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賃貸物件のお部屋探しをしていて、敷金と礼金がなしという「ゼロゼロ物件」、目にしたことがある人もいることでしょう。「敷金も礼金もいらないなんて、ラッキー!」と思う人もいれば、「ほんとにゼロなの?」「なにか裏があるんじゃないの?」と気になる人もいるはず。今回は「ゼロゼロ物件」が増えた背景、メリット・デメリットや注意点、初期費用はどのくらいかかるのかについてご紹介しましょう。
日本で住まいを借りるときには、敷金や礼金といった初期費用がかかります。敷金と礼金は名前だけでなく、用途や目的が異なりますが、住みはじめるときに初期費用として支払うのが一般的です。いわゆる「ゼロゼロ物件」とは、この敷金と礼金がともにゼロになる物件のことをいいます。では、なぜ敷金と礼金がゼロ円になるのでしょうか。その背景から聞いてみましょう。
「ゼロゼロ物件は、この10年で増えてきた印象があります。背景には、ネットが普及してお部屋を手軽に比較検討できるようになったこと、入居者が減って賃貸物件の競争が激しくなっていること、家賃保証会社が増え、借り手が家賃を滞納したとしても、家賃保証会社が債務回収を担ってくれるようになったことがあげられます」と教えてくれたのは不動産会社 ジェクトの遠藤祐太さん。
スマホやPCでいつでもどこでも気軽にお部屋を検索、比較できるようになれば、それだけ競争は激しくなります。それゆえに、大家さん、不動産会社は少しでも有利な条件にして「空室を埋めたい」と考えているようです。また、近年では、借り手が保証料を払い、家賃保証会社に保証してもらう契約が増えているので、大家さんや管理会社の家賃未回収リスクは減っています。こうした複数の要因がかさなって、近年、ゼロゼロ物件が増えているというのです。

入居する際にゼロゼロ物件であると、通常の物件と比較してどのようなメリットがあるのでしょうか?
借り手側からすると、これまで転居するときにはまとまったお金が必要でしたが、こうしたゼロゼロ物件であれば、初期費用を抑えつつ、転居することができます。また、貯金を礼金や敷金ではなく、好きな家具や家電の購入に充てることもできるようになります。このように、気軽に住み替えしやすくなっただけでなく、好きなものにお金を使えるようになるのが、ゼロゼロ物件の最大のメリットといえるでしょう。
転勤や転職、家庭の事情などで急な引っ越しが必要になった場合、初期費用が少ない分、資金面での負担が軽くなります。これにより、スピーディーに新しい住まいを確保しやすくなります。
数年以内にまた引っ越す可能性がある場合、敷金や礼金が不要な物件はメリットが大きいでしょう。礼金は通常、戻ってこない費用なので、短期で住む場合には大きな出費になります。ゼロゼロ物件なら、その心配がありません。
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ゼロゼロ物件が増えてきた背景やメリットはわかりましたが、デメリットや注意点はないのでしょうか。
遠藤さんによると、「ゼロゼロ物件に入居を決めたからといって、初期費用がゼロになるわけではなく、貯金がまったくゼロ、自己負担ゼロで引越しできるわけではありません。そこは誤解しないでほしいですね」といいます。
確かに、敷金と礼金がゼロになったとしても、前家賃、火災保険料、家賃保証会社に払う保証料、仲介手数料などは変わらずに必要となります。ほかにも物件によっては、マンションやアパートの設備などのトラブルに24時間対応してくれるサービスの加入料(24時間安心サービス・安心サポート)、鍵交換費用や町内会費が求められることもあるでしょう。あわせて、引越しを業者に依頼するのであれば、引越し代も必要になります。いくらゼロゼロ物件だからといって、「完全にゼロ円」で住み替えができるわけではありません。およその目安として、家賃の2~3カ月分程度、費用がかかると見込んでおくのがよさそうです。

