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賃貸物件の家賃が一定期間、無料になる「フリーレント」。お部屋を探しているとき、不動産広告などで目にしたことがある人も多いことでしょう。でも、家賃が無料とはいったいどのような仕組みなのでしょうか。メリット&デメリット、注意点などについて、アエラス船橋店で不動産賃貸物件を扱う望月 裕貴さんに聞きました。
まずは、フリーレント物件の意味や家賃が無料になる仕組みなど、基本的な情報から解説します。
フリーレントとは、一定期間、家賃が無料になる契約のことです。のちほど詳しく解説しますが、フリーレント期間は物件ごとに異なり、明確な決まりがあるわけではありません。部屋を借りるときには何かと出費が続くので、家賃が無料というのはうれしいですが、「何かワケがあるの?」と心配になる人もいることでしょう。
「フリーレントになるといっても、家賃が相場より高いということもありませんし、お部屋そのものに事情があることはありません。地域差もあると思いますが、当社で扱う物件のうち2~3割がフリーレント契約付きです」(望月さん、以下同)
こうした「フリーレント」物件は3~4年ほど前から登場し、徐々に増えているといいます。では、どのような仕組みで家賃が「タダ」になるのでしょうか。
「ひと言でいえば、競争力をつけて借りてもらいやすくするため。今は、家賃や広さ、駅からの徒歩分数などで探すと同じような条件のお部屋がたくさんあります。『フリーレント付き』にして、選んでもらいやすくしているのです」
お部屋を貸す大家側・不動産管理会社側も、フリーレント期間は家賃収入がなくとも、その後は家賃収入の見通しが立てられるため、安心して契約できるというのが背景にあるそうです。
ただ、フリーレントの物件数は増えているといっても、お部屋を探す際の「マスト条件」にしてしまうとぐっと数が減ってしまい、探しにくいのだとか。あくまでも自分の考える条件を優先して探し、「フリーレントだったらラッキー!」程度に考えましょう。
一定期間の家賃が無料になるフリーレントですが、利用するうえでのメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
フリーレントの最大のメリットは、二重家賃が発生しにくいことだそう。
「現在入居している部屋を退去するときは、1カ月前に退去通知をするのが一般的。例えば、契約更新にあわせて新居を探し始めてすぐに物件が見つかった場合、新居の契約をすると家賃が発生するため、前の住まいと現在の住まいの両方の家賃が二重に発生することがネックでした。フリーレント期間があると、二重家賃は発生せず、引越しの準備も落ち着いてできます」
また、ファミリーやカップルは、近所に新居を借り、フリーレント期間中に自分たちでゆっくりと荷物を運びこむことも多いよう。日程にもゆとりがあるため、引越し業者も手配しやすくなるようです。
先述のとおり、フリーレントが付いている物件だからといって家賃が高くなったり、お部屋に事情があるなどの心配はほぼないといっていいでしょう。大きなデメリットはとくにありませんが、無料となる期間や前家賃の有無については確認しておいたほうが安心だといいます。
「まずは、フリーレント期間がどのくらいになるのか、聞いてみましょう。先ほども申し上げたとおり、フリーレント期間は物件によって異なるので、無料期間の長さを確認しておくといいでしょう。あわせて、フリーレント契約でも、前家賃が必要になることがあります。トータルで見れば初期費用が安くなるのですが、ゼロにはなりません。前家賃分も含めて、総額でいくらになるのか聞いてください」
具体的に、フリーレント物件ではどのくらいの期間分の家賃が無料になるのでしょうか。条件や契約・更新時の注意点とあわせてチェックしましょう。
フリーレント=無料期間は1カ月とイメージされがちですが、先ほどお話したとおり、実は明確な決まりはありません。入居までの日割り家賃分や2週間程度のこともあれば、1~3カ月間も家賃が無料になることもあるのです。
「当社で扱っている物件において、家賃が無料になる期間としては、0.5カ月から~1.5カ月分ということが多いですね」
契約時に支払うべき初期費用は、以下のとおり。地域や物件によって差がありますが、一般的には「家賃のおよそ5.5~6カ月分(翌月分の家賃含む)」がかかるといわれています。また、このほかにも引越し費用や保証料がかかります。
仮に無料期間1カ月のフリーレント物件の場合、家賃1カ月分がかからず、初期費用は「家賃のおよそ4.5~5カ月分」と計算できます。ただし、家賃が発生せずとも、共益費・管理費の日割りや前家賃は請求される可能性があります。契約時に確認しておきましょう。
あわせて読みたい:賃貸契約に必要な初期費用(敷金礼金など)の相場はどのくらい? 安くする方法は?引越し費用は?
