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賃貸物件に住むと一般的に、契約更新時に「更新料」の支払いが求められます。更新料が高額で、負担に感じる方も多いでしょう。
更新料とはどのような理由で支払うのでしょうか。金額の相場感をはじめ、更新料を支払わない場合のリスクについても気になるところです。
この記事では、賃貸更新料の相場や、万が一支払いを怠った場合にどうなるのか、値下げや更新料の分割払いができるのかなどの疑問点について詳しく解説します。
さらに、更新料に関連する他の費用にも触れ、賃貸契約を更新する際に知っておくべき知識や対策も紹介。安心して契約更新に臨むために、事前に準備しておくことが大切です。ぜひ参考にしてください。
賃貸更新料はなぜ支払う必要があるのか、実は地域差があることをご存じでしょうか。詳しく解説します。
更新料がない地域や物件があるのなら、必ずしも更新料を支払う必要はないように思えますが、そもそも更新料というのはどういう目的を持つものなのでしょうか。
「個別の事情にもよりますが、2011(平成23)年の最高裁では『更新料は、一般に、家賃の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価などの趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である』とされています」(木村さん)。
つまり、大家目線で更新料を考えると「月々の家賃を低く抑える代わりにいただくもの」「継続して住居を提供することに対していただく謝礼的なもの」という意味合いがあるようです。これは、大澤さん、高部さんの認識とも合致します。
「部屋を借りる際に、毎月の家賃を低く抑えたいという要望は多いでしょう。更新料は、本来毎月支払う家賃を低く抑えるためにできたものと、業界内では解釈されています。入居した部屋が気に入らず、一定の期間に満たずに退去するなら更新料はかかりません。毎月家賃として支払うよりは、その方が入居者側にもメリットがあるといえます。逆に、更新料無料をアピールしながら、入居者サービスの会費などとして毎月費用がかかるケースもあるので、注意が必要です」(大澤さん)。
「入居者さんは、家賃・敷金・礼金・更新料といった費用をそれぞれ単体で捉えられる傾向がありますが、大家さんは全てを包括的に考えて物件を管理しています。家賃を抑えて他の費用にその分を上乗せする方針の大家さんもいれば、家賃以外の費用はゼロにしてその分を家賃に反映する考えの人もいます。各費用の振り分けは市場の需給バランスを見て、それぞれをどのような金額設定にすれば入居者さんに魅力的に感じてもらえるかを考えた結果に過ぎません」(高部さん)。
結局は「更新料」という名目で1、2年に1回の割合で支払うのか、毎月の家賃や別項目として支払うのかの違いのようです。
関東圏で賃貸物件に暮らしていると、2年ごとに更新料を支払うことが一般的です。まず大前提として、更新料が日本全国どこでも共通なのかが気になるでしょう。
「実は、更新料には地域性があります。大阪や名古屋では更新料がないケースの方が多いのですが、京都では更新料があることの方が多く、関東よりも高額な場合もあります。関東では家賃の1カ月分が一般的ですが、賃貸需要の高いエリアにある人気物件は家賃の2カ月分、もしくはそれ以上という場合も珍しくありません」(大澤さん)。
「当社の調査でも、首都圏と京都府で平均0.5カ月分以上の更新料を取得しており、千葉の一部の地域では1カ月を超えるような更新料が設定されているようなところもありました。逆に、北海道や福岡などの九州地方では更新料を設定していない物件もあります。設定している場合でも事務手数料程度の金額設定のようです」(高部さん)。
●更新料:0.35カ月、更新料ゼロ物件を除く更新料:0.91カ月、更新料ゼロ割合:61.5%(全国平均)


更新料は契約更新の際に支払うことが多く、通常、契約期間が満了する前に手続きを完了しなくてはなりません。もし更新を希望しない場合は、このタイミングで退去を決定し、予告通知を行いましょう。
また、更新料を支払うことで、引き続き住み続ける権利が確保されます。支払いを怠ると違約金が発生する可能性もあるため、事前に資金を準備し、通知が来たら速やかに対応することが大切です。
特に、支払期日を過ぎてしまうと契約が自動的に更新され、トラブルの原因となることもあるので、早めの対応を心がけましょう。
では、請求された更新料が高い、または支払うこと自体に納得がいかない場合、更新料の支払いを拒否することはできるのでしょうか。
この点については、入居時の契約書にきちんと更新料の記載があるかどうかが最初の判断ポイントになるとのこと。契約書に記載がなければ、基本的には拒否できると考えてよさそうです。
では、契約書にはっきりと更新料について記載されている場合はどうでしょうか。木村さんによると、2011(平成23)年の最高裁判例が一つの基準になるといいます。
「最高裁判例では、更新料の支払特約自体は有効であると判断しています。契約時に合意したのであれば、請求額が過大でない限り、支払った方がよいでしょう」(木村さん)。
「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと解するのが相当である」
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。
更新料の請求額が高過ぎなければ、拒否せずに支払った方がよいという意見ですが、いくらなら「高過ぎない」と判断されるのかが気になります。実は、これにも判例があります。
「2011(平成23)年の最高裁判例では、1年更新で2カ月分の更新料を適法と判断しました。大阪高裁は、1年で3.12カ月分を適法と判断しています(大阪高判、2012(平成24)年7月27日)。つまり更新料の額が、1年更新で家賃の3カ月以下ならば、高過ぎないといえるでしょう。ただ、その辺りが限界事例となるのではないかと思います」(木村さん)。
そうすると、入居者側が更新料や他の費用が高過ぎるという理由で値下げ交渉することも難しいのでしょうか?
