容積率の計算の仕方は?建蔽率(建ぺい率)との違いは?容積率の調べ方や前面道路との関係は?注意点や緩和措置はあるの?

最終更新日 2024年05月10日
容積率の計算の仕方は?容積率の調べ方や前面道路との関係は?緩和措置はあるの?

家を建てるには建築基準法や都市計画法など、さまざまな法律を守る必要があります。
家の大きさについても規定があり、その土地に建てられる面積の上限を示したのが「容積率」です。
予想より小さな家になってしまった、と後悔しないために、特に土地を買うときには、容積率を確認して面積の限度を知っておきましょう。建て替えや増築をする際にも必須の知識です。この記事では、容積率の計算方法、調べ方や前面道路との関係などを解説します。

容積率とは?

容積率

容積率とは、敷地面積(建物が建っている土地)に対する延床面積(家の各階の床面積の合計)の割合をさし、次の計算式で算出できます。

容積率の計算方法
「(1階床面積 + 2階床面積)÷ 敷地面積 × 100」

敷地面積が100m2で容積率80%の地域の場合、延床面積は最大で合計80m2となります。この延床面積を元にすると、例えば下図のような1階50m2+2階30m2=合計80m2の住宅がイメージできます。

(50m2+30m2)÷100m2×100=80%となります。

容積率80%の例を図解
容積率80%の例(イラスト/長岡伸行)

容積率は用途地域によってその限度が定められており、容積率80%が限度と定められている地域では、その上限を超える面積の家は建てられません。つまり、容積率によってその敷地に建てられる家の規模が制限されるわけです。このように、家の規模を容積率によって制限することで、良好な住環境を維持しようというのが、この規定のねらいです。

建蔽率(建ぺい率)

容積率と関係の深いものに「建蔽率(建ぺい率)」があります。
建蔽率(建ぺい率)は敷地面積に対する「建築面積」(建物を真上から見た面積)の割合を示します。

建蔽率(建ぺい率)も地域によって限度が決められており、例えば50%に制限されている場合は、敷地の半分までしか建物を配置できません。

このように家の規模を制限する容積率・建蔽率(建ぺい率)は、土地購入の際などに確認するべき必須事項です。

容積率の調べ方~用途地域によって、容積率(%)の制限が違う? 

容積率は、「用途地域」ごとに限度が定められています。
用途地域は、住居系、商業系、工業系など用途に応じて13地域に分けられています。

【13の用途地域とそのねらい】

●第一種低層住居専用地域/基本的には2階建て(12m)までの低層住宅の住環境を維持

●第二種低層住居専用地域/主に2~3階建てまでの低層住宅の良好な住環境を維持

●田園住居地域/農地と低層住宅の混在する地域

●第一種中高層住居専用地域/中高層住宅の良好な住環境を維持

●第二種中高層住居専用地域/主に中高層住宅の良好な住環境を維持

●第一種住居地域/住居の環境を保護する

●第二種住居地域/主に住居の環境を保護する

●準住居地域/沿道の業務の利便性と住居の環境を保護

●近隣商業地域/近隣住宅地のための商業の利便性を増進

●商業地域/主に商業等の利便性を優先

●準工業地域/軽工業などの利便性を優先

●工業地域/主に工業の利便性を優先

●工業専用地域/工業専用の地域、住宅は不可

以上の用途地域ごとに、都市計画によって以下のように容積率の限度が定められています。
低層住居系地域の容積率が厳しく、中高層住居系からはゆるくなっています。それだけ低層住宅の多い地域は、住環境が重視されているということです。

容積率の限度は以下の中から、都市計画によって定めらます。同じ用途地域であっても住む地域によって容積率の限度が異なり、環境が違ってきます。

用途地域ごとの容積率限度の一覧表
用途地域 容積率限度(%) 以下のうち都市計画で定めるもの
第一種低層住居専用地域 50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
第一種中高層住居専用地域 100・150・200・300・400・500
第二種中高層住居専用地域
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
工業地域 100・150・200・300・400
工業専用地域(住宅不可)
商業地域 200 ・ 300・400・ 500・ 600・ 700・ 800・ 900・1000・1100・1200・1300
無指定地域 50・80・100・200・300・400

自分が求める土地や分譲住宅の用途地域や容積率については、物件広告に記載されているので簡単に調べられます。価格や広さに比べて、目立ちませんが重要な情報なので、必ず見ておきましょう。

