内装材は、壁や天井の壁紙だけではなく、フローリングやカーペットなどの床材、室内ドアなどさまざま。室内の雰囲気に大きく影響するため、素材をよく見て、性能もチェック。価格も考慮しながら、自分のテイストに合った理想のインテリアを実現しよう。
■壁・天井材の基礎知識
ビニールクロスが主流。雰囲気のある塗り壁、健康素材も増えている
一般的に多く使われている壁・天井の仕上材は、ビニールクロス。安価で、色・柄が多彩なことなどが理由だ。石膏ボードなどの下地に、接着剤を用いて張るだけなので施工も簡単だ。壁紙のほかには珪藻土や漆喰などの塗り壁材も人気だ。手塗り独特の雰囲気のある仕上がりが特徴で、ホルムアルデヒドなどVOCを吸着する内装材が増えている。
【選び方のポイント1】安価なのはビニール。紙や布は独特の雰囲気があるが高価格
ビニールクロスの表面材の主な材料は塩化ビニールで、最近は抗菌仕様や脱臭効果のあるものが多くなっている。また、環境問題に配慮して焼却したときに有害物質が発生しにくいオレフィン樹脂を使ったものもある。いずれも価格は同程度。壁装材はほかに紙および布製があり、よりやわらかで独特の味わいがある。価格はビニールよりもかなり高くなる。
ビニールクロスのよいところは、どの商品もあまり価格差がなく、低価格なところ。どのような色や柄を選んでもあまりコストに影響がない。同じ色・柄のビニールクロスで各室を統一すると、材料に無駄が出ないので安くできる。ただ、そればかりでは味気ないので、例えば、寝室には和紙あるいは布の壁紙を用いて変化をつけるなどの方法も考えたい。
【選び方のポイント2】空気をきれいにしてくれる健康素材にも注目を
ホルムアルデヒドをはじめとするVOC(揮発性有機化合物)を吸着してくれる健康素材も続々登場している。この種の内装材としては珪藻土が有名だ。そのほか、ボード状やタイル状になっていて、施工がしやすく、インテリアとして見ごたえのあるものも各種出ている。いずれもビニールクロスよりは割高になるが、調湿効果や消臭効果もある。室内の空気をきれいに保つこれらの健康素材も検討してみよう。
■フローリングの基礎知識
大きく分けると複合フローリングとむく材がある
フローリングには複合フローリングと、むく材の2種類がある。複合フローリングは、合板などの基材の表面に薄い突き板や樹脂シートを張ったもの。むく材は文字どおり一枚の板。その中間的なものとして集成材を用いたものもある。それぞれの違いは主に見た目の質感だ。また、肌触りの感じも異なる。価格は一般的に複合フローリングよりも、むく材が高くなる。
【選び方のポイント1】複合フローリングか、むく材かは価格も考慮して検討する
現在、フローリングで多く使われているのは複合フローリング。表面材は突き板が主流で、これは薄くスライスした天然木。普及品では、突き板は1mm以下と薄く、中級品になると1mm前後、高級品では2~3mmになる。突き板の厚さは見栄えに影響する。厚いほど、木目も鮮やかになるし、ミゾを深くできるので、天然木の感じに近づき、高級感を出すことができる。
一方、むく材は天然木をそのまま製材して使うもの。サイズも見た目どおり一枚一枚切り離されている。むく材の場合は表面に傷がついても、かえって味わいがあるという考え方もでき、塗膜もそれほど厚くする必要がない。あくまで自然な表情が持ち味といえる。むく材のフローリングは、国産だけでなく海外からの輸入品も多い。樹種もさまざまそろっており、一般に価格は複合フローリングより高いが、樹種によっても異なる。
【選び方のポイント2】複合フローリングは、耐久性もチェックする
複合フローリングの場合、基材に張る材料の組み合わせによって、さまざまに機能性を高めることができるのが特徴だ。例えば傷に対する強さや拭き掃除のしやすさなどの機能性をもたせている製品もある。また、特殊な緩衝材や制振マットで合板を挟んで、遮音性を高めているフローリングもある。2階の部屋に用いると、階下への騒音が減少するメリットがある。
■そのほかの床材の基礎知識
各種床材は場所と用途に応じて使い分ける