また、初期費用についても、きちんと見積もりをもらい、わからない点、項目については一つずつ確認しておくのがよいといいます。
「敷金は不要でも、部屋を掃除するルームクリーニング代、エアコンのクリーニング代、部屋の消毒代などが初期費用として入っていることがあります。物件の詳細や条件が書かれた付帯事項の欄をしっかり読み込みましょう。また、見積もりをもらったら、しっかり確認し、わからない点は『このお金は何に使うのですか?』、『納得できなければ、はずすことはできますか?』と聞いてみましょう」(遠藤さん)
初期費用が抑えられるゼロゼロ物件だからこそ、「オトクだ~!」と浮かれることなく、きちんと契約内容を確認しておきたいものですね。
ゼロゼロ物件の気になる点として次にあげてくれたのが、物件の特色です。
「ゼロゼロ物件だからといって、物件の質が悪かったり、家賃が高かったりするわけではありません。バス・トイレ別など、設備が充実している物件も多いものです」(遠藤さん)
ただ、印象として、駅から距離があったり、プロパンガス、築古の物件などがあてはまることが多いといいます。
確かに、人気沿線やブランドエリア、駅近などの好立地、新築などの物件であれば、自然と入居希望者が集まるため、敷金と礼金をわざわざゼロにする必要はありません。一方で、駅から少し離れていたり、新築ではないものの、家賃を維持しつつ入居者を集めたい築古の物件が、「ゼロゼロ」になりやすいようです。
「もちろん、敷金と礼金をともにゼロにするかどうかは、不動産会社と大家さんの意向や考え方、事情によるので、一概にはいえません。ただ、シングル向けの物件は駅近の物件がどうしても強いので、少し離れた物件は、空室をなるべく避けてすぐにでもお部屋に入ってもらいたい、という意向もあるのではないでしょうか」(遠藤さん)
なるほど、不動産会社や大家さんも「まだ、築浅だから家賃は下げたくない。でも、早く入居してもらいたい……」と考えるのかもしれません。いずれにしても、築年数や駅からの距離も含めて、条件に納得できるのであれば「ゼロゼロ物件」はとてもオトクといえそうです。

ゼロゼロ物件の注意点として次にあげてくれたのが、物件の退去時の「予告期間」です。
「通常、賃貸物件の解約予告期間は、1カ月前とするところがほとんどでしょう。これであれば、次のお部屋探しの際、契約を申し込んだ段階で、住んでいる部屋の解約予告をすれば、およそ二重家賃が発生することはありません。
ただ、ゼロゼロ物件では、解約予告期間が2カ月など長めに設定されていることがあります。すると、次の物件に住み替えるときに、前家賃と次の家賃とがダブルで発生してしまい、『二重家賃』が発生してしまうこともありえます。
家賃1カ月の負担は大きいですよね。多くの人は、付帯事項の解約まで読み込むことはないと思うので、注意したいところです」(遠藤さん)
この解約予告期間は、住んでいる地域やオーナーの意向によっても異なるそうなので、まずは地域の慣行も含めて契約時に確認するのがよさそうです。
注意点とは別に、オトクな話として遠藤さんが教えてくれたのは、「敷金1カ月の負担はあるものの、家賃1カ月程度のフリーレント物件」だといいます。
「フリーレント期間によりますが、家賃1カ月分が無料になるのであれば、敷金は負担したとしても、実質的な負担総額はほぼ同じになるはず。ゼロゼロ物件、フリーレントなどは、実質的な負担額を考えながら探してみてください」と遠藤さん。
そもそも敷金は部屋の保証金のような役割を果たし、原則として返還されるもの。ただ、ゼロゼロ物件になると、退去時に床やキッチン・バス・トイレ・洗面所など「ハウスクリーニング料」を請求されることもあり、まったくゼロというより、はじめにいくらか負担しておいたほうが安心という考え方もできます。
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「近年では、ゼロゼロ物件だけでなく、仲介手数料も大家さん負担という物件が登場しています。ゼロゼロ物件が発展するようなかたちで、今後、仲介手数料などの初期費用を抑える動きは続くかもしれませんね」と遠藤さん。
なるほど、ゼロゼロ物件に加えて、フリーレント、仲介手数料無料など、お部屋を借りるときの初期費用を抑える傾向は今後も大きな流れとなっていくのかもしれません。ただ、いずれにしても「支払い名目」「総支払額」「解約予告」などには注意が必要です。こうした「付帯事項」にしっかりと目を通し、契約をする際には、あわてず、浮かれず、しっかりと内容を理解してから行うようにしたいものです。
敷金と礼金がかからないゼロゼロ物件は、近年増加傾向にある
ゼロゼロ物件も通常の物件と同じく、契約内容、付帯事項と見積もりをよく読もう
ゼロゼロ物件とフリーレントでは、総負担額が変わらないことも。どちらがいいか確認して契約しよう