賃貸の火災保険とは? 入らないとどうなる?保険料や補償額の相場はいくらが妥当?

最終更新日 2023年05月29日
賃貸の火災保険とは? 入らないとどうなる?保険料や補償額の相場はいくらが妥当?

賃貸契約の際に必ず加入を求められる火災保険。当たり前のように加入の申し込みをしている人も多いはず。しかし、賃貸の火災保険の内容について理解できているだろうか?賃貸の火災保険とはどのようなものなのか、本当に必要なものか、保険料や補償額の相場は適正なのか。言われるがままに契約してしまうと思わぬ出費になることも。

自分の部屋から火を出してしまったら、賠償責任はある?

賃貸物件には、大学進学、新社会人、人事異動で転勤など、新たに物件を契約する人が多くなるシーズン。これまで賃貸物件の契約を何度も経験している人もいると思うが、賃貸契約の退去時・更新時の条件はともかく、契約時に加入を求められる火災保険について、内容を把握している人はあまりいないだろう。

一般的に多くの人が不安になるのは、自分が借りている部屋で火を出してしまって、部屋や建物に被害を与えてしまったら、損害賠償をしなければならないのでは?ということだろう。

実は、これには民法の「失火責任法」が関係する。失火責任法では、失火者に「重大な過失(※)」がなければ、損害賠償責任を負わせないことになっている。つまり、自分が賃借人の立場で、火災の火元だったとしても、重大な過失がなければ、大家さんに対して建物の建て替え費用を負担するなどの責任は負わなくてよいというもの。

違う立場から見ると、隣家、隣室から出た火災によって、自分の部屋に被害があり、部屋、建物が焼失しても、その失火者に家財一式を弁償させるなどはできない。
このため、大家さんは自分の所有物である賃貸物件には火災・家財保険をかけて、万一の場合に備えている。

※重大な過失とは:
1.台所のガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけて加熱中、その場を離れて出火させた場合。
2.たばこの吸殻が完全に消えたことを確認せず、その吸殻を紙類が入ったビニール製ごみ袋に入れて放置したまま外出し、出火した場合。
など。(出典:日本損害保険協会)

賃借人が加入する火災保険は、原状回復のためと自分の家財と隣家のため

先に説明したとおり、火災を起こしても重大な過失がなければ損害賠償責任は負わないが、賃借人には、賃貸借契約によって、退去時に「原状回復する義務」が課せられている。これによって、万一火災によって建物が焼失したり損害を与えた場合は、原状回復する義務があり、それができない場合は損害賠償責任が発生してしまうのだ。

また、隣室や隣家からのもらい火で自分の家財が被害に遭っても、その失火者に損害賠償請求することができないので、自分の身(財産)は自分で守るしかないのだ。

そこで火災保険が登場する。一般に火災保険と呼ばれているが、賃借人が加入するのは「家財保険」と「借家人賠償責任保険」の2つとなっている。商品名がまちまちなので補償内容が分かりにくい一面もあるが、大きくは、この2つの契約内容をチェックすれば大丈夫だ。

火災保険には「家財保険」と「借家人賠償責任保険」の2つに加えて、日常のトラブルに対応する「個人賠償責任保険」がある。これは自動車保険などほかの保険で加入していれば賃貸物件で加入する必要はない。

賃貸住宅向け火災保険の内訳
【図1】賃貸住宅向け火災保険の内訳。(※)この内訳は一般的なものであるが、火災保険の種類によっては、この内訳どおりでないケースも存在する

「家財保険」は、文字通り、自身の所有する家電、家具などの損害を補償するもので、これが賃貸の場合の火災保険の基本となる。

補償される損害原因は、火災、落雷、爆発、水害、水漏れなどが主な対象で、家財や現預金の盗難も対象となるのが一般的。このほかに、被害に遭った場合に、使えなくなった家財を片付ける費用が実費で支払われるなど、補償内容は多岐にわたっている。この保険は「自分の財産のために入るもの」と考えればいいだろう。

