家探しは婚活に似ている。適齢期は今? と迷いつつ行動した、私のマンション購入物語。

リビング

こんにちは。山と温泉を愛する一人旅ブロガー、月山ももと申します。

会社勤めの傍ら、暇さえあれば1人で日本各地の温泉や登山に出かけ「山と温泉のきろく」なるブログを更新しています。

引越しが嫌いで、社会人になって初めて住んだ1Kのアパートに15年以上住んでいましたが2020年に一念発起して中古マンションを購入。入居して1年半ほど経ちました。

賃貸での引越しすら避け続けていたのにいきなり購入なんて! そんな大それたことがよくできたものだなと思いますが、何とかなるものですね……。

「衣食住」の中で「住」への関心がもともと薄く、知識があるわけでもない私の体験談が、役に立つのかはわかりません。意識の低さに失笑を買うだけではないかと震えながら、購入を決断したきっかけから今日までを振り返ってみました。

実用性は薄いと思いますが、単身女性のマンション購入物語として楽しんでいただけますと幸いです。

15年以上住んだ1Kの単身用アパート、コロナ禍で1日中いたら「狭さ」が気になった

以前の私は、家には寝に帰るだけの生活でした。平日は毎日オフィスに出勤し、退勤後はファミレスやコーヒーショップで深夜までブログなどを執筆する日々。当時、自宅にはデスクやモニターなどの執筆環境がなく「自室で執筆すると眠くなってしまうし、ファミレスで書いた方が集中できる」と本気で思っていたのです。用事のない土日は、もちろん山や温泉に出かけました。

登山の様子

ところが、2020年にコロナ禍が始まると旅にも外食にも行けなくなり、仕事もほぼ在宅勤務に。やむを得ず、小さなデスクとオフィスチェアを購入して部屋の隅にワークスペースを作り、ブログの執筆もそこでするようになりました。

旧居のデスク

スペースの都合上、ベッドのすぐ橫にデスクを置くしかなく、執筆中に眠気がくるといつのまにかベッドで寝てしまい、朝まで目が覚めないこともしばしば。いいのか悪いのかよくわからない環境でした。

食べる場所がデスクしかない

外食できない期間に、たまにはおいしいご飯が食べたくてレストランからテイクアウトしたりもしましたが、食べる場所がデスクしかなく、ちょっと寂しい感じもありました。

そうして1日のほとんどを自室で過ごしていると、これまでは「お風呂に入って寝られればいい」と思っていたのに、部屋の狭さが急激に気になってきたのです。運動不足解消に「リングフィット アドベンチャー」をやってみたかったけれど、買ったところでやる場所もないのですから。

実を言えばこれまでも、転職のタイミングなどで引越しを考えたことはありました。同世代の同僚がマンションを買ったり家を建てたりしている話を聞いて「いつまでも学生が住むような部屋に住んでいていいのだろうか」と思ったこともあります。

それでも、長く住んだこの部屋をそれなりに気に入っていたし、家族が増えるライフイベントがなかったので住環境を変えることの優先順位が低く、本気で検討するまでには至りませんでした。

しかし、狭い部屋に閉じこもらざるを得ない日々にうんざりしていたこの頃、追い打ちをかけるような出来事が。自宅アパートの隣と向かいで建築工事が始まり、平日の仕事中に工事の振動や騒音に悩まされるはめになったのです……。

「狭い」「騒音」「振動」のトリプルパンチに、かつてないほどに「引越したい」気持ちが盛り上がり、これはもう、「今が決断のときでは?」と、十数年ぶりに、重い腰を上げることになりました。

賃貸と購入を比較したら、自分には「購入」が向いていると思えた

当初は「賃貸物件に引越す」ことも視野に入れていましたが、検討を重ねるうちに「引越すなら購入しよう」という方向に傾いてきました。理由は3つあります。

1つは、長く住んでいた賃貸アパートの設備が分譲物件並みに整っていたため、それにすっかり慣れてしまっていたからです。

「オートロック」「宅配ボックス」「追いだき機能付き浴室」「独立洗面台」「洗浄機能付きトイレ」「グリル付きシステムキッチン」など、1Kのアパートにしては充実していました。賃貸でこれらの設備とさらに広さも求めるとなると、家賃がかなり上がってしまいます。

しかし、分譲であれば基本的に特別グレードの高い物件でなくても備わっている設備ですし、賃貸よりも物件の選択肢が広がると思いました。

2つ目は「住宅ローンを組むなら今が一番いいのでは」と思ったからです。

アラフォーで、勤続年数も10年を超えている今であれば、長期間のローンも通りやすいでしょう。しかし、10年後に「やっぱり購入したい!」と思っても、いい条件でローンが組めるかはわかりません。さらに、2020年当時は住宅ローンの金利がこれ以上ないほどに低く、今住みたい物件が見つかれば買ってもいいのではないか? と思えてきたのです。