「基本的に契約書に記載されていれば、値下げは厳しいでしょうね。大家さんの心理として減額請求を拒んで解約されたとしても、同等以上の条件で新しい入居者を確保できれば問題ありませんから」(大澤さん)。
「新しい入居者を見つけることが難しいエリアだったり、大家さんが管理会社を頼らず入居者さんと直接契約されているような場合には交渉の余地があるかもしれませんが、現在の市況では、更新時や入居者の入替時に家賃が値上がりする状況も見られるため、交渉は難しいと考えます」(高部さん)。
ここ数年は関東圏を中心に、全国的な家賃水準の高騰が続いています。更新料の支払いを拒否したり、値下げを交渉したりするのはかなりハードルが高そうです。
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賃貸契約書に更新料の支払いが明記されているにもかかわらず、支払い義務を怠ると、後で未払い分が一括で請求され、遅延金が加算されるかもしれません。更新料の支払いは契約の一部であるため、支払わないことで契約解除やトラブルに発展する可能性も懸念されます。
契約書の内容をよく確認し、更新料の支払いが困難な場合には早めに管理会社や大家に相談しておくことが重要です。適切に対応し、トラブルの回避に努めてください。
賃貸物件の更新の際に支払う費用は、更新料のみではありません。地域ごとに違いはありますが、その他にも支払わなければならない費用があるため、更新料と合わせて請求されます。
その他にどのような費用を支払う必要があるのかを、一般的な相場とともに紹介します。
これらはその物件によって大きく異なるので、最初の契約のタイミングで不動産会社もしくは大家さんに確認することをおすすめします。
賃貸物件に住む場合、火災保険への加入はほぼ必須で、更新時にも再契約することになります。火災保険は火災だけでなく、水漏れやその他の物件内でのトラブルに対する補償も含むケースが多いです。
保険料は通常1万~2万円程度ですが、物件や保険会社によって異なります。保険に加入しなければ更新手続きが進まないこともあるため、契約内容を事前に確認し、支払いの準備を整えておきましょう。
賃貸の火災保険料について詳しく
賃貸の火災保険とは?入らないとどうなる?保険料や補償額の相場はいくらが妥当?
賃貸契約時に保証会社を利用している場合、更新時にも保証料が発生するのが一般的です。保証料は通常1万~2万円程度ですが、物件や保証会社によって異なります。
また、保証会社を使っていない場合でも、管理会社に対する更新手数料が発生する場合があります。
これらの費用は契約更新時に一括で請求されることが多いため、事前に確認し、予算に組み込んでおくと安心です。無理のない支払い準備を進めてください。
契約更新時に、管理会社への更新手数料が必要になる場合は、更新手続きを進める際にかかる事務手数料として請求されます。
ただし、物件によってはこの手数料が発生しないケースもあります。事前に契約書で確認しておくのがいいでしょう。
更新料と同時に請求されることが多いため、計画的に支払いの準備をし、スムーズに更新手続きを進めてください。
もし、更新料を支払わなかったらどうなるのでしょうか。実際には更新料以前に家賃の滞納などがあって、更新料も支払われないというケースが多いようですが、ここでは更新料にフォーカスするため、毎月の家賃や管理費についてはきちんと支払った上で、更新料だけを支払わなかったと仮定して聞きました。
「原則として、賃貸人(大家)から賃貸契約を解約するには『正当な事由』が必要です(借地借家法26条・28条)。解約できない場合は、期間が満了しても更新される法定更新になります。法定更新になった場合、賃貸人が更新料を請求できるかどうかは裁判例が分かれていますが、『法定更新の際にも更新料を支払う』と契約書に記載されていたといえるかが重要です。もし記載されている場合にこれを拒絶すると、解約の『正当な事由』があるとして、契約解除になる可能性もあります」(木村さん)。
更新料の支払いがなかったり、遅れたりした場合も単純に契約解除・即刻退去というわけではなさそうですが、場合によっては契約解除に至ることもある上、「退去時に過去にさかのぼって、支払われていない更新料の合計に金利も加算されて請求される可能性がある」(大澤さん)といいます。
どうしても更新料が支払えない場合、待ってもらったり、分割での支払いをお願いしたりするようなことも難しいでしょうか?