前面道路の幅も容積率に関係

容積率は上記から市区町村ごとの都市計画で決められていますが、さらに前面道路の幅が12m未満の場合は、用途地域の区分に従って道路の幅によっても容積率は制限されることを知っておきましょう。

前面道路の幅による容積率の計算は次のように行います。

住居系用途地域の場合

前面道路の幅×0.4×100=容積率

例えば、前面道路の幅が4mの場合の容積率の限度は、
4m×0.4×100=160%となります。

前面道路幅によって導き出された容積率の限度が、都市計画で指定された容積率の限度より小さい場合は、小さいほうが採用されます。従って、指定容積率が200%であった場合は、160%が採用されます。

前面道路の幅が4mの場合の容積率を図解
前面道路の幅が4mの場合の容積率の限度(イラスト/長岡伸行)

近隣商業や準工業など

前面道路の幅×0.6×100=容積率

近隣商業や準工業など非住居系地域の場合、上記計算式の乗数が0.4から0.6に変わります。
なお角地などで複数の道路に面している場合は、幅の広いほうを基準に計算します。

容積率の緩和措置

前述のように、容積率は敷地に対する延床面積(各階床面積の合計)の割合ですが、延床面積に含まれないため、結果的に容積率が緩和されるケースがあります。

●地階

天井が地盤面から1m以下の地下室は、その住宅全体の床面積の3分の1までは容積率を計算する際の延床面積には入りません。地下室を含む総2階建ての家の場合なら、丸々1フロア分の面積が不算入となります。

地下室面積不算入の図解
地下室部分は延床面積から除いて容積率を計算できる(イラスト/長岡伸行)

●ビルトイン車庫(駐車場)

建物に組み込まれた車庫(駐車場)は、建物全体の面積の5分の1までは、容積率計算の際の延床面積には入りません。

例えば、家の延床面積が100m2だった場合、
100÷5=20m2
車庫は20m2までは、延床面積から除くことができます。

●小屋裏収納(ロフト)

最上階の屋根裏空間を活用する小屋裏収納(ロフト)は、面積が直下の階の床面積の2分の1以内、天井高さ1.4m以下までなら容積率計算の際の延床面積には入りません。

ただし、小屋裏(ロフト)の用途は収納に限ります。寝室など部屋の用途には使えません。
また自治体によっては、固定階段が不可で、取り外しができるハシゴに限っていることもあるので確認が必要です。

●吹抜け

吹抜け部分はそもそも床がないので、床面積には含まれません。
例えば、1階の部屋の上が一部吹抜けになっている場合、1階部分は全て床面積に含まれますが、2階は吹抜け部分を除いて床面積を計算します。ただし渡り廊下がある場合は、その部分は面積に参入されるので注意しましょう。

吹抜けを設けることで床面積が増えるわけではありませんが、天井の高い開放的な空間ができます。

●バルコニー(ベランダ)

外気に開放されているバルコニー(ベランダ)は、先端から2mまでは床面積に不算入、2mを超える部分は、参入されます。

●出窓

室内側の下端が床面から30cm以上、外壁面からの出が50cm未満、室内側から見て2分の1以上が窓であれば、床面積に参入されません。

ただし、出窓下に床までの収納を設けると、床面積に含まれてしまうので注意しましょう。

●屋上・ペントハウス

屋上は物干し場やガーデンなどとして活用しても床面積に含まれません。
屋上に出入りする階段から続くペントハウスも建物の建築面積(真上から見た建物の面積)の8分の1以内などの条件を満たす場合は、階としてみなされず、容積率計算の際に面積に含まれません。

出窓
(画像/PIXTA)

これらを上手に設計に取り入れて、容積率の制限の中で、少しでも生活空間にゆとりをもたせましょう。

容積率がオーバー 家は建てられる?

家を建てるときは、“少しでも空間を広く取りたい”と思うもの。しかし、住宅の容積率は建築基準法で決められているため、容積率をオーバーすると建築許可が下りません。

中古住宅で容積率や建蔽率(建ぺい率)がオーバーしているとどうなる?

