暇だから引越してみた(実践編)

SUUMOの編集長から引越しのアドバイスをもらって、すぐに物件探しを始めた。アパートの退去日まで2週間を切っていたからだ。

 

初めての物件探し

「家賃6万5000円以下」「築年数指定なし」「鉄筋コンクリ―ト」「2階以上」「即入居可」という希望の条件を入力して検索をかける。すでに営業時間外で電話をかけることはできなかったので、検索で上がった物件に片っ端から問い合わせを入れてその日は眠りについた。

 

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翌朝目覚めると山のようにメールが届いていた。前日の夜に問い合わせを入れた各不動産会社からだった。「内見はいつにしますか?」と、みな必死に私という名の顧客をつかもうとしている。『内見するにしてもどこから手をつけていいものかな……』と考えあぐねている間にそのうちの一軒から電話がきて、午後にはもう内見することになった。

 

実家から大学のそばへ引越したときは内見に父がついてきてくれたからよかったのだが、今度は完全にひとりだ。不動産屋さんの人間は若い女性に対して足元を見るような態度を取るとウワサに聞いていたので内心、戦々恐々だった。

 

Google マップを頼りに店まで行ってみると、まあまあイケメンのスタッフが出てきた。そこまではよかったのだが……

 

暇「できればモニター付きの物件がいいんです……」

 

 

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「そんなに人来ます?」と不動産屋。

これは「遊びにくる友達なんてそんなにいないでしょ?」と暗に言っているに違いない。

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確かに私の家にはネット通販で注文した商品を届けに来る宅配業者しか訪れる者はいないが……。

 

だが、『早く物件を決めなければ』と超焦っていた私は意地になって「家賃5000円下げてくれたら今すぐその物件、契約してやんよ」と口走っていた。するとまさかのOKが出て、結局ひとつしか内見せずに私の物件探しは終わった。

 

寝るスペースが無い 

物件が決まったら、あとは荷物をまとめて引越しだ。荷物が少なくて車を持ってる友人がいるなら自分たちだけで引越せるかもしれないが、友達はいないし、エレベーター無しの4階に住んでいた私は、プロに任せることにした。

 

思いつく限りの引越し会社に片っ端から電話をかけて、一番対応が誠実なA社にすることにした。費用は5万5000円かかるが、サービスとして、要らない家具を無料で処分してくれるという。

 

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↑引越し会社から送られてきた段ボール50枚

 

部屋の中に散らばっていた物たちを徹夜で段ボールに詰める。今までどんなに一生懸命探しても見つからなかった電子辞書やアクセサリーが次々と発掘されていく。

 

しかし、引越し会社がやって来る時間が近づくにつれて、どんどん怖くなってきた。私の部屋を見て彼らはどう思うだろう。

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↑段ボールに詰めきれなかったゴミが散らばる、わが家の様子

 

べろんとはがれた壁紙が廃墟のようだし、床にはなぜかピーナッツがたくさん転がっている。ベランダには雨でドロドロに溶け、緑に変色した掛布団が敷かれている。身内にこのありさまを見られるならまだしも、全然知らない男の人が3人も来るなんて困る。『穴があったら入りたい』と段ボールの中に隠れようか迷っているうちにインターホンが鳴った。

 

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勢いよく扉が開かれて、3名の若い男性が顔をのぞかせた。その瞬間、部屋の中に風が起こり、その辺に散らばっていたレシートやホコリなどのゴミが一斉に彼ら目掛けて飛んでいった。彼らは「サッ」と身をかわし、何も無かったかのようにズカズカと部屋に入ってくる。徹夜作業でボロボロの自分を見られるのが恥ずかしく、私は顔を伏せたまま「お疲れ様です」とあいさつした。

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「テキパキ」という言葉がこれほどまでにしっくりくる状況を生まれて初めて目の当たりにした。冷蔵庫やテレビなどの家具をアッと言う間に梱包して運び出し、本がぎっしり詰まっている重~い段ボールを一気に2つも3つも重ねて持っていく。いわゆる「ガテン系」は最も苦手とするタイプだが、彼らの仕事っぷりには目を見張るものがあった。私が部屋の隅で震えている間に部屋はどんどん空っぽになっていく。ベランダの腐った布団もひょいと持ち上げて「これは捨てちゃいましょうね」とニッコリされた。きっと引越し会社さんにとって汚部屋なんか日常茶飯事なのだろう。

 

彼らのトラックが到着する少し前に新居の鍵を不動産屋さんから受け取って部屋で待機した。薄々気づいていたことだが、この部屋、前の部屋より狭い。大量の荷物が全部入りきれるか不安でしょうがない。

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↑家財道具と段ボールを全部入れたら身動きが取れなくなってしまった新しいわが家

 

荷物は全部入ったが、寝るスペースが見当たらない。住居というよりは、ただの物置に近い。しばらくのあいだ体操座りで頭を抱えたが、「これもネタになるかもしれないな」と前向きに考えることにした。

 

そこにただ存在することを「許してくれる」街

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不動産屋さんの「アクセスは最高だよ」という言葉は本当だった。

以前住んでいたところは完全なる住宅街で、周りは老人と子どもばかり、お店も少し歩かなければ見つからなかった。しかし今は一歩外に出れば飲み屋だし、もう少し行けば服も漫画もゲームも何でもある。

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↑激安婦人服店「らこっと」は流行りのデザインが600円前後で買える。ナウなヤングからミセスまで大人気

 

自転車を一生懸命こぐ必要もない。数分歩けばすべて事足りる世界にいるのだ。

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中野ブロードウェイの2、3、4階はマニアックなお店がたくさん。マイケルジャクソンのグッズを売っているお店も発見!

 

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↑このお店の目玉でもある「エイリアン」の実寸大(?)フィギュア

 

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↑自然食糧品店にいた、ココナッツオイルを試食させてくれるおじさん(常時着物) 

 

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↑青汁スタンドの「フルーツミックス」は飲みやすくてうまい。店員さんも親切

 

東京23区内にあるけれど都会の殺伐とした空気はまるでない。街全体が私を許してくれているような気がする。

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「えっ本当に?!」

 

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初めての引越しは、戸惑うことばかりだった。

しかしこの街を好きになれそうな予感は、確かにある。

  

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著者:暇な女子大生 (id:aku_soshiki)

暇な女子大生

「暇な女子大生が馬鹿なことをやってみるブログ」を書いている女子大生もといフリーライター。いま一番行ってみたいのは熱海秘宝館です。

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編集:はてな編集部