"故国のわが家”を再現したアメリカンクラシックのレジデンス

麻布台パークハウスの外観

物件名:
麻布台パークハウス
所在地:
東京都港区
竣工年:
2011年
総戸数:
165戸

東京アメリカンクラブの建て替えに伴い誕生

東京のなかでも港区は国際性豊かな地域として知られている。各国大使館が集まり、インターナショナルスクールも多い。
麻布台にある会員制国際クラブ「東京アメリカンクラブ」の存在も象徴的だろう。同クラブが設立されたのは1928年。当初は在日アメリカ人の交流を目的としていたが、現在は50カ国以上、1万人を超える人たちが会員に名を連ねている。2011年に新築されたクラブハウスにはレストラン、バー、フィットネスジム、プール、さらにはボウリング場まで多彩な施設がそろい、会員とその家族が集う場として活用されている。

このクラブハウスの建て替えと同時に、敷地内に誕生したのが「麻布台パークハウス」だ。17階建ての建物はクラブハウスと渡り廊下でつながり、会員の居住者はマンション内から行き来ができる。クラブハウスの豊富な施設を日常使いできる希少な物件といえるだろう。

建築にあたっては両棟の調和をはかるため、アメリカの建築家、故・シーザー・ペリ氏が代表を務めた「ぺリ クラーク・ペリ アーキテクツ」が全体のデザイン設計を監修。三菱地所設計と竹中工務店が設計・監理にあたり、シックで風格漂うレジデンスが生み出された。外壁タイルの色みや質感など細部にまでこだわったその建物は、たたずまいの美しさとともに階段状に連なるルーフテラスや開口部に設けたフィン(縁取り)が目を引く。

麻布台パークハウスのメインエントランス

マンションのメインエントランスの横が、東京アメリカンクラブの駐車場の入口に

麻布台パークハウスのエントランスのアプローチ

マンションへと誘うエントランスのアプローチ。カーブを描く石積みの壁が印象的だ。入口横の木は12月になるとクリスマスの飾りつけがされる

興味深いのは、眺める向きによって姿が変わる点だ。高台に広がる敷地は南北に20mの高低差があり、北側にあるメインエントランスは一見、1階のようだが、実は7階部分に設けられている。北側から眺めると10階建ての中高層建築に見え、南のサブエントランス側にまわるとタワーマンションに近いスリムなスタイルになるから面白い。

麻布台パークハウスのサブエントランス

南側に位置するサブエントランス。竹の垣根が落ち着いた風情を醸し出す。麻布十番駅はこちらのエントランスが行き来しやすい

麻布台パークハウスのサブエントランス側からの外観

サブエントランス側から見上げると、ご覧の通り、タワーマンションのような出で立ちに

洗練された共用空間は維持・管理を徹底

そんなマンションでは共用スペースの美しさも住人の自慢になっている。メインエントランスの最初の扉をくぐると、耳に響くのは涼しげな水音。滝を思わせるオブジェが置かれ、その水景が居住者や来客を和やかに出迎える。

これに続くのがコリドーと呼ばれる直線の長い廊下だ。両脇の壁は石積みやキルティングといった素材の質感で変化がつけられ、歩くのが楽しくなる。
その先の右手にはコンシェルジュカウンターのあるレセプションホールがあり、左に目を向ければ、ゆったりとソファを配したサロンが広がるという場面転換がドラマティックだ。
インテリアのテイストはアメリカンクラシック・コンテンポラリーで統一。華やかでありながら安らぎを感じる、なんとも心地よい空間である。

麻布台パークハウスのメインエントランスの水のオブジェ

メインエントランスの水のオブジェ。水音で静けさが表現されている

麻布台パークハウスのコリドー

コリドーは華やかさと落ち着きを兼備。正面の花がアイストップに

麻布台パークハウスのコリドーの壁

コリドーの壁は石積みとキルティングのコンビネーション。空間の多彩な表情が足取りを軽快にする

麻布台パークハウスに飾られた花

コリドーの突き当たりには季節の花が生けられ、行き交う住人の目を楽しませている

聞けば、この物件はもともと東京アメリカンクラブの会員向けに計画されたもの。そこで、「Home away from home」をコンセプトに、本国の"わが家”に帰ってきたような懐かしくて温かみのあるデザインが施されたという。
確かに、窓越しに庭園の緑が広がり、冬には暖炉の炎が揺れるサロンは、居心地のよい"わが家”そのもの。この空間を生み出すため、家具や照明の多くがオリジナルでデザインされているというのも驚きだ。

