照明リフォームには自分でできる簡単なものから、プロに依頼しないとできないことまでさまざまな種類があり、間接照明などをうまく取り入れながらリフォームを行えば、おしゃれな空間をつくることが可能です。今回の記事では、照明リフォームのポイントや注意点をmicアールスタジオの小塩泰弘さんと、renoverocca?(リノベろっか?)の小井圡加奈さんに教えてもらいました。費用相場やおしゃれな事例もご紹介します。

記事の目次
照明リフォームの種類と注意点
照明のリフォームにはさまざまな種類があります。自分で交換するだけのような簡単なものから、配線工事が必要なものまで内容は多岐にわたり、リフォームの目的も、おしゃれな部屋づくりから省エネ、防犯など三者三様です。
それでは、リフォーム会社に依頼して行う照明リフォームにはどのようなものがあるのか、まずは主な照明リフォームの種類を見ていきましょう。
※記事内のリフォーム費用の目安は、照明器具の選定や施工範囲等、条件によって異なります。正確なリフォーム費用についてはリフォーム会社への個別の見積もりでご確認ください。
LED照明へのリフォームで省エネ
リフォームのタイミングで従来の蛍光灯などをLED照明に変更すれば、省エネ性がアップします。省エネ効果があり、寿命も長いということで、住まいのリフォームのタイミングで、LED照明に変更するケースは少なくありません。
「リフォームをする際に、お客様からLED照明に変更したいという要望を頂くことはあまりありませんが、LEDが普及してきていることもあり、リフォームで照明を変更するという場合は、LED照明に変更するのが一般的です」(小塩さん)
また、照明器具はそのまま、白熱電球などをLED電球に交換するというようなことであれば、DIYで済ませてしまうということもできますが、照明器具自体を交換したいという場合はリフォーム業者に依頼する必要があります。
「電球などは自分で交換することも可能ですが、器具の交換や配線変更する場合には電気工事士の資格が必要になります」(小井圡さん)
照明器具を取り付けるための引掛シーリングローゼットやダクトレールなどが天井にある場合は、照明器具を自分で交換することができますが、そうでない場合は電気工事士のいるリフォーム会社へ依頼するようにしましょう。
LED照明を新たに設置する場合のリフォーム費用の目安
5万円前後
(1カ所・器具代および施工費)
シーリングライトへのリフォーム
天井に直接取り付けるシーリングライトは、部屋のメインの照明としてよく使われるタイプの照明です。吊り下げるタイプの照明よりも、高い位置から空間を照らすことができ、形状もさまざまなタイプのものがあります。
「シーリングライトに限りませんが、照明器具を新調する場合、デザインだけでなく明るさや色についても考えて選ぶのがオススメです。どの程度の明るさが必要か、また、部屋の雰囲気に合わせて、どのような色にしたいのか。さらには、状況に合わせて調光・調色したいかどうかということも考えておきましょう。調光・調色などの機能が付いているものを選ぶと、その分器具代もアップする傾向があります」(小塩さん)
なお、築年数が経っているリフォームの場合など、シーリングライトを交換するタイミングで、取り付けるための引掛シーリングローゼットも交換することがあります。その場合は、照明器具の交換だけでなく、天井のクロスの張り替えなども同時に行うことが多いそうです。
シーリングライトを設置する場合のリフォーム費用の目安
5万円前後
(1カ所・器具代および施工費・クロスの張り替え費用は別途)

ペンダントライトへのリフォーム
天井から吊るすタイプのペンダントライトは、シーリングライトよりも照らすものまでの距離が近く、部屋全体を照らすというよりも、演出効果などを意識して使用されることの多い照明器具です。引掛シーリングローゼットやダクトレールなどを使って設置することができます。
「ペンダントライトを設置する場合は、適切な高さに設定することが重要です。例えば、ダイニングに設置する場合は、ダイニングテーブルからどの程度離すのがいいかなどは、照明器具によって最適な高さが異なるので、取り付ける際にはメーカーが推奨している高さを確認するようにしましょう」(小井圡さん)
ペンダントライトへの交換のリフォーム費用の目安
5万円前後
(1カ所・器具代および施工費・クロスの張り替え費用は別途)

ダウンライトへのリフォーム
天井に埋め込むダウンライトは照明器具を天井に埋め込むように設置するため、天井がフラットにスッキリと見え、その分部屋が広く見えるという点がメリットです。ダウンライトを設置するためには天井に穴を開けて配線工事なども行う必要があり、照明器具を埋め込む分、天井裏にある程度の深さが必要です。
また、ダウンライトには照明器具と電球が別になっている交換型と、器具と電球が一体となっている一体型がありますが、一体型は電球が切れた場合、照明器具ごと交換する必要があります。
一体型は電球のみの交換を行うことができないので不安に思う人もいると思いますが、LEDの寿命は長く、その寿命が切れる頃には照明器具自体も交換の時期であるため、交換ができないという点はそれほど大きなデメリットではありません。現在は一体型のダウンライトが広く使われています。
一方で、ライフスタイルの変化などに合わせて、気軽に電球のみ交換したいという場合は、交換型を検討するのもいいでしょう。