「借家人賠償責任保険(特約)」は、逆に、大家さんのために入ると考えればいい。火災や爆発、漏水などによって借りている部屋に損害を与えてしまったときに、原状回復するための費用を補償するというもの。一般的には家財保険の特約という形で契約することになる。補償対象は、あくまでも自身が借りている部屋に損害を与えた場合に限られるので、例えば自分が火事を起こして、隣の建物に損害を与えた場合は、この保険(特約)では補償されない。

火災で隣家に損害を与えてしまう場合などに備える保険は、「個人賠償責任保険(特約)」。この保険は、日常生活のトラブル(身近な事故)を補償してくれるもの。ケガをさせてしまった相手への治療費や慰謝料、破損物の修理費や物を壊してしまったときに発生する損害賠償などが対象となる。

この補償内容は多岐にわたっており、例えば水漏れで階下の部屋に損害を与えた場合や飼い犬が他人に飛びついてケガをさせてしまった場合にも補償金の支払い対象となる。

自動車保険や損害保険の特約として加入することが多いので、すでに加入している保険があればチェックして、補償が重複しないように気を付けたい。

火災(家財)保険料はいくらが適切? どう加入すればいい?

では、火災保険には加入すべきなのか? また、強制なのか? といえばYESだ。これまで説明したとおり、火災保険に入らないで万一火災などの大きな事故を自分が起こしてしまった場合、建物自体は大家さんの火災保険でカバーできるとしても、自分の家財や修復費用、隣家への補償などは、大家さんの火災保険には頼れないのだ。賃貸契約の際に火災保険に加入するのは必要なことだ。

しかし、不動産会社から提示されるプランについては、よく検討してほしい。本来、所有している家財などは、人それぞれで補償金額も異なるはずだが、大抵の場合は、すべてがセットされた特定のプランしか提示されないことが多い。

一人暮らしでそれほど家財もないのに、家財補償が本当に500万円必要なのかは考えるべきだ。家電や家具などをもう一度買い直すとして、500万円もの費用が必要かどうか考えればよい。よほど高価な美術品やジュエリーなどを所有していない限り(これらを所有している場合は、契約時に申告が必要)、家財は200万円、300万円で十分だろう。

また、逆に借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険が1000万円程度というケースも少なくない。しかし、万が一のときは、死亡事故に発展する可能性も考えると補償額は1億円といったプランが安心といえるかもしれない。

もうひとつ、忘れてならないのは、保険契約の更新だ。不動産会社指定の火災保険であれば、部屋の更新時に火災保険の更新も求められるので、心配はない。しかし、ネットで自分で探して火災保険を契約した場合、更新のお知らせなどを見逃し、未保険状態にならないようにしたい。火災保険の契約時に、自動更新を選ぶこともできるので、検討してみてもいいだろう。

火災保険料を抑えるポイント

賃貸契約を締結する際には、紹介された保険会社のプランをそのまま契約してしまうことが多いのではないか。賃貸契約で保険会社や契約内容が指定されている場合を除けば、自分で必要な補償を選んで契約したほうが保険料を安く抑えることができる。次のポイントを参考に、保険の契約内容をチェックしてみよう。

家財の補償が多すぎる場合には金額を検討する

保険会社が提示する火災保険の家財の補償は、家族構成や世帯主の年齢などに応じて、「家族が2名・世帯主の年齢が40歳で1,130万円」などのように、保険会社が目安を示している。契約ではこの目安をもとに保険金額が設定されるが、提示されたほど多くの補償を必要としていない場合には、補償金額を抑えて契約することで、その分の保険料を抑えることができる。

特約の種類と内容をチェックして不要な特約は外す

賃貸契約の際に加入する火災保険は、自分の持ち物の損害を補償する「家財保険」と、大家さんに対する賠償責任を補償する「借家人賠償責任保険」、偶発的な日常の生活トラブルで生じた賠償責任を補償する特約「個人賠償責任保険」がセットになっていることが多い。

