畳の張り替え(裏返し・表替え・交換)の費用相場。張り替えの時期や方法は?

畳は表面が色あせたり、傷みが気になったりしてきたらリフォームのタイミングです。しかし、畳は劣化しても必ずしも新品と交換する必要はなく、裏返しや表替えという方法で対応できる場合もあります。畳の裏返しや表替え、交換などのリフォームの方法や費用の目安、張り替えのタイミングなどについて、一級建築士の佐川旭さん監修の下、解説していきます。

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畳の張り替え(裏返し・表替え・交換)の費用相場

記事の目次

畳の素材

畳の表面の畳表(たたみおもて)の素材の定番といえば「イ草」です。イ草はその特徴的な香りや、天然素材ならではの風合いや質感などが魅力ですが、最近は和紙や樹脂などの化学素材でつくられたメンテナンス性や耐久性に優れた製品も多く流通しています。

畳の構造

一般的な長方形の畳は、前述した「畳表」のほかに、「畳床(たたみどこ)」、「畳縁(たたみべり)」の3つのパーツで構成されています。

畳の構造のイメージ

一般的な畳は畳表、畳床、畳縁で構成される

畳床は畳の芯となる部分で、従来は藁(わら)でつくられた藁床(わらどこ)が一般的でしたが、最近では木材繊維を固めたものや、そこにポリエチレンフォームを挟み込んだような床材(とこざい)も普及しています。

畳は畳床に畳表を張ってつくられますが、長方形の畳の長い辺の部分に縫い付けられているのが畳縁です。畳縁は畳の角の強度を上げたり、畳を敷いたときにできる隙間を埋めたり、装飾といった役割を担っています。

なお、琉球畳や置き畳など、半畳サイズの畳は、畳縁がないのが一般的です。

縁付きの一般的な畳のイメージ

縁が付けられた一般的な長方形の畳(画像/PIXTA)

縁なし半畳畳のイメージ

畳縁のない半畳畳(画像/PIXTA)

畳の張り替え方法

畳の張り替えには、裏返し、表替え、新調・交換という方法があります。

裏返し

裏返しは、畳表を畳床から一旦はがして裏返し、畳縁を新調するという張り替え方法です。

既存の畳表を裏返して使用するのですが、日焼けしたり汚れたりしていない裏側の面を表にするため、表面の見た目がきれいになります。

表替え

表替えは畳表と畳縁を新調する張り替え方法です。

畳表の傷みや劣化が激しい場合は、既存の畳表を再利用する裏返しは難しくなります。畳表は劣化していても、畳床に問題がなければ、既存の畳床を利用して表替えをすることで、新品同様の見た目にすることができます。

表替えであれば、畳表も畳縁も新しくするため、カラーやデザインを変更すれば、部屋の雰囲気を一新することも可能です。

新調・交換

畳表の状態が気になるだけであれば、裏返しや表替えという張り替え方法で問題ありませんが、畳表だけでなく、畳床にも傷みがあるような場合は、古い畳を撤去して新しい畳に交換するという方法になります。

畳ごと新調するのであれば、畳表や畳縁の色やデザイン、素材だけでなく、断熱性のある畳床の畳に変更したり、縁なし半畳畳などに変えることもできます。

琉球畳は新調・交換するのが一般的

琉球畳のような縁なし半畳畳の場合、縁がないということで、一度折って加工したものを、反対側に折り曲げることは難しくなります。そのため、縁なし畳の場合は既存の畳表を使用する裏返しをすることはありませんが、表替えは可能です。

ただし、縁なし半畳畳の中には、床の上に敷くことができる置き畳のような薄いタイプの畳や、畳表を畳床に接着剤で貼り付けているものもあり、そのようなタイプの畳の場合は表替えもできません。

縁のないタイプの畳は、同じものをメンテナンスしながら長く使い続けるというよりも、傷みや汚れが気になってきたら、新しいものに張り替えるという方法をとるのが一般的です。