3つ目に「引越しが嫌いなので今後もなるべく引越したくない」と思ったからです。

私は、休日に1人で山を歩いたり旅をしたりすることを生きがいにしていますが、日常生活では変化を望まず、同じ店で同じメニューばかり頼んでしまうようなタイプの人間です。賃貸住宅に住むメリットに「いろいろな街に移り住める」とか「気に入らなければすぐ引越せる」ことがあると思いますが、できる限り引越さず、住んだ街に長く居着きたい私にとっては、それはメリットにならないなと思いました。

「購入する」ことを目的にするのではなく「ずっと住みたいと思える物件が見つかったら」購入して引越そう。そう決心して物件を探し始めました。2020年4月のことでした。

まずは希望条件を決め、不動産情報サイトで検索

購入意思が固まった後は、不動産情報サイトで希望条件を入力して検索してみました。

入力した条件はまず「エリア・路線」です。登山が趣味なので「休日の早朝に長野・山梨方面に出かけやすい」という観点で、中央線沿線を希望していました。それから「オートロック」「宅配ボックス」「エレベーター」があって「2階以上」「駐輪場」があること。そして「床面積が50㎡以上」「築25年以内」であることです。

床面積と築年数は、2020年当時に住宅ローン控除を受けるための条件となっていた項目でした。(2022年に法改正が行われたため、現在の適用要件とは異なります*1)1人で住むのに50㎡は少し広く感じますが、実は私、もともと住んでいた1Kアパートのロフトにかなりの量の本をためこんでおり、新居に書斎をつくりたかったのです。

ロフト

ロフト

旧居には四畳半ほどのロフトがあり、大量の本とオフシーズンの衣類などを置く物置として使うことで、居住スペースをキープしていました。しかし、荷物を持ってハシゴを上り下りするのは、正直けっこうしんどかったのです。

山の中のハシゴ

登山中にもハシゴはちょくちょく登場するので、自宅で上り下りの練習ができてよかったじゃないか! と思おうとしていましたが、まあ、新居にはロフトよりも書斎が欲しいなと。となると間取りは「2LDK」や「1SLDK」で探すことになり、50㎡前後の物件が視野に入ってきます。だったら住宅ローン控除が受けられる物件にした方がいいよね? と。

立地の面では、駅から近いに越したことはないですが、自分基準で「これなら毎日歩ける」と思える距離ならいいかなと。休日には山を6時間以上歩いたりするわけですし、平日も「1日1万歩は歩きたい」と思っていたので、駅近かどうかはそこまで重視しませんでした。

まずは上記の条件をチェックして検索し、住みたいと思える物件がどのぐらいの価格で販売されているかを調べました。金額や資金計画の詳細は伏せますが「月々のローンの返済+修繕積立金+管理費」の合計額が「長く住んでいた賃貸物件の家賃+管理費」を大きく超えない額で抑えたいなと思っていました。幸い手が届きそうな物件もあり「じっくり探せば気に入る物件が見つかるかも」という希望が持てました。

ただ、条件面はクリアして検索にヒットしても、物件の詳細までじっくり読むと「ここはちょっと嫌かも」と思うことも多かったです。例えば

  • 収納が少ない
  • すぐ近くに幹線道路がある
  • 間取りがなんか変だったりしてピンとこない

この3つに当てはまった場合はやめておこう、と思っていました。

間取りについては「三角形や台形の部屋があったり曲線の壁がある」「寝室からトイレが遠い」「キッチンが狭い」物件は、実際にそこで生活することをイメージすると、なんとなく嫌だなと感じて避けていました。

家探しはまるで婚活? 不動産業者とのやりとりで人生に悩む

そうしてようやく1軒の「内見してみたいかも」と思える物件を見つけたので、不動産業者に内見の申し込みをしました。

ところが「この物件は既に申し込みが入ってしまい、成約する可能性が高いので内見できません」とのお返事。しかし「ですが弊社は○○地域で多くの物件を取り扱っておりますので、ご希望の条件をお知らせいただければ別の物件をご提案させていただきます!」と言われ、それならばと希望条件を伝えました。

けれど、提案されるのは希望とマッチしない物件ばかり。

その度に「この物件には宅配ボックスがないので」とか「環八沿いなのがちょっと」とお断りするのですが「見てみたら気に入るかもしれないですし、1度内見してみませんか?」と食い下がられます。しかし、時はコロナ禍の真っ最中。「内見したいと思えた物件以外は結構です」と正直に伝えました。するとこんな返答がメールで届いたのです。

