耐震基準適合証明書とは? ないと困るの? 旧耐震は住宅ローンが借りられない? 取得するメリットや取得方法、住宅ローンについてなどを解説

最終更新日 2025年02月20日
耐震基準適合証明書とは?ないと困るの?取得するメリットや取得方法などを解説

近年大きな地震が相次ぎ、中古一戸建ての購入に際し耐震性を重視する方が増えています。中古住宅の耐震性を証明する「耐震基準適合証明書」とはどのような書類なのか、取得するとどのようなメリットがあるのかを、さくら事務所の友田雄俊さんに伺い解説します。取得条件を満たすのが厳しいといわれている理由や、旧耐震は住宅ローンが借りられるのか、住宅ローン控除の対象になるのか、耐震リフォームやリノベーションなどにかかる平均価格などもお伝えします。

耐震基準適合証明書とは? ないと困るの?

耐震基準適合証明書とは?

耐震基準適合証明書はその名のとおり、建物が耐震基準を満たしていることを証明する書類です。以下は国土交通省で公開されている証明書のひな形です。

耐震基準適合証明書のひな形
出典:『耐震基準適合証明書』(国土交通省)。耐震基準に適合したことを証明する人や機関を記入するようになっている

なお耐震基準適合証明書における耐震基準とは「新耐震基準」のことです。

新耐震基準とは、1981(昭和56)年6月1日に改正・施行された建築基準法における耐震基準を指します。それ以前の「旧耐震基準」と呼ばれる耐震基準とは、以下のような違いがあります。

旧耐震基準 震度5程度の地震では倒壊・崩壊しない
新耐震基準 震度5強程度の地震では軽微なひび割れ程度にとどまり、震度6強から震度7程度の地震でも倒壊・崩壊しない

新耐震基準で建てられた住宅は、近年増えている震度6弱以上の大型地震に遭っても家族の命を守りやすいことが、旧耐震基準の家との違いです。

耐震基準適合証明書がないと困るのはどんなとき?

「2022年度の税制改正により、1982年1月以降に新耐震基準で建築された場合は、耐震基準適合証明書がなくても住宅ローン控除を受けられることになりました。

そのため耐震基準適合証明書がないと困るのは、主に1981(昭和56)年5月31日以前に建築確認された旧耐震基準で建てられた家を購入した買主が、住宅ローンを借り入れたり住宅ローン控除を受けたりするときです。該当する建物かどうかは、重要事項説明書で説明義務があるため、不動産会社が把握しているので確認しましょう。

購入したい中古住宅が旧耐震基準で建てられた家であっても、住宅ローンの借入や住宅ローン控除を利用しないのであれば、耐震基準適合証明書が必要になることはほぼないでしょう」(友田さん/以下同)

中古住宅の購入に際して買主が住宅ローンを借り入れるときには、新耐震基準を満たしている物件であることを条件とする金融機関が多いです。また住宅ローン控除や不動産取得税の減税措置を受けるのにも、新耐震基準を満たしていることが条件とされています。

そのようなときに、新耐震基準に適合していることを証明する書類の一つが『耐震基準適合証明書』です。

耐震基準適合証明書を取得するメリットは?

旧耐震基準で建てられた家の購入に際して耐震基準適合証明書を取得することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?

住宅ローンを借りやすくなる

「先の通り、多くの金融機関は『新耐震基準に適合している物件である』ことを住宅ローンの融資条件としています。そのため旧耐震基準の家では、住宅ローンを借りられる金融機関が限られます。そのようなときに耐震基準適合証明書を取得すれば、住宅ローンを借りやすくなります。

なお住宅ローンのなかには、【フラット35】のように、旧耐震基準で建てられた家に対して独自の耐震評価基準を設けている場合もあります。そのような金融機関で住宅ローンを借りる場合は、旧耐震基準で建てられた家であっても耐震基準適合証明書は必ずしも必要ではありません」

住宅ローンのイメージ
耐震基準適合証明書付き住宅を購入できれば、住宅ローンを借りやすくなる(画像/PIXTA)