麻布台パークハウスのサロン

住人の第二のリビングとなるサロン。写真・右手の壁に暖炉が設えられ、冬には揺らぐ炎が見た目でも暖かさを演出する

麻布台パークハウスのサロンの一角

調度品に彩られたサロンの一角

麻布台パークハウスの庭園を望む窓際

庭園の緑を楽しめる窓際にもソファセットを配置。住人の憩いの場所として活用されている。庭園の向こうが東京アメリカンクラブの建物

麻布台パークハウスのインテリア

ディテールにもこだわったインテリアが、古き佳きアメリカの邸宅を彷彿とさせる

麻布台パークハウスのレセプション

ホテルライクなレセプション。日中はスタッフが常駐し、クリーニングの受け渡しなど暮らしをサポートしている。扉の奥が管理室に

美しい共用空間はこのマンションのアイデンティティーとなる重要な存在だが、住み心地はいかがだろうか。管理組合の神庭豊久理事長に伺ってみた。
「仕事を終えて、マンションに戻るとほっと安らぎますね。特にサロンはリビングのようにくつろげるので、新聞を広げたり歓談したりと居住者の方に活用されています。理事会はいつもここで開いているんですよ」
眺めて美しいだけでなく、その場所で過ごす時間の豊かさまで考えられたインテリアデザインというわけである。

麻布台パークハウスの管理組合理事長

神庭理事長は就任2期目。その前は副理事長も務めていた

管理組合ではそんな共用空間の維持・管理に精力的だ。
「居住者のみなさんはこの空間に愛着をお持ちなので、補修や交換には非常に気を遣います。一貫しているのは、元のデザインコンセプトを損ねないこと。例えば駐車場の待合室にあるソファの生地を新調したときには、まずは業者にこのマンションに合う色みや図柄をできるだけ多く提示してもらい、みなさんの意見を伺うなど段階を踏んで一つに絞っていきました。このとき専門家の意見にも耳を傾けるようにしています。幸いこのマンションにはインテリアデザイナーである大学教授がお住まいなので、いつも相談に乗っていただいています」(神庭理事長)

スタディールームのスタンドライトのような小さな設備でも、修繕すべきか買い替えをするのかといったことから慎重に決めている。駐車場や共用廊下の照明の明るさもしかりで、丁寧な話し合いは欠かさないそうだ。

「エレベーター内には椅子と緊急時の水などをいれる収納を設置していますが、これもやはり統一感のあるデザインにしてもらいました。コロナ禍で置くようになった消毒用のアルコールも、ダークブラウンのスタンドに収めて美観を損ねない工夫をしています」
微に入り細に穿った心配りが美しい空間を保っているのである。

麻布台パークハウスのスタディールーム

サロンの横にあるスタディールームは作業の合間に庭園の緑を楽しめる。デスクの上にあるのが修理されたスタンドライト

麻布台パークハウスのエレベーターホール

エレベーターホールは楕円をモチーフにデザイン。コリドーやサロンの直線づかいとあえて対比されている。照明の照度も落として心安らぐ雰囲気を演出

麻布台パークハウスのエレベーター内に設置されたベンチ

エレベーター内に設置されたベンチは壁と同じデザインのため、エレガントな雰囲気を損ねない。シートの下には緊急時に備えた備品が入る

麻布台パークハウスの車寄せに設けられた待合スペース

地下の車寄せに設けられた待合スペース。ソファを張り替えて一段とシックな雰囲気に

麻布台パークハウスの待合スペースのエントランス

待合スペースのエントランス。インターホンに横に置かれた消毒用アルコールスタンドも空間に溶け込んでいる

3路線利用できる利便性と静かな環境も魅力

魅力はデザインだけに留まらない。神庭理事長がこのマンションの購入を決めたポイントには「麻布台」という立地もあったという。
マンションが立つのは江戸時代には陸奥三春藩の秋田安房守の中屋敷があり、明治期には川村伯爵邸だった地。加えて、麻布台は島崎藤村が居を構え、往時の風景はいくつかの作品にも残されている。六本木界隈まで視野を広げれば、永井荷風、志賀直哉の足跡を辿ることもできる。
「文豪たちの居があった歴史ある場所に暮らせることに誇らしい気持ちになりますし、古地図を見るのが好きな私の妻もとても魅力的な場所だと話しています。なにより麻布台地の高台という立地は暮らしていても安心感があります。建物のつくりもしっかりしているためか、震度4の地震でも揺れはわずかなんですよ」

交通の利便性においても好条件がそろっている。最寄りの麻布十番駅は徒歩6分と近く、神谷町駅も10分ほど。南北線、大江戸線、日比谷線と3路線を利用でき、少し足を延ばせば芝公園駅から三田線にも乗ることができて便利とか。 「そんな利便性の高さを備えながら、大通りから奥まった場所にあるためとても静かです。高台にあるので眺めもよく、住戸によっては東京タワーを間近に望めます。また、近隣に大使館が多いのも安心感につながるメリットですね」