畳の張り替えの費用相場

裏返し、表替え、新調・交換の3つの畳の張り替え方法について、それぞれの費用相場を見ていきましょう。

裏返しの費用相場

畳の裏返しにかかる費用は、1畳約3000円から5000円程度が相場で、6畳の和室の場合だと約2万円〜3万円が目安です。

以前は依頼者の自宅で裏返しの作業を行うのが一般的でしたが、最近は業者に一旦預け、工場などで作業をするという方法が主流です。

裏返しは3つの張り替えリフォームの内、一番リーズナブルな方法になります。

畳の裏返しにかかる費用相場:約2万円〜3万円(6畳の和室の場合)

表替えの費用相場

畳の表替えにかかる費用は、6畳の和室の場合で約3万円~9万円が目安です。

表替えの場合は、畳表を新調することになりますが、畳表はさまざまな素材やデザインのものがあり、どのような畳表を選ぶかで、費用は大きく左右されます。リーズナブルな価格帯のものであれば1畳約5000円から、グレードの高いものになると1万5000円程度のものもあります。

畳の表替えにかかる費用相場:約3万円〜9万円(6畳の和室の場合)

新調・交換の費用相場

畳を新調・交換するのにかかる費用は、6畳の和室の場合で約11万円~20万円が目安です。

新調・交換の場合も表替えと同様、新しくどのような畳を選ぶかによって費用は左右されますが、一般品を選んだ場合で、1畳約1万5000円から、高級品になると3万円程度となります。既存のものを処分する必要もあるため、畳の費用に加えて、撤去費用が2万円ほどかかります。

畳の新調・交換にかかる費用相場:約11万円〜20万円(6畳の和室の場合)

畳下板(荒板)を張り替える費用相場

畳を張り替える際、畳の下の畳下板(荒板)を張り替えるリフォームを同時に行うこともあります。

畳下板(荒板)とは

畳下板(荒板)とは、畳の下に張られている床板で、畳を踏んだときにフカフカ沈むような場合は、畳下板に問題がある可能性があります。

畳下板の劣化の原因の一つに湿気が挙げられますが、最近では一戸建ての場合も基礎が湿気に強いベタ基礎(※)の場合が多く、畳下板が湿気で沈むような状態になることは稀です。しかし、ベタ基礎ではない古民家など古い家の場合はリフォームの際に畳下板が床下からの湿気で劣化が進み、交換が必要になるケースもあるようです。

また、畳下板にシロアリやカビが発生しているような場合もあるので、異変があった場合は畳下板の交換だけでなく、床下の確認も必要です。被害が確認された場合は、シロアリの駆除や被害箇所の修繕、薬剤散布による予防措置などを検討することになります。

※ベタ基礎とは建物の底面全体を鉄筋を入れたコンクリートで一体化した基礎のこと

畳の下に張られた畳下板(荒板)のイメージ

畳の下には畳下板(荒板)が張られている(画像/PIXTA)

畳下板(荒板)を張り替える費用相場

畳下板を張り替える場合の費用相場は1坪1万5000円程度です。6畳の場合だと5万円前後となりますが、畳下板の下にある根太の補修なども必要になる場合はさらに費用がかかります。

畳下板の張り替えにかかる費用相場:5万円前後(6畳の和室の場合)

畳の張り替え時期

裏返し、表替え、新調・交換という畳の張り替え方法を見てきましたが、それぞれ張り替えリフォームを検討するタイミングは異なります。

まず、裏返しの場合は、既存の畳表を使用するため、それほど傷みがひどくない、4~5年目くらいのタイミングで検討するのが安心です。

6~7年程度たって畳表が傷んでしまっていたら、裏返しではなく、表替えを検討しましょう。10~15年程度になると、畳表の傷みだけでなく、畳同士の隙間が見られるようになることがありますが、その場合は畳床も劣化している可能性があるため、新調・交換を検討するのが良いでしょう。

畳を踏んだときに、フカフカと沈むような感覚がある場合は、畳下板に不具合が出ている可能性もあるため、確認するのが安心です。

なお、前述の張り替え時期の目安は、一般的なイ草の畳の場合です。和紙や樹脂など畳表の場合は、イ草の畳表よりも耐久性が高く、より長持ちする製品も少なくありません。張り替えのタイミングは畳の状態を見て判断する必要があるので、リフォーム業者と相談して、張り替え方法は検討するようにしましょう。