「100%希望通りの物件などあり得ません。私の経験上、条件に合わない物件を見ないお客さまは購入できません。もっとこだわりなく内見されてみてはいかがでしょうか」

なんだろうこのセリフ……見覚えがある。ああそうだ、結婚相談所だったか、仲人さんのブログで読んだんだわ。「希望条件に合わない相手だからと会ってみない人は結婚できません!」というやつですね。

親切心で言ってくださったのか、何としてでも売りたかったのかはわかりません。でも、そんな言い方をされると、天の邪鬼な私は「じゃあ買えなくていいでーす!」という気持ちになってしまい、この業者とはそれっきりになりました。

これからの自分の暮らしをイメージしてそれがかなえられる条件を設定し、検索結果から「なんとなく嫌」などの明文化できないハードルをもクリアした候補とだけ、対面する。

家探しをしながら「まるで婚活のようだわ」とは思っていました。

就活も婚活も家探しも「マッチング」なので似ている部分はあると思いますが「長きにわたる生活のパートナーを探す」という意味では、「結婚」と「家を買う」が一番似ているのかもしれません。

家に関して「絶対買いたいわけじゃないけど、住みたいと思える部屋が見つかったら購入しよう」と思っていた私ですが、かつて「特に結婚したいわけじゃないけど、この人と結婚したい!と思える相手と出会ったら結婚しよう」とも思っていたんですよね。

で、結局していないのですが。

誰かと一緒に暮らすことがストレスとしか思えず、コロナ禍でずっと家に1人でも寂しいとも思わなかったので「結婚することを目的にした結婚」はしなくて正解だったと思います。

しかし「家を買うことを目的にした家探し」をしないと家は買えないのでしょうか?「住みたい家と出合ったら買う」じゃダメ?

一瞬人生に悩みそうになったものの「そんなに真に受けることないよね……買えないなら買えないで別にいいし!」と立ち直り、振り出しに戻って不動産情報サイトを検索します。

数週間後、新たに気になる物件が見つかり、初めての内見がかないました。しかしサイトに掲載されていた写真よりも傷みが目立ち、リフォーム費用を入れると予算オーバーで残念! という結論に。その後、担当営業さんから「自分で好きなようにリノベーションしたいこだわりがなければ、不動産業者が売主のリノベ済み物件に絞って探すのも手です。業者が売主の物件の方が住宅ローン控除の期間も延びますし」という助言をいただき、何度か物件のご提案をいただきました。

しかし、条件に合わない部分があったり、内見を申し込んだのと入れ違いに決まってしまったりで、なかなか内見にたどり着けず、気がつくと連絡は途絶えていました。

押しが強くなくて感じのいい営業さんだったけど……気になる物件が出てこないと連絡しなかった私は、本気で買いそうなお客には見えなかったのかもしれないですね。

これはもしや、長く付き合っていたとしても、どちらかに「結婚したい」という強い希望がないと次のステップには進まず、気がついたら別れてる、みたいなやつ……?

「買いたい!」もしくは「買ってもらいたい!」という強い意志がどちらかにないと、マンションを買うことはできないのでしょうか?

まさかの運命の出合いが。トントン拍子に契約が決まる

2020年10月、行動制限も解かれて旅行や外食ができるようになり、騒音と振動に悩まされた建築工事も一段落して「もう、引越さなくていいかも」と思い始めていたころ。

SUUMOに検索条件を登録しておき、新着物件がないかだけは毎日チェックしていたのですが、希望条件に合致し、リノベ済みで間取りも魅力的な物件がヒットしたのです。

しかも「物件を買い取ってリノベした再販業者」が、仲介業者を通さずに直接販売している、「仲介手数料がかからない」物件です!

「仲介手数料」は不動産購入時の初期費用の中でもかなり大きな割合を占めるもので、100万円を超えるケースも珍しくありません。それが不要になるということは、かなり初期費用を抑えられるわけです。

実は、不動産情報サイトの中でSUUMOを最後まで利用していたのは「仲介業者を介さない、売主が直接販売している物件」を検索条件に入れて絞り込むことができたからでした。ひそかに狙ってはいたのです。

「SUUMO」の検索画面
「SUUMO」の検索画面で「売主・代理」にチェックを入れる

早々に見に行かなくては! と内見開始日の午前中に内見し、気に入ったのでその日のうちに購入申込書を書きました。それから1週間後、即決のお礼か、端数を値引きしていただいた上で、トントン拍子に売買契約を締結しました。

