目隠しフェンスの費用相場。5m・10m・20mでいくら? 素材やデザインの選び方、施工事例も紹介

フェンスの中でも、外部からの視線を遮るために備えるフェンスは「目隠しフェンス」と呼ばれることがあります。リフォーム工事で備える場合、費用はいくら必要なのでしょうか。目隠しフェンスの素材やデザインにはどんなものがあるのでしょう。庭や門扉など外構の工事とあわせて工事をすれば費用を抑えやすいのでしょうか。フェンス等の建材メーカーである三協立山株式会社 三協アルミ社の野村さんと谷内さん、そして一級建築士の佐川旭(佐川旭建築研究所)さんに教えてもらいました。あわせて施工事例も紹介します。

目隠しフェンスの費用相場

記事の目次

目隠しフェンスとは

フェンスには、隣家との境界を明確にしたり、建物のエクステリア全体のデザイン性を向上させる役割もありますが、中でも「住宅内のプライバシーを守る」ために目隠しとして設置を検討する人が多いのではないでしょうか。

目隠しフェンスの明確な定義はありませんが、この記事では「外部からの目隠しの役割を目的に設置するフェンス」を「目隠しフェンス」として、解説していきます。

目隠しフェンスの費用相場

目隠しフェンスを設置する費用は、フェンスの素材やデザイン等によって異なります。下記で詳しく見てみましょう。

【5m・10m・20m】フェンスの費用相場

目隠しフェンスを設置する場合、フェンス単体で目隠しをする場合と、ブロックを数段設置して、そこにフェンスを備える場合があります。
また、設置するフェンスの長さによっても費用は異なります。

素材別、長さ別の費用の目安の詳細は後述しますが、目隠しフェンスを敷設する費用の、ざっくりとした目安としては下記の通りです。

●フェンスの長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約16万円〜60万円
10m 約25万円〜90万円
20m 約38万円〜135万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.2mのフェンスを立てて、高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

このように価格帯に大きな幅があるのは、素材によって費用が異なるためです。素材別の費用相場は下記でさらに詳しく解説します。

目隠しフェンスを設置するメリットとデメリットとは?

目隠しフェンスの設置を検討する前に、まずは設置のメリットとデメリットを抑えておきましょう。

目隠しフェンスのメリット

「目隠しフェンスを設置するメリットであり目的は、なんといってもフェンスの内側のプライバシーを守れることです。外からの視線を遮ってくれるので、家の中や、庭やデッキなどでプライバシーを確保しながらくつろぐことができます」(三協アルミ・野村さん)。

ウッドデッキの目隠しフェンス

目隠しフェンスを設置することで、外からの視線を気にせず、家の中や庭、ウッドデッキなどで気ままに過ごすことができます(画像提供/三協アルミ「アルミ形材フェンス」)

「目隠し、といってもまったく見えないタイプや、フェンスの桟に若干すき間のあるタイプ、半透明のポリカーボネートで覆うタイプなど種類が豊富にあり、それによってメリットも異なります」(三協アルミ・谷内さん)。

例えば、若干すき間のあるタイプなら、近づいてすき間から中を見ようとしない限りはフェンスの内側をうかがい知ることはできません。それでいて、完全にふさぐタイプよりも風通しがよくなります。

「弊社では各フェンスに目隠しとなる割合を『目隠し率』として表記しています。人気のあるのは目隠しフェンス・ルーバータイプ(目隠し率100%)ですが、ここ数年はわずかにすき間のある、横板格子タイプ(目隠し率88.2%)のフェンスの販売数が伸びています」(三協アルミ・谷内さん)。

そのほかのメリットには、「上が空いているため完全ではありませんが、多少の防風や防音効果も期待できますし、デザイン性の高い目隠しフェンスを設置することで、住宅のイメージが向上します(一級建築士・佐川さん)」があります。

目隠しフェンスのデメリット

一方、デメリットは「完全に外からの視線を遮断してしまうので、一度侵入者がフェンスの内側に入ってしまうと、外から発見されにくくなってしまうことです」(三協アルミ・谷内さん)。

