リフォームの坪単価は全ての内外装一新と設備交換、躯体工事を含むフルリフォームのときに費用の目安になるものです。リフォームの坪単価の相場はどれぐらいか、また、一戸建てとマンションでは坪単価はどう異なるのか、m2単価とはどう違うのか、坪単価はどこで変わるのかなどについて説明します。さらに坪単価の異なる実例も紹介します。
記事の目次
リフォームの坪単価とは?
リフォームの坪単価とは何なのか、なぜ費用の目安になるのかを一戸建てとマンションに分けて説明しましょう。
坪単価は1坪当たりに換算した費用
坪単価は、かかった費用を1坪当たりに換算した費用のことです。
1坪は約3.3m2です。
例えば、延床面積120m2程度の木造住宅のフルリフォームを行った費用が2000万円で、リフォームした面積が40坪(約132m2)だった場合、2000万円÷40坪で、坪単価は50万円です。
坪単価は建築費用の目安に使われてきた
坪単価は昔から建築の際に費用の目安として使われてきました。
坪単価はおよそこれぐらいだから、この規模の家だったら、建築費用はおよそいくらになります、といった具合です。
新築では設備などのグレードが決まっているなら、およその目安として便利に使うことができます。
フルリフォームの費用の目安になる
リフォームで坪単価が使われるのは主に内外装の一新や設備交換、必要な場合に耐震補強などの躯体工事を含むフルリフォームの場合です。
フルリフォームは延床面積とリフォーム面積がほぼ変わらないので、新築と同じように坪単価に家の坪数をかけておよその費用の目安とすることができます。ただし、新築とは工事の内容が異なるので比較することはできません。
仕様が決まった定額制リフォームなどで用いられることが多いのですが、あらかじめ費用の目安が立てられることから安心してリフォームができる面があります。
坪単価からm2単価への換算方法
坪単価ではなく、m2単価が使われる場合もあります。
1坪は前述のように約3.3m2なので、坪単価を3.3で割るとm2単価になります。
坪単価50万円をm2単価にすると約15.15万円になります。
延床面積が100m2でフルリフォームなら、15.15万円×100m2=1515万円がリフォーム費用の目安となります。
リフォームの坪単価が変わる理由
坪単価は便利に使えそうですが、注意したいのは変動する要素が多いことです。その理由を見ていきましょう。
面積が小さくなるほど坪単価は高くなる傾向
リフォームの坪単価はかかったリフォーム費用を面積で割って1坪あたりに換算したものです。面積が小さくなれば坪単価も安くなると考えられがちですが、そうではありません。
リフォームでも新築でも費用の多くを占めるのは設備機器です。
大きい住宅も小さい住宅も設備にかかる費用はあまり変わりません。
つまり面積が小さくなってもかかる費用は面積に比例して安くなるわけではありません。
むしろ面積が小さくなるほど坪単価は高くなります。
定額制では含んでいる内容をチェック
定額制または定価制リフォームとは、一定の仕様で坪単価いくらと決めているリフォームのことです。あらかじめかかる費用がわかりやすく、安心してリフォームに取り組めるのが特徴です。
ただしあくまで仕様が決まっているので、標準仕様にない食洗機やカーテンなどのオプションを採用するなどして標準仕様から一部逸脱するとリフォーム費用が変わります。
したがって標準仕様の内容をカタログなどで確認し、きちんと説明を受けておくことが大切です。
オプション工事を採用したり、機器のグレードを変えたりする場合は、あらためて見積もりをもらっておきましょう。
一戸建てとマンションのリフォーム坪単価の違い
一戸建てフルリフォームの場合は、屋内工事だけではなく躯体の工事や外装工事も含んで坪単価が出ます。躯体の工事には耐震補強や断熱工事、内外装の再仕上げ工事などを含みます。
一方、マンションは躯体の工事がありません。躯体のコンクリートスラブはいじることができません。また、玄関ドアやサッシ、バルコニーも勝手にいじれませんから、内部の工事のみとなります。その分、坪単価が安くなります。
坪単価は設備や内装のグレードで変わる
