新築に比べて割安な価格の中古一戸建て。でも、「見えない部分にトラブルがあったらどうしよう」となんとなく考えてしまうのが中古の不安なところ。購入後に不具合が見つかって、修理が必要になったりしたら高い買い物になってしまうことも。なにより、「この家、だいじょうぶかな」と感じながら暮らすのはストレスになる。そこで知っておきたいのが万が一に備える仕組み。今は、建物の状態を把握した上で購入できたり、購入後の不具合を補償してもらえる方法があるのだ。中古を安心して買うために、知っておきたいノウハウを紹介しよう。
建物の状態や修繕が必要か、修繕するならどの箇所にいくらくらいかかりそうかなどをプロに診断してもらえるのがホームインスペクション。建物の状態を把握した上で、購入を検討できるのが魅力だ。ホームインスペクションの専門会社はまだ少ないので、購入候補の物件を調べたいときは、まず仲介会社に相談してみよう。
検査機器を使う場合もある。サーモグラフィーで壁や床内部の断熱材の状態が、レーザー水準器で建物の傾きが計測可能だ。耐震診断用のソフトを使ってどの程度の地震に耐えられるか調べることもできる
検査項目によって違うが目視での標準的な診断で7万~8万円。検査機器を使うオプションを付けると15万~16万円に。耐震診断を希望する場合は10万円台~20万円台が目安だ。
2013年に国交省が診断方法や診断項目に一定の基準を設けたガイドラインを策定した。とはいえ、会社によって内容はさまざま。どんな項目を検査してくれるのかを依頼前に確認しよう。
第三者の専門家のチェックを受けることで、欠陥住宅を買うリスクを避けられる。メンテナンスの必要な時期やその費用の目安が分かるほか、診断結果が建物の状態の良さを示す資料になる。
ハウスメーカーや不動産仲介会社、買取再販専門会社が新築や中古の物件を購入し、一般の購入希望者に販売するのが買取再販。最近は、買い取った中古物件の状態を検査後、補修やリフォームをして価値を高めたうえで販売するケースも。リフォームで隠れてしまう部分も、販売前にプロの目で検査・補修されていれば安心だ。
一定のリフォームが行われた買取再販の住宅は、所有権移転登記の登録免許税が0.1%に軽減。2022年度税制改革で2年延長され2024年3月末までとなった。
買取再販を行う会社が相場よりも安く物件を買い取っているケースが多く、リフォームもグループ会社、提携会社で行うことでコストを下げ、個人で購入、リフォームするよりも安い傾向に。
リフォーム済みなので支払いが済めばすぐに入居が可能。全額現金での支払いなら即入居できるし、住宅ローンがスムーズに借りられれば1カ月程度が購入申し込みから入居までの目安だ。
中古住宅の購入では、一般的に仲介手数料が必要。しかし、買取再販を行う会社自らが売主となっている場合、間に不動産会社が入らなければ、購入時の仲介手数料はかからない。
中古を買ってから発覚した雨漏りなど、買主が知らなかった、または見つけられなかった構造や防水などの欠陥(瑕疵)があったとき、補修にかかる費用をカバーできる保険。建物の検査を受けてクリアするか、補修を行って条件を満たした場合に加入できるので、購入する物件の品質が確認されている安心感がある。
床面積や構造などで違うが、一般的な一戸建てでは検査料と保険料で8万~10万円程度。検査事業者によっては検査が1回で済む場合があり、もう少し割安なケースもある。
売主が個人なら1年または5年。売主が不動産会社など法人の場合は2年または5年。保証内容によって違うので、詳細は検査事業者や不動産仲介会社に尋ねてみよう。
住宅の引き渡しを受けたあとに欠陥が見つかっても、多くの場合、保険金で確実に補修できる。また、中古住宅の取得に係る優遇税制を受ける際にも使える証明書類「保険付保証明書」をもらえる。
仲介会社が中古一戸建てやマンションの建物の性能や住宅設備の状態などを、社内、または外部の専門家に診断を依頼し、独自の基準をクリアしていれば修繕費などに対する一定期間の保証をつけて販売する中古住宅。仲介会社ごとに検査内容や保証内容が違っている。保証付き物件を扱っているかだけでなく、内容も確認したい。
リノベーション済み物件のなかには、住戸の専有部分の重要インフラに加えて、内装や設備についても一定期間の保証が付くものもある。
買主には建物の検査費用や保険料などの費用負担はない。ただし、引き渡し後3カ月程度は仲介会社に仲介手数料を払った人が、中古物件引き渡し後の保証対象になるのが一般的だ。
仲介会社によって保証期間は異なるが、1~2年程度とするケースが多い。仲介会社は同じでも物件によって保証期間が違うケースもあるので、あらかじめ確認しておきたい。
万が一、不具合があっても対象部なら保証してもらえる。またその際の相談先がわかりやすい。売主との契約前に検査・調査をしているので、一定水準が保証された物件を購入する安心感も。
建物の状態を確認・補修済みの物件や、購入後のトラブルの保証がついた物件など、今は、安心がセットになった中古一戸建てを選びやすい時代。建物の品質が確認済みで、適切な補修やリフォームがされていれば、将来、住み替えることになった場合も売ったり貸したりしやすいというメリットもある。買取再販の物件や保証付き物件を扱っていたり、既存住宅売買かし保険に詳しい、また、ホームインスペクションを自社内や提携会社と手がけているなど、経験とノウハウのある不動産仲介会社を探したうえで、物件探しをスタートさせるといいだろう。
取材・文/田方みき デザイン/石澤愛(アワーズ) イラスト/藤井昌子
2015年10月21日 SUUMOマガジン 広島版および2016年2月17日 SUUMOマガジン仙台版より転載