だからといって、すき間が大きいタイプを選ぶと、通行人などから内部をのぞかれやすくなります。そのためプライバシーを守るという目隠しの役割を果たしにくくなります。

このように選択するフェンスによって、メリットがデメリットになることがあります。

そのため、フェンスを設置する目的を明確にして、フェンスを選ぶようにしなければなりません。例えば「リビングだけはプライバシーを守りたい」のであれば、リビング周りに外からの視線を完全に遮るフェンスを備え、窓のない側はそこまで目隠しにこだわらない、という具合です。

「弊社のフェンス『レジリア』は、豊富なデザインを用意しています。目隠し率にも違いがあります。これはどこに何のために設置したいのか、という設置場所や目的に合わせて最適なデザインを選んでいただくためです」(三協アルミ・野村さん)。

目隠し率88.2%の目隠しフェンス

同じ商品名でも目隠しになる割合の異なるタイプがある場合があります。写真のタイプは目隠し率が88.2%のタイプです(画像提供/三協アルミ「レジリア YK3型」)

目隠し率100%の目隠しフェンス

上と同じ商品ですが、こちらは目隠し率100%のタイプです(画像提供/三協アルミ「レジリア YM1型」)

そのほかにも、フェンス選びには注意したい点がありあます。

「フェンスの高さや建物との距離によっては、家の外から、また中から圧迫感を感じることがあります。その場合は半透明のポリカーボネートで目隠しするタイプを選んだり、ある程度すき間のあるタイプが良いでしょう」(三協アルミ・谷内さん)。

「また、2m〜3mと高さを求めるのではなく、目隠しできる、つまり目線の高さまで遮る1.5m〜1.8m程度にするのも1つの方法です」(一級建築士・佐川さん)。

さらに、目隠しフェンスを含むフェンスを設置する際は、メンテナンス性にも注意が必要です。

「ポリカーボネートは割れたり汚れたりすれば修理やメンテナンスが必要ですが、建物との間に作業スペースがないと、メンテナンスがしにくくなります。特に建物の横や裏側など、給湯器やエアコンの室外機等がある場所ではメンテナンスが難しくなります。定期的な再塗装が必要なスチール製フェンスも同様です」(一級建築士・佐川さん)。

このように、目隠しフェンスを設置する前に、設置する目的や設置場所をしっかりと検討した上で、フェンスのデザインや種類を選ぶことが重要です。

とはいっても、フェンスについて詳しい人はあまりいないでしょう。「目的さえ明確であれば、施工会社に相談すると、たいていは適切なフェンスを提案してくれると思います」(三協アルミ・谷内さん)。

目隠しフェンスの主な素材・種類別の特徴と、5m・10m・20mあたりの費用

フェンスの設置費用は、フェンスの素材とデザイン、高さや長さ(幅)といったサイズによって異なります。ここでは主な目隠しフェンスの素材・種類別の特徴と、それぞれの長さ別の費用の目安について、佐川さんに教えてもらいました。

なお、比較しやすいように、すべての素材でブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.2mのフェンスを立てて、高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出しています(アルミ鋳物・木製・ブロック・生垣を除く)。

フェンスの種類や商品によっては、ブロックを敷設せずに高さ1.8mの目隠しフェンスを立てられるものもありますが、工事費用は上記の方法とほぼ同じです。そのため、目隠しフェンスだけで検討している方も下記の目安を参考にしてください。

アルミ(形材)製

アルミは軽量で腐食や錆に強いため、メンテナンスが楽なのが特徴です。

アルミ製フェンスには「形材(かたざい)フェンス」と「鋳物(いもの)フェンス」があります。形材フェンスとは、全長を通じて断面が同じ形状のフェンスです。縦格子や横格子など直線的なデザインが特徴です。一方の鋳物フェンスは、溶かした金属を鋳型(いがた)に流し込んで作られたフェンスを指します。植物を模したラインなど、細かな曲線が作れるのが特徴です。

