「その時」に備えて近隣町会との連携を深める
関東大震災発生から100年の節目となる2023年、マンションの防災に関して考える機会が増えた人は多いだろう。特に、首都直下地震や南海トラフ地震の発生が近未来に迫っているという報道が増えた近年、「防災力」はマンションの価値を測る重要なバロメーターになった。
ザ・タワー&パークス田園都市溝の口も、防災に力を入れているマンションのひとつだ。特筆すべきは理事会、自治会、そして自主防災組織にあたる防災部会のメンバーによる意識の高い活動である。まず自治会のKさんに聞いた。
「マンション近隣の町会と協力して、近隣の小中学校の避難所設営を担当しています。マンションは在宅避難が基本なので、よほど深刻な災害が発生しない限り小中学校の避難所を使う可能性は低いのですが、『使わないから』といって近隣町会に協力しないというのはおかしな話。避難所に留まることはなくても、届いた自治体からの救援物資を受け取りに行く場合もありますしね」
2019年10月の台風で大きな被害が出た、多摩川河川敷近くのマンションの復旧ボランティアにも参加したそうだ。
「マンション地階~低層階に配電盤を設置していたマンションのほとんどが、浸水によって電気系統が作動しなくなり、エレベーターや揚水ポンプが動かなくなりました。そこでうちのマンションからも空きペットボトルを集めて持っていき、それに生活用水を入れて、バケツリレーの要領で上階に上げる作業を手伝いました。義援金の寄付なども取りまとめたりして、地元タウン誌でも取り上げられました。ザ・タワー&パークス田園都市溝の口は、多摩川から離れているとはいえ、将来どんな災害に見舞われるか分かりません。万が一被災した時は、近隣のマンションと助け合える関係を築くためにも、積極的に近隣町会との交流や情報共有を進めています」(Kさん)
ザ・タワー&パークス田園都市溝の口は32階建て。エレベーターが停止した場合、高層階の人は途端に暮らしが立ち行かなくなってしまう。そうした事態に備えるため、近隣の人の手を借りやすくする“準備”は大切だ。
「防災訓練&イベント」で顔を見える関係を築く
次に、マンション内部の防災についてヒアリング。防災部会のSさんが説明してくれた。防災部会は住人有志で構成されており、理事会と自治会をつなぐ役割も果たしているそうだ。また、理事会の役員の中に防災部会のスタッフを兼任している人もおり、連携を強めている。
「活動は大きく4つに分けることができます。まずは避難訓練です。コロナ禍で中断していましたが、今年11月25日に再開を予定しています。当日はアナウンスして、まず安否確認。各戸に玄関ドアに貼れるマグネットカード2種を配布していて、その表示をチェックしていきます。カードは「安全です」と「助けてください」で、文字どおり、その世帯の被災直後の状況を知らせるものです。それぞれを集計して防災本部にトランシーバーで報告した後、避難訓練参加者は1階に下りて、水消火器の訓練を行う予定です」
また、訓練終了後にはイベントも実施するという。
「イベント名は『タワーフェスタ』。マンションの敷地内には『みどりの大広場』という、周辺住民も自由に出入りできるスペースがあり、そこで子どもたちはゲーム、大人はちょっとビールなんかを飲んで親睦を深める、という内容です。楽しみの要素が大きいのですが、実は知り合いを増やすことでマンション内共助を促す狙いもある。いざという時、顔を知っている関係であれば何かとスムーズですからね」
次の活動は、防災マニュアルの制作だ。
「ひと口に災害と言っても、地震、火災、水害、台風などいろいろあり、対応は異なる部分もあります。火災発生時の対応と、停電した時の避難生活などのマニュアルは既に完成していますが、台風、水害などが未完成で、現在鋭意制作中です。また、1階共用スペースのグランドホールにはラックを設けて防災マニュアルを置き、いざという時にすぐ見られるようにしています」
防災マニュアルはA4判。誰もが読みやすい大きな文字で簡潔にまとめられている。例えば、非常用発電機の最大稼働時間や、どの場所に電気が供給されるかなど「その時どうなる?」がイメージしやすい。
防災部会の活動を通じてマンション生活を楽しむ
また、ザ・タワー&パークス田園都市溝の口では、防災グッズや非常食、水などを収めた防災倉庫を5階ごとに設置。1階などに集約してしまうと、エレベーター停止の際、中高層階の住人は取りに行くこともままならなくなるためだ。防災部会の3つめの活動として、年に1回、防災倉庫に収めている備品の“棚卸”があるという。
「グッズは、水、簡易トイレ、ブランケット、バール、ハンマー、手袋、毛布、タンカ、ホイッスル、ランタン、乾電池などさまざまなモノがあり、使用に耐え得るか、数は足りているかをチェックするのです」(Sさん)
そして4つ目は、近隣の大規模マンションの管理組合とのコミュニケーション。
「この近辺では溝の口駅近くのパークシティ溝の口やメイフェアパークス溝の口、日商岩井溝の口マンションなどが代表的な大規模マンション。うちのマンションは彼らに比べると築年数が浅い“後輩”なので、マンションでの防災対策のアドバイスや、町会単位の防災訓練参加の際、相談に応じていただいたこともあります」(Sさん)
