をつくる家が増えていますが、本来は「床が土になっている間」を「土間」と呼びました。つまり現在の「土間」は、かつての土の間のように使う「空間」を示す言葉として、一方の「三和土」は土間の仕上げ材から転じて、現在では「玄関の床の仕上げ材」を指すことがある、というわけです。
現在の三和土=玄関の床の仕上げ材としては、大きく分けて下記の4種類があります。
1. コンクリートやモルタル:コンクリートやモルタルで床を固める仕上げ。現代版の土間に多い
2. Pタイル:塩化ビニル樹脂等でつくられた床材。マンション等に多い
3. タイル:粘土を板状にして焼いてつくった床材
4. 天然石:大理石や御影石など天然の石を敷きつめる
素材自体の価格を比較すると、一般的にコストが抑えられるのが「コンクリートやモルタル」。価格は、 Pタイル< タイル< 天然石、という順に高くなります。
しかし、「コンクリートやモルタル」の仕上げは、左官工事の仕上げによって料金が変わりますから、一概に安いとはいえません。Pタイルと同等か、それよりも高くなる場合もあります」
なお、靴につくなどして外からの泥や汚れを、玄関の床に落とすわけですから、いずれの素材もモップなど、水を使って洗えることが必須になります。

家づくりにおいて、玄関はお客様が初めて目にする家の中。そのため、ある程度見栄えを気にされる人も多いでしょう。「見栄えで選ぶなら、タイルや天然石で施工するのが一般的です。タイルには種類や色・大きさがたくさんありますし、天然石も、大理石や御影石など種類や色が豊富です」。その際、床単体だけでなく、玄関という空間のコーディネートを考えるように色や柄、材質を選ぶといいでしょう。
では、どんな三和土=玄関の床の仕上げ材があるのか、実例で見てみましょう。
写真は300mm角のPタイルを使用した例。廊下の濃い色のフローリングに合わせ、同じ茶系ですが、色の濃淡を付けることで、仕切り感が生まれます。

滑りにくい加工がされている300mm角の磁器質タイルを使用した例です。収納棚を少し上げて、照明を組み込み、床の奥を照らすことで、床を広く感じさせています。

こちらも上と同じ300mm角の中判タイルですが、テラコッタタイルを使っています。このタイルにも表面に滑りにくい加工がされています。ドアの取っ手や窓なども、南欧風のテイストにコーディネートされています。ちなみに床のタイルには大きく分けて屋外用と室内用があり、玄関は主に屋外用を使用します。屋外用はたいてい滑りにくい加工がされています。

100mm角の磁器質タイルを用いた玄関の例。小判なので目地が多く滑りにくいというメリットがあります。また目地が目立つので汚れが目立ちにくいという効果も。

モルタル仕上げの土間が人気ですが、タイルを使っても同じような雰囲気に仕上げることができます。写真は300mm角のタイルを使った例です。

タイルにはさまざまな色やカタチがありますが、写真のように小さな六角形を敷きつめた(ハニカム構造)タイルもあります。よく見ると、釉薬(ゆうやく)のムラによって六角形の端と中央とで微妙に色が異なるなど、単色にはない見た目が楽しめます。

白い大理石を使った場合の玄関の施工例です。表面を何も加工していないと滑りやすくなる半面、光を反射してこのように高級感を演出しやすくなります。高級をうたうマンションや、大きな邸宅などで用いられることが多い素材です。

雨の多い日本では、靴裏が濡れたまま玄関に入ることが多いため、玄関の床は滑りにくい素材のほうが安心です。「タイルなら、サイズの小さいタイルほど目地が増えますから、目地が滑り止めになり、滑りにくくなります。具体的には300mm角のタイルなら靴のサイズより少し大きい程度ですから、これより小さなタイルなら、滑りにくくなります。またタイルには、浴室でも使えるような表面が滑りにくい加工がされたタイプもありますから、そういったものを選ぶと安心です。天然石でも表面が磨かれている石だと滑りやすく、ざらついた表面の石なら滑りにくくなります」

ただし、外からすぐに玄関に入る一戸建てと異なり、内廊下型のマンションなら、エントランスから部屋へいく間に靴裏が乾きやすくなります。その場合は一戸建てほど滑りにくさを考慮する必要はありません。
もう一つ、床材を選ぶ際に注意しておきたいのが、掃除のしやすさです。モップによる水拭きはどれもさほど変わりませんが、例えば枯葉が舞い込んだり、靴についた泥が落ちていたりすると、そうした汚れが気になったときに掃き掃除もしたくなりますよね。その際、タイルの目地は汚れやホコリがたまりやすいので、目地が細かいほど大変といえば大変です。とはいえ、先ほどの滑りにくさとの兼ね合いがありますので、小さなタイルで目地が増える場合は「目地の掃除はしっかりとやろう」という心構えで良いかと思います。
かつての土間のように床を広く取って玄関兼収納として使う場合、ゴルフバッグやベビーカーなどを奥に置くと思いますが「荷物を置く場所だけ、他より少し高くしておくといいでしょう。そうするとホコリが段差の手前で止まるので、いちいちゴルフバックやベビーカーを持ち上げる必要がなくなり、掃除が簡単になります」
また下記のように玄関の床に飛び石と白い小石を敷きつめた場合、和テイストのおしゃれな空間を演出できますが、小石の隙間に泥やホコリがたまりやすくなります。掃除機を使うと小石も吸い込みがちですし、ほうきではなかなか思うようにうまく取れないため、汚れが気になったら小石を全て集めて水洗いして、敷きつめ直しましょう。

とはいえ、枯山水のような玄関の雰囲気はとてもおしゃれです。かつては「三和土」しかなかった玄関の床の仕上げ材ですが、今はたくさんの素材があり、アイデア次第でオンリーワンの玄関をつくることができます。掃除の手間を惜しまず、どんどんチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
現代の「三和土」は、玄関の床の仕上げ材を指して使われることが多い
現代の玄関の床の仕上げ材は、主にコンクリートやモルタル、Pタイル、タイル、天然石の4種類
床材はそれぞれ特徴があるので、違いを理解した上でどれがいいか選ぼう