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特に初めて契約する場合や引っ越しが久しぶりの方にとっては、どこに注意して進めればいいのか迷ってしまうのではないでしょうか。
そこでこの記事では、ハウスメイトマネジメントの伊部尚子さんにお話を伺いながら、賃貸借契約の基本や種類、契約までの流れ、準備しておくべきものを丁寧に解説します。
●お話を伺った方
ハウスメイトマネジメント 伊部尚子さん
住まいを借りる際に、借主(入居希望者)が入居前に貸主(物件の所有者)や管理会社と結ぶ「賃貸借契約」。
実は法律的な意味や契約内容の理解度によって、入居後のトラブル防止にも大きく関わります。まずは基本的な意味と法律上の定義を押さえましょう。
賃貸借契約とは、貸主(オーナー)と借主(入居者)が、一定期間・条件のもとで建物や部屋を貸し借りすることを約束する契約のことです。契約内容には、賃料や契約期間、更新条件、禁止事項などが記載され、双方が署名・捺印して成立します。
この契約があることで、借主は安心して物件を使用でき、貸主は家賃収入を得られます。ただし契約内容を理解しないまま署名すると、後から「知らなかった」というトラブルが発生することもあるため、事前に内容を把握しておくことが重要です。
賃貸借契約は民法(第601条)で定義されています。賃貸借契約とは「貸す側が相手に物を使わせ、その代わりに相手が賃料(お金)を支払うこと、そして契約が終わったらその物を返すことを約束する契約」と定められています。
つまり、借主は家や部屋を使える代わりに家賃を支払う義務があり、契約期間が終わったら元の状態で返す必要がある、ということです。
さらに、不動産特有の法律である借地借家法が加わり、貸主と借主それぞれの権利や義務がより具体的に定められています。
賃貸人(貸主)の権利と義務
賃借人(借主)の権利と義務
賃貸借契約にはいくつかの種類がありますが、居住用物件で多く利用されるのは「普通建物賃貸借契約」と「定期建物賃貸借契約」です。それぞれの特徴や違いについて詳しく見ていきましょう。
普通建物賃貸借契約は、契約期間満了後も借主が希望すれば基本的に更新できる契約で、長く住みたい場合に向いています。
一方、定期建物賃貸借契約は、契約期間が満了するとそれ以降更新はできません。つまり、貸主側が期限を区切って貸したい場合や、短期間だけ住む予定の借主に向いています。
| 契約形態 | メリット |
|---|---|
| 普通建物賃貸借契約 |
|
| 定期建物賃貸借契約(定期借家契約) |
|
| 契約形態 | 注意点 |
|---|---|
| 普通建物賃貸借契約 |
|
| 定期建物賃貸借契約(定期借家契約) |
|
賃貸借契約は、物件探しから入居までのステップを踏んで進みます。まず、希望物件が決まったら申込書に記入し、入居審査を受けます。審査を通過したら、いよいよ契約です。ここでは契約時の流れや必要なものを整理しておきましょう。
賃貸借契約は、ただ契約書にサインすれば完了というわけではありません。契約成立までには、「重要事項説明書」の確認や署名など、いくつかの手順を踏む必要があります。
不動産会社が、『重要事項説明書』の内容を説明する
↓
借主が、『重要事項説明書』に署名・捺印をする
(まだ契約は成立していない!)
↓
不動産会社が、『賃貸借契約書』を提示する
↓
借主が、『賃貸借契約書』に署名・捺印する
↓
契約が成立!