このうち、よく目隠しフェンスに採用されるのは、形材フェンスになります。

直線的なデザインが特徴ですが、縦格子と横格子とでは見た目の印象が違いますし、色もブラックやブロンズ、ホワイト、さらに木目調などカラーバリエーションが豊富。さらに桟のすき間の空き具合にも違いがあり、それによって、目隠し部分の割合や風通しが変わるだけでなく、建物も含めた全体のデザインイメージも変わります。

「アルミ形材フェンスはとても人気があるので、商品やデザインのバリエーションが豊富です。そのため商品の価格差が大きく、費用の目安の価格帯も幅が広くなります」(一級建築士・佐川さん)。

アルミ形材フェンスを設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●アルミ形材フェンスの、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約17万円〜約34万円
10m 約25万円〜約50万円
20m 約38万円〜約75万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.2mのフェンスを立てて、高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

縦デザインの目隠しフェンス

縦デザインの目隠しフェンスでブラックのアルミ形材フェンス。目隠し率100%、採光率0%、通風率0%です(画像提供/三協アルミ「レジリアTM1型」)

縦デザインの目隠しフェンス(ルーバータイプ)

横デザインの目隠しフェンス(ルーバータイプ)でアーバングレー色のアルミ形材フェンス。目隠し率100%、採光率0%ですが、特殊な桟の形状により風を通すので、通風率は6.2%です(画像提供/三協アルミ「レジリアYL1型」)

縦デザインの目隠しフェンス

縦デザインの目隠しフェンスでホワイト色のアルミ形材フェンス。目隠し率100%、採光率0%ですが、特殊な桟の形状により風を通すので、通風率は15.4%です(画像提供/三協アルミ「レジリアTL1型」)

横格子タイプの木調色目隠しフェンス

横板格子タイプで木調色(スモークナット)とブラック色を組みあわせたアルミ形材フェンス。目隠し率は88.2%で、採光率11.8%、通風率12.4%(画像提供/三協アルミ「シャトレナII 1型」)

アルミ(鋳物)製

細かな曲線が作れるアルミ製の鋳物フェンスも使い方によっては目隠しの目的を果たせます。

「形材フェンスと比べて、鋳物フェンスはすき間が多くなるので、そのままでは目隠しになりません。しかしその後ろに植栽をすれば目隠しの役割を果たし、住宅のデザイン性の向上にも役立ちます」(一級建築士・佐川さん)。

アルミ鋳物フェンスは、バラをはじめとしたつる系の植物を模した柄やアールデコ調など、アルミ形材にはないデザインが大きな特徴です。

例えば「アルミ鋳物フェンスを欧州風の住宅に合わせると、住宅の高級感がワンランクアップします」(一級建築士・佐川さん)。

なお、形材フェンスより複雑な形状のため、基本的に形材フェンスより価格は高めです。

アルミ鋳物フェンスを設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●アルミ鋳物フェンスの、長さ別の費用の目安(植栽の費用を除く)
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約25万円〜約40万円
10m 約35万円〜約55万円
20m 約55万円〜約85万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.0mのフェンスを立てて、高さ1.6mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

アルミ鋳物フェンス

優雅な雰囲気を演出する曲線で構成されたアルミ鋳物フェンス。他にも上部が剣先タイプのデザインや、植物を模したものなど、多彩なデザインから選べるのがアルミ鋳物フェンスの魅力です(画像提供/三協アルミ「エルジェント1型」)

アルミ形材+ポリカーボネート

アルミ形材とポリカーボネートを組みあわせたフェンスも、目隠しフェンスとして使うことができます。

「フェンスの面部分をポリカーボネートのパネルにするため、採光性は高くなります。それでいてフェンスから離れたウッドデッキやリビングの様子は、ほとんど見えません」(一級建築士・佐川さん)。

逆にフェンスに近いものは、外から「何かがある(いる)」とぼんやり分かるので、防犯上も有利です。

アルミ形材+ポリカーボネートのフェンスを設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●アルミ形材+ポリカーボネートのフェンスの、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約30万円〜約47万円
10m 約45万円〜約70万円
20m 約68万円〜約105万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.2mのフェンスを立てて、高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