探し始めてから半年間、見つかる兆しがまるでなく、内見したのは購入した物件を含めて2部屋だけ。しかし、決まるときはあっという間でした。

不満もあるけど、それなりに楽しい暮らし

売買契約の締結後は住宅ローンの契約と決済を経て、10数年ぶりの転居です。

「もう当分引越さない気満々」だったので、奮発して「荷造りを引越し業者にお任せし、荷解きは自分で行う」ハーフコースにしたら、イメージよりずっと楽に引越せました。ロフトに3000冊ぐらいため込んでいた本がバケツリレー形式でどんどん運び出されていく光景には感動を覚えました。

引越しの段ボール

しかし「運命の出合い」と思って購入を決めた物件でしたが、引越した後は「こんなはずじゃなかった」ことも出てきました。例えば「フローリングが傷つきやすく、傷が目立ちやすい」とか「駐輪場が激狭い」とか「下の階の住人がクセ強め」とか「VDSL*2しか引けない、だと……?」とか。

その度に「内見のときにちゃんと確認すればよかった」と落ち込んだり「こんなの住んでみるまでわからないじゃん」と憤ったり。

他の方のマンション購入記を読むと、皆さん購入した物件にかなり満足されているように見えるので「なんで私はこうも文句が多いんだろうなー」と思ったりもしますが……そういう性格なんでしょう。

気に入らない部分はありつつもなるべく直視しないようにして、それなりに楽しく暮らしています。

書斎

3000冊あった本は半分ほど処分し、念願の書斎を作りました。ワークスペースも快適になり、自宅での執筆もはかどるようになりました。

キッチン

コロナ禍前は外食ばかりしていましたが、実はもともと料理は好きでした。鍋や調理器具の類いをたくさん持っていて、1Kアパートでは収納に苦労しましたが、今は収納も増えて冷蔵庫も大きくなったので、料理が楽しくなりました。

アレンジそうめん

アレンジトースト

2021年は在宅勤務が続いていたので、お昼どきにはアレンジそうめんをつくったり、旬のフルーツを使ったアレンジトーストをつくったり。

手作りケーキ

モヒート

休日にはケーキを焼いたり、植木鉢で育てたミントでモヒートをつくったりして楽しみました。

しかし、そんなふうに自宅で過ごす日々は、思ったより長くは続きませんでした。

マンションを購入したことで、この先の暮らしの「選択肢」が増えた

2022年、何度目かの行動制限が解除されると、旅や登山にも行きやすくなりましたが、出社の頻度も増えました。つまり、生活スタイルはほぼコロナ禍前に戻り、自宅にいる時間が激減したのです。

冷凍餃子

在宅勤務メインだったころは毎日自炊していましたが、帰宅時間が遅くなったので外食中心の生活に戻り、最近は味の素の冷凍餃子を焼くぐらいです。

家で過ごす時間が以前と変わらないなら、マンションを買う必要はなかったのかな? と考えたりもしますが、一つ言えることがあります。

マンションを購入したことで、暮らしのさまざまな面での「選択肢」が増えました。

長く住んでいた1Kアパートでは「人を招く」「ゆったりと料理をつくる」「落ち着いて執筆する」というような選択肢はありませんでしたが、今はあります。

もしまた、何らかの理由で外出できない日々がやってきたとしても、自宅にいても集中して執筆できるし、自炊も楽しめるし、「リングフィット アドベンチャー」もできる。

1人暮らしが寂しいと思ったことは今のところないですが、もしも心境が変わって人恋しくなったとしても、友人を部屋に招いて手料理を振る舞うこともできるし、猫を飼うこともできるのです。

マンション購入・転居を経て生活自体に大きな変化はありませんでしたが「いつか状況が変わることがあっても、この家で楽しく暮らしていけそうだ」と思えるようになったことは、大きな変化だと感じています。

住環境に関心の薄かった私が、一時期でも「部屋」と「暮らし」と真剣に向き合い、「マンション購入」という大きな決断を下せたことは、得がたい経験でした。「今買うべきなのか?」を常に迷いながら物件を探し続けましたが、結局のところ「買いたい! と思ったときが買い時」なんだろうなと、今は思っているのです。

著者:月山もも

月山もも

登山と温泉を絡めた一人旅が好き。ブログ「山と温泉のきろく」では、温泉宿への宿泊記、日帰り入浴記、旅の食事や登山の記録を更新しています。2020年10月、著書『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』をKADOKAWAより上梓。

Twitter:@happy_dust / ブログ:山と温泉のきろく

編集:はてな編集部

*1:2022年の法改正により、床面積については年間の所得金額が1000万円以下であれば「40㎡以上50㎡未満」の住宅も適用可能に。また築年数の要件は廃止され、「1982年1月1日以降の新耐震基準に適合している住宅」が対象になった

*2:光回線と電話回線を併用するインターネット回線。回線速度は一般的に最大で100Mbps