以上が、賃貸借契約成立までのおおまかな流れです。
重要事項説明は、宅地建物取引業者が貸主と借主の間で契約の重要な点を説明し、双方の認識を明確にするための手続きです。特に不動産取引に慣れていない借主が、契約後に不利益を受けることを防ぐ役割があります。
契約条件や物件に関する重要な情報が含まれるため、必ず理解してから署名しましょう。不明点があれば、その場で遠慮なく質問し、後のトラブルを防ぐことが大切です。
賃貸借契約をスムーズに進めるためには、必要な書類や費用を事前にそろえておくことが大切です。ここでは、入居申込時と契約時に準備すべきものを整理します。
入居申込時には、主に以下の3種類の書類を準備します。
物件名や希望入居日、勤務先や年収、緊急連絡先(連帯保証人を結ぶ場合は保証人の情報)の情報などを記入する書類です。不動産会社が用意したフォーマットに沿って、正確に記入します。
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど、公的に本人確認ができる書類です。コピーを提出する場合でも、原本の提示を求められることがあります。
会社員の場合は、勤務先や職種、収入がわかる「源泉徴収票」を提出します。就職や転職をしたばかりの場合には「雇用契約書」が必要です。自営業やフリーランスの場合は、直近の年の「確定申告書」または「納税証明書」が求められます。これらは家賃の支払い能力を証明する重要な書類です。
その他にも「実印」や「認印」などの印鑑を求められることが一般的です。
実印とは、市区町村役場に印鑑登録されている印鑑のことで、登録していないものは認印と呼ばれます。入居申込では多くの場合、認印で対応できますが、不動産会社や貸主によっては実印が必要になる場合、印鑑証明書も提出しますので、事前に確認しておくと安心です。
また、必要書類が不足すると手続きが遅れるため、余裕を持って準備しましょう。
賃貸借契約の締結時には、次のような書類を準備します。
契約者の現住所や世帯構成を証明する書類です。
運転免許証やマイナンバーカードなど、公的な本人確認書類です。
実印が市区町村役場に登録されていることを証明する書類です。
家賃の口座振替登録が必要です。
保証人の住民票や印鑑証明書、収入証明書などが必要になる場合があります。
併せて、敷金・礼金、前家賃(入居月とその翌月の家賃)、仲介手数料、火災保険料などの初期費用も契約時に支払います。書類や費用の不足があると契約が進まないため、事前確認をしておくことが重要です。
賃貸借契約書とは、簡単に言うと賃貸物件を借りるための契約書のこと。一方、重要事項説明書とは、不動産会社が「借りようとしている物件は、こんな状態ですが、本当に借りますか?」と借主に説明する、重要事項説明の内容をまとめた書類です。重要事項説明書の内容が契約書に反映されていることを確認し、借主が納得した上で、本題の賃貸借契約書の取り交わしとなります。
ここで気を付けたいのは、実際の契約で効力をもつのは「賃貸借契約書」である点。賃貸借契約が成立した後に、もし重要事項説明と契約書の内容の齟齬に気付いても、基本的には契約書の内容が優先されます。
契約後のトラブルを避けるには、重要事項説明を受けた後、検討の時間を十分に取って、疑問点を解消してから契約に臨むのが有効です。しかし実際には、重要事項説明と契約が同日に行われることが多く、その場で的確な判断をくだすのは難しいでしょう。
可能であれば、重要事項説明の書類をもらえないかお願いしてみても良いかもしれません。なお、重要事項説明は宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示して行われなければなりません。資格証の提示がない場合には、念のため確認しましょう。
賃貸借契約書でチェックすべきポイントを、国土交通省が提供する「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」より抜粋して説明します。
賃貸借契約書の冒頭には、物件名称や所在地(住所)、建物の構造(木造、RCなど)、間取り、部屋番号など、借りようとしている物件の情報が記載されています。物件の工事完了年も記載されているので、ここで築年数も確認できます。借りようとしている物件と違う物件を契約しようとしていないか、念のため確認しましょう。

附属品とは、部屋と一緒に借りることになる備え付けの設備のこと。故意に壊した場合などを除き、大家さんが修理代を負担します。設備欄で「有」にチェックがついている設備が附属品です。
一方、注意が必要なのが、残置物。これは前の入居者が残したものを、使えそうだから、そのまま置いているということです。使用は任意ですが、故障しても補償はありません。不要であれば大家さん(管理会社)に相談して、入居前に撤去することもできます。