住宅ローン控除を利用できる

「耐震基準適合証明書を取得できれば、旧耐震基準の家であっても住宅ローン控除を利用できます。中古住宅に対しては、年間最大で14万円が最長10年間所得税から控除されます(2025年12月31日の入居まで)」

旧耐震基準で建てられた家で住宅ローン控除を受けるには、以下の3つの方法があります。

①耐震基準適合証明書付きの中古住宅を購入する
②売買契約締結から引き渡しまでの間に売主に耐震補強してもらい、耐震基準適合証明書を発行してもらう
③引き渡し後に買主が耐震補強工事をおこなって耐震基準適合証明書を取得する

③の場合、住宅ローンは耐震基準適合証明書を要さない金融機関で借り入れ、買主は住宅を取得する日まで(引き渡し前)に「建築物の耐震改修計画認定申請書」などによる一定の申請手続きをおこなう必要がある点に注意しましょう。

なお旧耐震基準の住宅で住宅ローン控除が適用されるには、耐震基準適合証明書を取得している以外にも、対象となる年の合計所得額が2000万円以下である、物件の床面積が50m2以上であるなどの要件を満たす必要があるので確認するようにしてください。

不動産取得税や登録免許税などの特例措置を受けられる

「中古住宅の購入時に耐震基準適合証明書を取得できれば、不動産取得税や登録免許税などの特例措置を受ける条件を満たせることもメリットです。特例措置を受けられると、納税額を減らすことが可能です」

減税のイメージ
耐震基準適合証明書を取得すると、不動産取得税の軽減措置などを受けられる(画像/PIXTA)

地震保険料が優遇される

「建物にかける地震保険料は、建物の免震・耐震性能に応じた割引制度があります。旧耐震基準の物件でも、耐震基準適合証明書を提出することで10%の割引を受けられます」

旧耐震の住宅で耐震基準適合証明書の取得条件を満たすのは厳しい?

耐震基準適合証明書を取得するのは厳しいといわれますが、それには2つの理由が考えられます。

売主の協力を得て耐震診断や耐震補強をおこなう必要がある

住宅ローンの借り入れや住宅ローン控除を目的に、売買契約を締結してから引き渡しまでの間に耐震診断を受けたり耐震補強工事をおこなったりするのには、相応の費用と時間がかかります。売主にとってはデメリットとなるため協力を得られる可能性は低く、そのため「耐震基準適合証明書を取得するのは厳しい」といわれているのです。

高額な費用をかけて「現行の耐震基準」へ適合させる必要がある

耐震基準適合証明書を取得するには現行の耐震基準への適合が必要で、そのためには高額な費用がかかることも「耐震基準適合証明書を取得するのは厳しい」といわれる理由の一つです。
 
「耐震基準適合証明書を取得するときには耐震診断をおこないますが、旧耐震基準で建てられた家が何もしない状態で現行の耐震基準の規定を満たしていることはまずありません。そのため耐震基準適合証明書を取得するには、壁や床を剥がして補強するなど大がかりな耐震補強工事が必要になるのが通常で、費用も高額になりがちなのです」

耐震基準適合証明書と耐震補強工事の関係
旧耐震基準の家で耐震基準適合証明書を得るには大規模な耐震補強工事が必要になる(イラスト/いぢちひろゆき)

耐震基準適合証明書の取得方法や発行にかかる期間は? 費用はいくら?

耐震基準適合証明書はどのように取得するのでしょうか? 発行にかかる期間や費用とあわせて伺いました。

耐震基準適合証明書はどこで・誰が発行しているの?

耐震基準適合証明書の発行機関は、4つあります。

  • 建築事務所に所属している建築士
  • 指定確認検査機関(建築確認申請の受理などをおこなう機関)
  • 登録住宅性能評価機関(住宅の性能評価をおこなう機関)
  • 瑕疵(かし)担保責任保険法人(住宅購入後に不具合が発覚した際に保険金を支払う「瑕疵(かし)担保責任保険」を提供している法人)

いずれの方法で取得しても問題ないので、利便性が高い方法を選ぶとよいでしょう。

発行までにかかる期間は?