ダウンライトはシーリングライトなどよりも照らす範囲が狭くなりますが、数や設置場所などを工夫することで、間接照明としてだけでなく、メインの照明として活用することもできます。
「ダウンライトはシーリングライトなどよりも照らす範囲が狭いので、部屋のメインの照明としてダウンライトを採用する場合は、1つだけではなく、複数設置することになります。ダウンライト1つの器具代については、数千円のものからありますが、部屋全体を照らすとなると複数必要になるため、シーリングライトを1つ設置するよりも費用は高くなる傾向があります」(小塩さん)
「部屋全体を照らしたい場合に採用するダウンライトは、照射角度を変えられないタイプのものが一般的ですが、何か飾っているものをピンポイントで照らしたいなどという場合は、角度を付けられるユニバーサルタイプのダウンライトを選ぶこともあります。また、寝室にダウンライトを取り入れる場合は、まぶしさが気になることもあるので、その場合は照射範囲を狭くしてまぶしさを抑えたグレアレスタイプのものを選ぶのもいいですね」(小井圡さん)
ダウンライトは、使用用途や照らしたい場所などをきちんとイメージして取り付けるようにしましょう。
ダウンライト設置リフォーム費用の目安
10万円程度
(6畳程度の洋室に複数配置した場合・器具代および施工費・クロスの張り替え等付帯費用は別途)
ダクトレールの設置リフォーム
ダクトレールはライティングレールなどとも呼ばれるレール状の配線器具で、天井に取り付けることでレール上の好きな位置に、ペンダントライトやスポットライトなどを取り付けることが可能になります。ダクトレールはレール上であれば照明の数を増やしたり、交換したりすることが簡単にできるので、自由に自分の好きな照明器具を取り付けられるというのがメリットです。
「引掛シーリングローゼットに取り付ける簡易取付式のダクトレールもありますが、天井に直接ダクトレールを設置する場合は天井に穴を開け、天井裏に配線を通すことになります。直天井など、天井裏に懐がない場合もダクトレールを設置することはできますが、その場合は、天井裏に配線を隠すことができないので、露出した配線を鉄管やモールなどで覆う方法もあります」(小井圡さん)
ダクトレール設置リフォーム費用の目安
6~7万円程度
(器具代および施工費・クロスの張り替え等付帯費用は別途)

人感センサーの設置リフォーム
リフォームを機に人感センサーを取り入れれば、便利さがアップするのに加え、消し忘れを防ぎ、省エネにもつながります。また、一戸建ての場合は、家の外に防犯の目的で人感センサー付きの照明を導入するケースもあります。
「人感センサーを導入するリフォームは照明器具を変更するだけで叶う手軽なリフォームなので、玄関やトイレなどに取り入れるのはオススメです。既存の照明器具はそのまま、人感センサー付きのスイッチを後付けするケースもあります」(小塩さん)
人感センサー付き照明に交換するリフォーム費用の目安
5万円程度
(器具代および施工費)
間接照明の取り入れ方
シーリングライトなど直接的に部屋を照らす照明に対し、間接照明は天井や壁を照らして間接的に空間を照らす照明です。照明器具から出た光を反射させるなどして、柔らかい光で空間を演出することができます。
間接照明として用いる照明器具としては、スポットライトやダウンライトのほかにも、コンセントを使うタイプのフロアランプや、壁面などに取り付けるライン状の照明器具など、さまざまなものがあり、間接照明は室内のインテリアとの調和を考えて、計画的に配置することが重要です。
「簡易的なものであればDIYで取り入れられる間接照明もありますが、壁面や天井などにライン状の間接照明などを取り入れたい場合は、光源を隠すような造作が必要になります。住まい全体のリフォームのタイミングであれば、造作が必要になるような間接照明を取り入れることもできるので、リフォームをプランニングする際には間接照明を取り入れたインテリアのイメージなどを相談してみるといいと思います」(小塩さん)
照明リフォームの費用相場
シーリングライトを取り換えるなど、個別の照明リフォーム費用については器具代と施工費用ということで5万円前後が一つの目安となるようですが、リフォーム会社に依頼して照明リフォームを行う場合は、住まいの内装リフォームの一環として、照明リフォームを同時に行うというのが一般的です。
例えば、リビング・ダイニングの内装リフォームで照明を新たに設置するという場合は、部屋の中に複数の照明器具を配置することになります。電気工事費や照明器具代などを合わせ、部屋全体として10万円~30万円程度をリフォーム費用の目安と考えておくといいでしょう。
ただし、照明リフォームにかかる費用は設置する照明の種類や数、設置する場所や部屋の広さ、既存の照明の取り外しの有無や配線の変更が必要かどうかなども影響するため、費用については複数のリフォーム会社に相見積を取るなどして、比較検討しながら進めるのが安心です。
照明リフォームの注意点
電気配線を触るリフォームには電気工事士の資格が必要
照明リフォームはDIYで手軽にできるものもある一方、電気工事士の資格が必要になるものも少なくありません。電気配線を触るようなリフォームは感電の危険性もあるので、安易に自分で行おうとはせず、必ずプロに相談するようにしましょう。
天井の耐久性を確認
重量のある照明器具を選ぶと、天井の補強工事が必要になることもあります。
「シーリングファンライトなどは重量があるものも多く、引掛シーリングローゼットの周囲を補強しなければならないこともあります。しっかり固定できないと危険なので、重たい照明器具を採用したい場合は、注意しましょう」(小塩さん)
おしゃれな照明リフォームの実例
ここからは、照明リフォームのおしゃれな施工事例を見てみましょう。
【実例】躯体現しの天井×ダクトレールが印象的なブルックリンスタイル
リノベーションを機にインテリアをブルックリンスタイルに一新。LDKの天井は躯体現しにして、ダクトレールを取り付けました。電気配線は天井に這わせ、無機質なコンクリートと相性のよい鉄管で隠しており、インダストリアルな雰囲気を引き立てています。
バーカウンター風のキッチンは腰壁を高く手元を隠せる設計でフルオーダー。足元には間接照明を施し、くつろぎ感を演出できるようになっています。