「基本的に難しいと考えます。管理会社としては、大家さんと事前に取り決めた上で契約しているため、その契約にのっとってきちんとお支払いいただくよう、お願いしています」(高部さん)。
居住用として住宅を借りている場合、更新料は非課税となり、消費税はかかりません。更新料の他、家賃や敷金・礼金、契約締結時の保証金も返還しないものは非課税になります。万が一、更新料に消費税が加算されている場合は必ず確認しましょう。
ただし、これはあくまで「住むために借りた」というのが明確である場合に限られます。店舗や事務所などの事業用物件、また駐車場として契約されている場合は課税対象となるので、注意しましょう。
更新料に関するトラブルを防ぐために、以下のポイントに気をつけてください。
万が一、更新料の支払期日に遅れそうな場合や、期日までに金額を工面できない場合は、なるべく早い段階で管理会社や大家に連絡しましょう。今まで遅延なく家賃を支払い、管理会社や大家からの信頼がある場合は、理由によって期日を延長してもらえる可能性があります。
契約時に渡される賃貸借契約書には、更新料についても記載があります。一般的に2年更新の物件が多いので、更新日の2、3カ月前には管理会社や大家から「更新料支払いの通知」が届きますが、それより前に賃貸借契約書で金額などを確認しておきましょう。
契約日から2年後を更新日として携帯のカレンダーに登録し、さらにその半年前の日付を賃貸借契約書の確認日として登録しておくと、忘れずに確認できます。
支払いのタイミングまでに計画的に更新料を準備できるため、支払期日に間に合わないなどのトラブルを防げるでしょう。
一般的に「更新料支払いの通知」には、退去する場合の予告期限が記載されています。更新せずに退去する場合は、必ずその退去予告期限までに管理会社や大家に連絡しましょう。
予告期限を過ぎてしまうと、更新する意志があるとみなされ、更新料などを請求される可能性があります。期限を過ぎて連絡したとしても、期日を守らなかったことで違約金が発生する可能性もあるので、注意してください。
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更新料の支払いについては「最初の契約次第」のようです。つまり、更新料を払いたくない人は「最初から更新料がない物件を探す」方法を取るのがベストでしょう。
それでは、更新料なしの物件はどのように探せばいいのでしょうか。
「先の話の通り、首都圏中心部や京都以外の空室の多いエリアであれば、更新料なしの物件も一定数存在します。また、定期借家契約やマンスリー契約などの短期契約物件では更新料がかかりません」(大澤さん)。
「他に、UR都市機構の物件や住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)物件も、更新料の設定がありません。もともと住宅難の時代に、良質な住宅を国民に提供するといった国の政策に沿って設けられた機構であるからです。それ以外の物件については繰り返しになりますが、大家さんの意向次第ですので、契約を結ぶ前に確認しましょう」(高部さん)。
更新料や敷金・礼金などの一時金が不要な物件がうまく見つかれば、今の物件に住み続けるよりも、引っ越す方がお得になる場合があるかもしれません。
専門家に話を聞いて、更新料については「最初が肝心」だと分かりました。賃貸契約を結ぶときには、家賃や敷金・礼金の方が気になるものですが、更新料についても額や支払い条件を吟味して気になる点があればきちんと説明を求めるのがいいでしょう。
また、どうしても更新料を支払いたくない人は、始めから更新料設定のない物件を探すというのも一つの方法です。エリアや物件は限定されますが、後々に気持ちよく住み続けられる部屋を探してください。