「耐震基準適合証明書の発行にかかる期間は、耐震改修の規模によって異なります。

基本的には、耐震診断の依頼を出して、実際に耐震診断をおこない適合しているかどうかを確認するまでに、スムーズに進んだとして1~2週間程度かかります。

旧耐震基準の家であれば、耐震補強工事は必ず必要になるので、さらに工事期間を加算します。旧耐震基準の家を現行の耐震基準に適合する工事には、短くても1~2カ月かかるのが一般的です。工事完了後に実際に耐震基準適合証明書が発行されるまでには1~2週間程度です。

耐震診断の依頼から耐震基準適合証明書の取得までには、最短でも1カ月半程度は見込んでおく必要があるでしょう」

耐震基準適合証明書の発行までにかかる期間
耐震診断を依頼してから耐震基準適合証明書の発行までには最短でも1カ月半かかる(イラスト/いぢちひろゆき)

取得費用の目安は?(旧耐震基準の家の場合)

旧耐震基準の家で耐震基準適合証明書を取るには、耐震補強工事が必要となり、一般的には数百万円かかります。そのため単に住宅ローン控除の利用が目的であるなら『割に合わない』と思う方もいるでしょう。

ちなみに耐震診断および耐震補強を推進する木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)がおこなった耐震補強工事の平均額は、167万円とされています。

「100万~200万円程度でおこなう耐震補強は、建物全体的なものではなく、範囲や内容を限定したものになると考えます。新耐震以降の物件であれば、安心して住むためにおこなう耐震補強も比較的小規模な工事で十分な効果が得られることもありますが、旧耐震基準の家を現行の耐震基準に適合させるための工事となると、実際にはもっと多くの費用がかかることが一般的です。

補強そのものにかかる材料費や工事費の他、解体や復旧にかかる費用も考慮する必要があり、家の大きさや築年数、劣化状態によっても異なる点には注意が必要です。

とはいえ、旧耐震基準の家を購入して住むのであれば、家族が安心して暮らすためにも耐震補強工事をおこなうに越したことはありません。『住宅ローン控除を利用するために耐震補強する』と考えるのではなく、『住宅の安全を確保するために耐震補強した結果、耐震基準適合証明書を取得し住宅ローン控除が利用できる』と考えるとよいでしょう」

耐震基準適合証明書の取得に必要な書類は?

耐震基準適合証明書の取得には、以下のような書類が必要です。

  • 検査登記事項証明書の写しもしくは建物登記事項証明書の写し
  • 物件状況等報告書
  • 台帳記載事項証明書もしくは検査済証の写し
  • 間取図(設計図面)

「間取図については、耐震診断をおこなうためにはどの壁にどのような柱が入っているのかが分かるような、設計図面のようなものが望ましいです。

基本的に書類については、中古住宅を購入する不動産会社に依頼すれば揃えてもらえるので、お願いするとよいでしょう」

耐震基準適合証明書の取得に必要な書類
耐震基準適合証明書の取得に必要な書類は、不動産会社に依頼して集めるとよい(画像/PIXTA)

「耐震基準適合証明書は、必要となる場面が主に『旧耐震基準で建てられた家の購入時』に限られます。すでに耐震補強済みの家を購入する場合以外は、基本的には耐震補強工事とセットで考えなければなりません。

近年は、旧耐震基準の家の耐震補強工事に対し、補助金や助成金などを出す自治体も多くなりました。そういったものを利用して耐震補強すれば、旧耐震基準の家であっても安心して暮らしていけるようになります。さらに耐震基準適合証明書を発行してもらい住宅ローン控除などを利用すれば、経済的メリットは大きくなると思います」

まとめ

耐震基準適合証明書は、新耐震基準に適合していることを証明する書類を指す

旧耐震基準の家を現行の耐震基準に満たし耐震基準適合証明書を取得するには耐震補強工事が必要

耐震補強し耐震基準適合証明書を取得すると、住宅ローン控除を受けられるなどのメリットを得られる

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/いぢちひろゆき
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