畳の張り替え時期の目安
畳の裏返し:4〜5年目
畳の表替え:6〜7年目
畳の新調・交換:10〜15年目

畳の張り替え・コーディネートのポイント

表替えや新調・交換であれば、既存のものとは違う色やデザイン、素材の畳を選ぶことができます。畳を選ぶ際のポイントを見ていきましょう。

縁なし半畳畳ならスタイリッシュな印象

和室の既存の畳が一般的な縁付きの長方形の畳でも、畳を新調するのであれば、琉球畳などの縁なし半畳畳に交換することが可能です。

従来の長方形の畳は敷き方に吉凶があったり、畳の縁を踏んではいけないなど、さまざまなルールがありますが、縁のない半畳畳は従来のルールにとらわれない、カジュアルさが魅力の一つです。また、縁がない分すっきりとした印象になり、洋風のインテリアとも調和しやすい雰囲気になります。

縁なし半畳畳は、畳の目の向きを変えて交互に敷いて市松模様をつくることができます。市松敷にすることで半畳サイズの畳でしかつくれない、スタイリッシュな和室の雰囲気を演出することが可能です。

クールな印象の和室スペース

縁なし半畳畳を市松敷にした和室のイメージ

縁なし半畳畳を市松敷にすることでスタイリッシュな雰囲気の和室になる(画像提供/静岡ガスリビング

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インテリアに合うカラーを選ぶ

畳表の色といえばイ草のグリーンのイメージですが、最近ではグレーやネイビー、ピンクやベージュなど、豊富なカラーバリエーションの中から選ぶことができます。

リビング横の和室をリビングと一続きの空間のように使用するケースも多いですが、畳の色をリビングのインテリアと調和させることで、より空間に統一感を持たせることができます。

ただし、インテリアにビビッドなカラーを多用している場合は、畳表のカラーは中間色をセレクトするのが安心です。強い色に強い色を掛け合わせるとまとまりがなく、落ち着かない空間になってしまう可能性があります。空間のアクセントとして畳表をあえて鮮やかな色にすることもありますが、ほかのインテリアを引き立てたい場合はなじみやすい、彩度を下げた落ち着いた色を選ぶのが良いでしょう。

リビングの建具や家具とも調和する畳の小上がり

ベージュの縁なし半畳畳の和室のイメージ

畳の色味を合わせれば、和室も洋室のインテリアと調和(画像提供/エヌピーシー福岡

また、縁のある畳の場合は、畳縁の色やデザイン選びもポイントです。

格式の高い和室などは複雑な柄や紋様の畳縁を用いていることが多く、モダンな茶室などになると、黒やこげ茶の無地などが定番ですが、畳縁の見える面積は少なくても、選ぶ色によっては、思っていた以上に目立ってしまうことがあります。主張の強い色味のものは空間を硬く緊張させることもあるので、その点も念頭に、畳表のカラーとのコーディネートだけでなく、襖や家具の色やデザインも考慮しながら選ぶのがおすすめです。

畳縁のデザインや色の違いのイメージ

畳縁の色やデザインで、空間の雰囲気も変わる(画像/PIXTA)

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機能で素材を選ぶ

畳を新しくする場合は、畳の機能面にも注目して選ぶことで、和室をより快適な空間にすることもできます。

イ草の畳は自然素材ならではの香りや風合い、調湿機能などが魅力ですが、和紙や樹脂などの畳は水ぬれに強かったり、色あせしにくかったりと、メンテナンス性や耐久性の高さが魅力です。畳表は和室の用途や使う人のライフスタイルに合わせて選ぶようにしましょう。

また、畳床も昔ながらの藁床以外にも、藁ではなく木材を圧縮したインシュレーションボードや、ポリエチレンフォームを挟んだものなどがあります。藁床は慣れ親しんだ踏み心地を得られる一方で、ダニや湿気などへの対策や配慮が必要なこともあります。どのような畳床を選ぶかで踏み心地や断熱性、遮音性などにも違いがあるため、畳を新調する際は、畳床の機能性も念頭に選ぶのが安心です。