また、検討している物件が中古住宅で容積率や建蔽率(建ぺい率)がオーバーしている場合にも、2つのデメリットが生じます。

住宅ローンが利用できない

1つ目が「住宅ローンが利用できない、ローン審査が通らない」という問題です。ローン審査では購入者だけでなく、該当する物件も調査対象となるため、違法物件ではなくとも、現行の建築基準法に違反している不適格物件はリスクと捉えられ、承認が下りません。

売却しづらい

2つ目の問題が、売却時に「買い手がつきづらい」こと。容積率が守られていない物件は違法物件とみなされ、市場価値のない不動産だと判断されます。買い手が見つからないのはもちろん、仲介業者に取扱いを断られるケースもあるでしょう。

“一生に一度の買物”というイメージがある住宅ですが、近年は幅広い世代で住み替えや引越しが当たり前になっています。誰しも自宅を売却する可能性があるからこそ、中古住宅を購入する際は容積率オーバーに注意しましょう。

もっとある家の規模を制限する法律

家を建てるときには、容積率・建ぺい率のほかにも敷地の条件に合わせて守るべき、規模を制限する法律があります。それらを紹介しましょう。

●敷地の接道義務

家を建てるには幅4m以上(地域によっては幅6m以上)の道路に2m以上接していなければならないという決まりがあります。

では、4m未満の道路に接している場合は家を建てられないのかというとそうではなく、道路の中心線から2mになる位置まで敷地を後退(セットバック)させます。
家を建てるための敷地と認められるのはセットバックした位置から後ろです。

現在古い家が道路ギリギリに建っていても、建て替えるとなると接道義務を満たすためにセットバックが必要になります。古家付き土地を購入する場合は注意しましょう。

●道路斜線制限

前面道路の反対側の境界線から建物に向かって引いた斜線の中に建物を収めなければならないという制限で、建物の高さを抑えて道路の採光を確保するのがねらいです。

●日影規制・北側斜線制限

日影規制は、冬至の日を基準に、周囲の建物に一定時間以上続けて影が生じないようにする規制です。規制を受ける建物の高さと日影時間は用途地域によって異なります。

また、北側斜線制限は、北側隣家への南からの日照を確保するのがねらいとなります。
北側隣地境界線上から一定の高さに立ち上げた地点から一定の勾配で引いた斜線内に、建物を収めなければならないというものです。

●絶対高さ制限

第一種および第二種低層住居専用地域で規定されている建築物の高さの上限のことになります。
10mまたは12mが都市計画で決められています。容積率に関係なくこれより高くすることはできません。

●都市計画道路予定地の制限

都市計画によって、道路をつくることが予定されている土地があります。あくまで予定なので、いつ道路ができるのかは明確ではありませんし、その土地を購入して家を建てることも可能です。

ただし、都市計画道路予定地での建築には制限があります。建築制限は自治体によって設けられています。例えば東京都の基準では、高さ10m以下の3階建てまで可能です。地下室は不可。構造は木造、鉄骨造、コンクリートブロック造などとなっています。

●地域の建築協定

地域の土地の権利者たちの合意により自主的に設けられた約束事で、自治体によってその内容が認可されたものです。例えば、住環境維持のため法で定められた容積率や建蔽率より厳しい基準を定める、住宅以外の建物を認めないなどがあります。協定が成立したときの土地所有者だけでなく、後から土地を買った者にも効力がおよびます。

地域の環境を守るために、建築基準法よりも厳しい内容になっているので、土地を買ってから「知らなかった!」とならないように、購入する土地の協定の有無と協定がある場合はその内容をよく調べておきましょう。

このように家を建てるための法律には制限がある一方で緩和措置もあります。土地購入や注文住宅を検討している方は、その土地に思いどおりの家が建てられるのか、どのような制限があるのか事前に確認しましょう。

まとめ

容積率は敷地に対する延床面積の上限を定めたもの。用途地域ごとに定められ、良好な住環境を守るために低層住居専用地域ほど制限が厳しい

床面積の緩和措置もあり、上手に活用すると容積率の範囲内で空間を広げられる

容積率以外にも家の規模を制限する法律はいろいろある。広告でチェックして、物件購入の参考にしたい

注文住宅の会社を探す
土地を探す
新築一戸建てを探す
中古一戸建てを探す
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
賃貸物件を探す
引越し見積もりをする
リフォーム会社を探す
中古マンションを探す
新築マンションを探す
売却査定する
構成・取材・文/林直樹 イラスト/長岡伸行
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る