ポリカーボネートとアルミ形材の目隠しフェンス

ポリカーボネートのパネルを組みあわせたアルミ形材フェンス。目隠し率100%ですが、採光率は82.5%です(画像提供/三協アルミ「レジリアSP1型」)

ポリカーボネートの透過率比較

ポリカーボネートのパネルと対象物の距離が、左から5cm、10cm、50cm。このようにポリカーボネートのパネル越しに見ると、対象物から5cmでも「何かある」程度しかわかりませし、50cm以上離れるとほとんど何も見えなくなります(画像提供/三協アルミ「レジリアSP1型」)

木製

木製のフェンスも、すき間の作り方や高さ次第では目隠しフェンスとして活用できます。

「温かい感じが出せるので、人気のあるフェンスです。定期的な塗装などメンテナンスが必要ですが、DIYが好きな方によく選ばれています」(一級建築士・佐川さん)。

木材フェンスは選ぶ木の種類によって価格が変わります。ヒノキなどは比較的安価ですが、桟橋に使用されるような鉄木(鉄のように硬く、密度が高く、耐久性も高い。ウリン材やイペ材などがある)は高価になります。

木製フェンスを設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●木製フェンスの、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約20万円〜約30万円
10m 約30万円〜約45万円
20m 約45万円〜約68万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.0mのフェンスを立てて、高さ1.6mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

木製目隠しフェンス

天然木は樹種によっても異なりますが、定期的なメンテナンスを行うことで耐久性が維持されます(画像/PIXTA)

人工木・樹脂製

人工木・樹脂製とは、木粉を混ぜた樹脂など、本物の木ではないけれど木のような表情がある素材です。

特徴は木よりも耐久性が高いことと、樹脂より紫外線に強いことです。つまり、木と樹脂のデメリットを払拭して、いいとこ取りをした素材といえます。そのため、ウッドデッキでもよく採用されています。

人工木・樹脂製フェンスを設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●人工木・樹脂製フェンスの、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約20万円〜約34万円
10m 約30万円〜約50万円
20m 約45万円〜約75万円
※ブロックを3段(60cm)敷設し、そこに高さ1.2mのフェンスを立てて、高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出

人工木・樹脂製目隠しフェンス

ローズウッド色の木粉入り樹脂を用いたフェンス。主要部の芯材にアルミ形材が入り、強度を高めています(画像提供/三協アルミ「プラウディ」)

竹垣風目隠しフェンス

純和風の住宅に似合う竹垣風のフェンス。パネル部分が樹脂製で、強度の必要な部分にアルミが使用されています(画像提供/三協アルミ「紗更」)

ブロック

本来ブロックは比較的安価ですが、ブロックだけで高さが1.2m(6段組み相当)を超える場合、建築基準法で3.4m以内ごとに控え壁(ひかえかべ)を備えることが義務づけられています。

そのため、1.8mの目隠しフェンスをブロックだけで敷設すると、アルミ形材フェンスよりも費用がかかります。

ブロック塀(フェンス)を設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●ブロック塀の、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約40万円〜約60万円
10m 約65万円〜約85万円
20m 約90万円〜約130万円
※一部に化粧ブロック(表面に加工や塗装を施してデザイン性と高めたもの)を用いて、ブロックのみで高さ1.8mの目隠しフェンスを設置する、という前提で費用を算出 

ブロック塀の控え壁

控え壁とは、ブロック塀に対して直角に設置する壁のことです。地震等で塀が転倒して歩行者にケガを負わせたり、隣家を傷つけないようにするのが目的です(画像/PIXTA)

生垣

フェンスの代わりに生きている植物を植えて垣根状にした生垣も、目隠しの役割を果たします。温かみがあり、見た目も美しいのが生垣の特徴です。ただし植物は日々成長するので、剪定などのメンテナンスを厭わず、むしろ楽しめる人におすすめです。

生垣を設置する際の、長さ別の費用の目安は下記の通りです。

●生垣の、長さ別の費用の目安
フェンスの長さ 費用の目安
5m 約20万円〜約24万円
10m 約30万円〜約35万円
20m 約45万円〜約53万円
※生垣のみで高さ1.8mの目隠しを作るとして算出