同じ面積のリフォームでも、キッチンなど設備のグレードによって坪単価が変わります。内装も複合フローリングよりむく材のほうが、ビニールクロスより珪藻土など塗り壁のほうが高くなります。
坪単価が安いからと喜んでいると、設備のグレードが低くて結果に満足できないということもあるので、仕様はしっかりチェックしましょう。
築年数によって坪単価が上がることがある
一戸建ては築年数によってリフォーム費用の差が大きくつくことがあります。
主に元々耐震性や断熱性が現行の基準に沿っていなかったり、シロアリなどによる構造部の傷み具合によるものです。
つまり、耐震補強や断熱工事など工事費アップの要因が増えるからです。
築古だと耐震補強や断熱工事が増える
一戸建ての耐震基準は1981年と2000年に大きく変わっています。それ以前に建てられた家はその時点での基準を満たしていないケースが多いのです。
その場合は耐震診断をして、必要に応じて耐震補強をしなければなりません。
また、断熱基準は現時点では義務ではありませんが、これまでに何度か改正されています。つまり建築年度が古くなるほど断熱工事の必要性が高くなります。
そのためこれらの基準を満たして、安心で快適な家にリフォームするためには、必要な耐震補強や断熱工事の費用がかかってきます。壁仕上げのやり直しなど関連費用もかかりますから、これらの費用負担を見ておかなければなりません。
築古だと工期も長くなる
一戸建ては築古になるほど耐震補強と断熱工事にかかる工事が多くなり、行えば性能が向上しますが、それだけ工期も長くなります。
工期が長くなると人件費がかさんで、工事費アップの要因の一つとなります。
こうしたことから築古住宅のリフォームの坪単価は高くなる傾向があります。
坪単価からリフォーム費用は逆算できないことが多い
工事費の目安として便利に使えることもある坪単価ですが、単純に坪単価から工事費は逆算できるのでしょうか?
単純計算でリフォーム費用は正確に出ない
工事費と面積が分かれば坪単価は簡単に割り出せます。
では、その坪単価から工事費が逆算できるのかといえば、正確な費用は出ません。
例えば施工面積30坪(約100m2)のリフォーム費用が1500万円だとすると坪単価は50万円。では40坪(約132m2)の工事費が単純計算して2000万円になるかといえば、そうではありません。
その理由はここまでに述べたとおりですが、施工床面積に関わらず、設備にかかる費用は変わらないからです。施工面積が増えれば内装費などはアップしますが、設備費は変わりません。単純計算では正確な費用は出ないのです。
坪単価はあくまで目安に使おう
坪単価は変動要素が多いので、実際にかかる費用はリフォーム会社にプランの希望を伝えて見積もりをもらうまではわかりません。
坪単価で計算をして予算を組んでいると、それより費用がオーバーして予算を大きく超えてしまう、ということになりかねません。
坪単価はおおまかな目安と心得ておきましょう。
築年数によるリフォーム費用の違い
一戸建てのリフォームの築年数別の費用の違いを見ていきましょう。
築10年頃には補修と屋根・外壁塗装が中心
築10年までの一戸建てにかかるメンテナンス費用は、建具・設備の修理やパーツの交換、防蟻処理、屋根・外壁の塗装、サイディングのコーキングなどが主なものです。
防蟻処理は床下に防蟻剤を散布するもので、5年ごとに行うのがよいでしょう。
この中で屋根・外壁の塗装が最も費用がかかりますが、美観上だけでなく雨漏り防止のためにも必ずやっておきたいことです。
費用は屋根・外壁塗装が約140万円~180万円、そのほかを合わせて築10年までの時期は約200万円~300万円が費用相場です。
部位と内容 | 費用相場 |
---|---|
屋根・外壁塗装 | 約140万円~180万円 |
防蟻処理 | 約15万円~20万円(1回) |
そのほかのメンテナンス | 約40万円~60万円 |
合計(概算) | 約200万円~300万円 |
築20年までは部分リフォームを行うケースも
築10年を超えるとガスコンロまたはIHクッキングヒーター、食洗機、温水洗浄暖房便座、給湯器といった機器類が耐用年数を迎えて交換が必要になります。
キッチンなど設備機器本体は20年くらいではまだ使用可能ですが、人によっては新しい設備に交換するケースも。その際にキッチンのレイアウト変更などで部分リフォームを行うケースもあります。