麻布台パークハウスの前にある「日本経緯度原点」

マンションの前は日本の経度と緯度を定める基準となる「日本経緯度原点」。史跡として港区の指定文化財にもなっている

安心・安全な暮らしをより強化すべく、管理組合では防犯・防災にもきめ細かく目を配っているそうだ。
「防犯面では24時間有人管理に加えて、防犯カメラを最新のものに替え、台数も増やしました。犯罪だけでなく、タバコのポイ捨てなどを防ぐ効果も期待しています。防災面では港区の助成金がでたときに防災グッズや備蓄を増やすようにしています」

一方で住人同士のコミュニティーの醸成にも力を注いでいる。
「コロナ禍前まではワイン会が毎年の恒例行事でした。東京アメリカンクラブを会場に借りて、集まったみなさんでワインと食事を楽しむ気軽な会なのですが、多い時には20世帯の参加がありました。和気あいあいとした雰囲気で、楽しみにされている方も多かったですね。また、マンション内のゴルフコンペも恒例で、私も参加していました。こうしたイベントは今後、様子をみながら復活させていきたいと思っています」

さらに、東京アメリカンクラブの会員居住者にとっては、クラブハウスもマンション住人の交流の場になっているそうだ。
「私も会員になっていますが、ビュッフェパーティーなど家族で参加できるイベントが多く、その機会に知り合うことは多いですね。また、フィットネスジムやプールで顔を合わせるうちに親しくなることもあります。正確な数は把握していませんが、全世帯の半分ぐらいは会員になっている印象がありますね」

こうした機会によって会えば挨拶を交わし合うような良好なコミュニティーが生まれている。
「私の場合も住戸の両隣や向かい、上の階の方は顔見知りです。昔の長屋のようなつながりは防犯・防災面でも安心ですし、それがこのマンションの住み心地のよさにもつながっているように思います」

麻布台パークハウスのサイン

共用廊下に設置された渡り廊下を示すサイン

麻布台パークハウスと東京アメリカンクラブをつなぐ渡り廊下

東京アメリカンクラブとつながる8階の渡り廊下。会員の居住者だけが通行できる

大規模修繕と借地期限が今後の検討課題

美しさと暮らしやすさを兼備する「麻布台パークハウス」だが、最近、ちょっとした変化が起きているという。
「小学生ぐらいまでの小さいお子さんが増えてきました。それは住みやすさの表れであり、とても嬉しいことです。その変化に合わせて共用部を改修するときにはベビーカーが通りやすいよう配慮をしたり、インテリアの補修をするときには耐久性も重視するようになりました」

住み心地を高めるため、数年後に予定されている大規模修繕に向けた準備も始まっている。
「もともとしっかりしたマンションなのでどこまで修繕するか、より暮らしやすくするにはどこを直せばいいのかといったことを検討している段階です。本格的に計画を練るときには東京アメリカンクラブとの協議も必要になり、2棟同時に行う可能性もあるでしょう。渡り廊下でつながる建物なので、一緒にできたほうがコスト面でもメリットがあるはずですから」

もう一つ、今後の課題となりそうなのが借地期限についてだ。東京アメリカンクラブの敷地内にあるこのマンションは51年の定期借地権付きで分譲されている。
「あと40年は住み続けられますが、借地期限が近づくにつれてさまざまな問題に直面することが考えられます。なによりこれだけ完成度の高い集合住宅を壊してしまうのはもったいない。借地期限の延長ができるのか否か、もしできるとしたら費用面はどうなるのかといったことを模索している段階です」

一方、近い未来の話としては、近隣で「虎ノ門・麻布台プロジェクト」の始動という嬉しいトピックもある。森ビルが手がけるこのプロジェクトは六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズに続く"ヒルズの未来形”とされ、約8.1ヘクタールという広大な開発面積が発表されている。
「計画をみると買い物や食事を楽しめる施設が多く、暮らしがさらに豊かになることが期待できます。インターナショナルスクールの開校も発表され、教育熱心な居住者の方には興味深い話題でしょう。神谷町駅と六本木一丁目駅を結ぶ歩行者の遊歩道も整備されるということなので、駅までのアクセスも快適になりそうです」(神庭理事長)

完成予定は2023年3月。新たなにぎわいが生まれれば、麻布台に暮らす誇りと喜びがより一層、輝きを増すことだろう。

麻布台パークハウスの銘板

構成・取材・文/上島寿子 撮影/上條泰山

この物件の空室状況をみる

※物件の状況によって、空室情報がない場合もございます。