【実例】間接照明で壁面のテクスチャーを強調。立体感のある空間に
エコカラットを採用したリビング・ダイニングの壁面上部にはライン状の照明を設置。壁面が照らされることで陰影が生まれ、奥行きが感じられるようになっています。間接照明の醸し出す落ち着いた雰囲気のおかげで、帰ってくるとほっとするようなリビング・ダイニングになりました。
リビング・ダイニングのほかにも、各所に間接照明が取り入れられおり、扉を撤去して設置した可動棚の上部にも間接照明を設置。見せながら収納するものを柔らかく照らす照明効果で、部屋に立体感が生まれるようになっています。


【実例】優雅な装飾と間接照明で心安らぐフレンチモダン
リビング・ダイニングの床はホワイトオークのフローリング、天井と壁は珪藻土を採用し、白を基調とした明るいフレンチモダンテイストでまとめています。天然石で装飾した壁の上部やカーテンボックスなど、効果的に間接照明が配置され、奥行きと広がりが感じられるエレガントな雰囲気です。
さらに、玄関のルーバー天井の奥にも照明を配置。ルーバーの内側から間接照明を当てることで、玄関は柔らかな光に包まれる、上質で心安らぐ空間になっています。


【実例】ホテルライクな空間に照明で奥行き感をプラス
中古マンションをハイクラスのホテルのような住空間にリノベーション。採光を生かした開放的なLDKの照明にはダウンライトを選び、すっきりとした印象に仕上げました。折り上げ天井に採用したコーブ照明や、フロアランプなどが空間に奥行きをプラスしています。
また、暗くなりがちな玄関ホールには、大き目の飾り棚を造作。間接照明を入れることで、飾り棚に飾るドライフラワーなどが映え、ホスピタリティも感じられるおしゃれな空間になっています。


照明をうまく使えば、空間を自分好みに演出することが可能です。照明リフォームで、ぜひ住まいをワンランクアップさせてみてはいかがでしょうか。
【まとめ】おしゃれな部屋づくりから防犯、省エネまで!照明リフォームで住まいの理想が叶う
照明リフォームには自分で電球や照明器具を交換するだけのような簡単なものから、配線工事が必要なものまであり、リフォームの目的も、デザイン性を重視したものから、省エネ、防犯などさまざまです。既存の引掛シーリングローゼットなどを利用して、シーリングライトやペンダントライトを交換するようなリフォームであれば電気工事士の資格は不要ですが、電気配線を触るようなリフォームを無資格で行うのはNGです。また、ダウンライトやダクトレールを設置したい場合、天井裏にスペースを取れないと導入するのが難しいこともあります。さらに、部屋を照らすという目的の照明だけでなく、リフォームの際には間接照明をうまく取り入れることで、おしゃれな雰囲気をつくることができ、住まいの印象をワンランクアップさせることも可能です。
●取材協力
mic アールスタジオ
renoverocca?(リノベろっか?)
●画像協力
Panasonic
構成・取材・文/島田美那子