20年目までに再度、屋根や外壁の塗装を行う場合は、前回と同様の費用がかかります。防蟻処理や外壁のコーキングも同様です。
設備機器は別途費用の目安を紹介しますが、キッチン・バス・トイレ・洗面台を交換すれば標準的なグレードのもので約200万円~400万円かかります。
また、この時期にはベランダの防水もやっておきましょう。
部位と内容 | 費用相場 |
---|---|
屋根・外壁塗装 | 約140万円~180万円 |
防蟻処理 | 約15万円~20万円(1回) |
そのほかのメンテナンス | 約80万円~150万円 |
設備機器を交換 | 約200万円~400万円※1 |
合計( 概算) | 約600万円~1000万円※2 |
※1標準グレードを採用した場合※2上記の正確な合計額ではありません
築20年を超えると間取り変更も増える
家族構成の変化などで間取りが暮らしに合わなくなって変更したり、中古住宅を買って間取りを変更したりと、間取り変更がからんでくるのが築20年を超えたリフォームの特徴です。
設備交換や内装の一新も併せて行われるので、リフォーム費用は多額になることが多いでしょう。
部位と内容 | 費用相場 |
---|---|
屋根・外壁塗装 | 約140万円~180万円 |
防蟻処理 | 約15万円~20万円 |
そのほかのメンテナンス | 約80万円~150万円 |
設備機器を交換 | 約200万円~400万円※1 |
間取り変更 | 約400万円~800万円 |
合計(概算) | 約800万円~1500万円※2 |
※1標準グレードを採用した場合
※2上記の正確な合計額ではありません
築30年を超えると耐震・断熱も含むフルリフォームも増える
築30年を超えた家では、耐震補強と断熱工事の必要があるケースが多いです。
とくに1981年の新耐震基準に満たない家は耐震性に問題がある場合が多いです。
また、断熱性が低い場合も多いので、間取り変更を行う機会にこれらの工事も行いましょう。
既存部分をなるべく残しながらコストを抑えてやるケースもありますが、いったん骨組みまで戻してスケルトンリフォームを行うなどフルリフォームとなるケースも多くなります。
フルリフォームの費用の目安は、工事の内容によって異なり、約1000万円~3000万円が目安となります。間取り変更や躯体工事がからむと高くなります。
工事の内容 | 費用の目安 |
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設備交換、内外装、部分的な間取り変更を含む概算 | 約1000万円~1500万円 |
全面間取り変更、スケルトンリフォームなどの概算 | 約1500万円~3000万円 |
水まわりと内装の部分リフォーム費用相場
坪単価に影響しやすいキッチン、バスなど水まわりの部分リフォーム費用と床、壁などの内装リフォームの費用の目安を知っておきましょう。
キッチンリフォームの費用相場は約120万円~300万円
キッチン交換の費用は、大半をシステムキッチンの機器代が占めます。標準グレードのシステムキッチンを採用したとして、費用相場は約120万円~150万円です。
最近は壁付けキッチンを対面キッチンに変える人も多いです。その場合、給排水の配管、換気ダクトの移設や延長工事、床や壁・天井の内装工事、電気工事など関連する工事費用がかかり、費用相場は約200万円~300万円になります。
バス・浴室リフォームの費用相場は約90万円~180万円
ユニットバス交換の費用相場は、標準グレードのユニットバスを採用した場合で約90万円~150万円。在来工法の浴室をユニットバスに変える場合は、既存部分の解体費用が加わり、約110万円~180万円になります。
トイレリフォームの費用相場は約20万円~40万円
タンク付きのトイレの場合は温水洗浄暖房便座を含めて費用相場は約20万円~30万円、便座・便器一体型のタンクレストイレの場合は約30万円~40万円です。
床リフォームの費用相場は約10万円~40万円
床フローリングのリフォームは、既存のフローリングを活かして新しいフローリングを上張りする方法(カバー工法)と、既存の床を解体して張り替える方法があります。