個人賠償責任保険は、自動車保険や医療保険など他の保険でも特約として加入できるため、すでに紹介しているように、重複して加入することがないようにしたい。また、そのほかにも「弁護士費用を補償する特約」など、さまざまな特約がセットされている場合には、補償内容や必要性を考慮して、不要な特約は外すといいだろう。

シンプルなプランも検討する

賃貸住宅用の火災保険(家財)に加入する場合でも、「給排水管の破損による家具の損害は対象外」「空き巣による家財の盗難被害は対象外」などのように、契約内容によってさまざまなプランがある。保険料は契約がシンプルなほど安くなる傾向があるため、必要な補償に絞り込んだプランを選べば、その分の保険料を抑えることができる。

保険期間や支払方法を工夫する

火災保険の保険料は、契約期間が長いほど安くなる傾向がある。そのため、保険料を抑えるためには、「1年更新ではなく、賃貸契約の期間に合わせて2年契約にする」など、長期契約にするといい。また、保険料の総額は、月払いより年払い、年払いより一括払いのほうが安くなるため、支払い方法も考えるといいだろう。

1年間で4000円を下回る保険も。まずは提示されたプランの補償額を把握しよう

実際の契約場面では、引越しに伴う手続きで時間も限られていて、なかなか保険の内容までチェックすることはできないかもしれない。2年契約で1万円、2万円なら、いいやという気持ちになるのが実情だろう。しかし、割安な保険がたくさんあるのも事実。もしも時間がなければ、ほかのプランを参考にして、不動産会社に別のプランを要望することがあってもいいだろう。いくつか補償プランを例示したので、チェックしてみてほしい。

●検索条件

20代一人暮らし。東京都。賃貸マンション(鉄筋コンクリート造)の場合。
延床面積条件がある場合は25m2とした。

賃貸物件(賃借人)の火災保険の一例
【図2】賃貸物件(賃借人)の火災保険の一例(出典:各社WEBサイトの見積もり例より)※あくまでも一例で、必ずしも加入をオススメするものではない

保険料は家財補償をいくらに設定するかが基本で、さまざまな特約がある。特約をつけるかつけないかでも保険料が変わる。不動産会社や管理会社経由でも加入できるが、ネットなどで簡単にシミュレーションし自分で加入することもできる。保険料がプランや加入方法で異なるため、提示されたプランと比較しながら決めるといいだろう。

不動産会社の多くは損害保険会社の代理店になっているため、特定の損害保険しか提示できないが、自分で探して保険契約をするわずらわしさからは、解放されるだろう。要は、うまく使うということだ。

地震保険の加入は、火災保険とのセットでのみ

いつどこで起きても不思議ではない地震。持ち家購入の場合は、地震保険への加入が進んでいる。では、賃貸物件の場合は加入すべきだろうか。

賃貸物件の建物自体は、貸主が地震保険への加入を決める。賃借人が加入するのであれば、家財保険同様、自身の家財のために加入する、ということになる。ただし、地震保険は単独で加入することができず、火災保険(家財保険)とセットで加入するしかない。その際、補償額は家財保険の補償額の最大50%まで。さらに地震による被害、倒壊の状態によって、補償額も変わってくる。

地震によって引き起こされた火災の被害については、家財保険では補償されない。そのため地震保険への加入を考える必要があるものの、持ち家でなく、賃貸で、加入すべきかどうかは検討の必要があるだろう。前述のとおり、建物自体は賃借人が気にすることはなく、自分の家財の破損、流出などによるリスクを地震保険で賄いたいのか、保険料負担との兼ね合いで検討すべきだろう。

火災や地震などの被害に遭ったとき、当面の生活を立て直すためには、火災保険、地震保険は頼りになるものだ。しかし、賃貸物件もさまざまな観点で物件選びをするように、保険についても、補償内容をきちんと理解し、比較検討することが大事。万一に備えるための保険は安心につながると同時に、困ったときに本当に使えるものでなければ意味がない。

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取材・文/伊藤加奈子
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