生垣の目隠しフェンス

生垣によく採用されるレッドロビン(バラ科の広葉樹)。新芽が赤く色づき、成長するにつれて緑色になるのが楽しい樹種です(画像/PIXTA)

メッシュフェンスと植物の目隠しフェンス

スチール製のメッシュフェンスは安価なのが魅力ですが、目が粗いため、そのままでは目隠しになりません。しかし、このように植物を絡ませると目隠しの役割を果たすことができます(画像/PIXTA)

目隠しフェンスのバリエーションが増えている

主な目隠しフェンスの素材は上記の通りですが、実はここ数年、目隠しフェンスを含めてフェンスのバリエーションが広がっています。下記で紹介するので、参考にしてみてください。

「外構は後回し」から「外構に力を入れる」ようになってきた

フェンスのバリエーションが増えているのには、理由があります。

「従来、フェンスなどの外構は『まずは建物を建ててから考えよう』と後回しにされがちでした。後でやるつもりで、ずっと手を付けないままでいた人も多いでしょう。しかし、コロナ禍以降、家に居ることが増えたからでしょうが、気兼ねなくもっと庭で楽しみたいとか、もっと自分の手で自宅の手入れをしたいという具合に、外構に時間とお金をかける人が増えています」(一級建築士・佐川さん)。

そうした需要を受けて、フェンスをはじめ外構の商品が増えているのです。そのため、目隠しフェンスのデザインも建物の外観に合わせやすくなっています。

下記はその一例です。いずれも目隠しフェンスの役割を果たすフェンスです。

三協アルミLALAスクリーン

目的に合わせ、自由に柱とスクリーンを組みあわせることができるフェンスです。写真は住宅の色調に合わせて下部を木調色にし、上に半透明のポリカーボネートを組みあわせた例(画像提供/三協アルミ「LALAスクリーン」)

三協アルミエルファード

見る角度によって視線を遮る、特殊な格子形状をしたフェンス。ほどよい採光と通風を得ることができます(画像提供/三協アルミ「エルファード片面タイプM1型」)

X.スタイルデザインウォール

フェンスではなく、デザイン性の高い壁で目隠しする方法もあります。壁といっても写真のようなアルミ形材の木調色のパネルを用いるタイプや、化粧ボードで覆うタイプもあります(画像提供/三協アルミ「X.スタイルデザインウォール」)

目隠しフェンスの設置費用を安く抑える方法

目隠しフェンスを設置する費用を安く抑えるには、主に以下の2つの方法があります。

シンプルなデザインを選ぶ

目隠しフェンスを含むフェンスは、同じ素材でも、一般的にシンプルな形状のほうが安いという傾向があります。シンプルな形状のアルミ形材より、複雑な形状のアルミ鋳物が高いのもその一例です。

もちろん、シンプルになりすぎると味気なくなり、住宅全体のイメージを損ないかねません。そこで、費用をかける場所と、なるべく安く済ませる場所という具合に、メリハリをつけると良いでしょう。

例えば玄関周りなどこだわりのポイントはしっかり素材やデザインを吟味して、他をシンプルにすれば、こだわりのポイントが一層映えますし、費用を抑えやすくなります。

シンプルなアルミ形材目隠しフェンス

目隠し率100%で、採光率0%、通風率もごくわずかのアルミ形材フェンス。シンプルな形状なため、同じ商品の中でも比較的安価なタイプです(画像提供/三協アルミ「レジリアYM1型」)

外構の工事を同時に行う

目隠しフェンスを設置する工事だけではなく、一緒に門扉やカーポートなど、他の外構の工事も一緒に行うことで、費用を抑えやすくなります。

例えば、外構の工事では養生シート(工事によって傷つけたり汚さないように建物等を覆うシート)を張ることが多いのですが、これを門扉とカーポート、目隠しフェンスの工事それぞれで行うと、その度に養生シートを敷く費用がかかります。しかし、一緒に工事を行えば費用も1回分で済むので、その分費用を抑えることができます。