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おしゃれな畳の張り替え事例を紹介

ここからは、畳の張り替えでおしゃれな空間に生まれ変わった、和室の実例を見ていきましょう。

※各事例の費用は施工当時のもので和室部分の工事(畳の張り替え以外も含む)の概算。現在の費用とは異なります。

表替えでお手入れしやすい和紙畳に

和室の内装リフォームでは、畳の表替えのほかに、壁紙、襖、障子の張り替えも行いました。畳表は色あせしにくく、傷や汚れ、水ぬれに強くお手入れしやすいということでダイケンの和紙畳を採用。畳表が鮮やかなグリーンになったことで、お部屋が明るい雰囲気になりました。

畳の表替えで明るい雰囲気になった和室

清々しいグリーンの和紙畳に表替え(画像提供/有限会社おゆみ野不動産(エステホーム)
【DATA】
建物タイプ:マンション
築年数:21〜25年
リフォーム費用:和室のみの概算25万円
施工会社:有限会社おゆみ野不動産(エステホーム)

洋の雰囲気を取り入れて、リビングと一体感を感じられる和室に

リビング横の和室の畳は、ピンクベージュの琉球和紙畳に変更。照明やロールスクリーンなど、洋風のインテリアも取り入れながら、優しい雰囲気の和室に生まれ変わりました。戸を開けて使用しても、リビングのインテリアともうまく調和し、つながりを感じられます。

市松敷のピンクベージュの琉球畳の和室

ピンクベージュの琉球畳を市松敷にすることで、モダンな印象の和室に(画像提供/カナジュウ・コーポレーション
【DATA】
建物タイプ:マンション
築年数:11〜15年
リフォーム費用:和室のみの概算45万円
施工会社:カナジュウ・コーポレーション

畳の和室にすることで、年代を問わずくつろげる空間に

元々洋室だった部屋に畳を敷き、寝室として利用できる和室にリフォームしました。和室以外の空間はヴィンテージ感のあるインテリアでコーディネートしつつ、和室は親と同居した場合を考慮して、年代問わずくつろげる雰囲気の空間にしました。畳表やベースクロスのグリーンに、ネイビーのアクセントクロスや、天井や照明の素材感、畳縁の色合いなどが映え、和モダンな雰囲気を醸し出しています。

洋室だった部屋に畳を敷いて和室にリフォームした寝室

畳縁の色が和モダンな空間のアクセントに(画像提供/アルフレッシュ
【DATA】
建物タイプ:一戸建て
築年数:30年以上
リフォーム費用:和室のみの概算40万円
施工会社:アルフレッシュ

畳とLDKをコーディネート

間仕切り壁を撤去して、小上がりの和室はLDKと一体感のある空間にリフォームしました。小上がりの畳はネイビーのキッチンに合わせてインディゴの琉球畳に変更。リビング・ダイニングの大理石調のタイル系フローリングとも調和し、個性的でおしゃれな空間になっています。

藍色のキッチンと調和するインディゴの琉球畳を敷いた小上がり

縁なし半畳畳はすっきりとした印象で、スタイリッシュな空間にぴったり(画像提供/カナジュウ・コーポレーション
【DATA】
建物タイプ:マンション
築年数:26~30年
リフォーム費用:和室のみの概算30万円
施工会社:カナジュウ・コーポレーション

まとめ

畳は裏返しや表替えをするなど適切にメンテナンスすることで、長く使い続けることができます。畳の寿命やリフォームのタイミングで、畳の新調や交換をするのであれば、機能面も考慮しながら畳を選ぶことがおすすめです。畳表や畳縁の色やデザインは豊富な選択肢の中から選ぶことができるので、ぜひ、お部屋のインテリアに合わせて畳のコーディネートを楽しんでみてください。

●取材協力
佐川旭建築研究所
一級建築士 佐川旭さん

構成・取材・文/島田美那子