敷金・礼金とは?違い・相場・トラブル事例は?敷金・礼金ゼロ物件のデメリットは?

最終更新日 2023年05月29日
敷金・礼金とは?違い・相場・トラブル事例は?敷金・礼金ゼロ物件のデメリットは?

お部屋を借りようと不動産検索サイトを見ていると、目につくのが「敷金・礼金」という文字。初めてお部屋を借りる人は「敷金って何?」「何のために払うんだろう?」と疑問に思うはず。そこで、年間240組の部屋探しを成功させている(株)アエラス船橋店の望月裕貴さんに取材。敷金・礼金の意味や違いや相場・トラブル事例、敷金・礼金ゼロ物件がある理由、メリット・デメリット、注意点などを分かりやすく解説します。

敷金・礼金の違いは?何のために払うの?

賃貸でお部屋を借りるときには、「初期費用」が必要になります。敷金・礼金もそうした初期費用の一部。ただ、それぞれの意味合いが異なりますので、ひとつずつ解説していきます。

敷金・礼金の違い

敷金
契約期間中に滞納があった場合の家賃債務や、部屋を損傷させた場合の修理費の担保として、先に預けておくお金です。契約が終了して部屋を退去する際、敷金の額から「家賃の滞納分や借主に責任のある損傷の修理費など(賃貸借期間に生じた借主の金銭債務の額)」を差し引いた金額が返ってきます。家賃1カ月分が目安ですが、最近は敷金がゼロの物件も増えてきています。
※2020年4月に施行された「改正民法」(第622条の2)なお、改正民法が適用されるのは、原則として「施行日(2020年4月1日)より後に締結された賃貸借契約」となり、それ以前の契約については改正前の民法が適用される。
礼金
文字通り、部屋を所有する大家さんに対して、お礼の意味として支払います。敷金と違って、退去時に返金されることはありません。最近では礼金なしの物件も増えています。家賃1カ月分が目安。

まず、敷金ですが、2020年の民法改正で、「いかなる名目によるかを問わず,賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で,賃借人が賃貸人に交付する金銭」と定義されました。つまり敷金とは、部屋の貸し借りの際に借主が負うことになる金銭債務(家賃の滞納など)を担保するため、借主が貸主に支払うお金、ということです。
また、これまで敷金は退去時の部屋の修繕に充てられるお金、という認識がありました。しかし改正後の民法では、原状回復義務の範囲について、通常の使用によって生じた損傷(家具の設置による床・カーペットのへこみや設置跡、テレビ・冷蔵庫等の電気ヤケ、破損・鍵紛失のない場合の鍵の取り替え等)については原状回復義務を負わないことが明記されています。そのため、家賃の滞納やタバコのヤニ・臭い、飼育ペットによるキズや臭いなどの借主に責任のある損傷の修理費を差し引いた敷金は、原則として返ってきます。

また礼金は、「賃貸のお部屋が少なかった時代に、大家さん(賃貸人・貸主)に対して『貸してくれてありがとう』という気持ちで払っていたものです。でも、お礼の気持ちなのに、あらかじめ払う金額が決まっているのもヘンですよね。賃貸物件が増えた昨今では、礼金の意味合いが弱まっているのだと思います」(アエラス船橋店 統括課長 望月裕貴さん。以下同)

敷金 礼金
お金の意味 貸主への金銭債務(「家賃の滞納」や「部屋を損傷させた場合の修理費」など)を担保するため、借主が支払う 大家さんにお礼の意味で払う
返還の有無 契約が終了して退去する際、それまでに生じた金銭債務を差し引いた分が返還される 戻ってこない
相場 家賃1カ月 家賃1カ月

東京と千葉では敷金・礼金の相場が違う? 関西では違うお金が必要になる?

現在、望月さんが担当している千葉エリアでは、敷金・礼金ナシのお部屋、いわゆる「ゼロゼロ物件」が増えていて、ひとり暮らし向けの部屋の約半分がゼロゼロ物件だといいます。

ただ、東京になるとまったく事情が異なり、敷金・礼金それぞれ1カ月が相場になっているよう。

一方、関西エリアでは、現在は減りつつあるものの、敷金と似た性格の「保証金」という名目のお金がかかることもあるといいます。

「現在では、インターネットの普及で情報が集めやすくなり、関東と関西、地方による商習慣の違いはなくなっています。ただ、地域によってお金の名目や意味合いが異なることも。まずはたくさん物件を見て、自分が住みたい地域の家賃や初期費用の相場を知るとともに、不明な意味合いのお金については不動産会社に質問するのがいいでしょう」

敷金・礼金のトラブル事例

敷金・礼金のうち、「預けておく」敷金は、本来何もなければ戻ってくるものと考える人が多いよう。ところが実際は、退去時のハウスクリーニングやクロス張替えなどの原状回復費用として引かれ、敷金が返金されない、敷金を上回る金額を請求されたというケースもあるようです。実際に、国民生活センターに寄せられた相談内容には以下のようなものがあります。

【賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル】最近の事例

  • 10年以上住んだ賃貸アパートを退去したらクロスの張替えなど高額な原状回復費を請求された。全額支払う必要があるのか。
  • 6カ月居住した賃貸アパートを退去した。玄関の壁紙のわずかな傷で全面の張替え費用を請求され不満だ。
  • 管理会社の了解を得て賃貸マンションの光回線工事をしたが、退去時に、工事は許可していないと言われ、原状回復費用を請求された。
  • 賃貸マンションを退去したところ、高額なハウスクリーニング代を請求された。納得できない。
  • 4年前に契約した賃貸マンションを退去したが、契約当時に提出した現状確認書を管理会社が紛失し、入居時についていた傷まで含めた修復費用を請求された。

※国民生活センターHP「賃貸住宅の敷金・原状回復トラブル」より

このようなトラブルを未然に防ぐには、契約前に書類の内容をよく確認することが大切。特に禁止事項、修繕に関する事項、退去する際の費用負担に関する事項や、特約について必ず確認しておきましょう。

なぜ敷金・礼金ナシのゼロゼロ物件があるの? 