また、同時に行うことで工期が短縮できれば、人件費や間接経費(資材の運搬費用や工事車両の駐車料金等)も抑えることができます。

目隠しフェンスの選び方

目隠しフェンスは、どのように選べばいいのでしょうか。下記で解説します。

目隠しフェンスを備える目的を明確にする

まずは、家のどこを「目隠し」したいのかを明確にしましょう。リビングなのか、庭も含めるのか、とにかく家の四方を目隠ししたいのか……。

また完全に目隠しするのか。近づいてのぞこうとしない限り外からは分からない程度でいいのか等々。

目隠しフェンスは、まず場所と目的を明確にすることが重要です。それに伴い、フェンスの高さや設置する位置、デザインが自ずと絞られてくるはずです。

三協アルミLALAスクリーン

リビングと、そこに繋がるウッドデッキ部分に目隠しフェンスを設置した例。目隠しは必要ですが、リビングやウッドデッキでくつろぐには採光性も大切ですから、フェンスの上部に半透明のポリカーボネートを備えています(画像提供/三協アルミ「LALAスクリーン」)

目隠しフェンスの高さは目的や立地条件に沿って決める

目の前の道路から家の中が見えないようにするためには、フェンスの高さを1.5m以上にすることがおすすめです。

「身長から10cm引くと、だいたい目の高さになります。例えば身長160cmの人なら150cm(1.5m)あたり、180cmなら170cm(1.7m)あたりが目安ということです」(一級建築士・佐川さん)。

道路を歩く人の目の高さまでフェンスがあれば、外からのぞかれることはほぼありません。フェンスが150cm(1.5m)なら、身長160cm以下の人の目線を遮ることができます。

また目隠しフェンスが1.5m以上あれば、リビングで座っている状態を外から見られることもありません。

ただし、敷地と道路の高低差によっては、フェンスの高さが変わります。また、家の中からの眺めにも影響します。

施工会社によっては目隠しフェンスの高さについてアドバイスしてくれる場合がありますから、相談してみると良いでしょう。

採光性や通風性が必要か検討する

完全に目隠しをするフェンスは、普通は採光性や通風性が低くなります。リビングやウッドデッキなどの採光性や通風性を損ないたくない人は、注意が必要です。

とはいえ、例え2mの高さの完全目隠しタイプのフェンスでも、2mより上から光や風が入ります。さらにフェンスとリビングの間に庭があるなど、フェンスと住宅に距離があるなら、それほど採光性や通風性を気にする必要はないかも知れません。

もちろん隣家等との位置関係など、立地によって条件は異なります。施工会社に相談しながら検討してください。

住宅や、街並みと調和する色やデザインを選ぶ

目隠しフェンスはある程度の高さが必要ですから、低いフェンスよりも面積が大きくなりがちです。大きくなるほど、住宅全体のイメージに影響を与えます。

ですから目隠しフェンスは住宅や、街並みと調和する色やデザインを選ぶようにしましょう。

また、高さにも注意が必要です。極端な例でいえば、高さ2mの目隠しフェンスが家の四方を囲んだ場合、外側からも内側からも、見る人に圧迫感や威圧感を与えかねません。

目隠ししたい場所を明確にすれば、目隠しフェンスの高さにメリハリをつけたり、設置場所を最小限に抑えられます。そうすれば見た目のイメージに与える影響力も小さくなりますから、住宅の外壁や門扉といった他のアイテムで、住宅のイメージを演出しやすくなります。

三協アルミX.スタイル

エントランス部分は横格子のフェンスと植栽によって緩やかに視界をさえぎりますが、駐車スペースの後ろは半透明パネルで目隠しをした例。周囲に威圧感を与えることなく、プライバシーを守ることができます(画像提供/三協アルミ「X.スタイル」)