フローリング以外にも床材の種類はいろいろある。やわらかい感触のカーペット、水はけがよく清掃性の高いタイルやクッションフロアは一般に多く用いられている。また、最近では麻や竹、籐といった天然素材の敷物も見直されている。コルクも、そのやわらかな独特の質感が人気だ。それぞれ素材の持ち味も異なり、向く場所がある。適材適所で用いるのがオススメだ。
【選び方のポイント1】タイルは製品の特徴を知って、用途に応じ適材適所で
タイルは耐久性に優れ、水や熱に強い素材だ。床用としては玄関や水まわりに用いられることが多い。キッチンの床に用いると、水や油がはねても吸水性が低いので、サッと拭くだけできれいになるのがうれしい。また犬や猫がひっかいたり、テーブルや椅子を引きずっても傷がつきにくい。
浴室用には冷たさを抑えたタイプも登場した。足をつけた瞬間のヒヤリとする感触を大幅に緩和したもので、洗面室用にも使える。
リビングの一部にインテリアのアクセントとして用いてもよい。表面がツルツルしたものだけでなく、素焼き風の温かい感じがするタイプも人気がある。こうした製品ごとの特徴をチェックし、用途に応じて選びたい。
【選び方のポイント2】麻や籐など天然素材の敷物はインテリアのテイストを考慮して
麻や竹、籐などの繊維を用いた敷物も昔からよく用いられている床材だ。水はけがよく、サラッとした肌触りが特徴で、洗面室、キッチンなど湿気の多い水まわり空間の床材として最適。リビングや寝室に用いると、和風・アジアンテイストの雰囲気が出るので、味わいのあるインテリアとしても注目されている。部屋の雰囲気を変えたいときなど、手軽に用いることができる素材だ。
【選び方のポイント3】カーペットはやわらかさが特徴。毛足の長さで選び分ける
カーペットはそのやわらかい感触が特徴で、遮音性や保温性の高い素材だ。素材はナイロン、アクリルなどの合成繊維、天然素材のウールがある。織り方は機械でパイルを差し込んでいくタフテッドが主流だ。子ども部屋にはループタイプで目の詰まった実用的なものを、寝室には毛足の長いカットタイプを選ぶなど部屋によって使い分けるのもよいだろう。
■室内ドアの基礎知識
樹脂シートからむく材まで各種の素材
室内ドアもインテリアの雰囲気を決める重要なアイテムだ。木質系素材が主流で、木で枠を組んだ上に繊維板などの面材を張り、突き板や樹脂シートで仕上げたものが多い。むく材や集成材に直接、塗装を施したものもある。また、最近ではこれまでなかったアルミ枠にアクリル板を張った、光を通す引き戸タイプも登場。開放感を演出するのに適している。
【選び方のポイント1】設計段階で、ドアの位置と開閉方式を決める
室内建具は、開閉方式で下記の3種類に分かれる。
室内建具の開閉方式
開き戸

洋室で最も多く使われているドア。動線を考慮して、位置と内開き、外開きの方式を選ぶ。ハンドルの操作性にも配慮。
折れ戸

開き戸よりも開閉スペースが少なくてすむので、設置間口の少ないトイレや洗面室などに向く。
引き戸

和室で主に使われるが、最近は洋風の部屋にも。通風を確保しやすく、開閉動作がラクにできるメリットも。
一般には開き戸、いわゆるドアが多い。ドアは開けたときにドア同士がぶつからないよう、設計段階で設ける位置に気をつける必要がある。
最近は引き戸も人気になっている。引き戸は少しだけ開けたままにしておくこともできるため、通風を確保したり子ども部屋の気配を察したりできる。また、高齢者にとって引き戸は開け閉めしやすいというメリットもある。
【選び方のポイント2】床材など内装と色・柄を合わせることが大切
開閉方式と位置を決めたら、次は色や柄、素材を決めよう。床材などと合わせて、コーディネートを考えることが大切。例えばナチュラルな色で統一すると、明るくカジュアルな雰囲気になるし、ダークな色で統一すると落ち着いた雰囲気に。また、光を通す間仕切り建具を使って、空間に広がり感をもたせる方法も。雰囲気をつかむためには、モデルハウスを多く見ておくのがよいだろう。
【選び方のポイント3】むく材か、突き板か、樹脂シートかでドアの価格は変わる