新生活をはじめるための費用が抑えられる敷金・礼金「ゼロゼロ物件」はとても魅力的です。でも、なぜこうしたゼロゼロ物件があるのでしょうか。

「千葉エリアで部屋を探すとなると、東京まで通勤通学時間がかかったり、1回2回と乗り換えが発生することがあります。そのため、敷金・礼金があるとなかなか借り手が見つかりません。大家さん・不動産会社からすれば長期間の空室は避けたいもの。そのため、少しでも早く借りてほしいという事情で、敷金・礼金をゼロゼロにしているのです」

イラスト

ただ、敷金・礼金がゼロだからといっても、まったく初期費用がかからないワケではありません。

「敷金と同じように、原状回復費用に充てるお金として、部屋のクリーニング代を設けているところがほとんどです。目安は1m21000円程度ですね。例えば25m2のお部屋なら2万5000円だと考えておくといいでしょう。また、エアコンがあればクリーニング代がかかり、一台およそ7000~8000円程度。結果として、部屋のクリーニング代として、敷金1カ月程度のお金はかかると思ってください。個人的には、敷金よりもクリーニング代のほうが内訳がしっかり明示されているので、安心してお借りいただけると思っています」

ただ、注意したいのが、「定額クリーニング代」のケースです。「定額」とうたっているものの、含まれるクリーニングの内容がまちまちで、なかには退去時に想定以上(敷金1カ月分以上)の金額を請求されるケースもあるそう。契約書を読み、どこまでが「定額クリーニング代」に含まれるのか、不明な部分があればしっかりと内容を書き込んでもらうと、のちのちのトラブル防止になるといいます。

敷金・礼金ナシを借りるときの注意点は? デメリットはあるの?

「でも、安いものには何かワケがあるんじゃ…?」「敷金・礼金ナシのデメリットもぜったいあるハズ」と心配になる人もいることでしょう。

「敷金・礼金があるのが当たり前だと思っている40代50代の世代には、敷金・礼金を払ったほうが安心と考えている人が多い印象です。でも、ゼロゼロ物件だからといって、ココがダメというデメリットは、はっきり言ってありません。初期費用が抑えられるので、住みたい部屋に住めるメリットのほうが大きいと思います」

ただ、敷金・礼金ゼロゼロをマスト条件として探していると、選択肢が少なくなるのは事実。特に人気エリアでは、ゼロゼロ物件自体が少数なので、物件が見つからないこともありそうです。また、ゼロゼロ物件は、初期費用がかからない分、家賃が相場よりやや高めという傾向もあるほか、前述のクリーニング代についてもきちんと確認しておくのがよさそうです。

敷金・礼金はいつ、誰に払うの? 貯金がない場合はどうすればいい?

では、敷金・礼金(もしくはクリーニング代)は誰にどのタイミングで支払うのでしょうか。

「敷金・礼金は入居前の賃貸借契約時に、不動産会社を通じて支払うのが一般的です。部屋を借りたいけれどまとまった貯金がない場合は、クレジットカード払いに対応している不動産会社があるので、担当者に相談してみましょう」

クレジットカード払いであれば、分割払いで、支払い回数を選ぶこともできるほか、ポイントも貯まるので一石二鳥ですね。また、敷金・礼金ナシのゼロゼロ物件であれば、その他の初期費用(前家賃や仲介手数料、火災保険料など)だけで済むので、負担はぐっと軽くなります。

なお、不動産会社は賃貸借契約の成立をサポートする宅地建物取引業者(宅建業者)をさしますが、2020年成立の賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)にもとづいて賃貸住宅管理業者が敷金などを預かる場合もあります。

「賃貸では、部屋を借りたい人が集まるハイシーズン(1月~3月)は敷金・礼金がかかる物件が増え、逆に人が集まりにくい夏などは、敷金・礼金ナシのゼロゼロ物件になることも。貯金がないけど引越しを考えている人は、部屋探しの時期を少しずらすのも賢い手ではないでしょうか」

敷金・礼金の初期費用が抑えられるのであれば、引越しもぐっとしやすくなります。「更新が近づいてきたけど、思い切って引越したいな」「もっと広い部屋で暮らしたいな」-敷金・礼金を抑えた物件であれば、そんな思いも気軽にかなえられそうです。

まとめ

敷金とは、貸主への金銭債務を担保するため、借主が支払うお金

礼金とは、部屋を所有する大家さんに対して、お礼の意味として支払うお金

借り手が見つかりにくいエリアでは、敷金・礼金がかからない「ゼロゼロ物件」に出会えることも

敷金・礼金は一般的に入居前の賃貸借契約時に不動産会社に支払う

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取材協力/株式会社アエラス 文/嘉屋恭子
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