目隠しフェンスを設置する際の注意点

目隠しフェンスを選ぶ際に、あらかじめ注意しておきたいことがあります。

高さを2.2m以下にしなければならない場合がある

目隠しフェンスの高さは、最低1.5m以上がおすすめといいましたが、ではどれだけ高くできるのでしょうか。

目隠しフェンスには3mまで対応可能というフェンスもあります。しかし「ブロック塀」や「RC造(鉄筋コンクリート造)」のフェンスは建築基準法や建築基準施行令で高さの上限が決められているので注意が必要です。

「まずブロック塀は1.2m(6段組み相当)以上の場合、控え壁を3.4m以内ごとに設置する必要があります。また、ブロック塀やRC造の塀の高さの上限は2.2mです」(一級建築士・佐川さん)。

そのほか、ブロック+フェンスの高さが2mを超える場合は建築確認申請が必要です。

三協アルミX.スタイルデザインウォール

モルタル風パネルと採光スクリーンを組みあわせた、高さ2.8mのフェンス。モルタル風パネルは化粧ボードのため、同じような見た目のブロックや鉄筋コンクリート造では作れない高さ2.2m以上が可能です(画像提供/三協アルミ「X.スタイルデザインウォール」)

防犯対策を考慮する

外からまったく見えないと、不審者がフェンスの内側に忍び込んでも外から気づかれないため、防犯上は不利であることは否めません。だからといって、家の中のプライバシーがのぞかれてしまっては、目隠しフェンスの意味がなくなります。

これが正解、というのはありませんが、設置する位置や目隠しする割合のバランスが重要です。また、他の防犯対策グッズを組みあわせる方法もあります。目隠しフェンスを設置するのを機に、一度自宅の防犯対策を再確認してはいかがでしょう。

周辺環境に応じて設置する

周辺の環境に応じてフェンスを設置することも大切です。

例えば隣家のほうが、ほんの少し敷地が高い場合、雨で隣家側の枯れ葉や泥が流れてくることがあります。

「それを防ぐには隣家との境界に目隠しフェンスを含むフェンスの基礎部分にブロックを使う、ブロック+フェンス方式がおすすめです。アルミ形材だけの目隠しフェンスの場合、下にすき間があるため、枯れ葉や泥を防げないからです」(一級建築士・佐川さん)。

また、ブロック塀+フェンスでもブロック塀とフェンスの間にすき間ができますが、ここから愛犬が外に逃げ出したり、逆に野良猫などが入ってきたりすることがあります。

「弊社にはこのすき間を塞ぐオプションパーツや、すき間の小さい仕様のあるフェンスもあります。犬やネコが出入りするのを防げるほか、すき間に足先が入らないので、不審者がブロック部分を踏み台にしてフェンスを乗り越えることを防ぐセキュリティ効果もあります」(三協アルミ・野村さん)。

周辺環境に応じて、どんな目隠しフェンスにするか検討してみてください。

三協アルミ下桟すき間仕様

通常(左)はブロックとすき間が80mmできるアルミ形材フェンスですが、下の桟とブロックのすき間を15mmと小さくした仕様(右)もあります(画像提供/三協アルミ「レジリア」)

風の強いエリアは壊れない・飛ばされない注意が必要

最近の異常気象は、雨だけでなく、風にも注意が必要です。

これまで台風の通るエリアはだいたい決まっていましたが、ひと昔前まで台風が上陸しないといわれていた北海道でさえ、2016年の8月には5つの台風が上陸しました。

また、2019年の台風15号が千葉県のゴルフ場の鉄柱を倒した映像は記憶に新しいのではないでしょうか。フェンスも風に飛ばされたら、最悪の場合、自宅や隣家等を破壊しかねません。

「支柱の間隔は普通2mくらいですが、これを1mにするとフェンスの耐風性を高められます」(一級建築士・佐川さん)。

備えあれば憂いなし、といいますが、そうはいってもフェンスの耐風性能を高めれば費用も膨らみます。自宅のあるエリアで、最近突風などの被害がなかったか調べるなど、フェンスの耐風性についても検討してみてください。

支柱間隔の違いによる耐風性能

支柱間隔の違いによる耐風性能

支柱の間隔が2mの場合、風速36m/sにも耐えられるアルミ形材フェンス。支柱の間隔を1mにすると、風速42m/sにも耐えられます(画像提供/三協アルミ「レジリア」)