室内建具のグレードは、MDF(中質繊維板)など木質建材の下地に木目を印刷した樹脂シートを張ったもの、天然木を薄くスライスした突き板を張ったもの、むく材の順で高くなる。突き板にはやはり独特の重厚感や肌触りのよさがあり、むく材は、長く使っているうちに味わいが出てくる。デザインに凝ったものは高くなる傾向がある。
■収納の基礎知識
パーツを自由に組み合わせてつくるタイプが主流
あらかじめ設計に組み込んでおく造り付け収納は、各種パーツで構成されている。サイズを細かく選べるので、スペースにぴったり収められるのがうれしい。クロゼット、ウォークインクロゼット、オープンなリビング収納など自由自在に組み合わせられるものが多い。また、整理のしやすさなど使い勝手も選ぶパーツ次第。持ち物の量や種類に合わせて選ぶとよい。
【選び方のポイント1】望みどおりの収納ができるかパーツを検討し、扉の種類も決める
収納は扉枠と扉材、内部のパーツで構成される。扉のタイプは、折れ戸と引き戸に分かれる。折れ戸は全面開口できるので、物の出し入れに便利。引き戸は開けたときに戸が場所をとらないので、収納前面の空間を有効に使えるのが特徴だ。扉の素材に何を用いるかで質感が異なる。どこにどのような収納が欲しいのかをまず決めて、それにふさわしいパーツがそろう商品かどうかを検討しながら選ぼう。
【選び方のポイント2】キッチンやリビングの収納プランは用途を考慮してユニットを選ぶ
食器や家電製品を収納したり、小物をしまったり、キッチンやリビングの収納にはさまざまな用途が要求される。最近はその用途に合わせてユニットを選んで組み合わせるタイプが人気だ。あらかじめどこに何を置くのか、しまうのかを十分に検討したうえでユニットを構成したい。棚やガラス扉のユニットをうまく活かして、見せる収納も工夫したいもの。
【選び方のポイント3】扉の素材、内部造作が価格を決める
内部パーツは収納内部を有効に活用できるようになっている。自由に選べるので、自分の持ち物や予算に合わせて選びたい。どのパーツを選ぶかで、全体の費用が変わる。多くのパーツを選べば便利だが、費用もアップするので、予算と相談しながら検討を。また、扉の仕上げは、樹脂シート張りが安く、突き板、むく材となるにつれて高くなる。どこまでインテリアとしてこだわるのかが費用の分かれ目となる。
■インテリア建材の基礎知識
木、ガラス、アルミなど多様な素材が登場
ここでいうインテリア建材は、階段や間仕切り、建具など、さまざまなアイテムをさす。素材的にはアルミや木質建材、ガラスなどバラエティーに富む。最近の傾向としては、アルミ建材の商品アイテムが増えてきた。素材の特性や質感を活かした、軽やかな雰囲気の商品が多く見られる。これまでにない開放感のある空間づくりに貢献してくれそうだ。
【選び方のポイント1】素材を決めてトータルにコーディネートする
インテリア建材を選ぶときに、注意したいのは素材の統一感。採用する素材は絞るほうがよい。最近は、同じアルミ建材あるいは木質建材でも、例えば階段から間仕切り、建具、収納などまでシリーズ化している商品が増え、選びやすくなっている。最初にどのシリーズにするかを選べば、トータルなインテリアコーディネートが実現できる。ただ、ガラスブロックのような素材は、ワンポイントとして考え、間仕切りなどとして、効果的に組み合わせたい。
【選び方のポイント2】インテリア建材は設計時に何を取り入れるかを決める
インテリア建材は、間取りなどを決めていく段階で、同時に商品選択を行ったほうがよい。階段や間仕切りなど、設計に影響するアイテムが多いからだ。そのためには、あらかじめ気になる建材を選んでおいて、設計の打ち合わせ時に、設計担当者に伝えておこう。
どんなアイテムを用いるかは、なるべくショールームで実物を確認したい。ただし、大きな製品のためにショールームに展示されない場合もある。その場合は、カタログを取り寄せてよく見ておこう。設計ができたら、室内の様子がわかるようパースを描いてもらったり、模型をつくってもらってイメージを確認するとよい。
住まいの設備を選ぶ本(2016年春 1月26日発行)掲載
文/林 直樹、川口章子