実に細かく、献身的な防災部会の活動。Sさんは防災部会の取り組みを通じて、マンション生活を楽しんでいるそうだ。
「私は新築分譲時にここを購入して、ずっと住み続けています。現役の時は朝早く自宅を出て、夜遅く帰宅し、マンションのことは何も知らなかったんです。だけどリタイア後、昼間、マンション内のいろんな人と顔見知りになって話をしてみると、結構多くの方が防災に対する高い意識を持っていることに気がつきました。ご家族がいらっしゃる方も多く、その安全を守るためと防災部会に協力をしてくださる方も。この活動を通じて、多様な人の考え方にも触れられて、充実していますよ」
ボランティアで防災部会の活動をサポートしているWさんは、女性の目線からマンションの防災意識を高めたいと話す。
「災害は何時発生するか分かりません。もしも平日の昼間に起きたら、その時間帯に在宅しているのはおそらく女性のほうが多いので、一人でも多くの女性住人に防災の知識や心構えを知っておいていただきたいなと。知っていればいざという時に動きやすいと思います。『タワーフェスタ』の機会を活用して、マンション防災の大切さを発信できると良いかもしれません」
ゴルフレンジ、体育館、シアター……充実の共用施設も魅力
続いて、マンションの住み心地や購入動機などを聞いてみた。ザ・タワー&パークス田園都市溝の口は東急田園都市線とJR南武線が連絡する溝の口駅から徒歩約15分。と聞くとやや遠い印象だが、実は利便性の高い“無料バス”が存在しており、それを使うと約5分で溝の口駅に到着するという。
「マンションの隣に、企業の研究開発拠点が集まっている『かながわサイエンスパーク(KSP)』という場所がありまして、そこが、KSP従業員・関係者だけでなく、無料で誰でも乗れるシャトルバスを運行しているんです。利用できる時間帯は10時台~22時台まで。帰宅時間帯の18時台には1時間に12本も運行していて、とても重宝しています。なお、始発の7時台~9時台は有料会員(月額2200円)のみ乗車が可能。この時間帯も本数が多く、特に8時台は18本もあって非常に便利です。私や子どもたちも利用しています」(Wさん)
32階建てのタワーマンションならではの魅力を感じている方も多かった。しかも高層建築物が集積する都心ではなく、そこから一定の距離を置いた川崎市高津区だけに周囲のヌケが良く、存分に眺めを楽しめるとのこと。
「私の家は20階の角住戸で、丹沢・富士山方面ビューや横浜、多摩川も見えます。マンション前に遮るものが何もなく、本当に開放的。横浜や多摩川など、複数の花火大会もバルコニーから鑑賞できます」(Sさん)
ザ・タワー&パークス田園都市溝の口のハード魅力は、何と言っても648戸のスケールメリットを活かした多様な共用施設にある。Mさんもその恩恵にあずかる一人。
「10年ほど前に購入しまして、入居してからそういう施設があることに気が付き、たまに利用しています。ゴルフレンジは最長2時間利用できて1時間500円と超格安ですし、親戚が来た時はゲストルームも使いました。1部屋1泊3000円で1人当たりのリネン代が1000円とこちらもリーズナブルです。29階にあって眺望も抜群です」
共用施設はまだある。約235㎡の広さで、バスケットボールのゴールや卓球台もあるプレイングアリーナ(体育館)や、自宅で使っている映像出力デバイスを持ち込み、テレビの HDMI端子に差し込んで映画鑑賞などもできるシアタールーム、カラオケや楽器演奏の練習に最適なサウンドルーム、食品、サニタリー用品などをそろえたコンビニ的存在のデイリーショップなどがそろう。
「新築時に購入しました。私の場合は当時子どもが小さかったこともあり、セキュリティが決め手に。エントランス、エレベータホール、各戸の玄関と3重のセキュリティが敷かれています。また防災センターには24時間スタッフさんが詰めているのも安心ですね。子どもたちが小さかったころは、よくプレイングアリーナで遊んでいました。マンション内施設なので、心配することなく送り出していましたね」(YMさん)
敷地約1万9400㎡の6割超がオープンスペースという開放感
マンションの外に目を移すと、敷地の広大さが印象的だ。敷地面積は約1万9400㎡で、そのうち65%を緑地や広場、通路が占めている。タワーフェスタが行われる公開空地「みどりの大広場」は、直径約50m、約1800㎡。ほかにもカエデやアジサイ、サクラなどが植えられた公園や散策路などが計10カ所あり、四季の移り変わりも楽しめる。
「うちの子どもは、ここの公園でずっと走り回って遊んでいます。また、保育園や小学校、中学校も徒歩5分圏内にあって教育環境も良いですね」(YSさん)
理事長のYBさんは、実はまだ暮らし始めて約1年。たまたま輪番が巡ってきて理事になり、理事長を務めることになった。
「築17年の古さを感じさせませんし、防災部会、自治会をはじめ活動が活発でコミュニティもスムーズに機能しています。理事会としてはこの状態を維持していくために、より良い施策を考えていこうと思っています」
防災をはじめ、住人が主体的に取り組むことで生まれるソフトのパワーと、共用施設や広大なオープンスペースなど恵まれたハードが融合している、ザ・タワー&パークス田園都市溝の口。マンションの魅力にますます磨きがかかっていきそうだ。