フリーレント物件を借りるにあたって注意したいのが、解約のタイミング。多くの物件ではフリーレント契約にともなって、「短期違約金」を設定しています。この短期違約金とは、半年や1年など短期間で解約し、転居しようとすると、違約金の支払いを求められるというもの。違約金の設定金額としては、部屋で生活した期間が半年間と短いと賃料2カ月分、1年未満だと賃料1カ月分程度だといいます。
「短期違約金を支払うと、無料だったはずの家賃と同じ金額、例えば家賃1カ月分を違約金として支払うことになるので、結果としておトクになりません。また、社会人だと、転勤費用は会社が負担してくれますが、こうした退去時の違約金やクリーニング代は、個人で負担しなくてはいけません。そのため、社会人で勤務地が変わる可能性がある人、すぐに引越す予定がある人は、フリーレント契約をあえてはずす人もいます」
フリーレントだからといって契約を急ぐのではなく、短期違約金の金額や適用される期間についても確認しておきましょう。
下の例のとおり、フリーレント物件の契約開始月は、入居日や家賃の支払いが始まったタイミング(フリーレント期間の終了時)ではなく「契約月」です。
つまり、家賃を支払っていない期間だったとしても、入居日から1〜2年たった月が契約更新のタイミングとなります。とくに更新タイミングでの退去を予定している場合などは、時期を間違えないよう注意しましょう。また、物件によって更新時の条件は異なります。退去通知や契約更新通知の条件や時期もあわせて確認しておきましょう。
このところ増えているのが、12月にフリーレント契約をするケースだそう。
「賃貸物件は、進学や進級、転勤などで借りたい人・お部屋を探す人が増える、1~3月が繁忙期です。この時期の物件探しは慌ただしく、お部屋を選べないことも。この、人が殺到する時期を避け、12月中に契約を決めてもらい、翌年1~3月はフリーレント契約とするんです。借り手側は引越しも余裕をもってできますし、大家側、不動産管理会社側も、借り手を早く見つけられて安心。みんなにとっていいことばかりなのでこれからも増えていくと思います」
ただし注意したいのが、家賃発生は3月以降でも、契約日は12月または1月になる点です。1〜2年、ないし4年後に「春に引越す予定なのにどうしよう」とならないよう、忘れずに計画を立てておきたいところです。
インターネットで不動産情報が見られるようになった現在は、家を借りる側と大家・不動産管理会社側とが対等になっているため、さまざまな交渉がしやすいのだとか。では、フリーレントが付いていない物件で、「フリーレント契約を付けてもらう」交渉などはできるのでしょうか。
「家賃や敷金礼金の減額交渉は難しいですが、フリーレントは行いやすいですね。『ココだ!』というお部屋が見つかったら、まずは『フリーレント、1カ月分だけでも付けられませんか?』と聞いてみる価値はあると思います。ただ、人気のあるお部屋だと交渉しないほうがいい物件も存在しますので、やみくもに言うのはオススメしません。それでも、一度、相談してみる価値はあると思います」
また、最近ではフリーレント以外にも、さまざまな「おトクなキャンペーン」をしていることが多いといいます。
「例えば、『家賃2カ月間半額キャンペーン』などとうたう物件がありますが、冷静によく考えると、フリーレント1カ月分の契約と同じ金額を支払っています。また、フリーレント付きでも礼金1カ月付きだったり、フリーレント契約ナシ、礼金ナシだったり。名目は違いますが、総支払額は同じこともあるんです。まずは、総額でいくらになるか、きちんと確認するといいでしょう」
気をつけたい点もあるとはいえ、やはり借りる側や大家、不動産管理会社にとってもメリットの多い「フリーレント」物件。現在、引越しを検討している人はぜひ、「フリーレント」契約に注目しながら、探してみてはいかがでしょうか。
フリーレント物件は、一定期間分の家賃が無料になる物件のこと
二重家賃が発生せず、落ち着いて引越しの準備ができるのがメリット
すぐに引越した場合、「短期違約金」が発生することが多い
家賃や敷金・礼金の減額交渉より、フリーレント追加のほうが交渉しやすい