目隠しフェンスの施工事例

目隠しフェンスはどんな場所に設置すればいいか、どんな目隠しフェンスがいいのか。施工事例を参考にしてみてください。

ウッドデッキの目隠しフェンス

外からの視線をフェンスで遮断。またウッドデッキはキッチンからも見えるので、安心して子どもたちを遊ばせることができます(画像提供/stylekoubou(スタイル工房) )

築24年の一戸建てをリフォーム前提で購入した施主。細長かったリビングは、和室との仕切りをなくして対面式キッチンも備えた、南側いっぱいに接する明るいLDKへ間取りを変更しました。

さらに、リビングの外には子どもたちが安心して遊べるウッドデッキを新設。隣家が近いため、目隠しになる白いウッドフェンスを設置しました。

【DATA】
リフォーム費用:990万円(総額)
リフォーム部位:LDK、浴室、トイレ、洗面所、収納、寝室、階段、玄関、外壁・屋根、バルコニー、子ども部屋、洋室、廊下
住宅種別:一戸建て
築年数:24年
設計・施工:stylekoubou(スタイル工房) 

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

目隠し率100%のアルミ形材フェンス

目隠し率100%で風も通すアルミ形材フェンスを採用(画像提供/松本巧舎)

道路に面した境界部分にこれまでブロック塀を設置していましたが、ブロック+フェンスにリフォーム。暗い印象だったブロック塀から、明るくすっきりした外構にイメージアップできました。

【DATA】
リフォーム費用:86万円
リフォーム部位:エクステリア・バルコニー・庭
住宅種別:一戸建て
築年数:不明
設計・施工:松本巧舎

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

目隠し率100%のアルミ形材フェンス

目隠しの役割を果たすウッドフェンスを備えたことで、庭にテーブルやイスを出してゆっくりとくつろげるようになりました(画像提供/ユニテ)

生垣や植物の手入れが大変なため、生垣をフェンスにリフォームした施主。生垣よりも奥行きが短いフェンスにしたことで、庭が広がりました。また、土が露出したままの地面に透水性の平板を置き、水たまりができなく、滑りにくくて泥はねもしない庭を実現。

こうして、庭がより快適なプライベート空間へと生まれ変わりました。

【DATA】
リフォーム費用:250万円(概算)
リフォーム部位:エクステリア・バルコニー・庭
住宅種別:一戸建て
築年数:16~20年
設計・施工:ユニテ

※表示されている価格帯および本体価格は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

まとめ

目隠しフェンスはプライバシーを守ってくれる一方で、防犯上は不利になりますし、家の中からの眺めも損ないかねません。そのため、素材やデザインの選び方が重要ですし、設置する位置についても十分な検討が必要です。

目隠しフェンスを設置する費用は、5mの長さなら約16万円〜60万円、10mなら約25万円〜90万円、20mなら約38万円〜135万円。このように価格帯に大きな幅があります。これは素材やデザインによってフェンスの価格が大きく異なるからです。その点からも、素材やデザイン選び、設置する場所の検討は慎重に行いましょう。

一方、価格に大きな差があるのは、それだけ目隠しフェンスの種類がたくさんあるということでもあります。つまり、単に目隠しをするだけでなく、住宅の見た目を良くする選択肢がたくさんあるということです。

プライバシーを守って、住宅のイメージもアップさせ、周辺環境の向上にも繋がる。そんな目隠しフェンスをぜひ選んでください。

取材協力/三協立山株式会社 三協アルミ社 野村さん、谷内さん
監修/一級建築士 佐川旭さん(佐川旭建築研究所)
構成・取材・文/籠島康弘

取材協力・監修/佐川旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がけている
執筆・取材/籠島 康弘
雑誌「カーセンサー」編集部を経てフリーライターに。中古車からカーシェアリング、電気自動車までクルマにまつわる諸々の記事執筆を手がける。最近は住宅雑誌の記事も執筆していて、自分が何屋なのかますます分からなくなってきた。