契約期間とともに、敷金、礼金、家賃、家賃の支払い方法などをチェックしましょう。なお、契約期間については契約内容によりますが、2年契約だからといって必ず2年間住まなければいけないということではありません。

入居後にトラブルが起こった際などの連絡先が記載されています。いざというときのため、いつでも確認できるように控えておきましょう。なお、トラブルの際の連絡先と、解約など契約に関する相談は連絡先が異なる場合もあるため、どんなときにどこに連絡をするのかを確認しておくことが大切です。

(5)~(7)に該当する賃貸借契約書の後半には、借主と貸主の約束事が箇条書きで記載されています。字が細かく表現も分かりづらいですが、入居後のトラブルの原因になりやすい解約条項と禁止事項、違約金についてはしっかり確認しましょう。
特に“解約通告期間”は見落としがちです。時折、「解約通告は2カ月前という契約条項を見落とし、1カ月前と思い込んでいたため、引越しの際、その1カ月前に通告。その結果、想定より1カ月分多く家賃を支払うことになってしまった」というケースも見られます。
電球の取り換えは勝手にしてもよいのか? エアコンの故障時は誰に連絡するのか? など、どういうときに誰が修繕費を負担するのかを明確にしておきましょう。
これは非常に重要で、解約時に借主が負担すべきものがどう規定されているかを確認しておかないと、大きなトラブルを招きかねません。また、原状回復にかかる実費の額にかかわらず、敷金から一定額を差し引かれる場合もあります。
国土交通省の「原状回復ガイドライン」に則るなら、ルームクリーニングや通常損耗(時間の経過によって自然と劣化したもの。壁紙の日焼けによる黄ばみなど)の修繕は基本的に借主に負担義務はありません。しかし、実際には特約によってガイドラインと異なる契約内容となっていることも多く、トラブルが多発しています。そのため、契約前にガイドラインと照らし合わせ、契約書にガイドラインの規定と異なる特約があるかどうか、ある場合は解約時にどういう負担が発生するのかを確認しておくことをおすすめします。
賃貸契約では、契約書の細かい部分を見落としがちです。更新時の費用や支払い条件、通知義務、保証人のルール、特約事項などを事前にチェックし、トラブルを未然に防ぎましょう。
更新料のほかに、更新事務手数料がかかる場合もあります。思わぬ出費に戸惑わずに済むように、費用負担については契約前に細かく確認しておきましょう。
うっかり期日を間違えると、家賃滞納になるため、家賃は毎月何日までに支払うことになっているのかの確認は必須です。万一滞納してしまったときの遅延損害金はいくらかも併せてチェックしましょう。また支払方法が限定されている可能性もあります。振込か、自動引き落としか、カード決済かなども確認しましょう。
家族構成や勤務先、連絡先などの変更時には“通知義務”があります。これを怠る人が意外と多く、緊急時に連絡がつかなくて大きなトラブルになることもあります。しっかり覚えておきましょう。
連帯保証人は最初の更新までの期間で終了すると勘違いしている人が時々います。しかし賃貸借契約が解約されるまでは、基本的に連帯保証人はやめられません。連帯保証人をお願いする際・引き受ける際にはよく考える必要があります。
解約時の修繕負担、ペット飼育に関する規定、楽器演奏に関する規定はよく見られます。特にペットについては、一般的な犬・猫に限らず、熱帯魚や昆虫なども含まれることがあるので注意が必要です。禁止事項と、金銭的負担の規定はしっかり確認しておきましょう。

賃貸借契約とは、貸主と借主がお互いに約束を交わす大切な取り決めのこと
賃貸借契約の契約時には各種書類や初期費用の準備が必要
更新料や支払い条件、通知義務、連帯保証人の規定など、契約内容をチェックし、トラブル回避に備えよう
・賃貸契約に必要な初期費用(敷金礼金など)の相場はどのくらい? 安くする方法は?引越し費用は?
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