複合フローリングを上張りする(カバー工法)費用相場は約10万円~20万円(8畳)。
複合フローリングを新しい複合フローリングに張り替える場合は、既存の下地をそのまま活かすとして約15万円~25万円(8畳)です。
むく材のフローリングを採用すると上張り(カバー工法)は約20万円~30万円(8畳)、既存の下地を活かした張り替えは約25万円~40万円です。
床下地の根太工事あたりからやり直す場合は、約60万円を超える工事費になります。
壁・天井のリフォーム費用相場は約10万円~40万円
壁・天井のビニールクロスを張り替える費用は、約10万円~15万円(8畳)、珪藻土の塗り壁にすると約30万円~40万円(8畳)です。
リフォーム費用を安く抑えるコツ
見積もりをとって予算がオーバーしているときには、費用を調整する必要があります。そんな場合のコストダウンのコツを紹介します。
設備のグレードを再検討する
例えばシステムキッチンを安くするには、メーカーを変える、商品を変える方法が基本です。
どうしても同じメーカーの同じ商品にしたい場合は、扉の素材を見直してみましょう。各社とも5~6種類の扉材を用意していますが、どれを選ぶかで価格にかなり影響しますので、もう一度ショールームで扉材を確認して見直しましょう。
バスの場合はシャワーヘッドなどオプション類を見直してみましょう。必要性がそれほどないオプションを外すことで価格がダウンします。
内装の施工方法を見直す
床の張り替えと上張り(カバー工法)では、仕上がりの感じはほぼ変わりませんが、かかる費用は大きく違います。
下地に問題がなさそうであれば、張り替えより上張り(カバー工法)を選んだほうが安くなります。下地全体をリフォームするより、たわみなどの問題のある箇所を補修するだけで済まないか、リフォーム会社に検討してもらいましょう。
リフォームで利用できるローン
リフォームではどんなローンが利用できるのかを解説します。
住宅ローン
住宅ローンは、新築や物件購入の際に利用できるローンですが、リフォームでも利用できます。ただ、銀行によっては小規模リフォームでは利用できない場合もあることや、審査に手間がかかり、諸費用も高いことから大規模リフォームに向くローンといえるでしょう。
リフォームローン
リフォームだけに使えるローンです。住宅ローンは有担保ですが、リフォームローンの主流は無担保です。
住宅ローンに比べてリフォームローンは審査が簡単で、手数料も安く利用しやすいですが、金利が住宅ローンより高いこと、融資額に制限(1000万円程度)があることに注意しましょう。
【フラット35】リノベ
【フラット35】リノベは、中古住宅の購入と併せて一定の要件を満たす場合に利用できるローンです。性能要件を満たすことで当初10年間の金利が0.5%または0.25%引き下げになります。
坪単価別のリフォーム実例
ここからは坪単価の異なるリフォーム事例を見ていきましょう。
※下記事例のリフォーム費用は施工当時のものです。現在とは異なる場合があります。
【坪単価48万円】築43年の中古住宅をリノベーション
玄関脇にあった和室を広い土間に変え、自転車がディスプレーできる空間にしました。また、隣接の洋室はドライフラワーをつくれるアトリエに一新するなど、趣味が楽しめる住まいにリノベーションしました。
むく材のフローリングをはじめオープン収納のステンレストップのキッチン、アイアンフレームの造作収納など素材にこだわったシンプルで無駄のない空間が実現しました。
【DATA】
リフォーム費用:2500万円
リフォーム面積:173.40m2
工期:10カ月
種別:一戸建て
築年数:43年
家族構成:夫妻+子ども2人
設計・施工:アートリフォーム
【坪単価53万円】間仕切りを減らして広い空間に
細かく区切られた間取りを見直し、これからのライフスタイルに合わせてリノベーションしました。リビングの隣にあった和室を一体化して広いリビング・ダイニングに。壁面を活用してワークデスクと本棚を造作し書斎コーナーもつくりました。内窓の設置で断熱性も高くなり、快適な住まいに生まれ変わりました。
【DATA】
リフォーム費用:1200万円
リフォーム面積:74.00m2
工期:92日
種別:マンション
築年数:43年
家族構成:本人
設計・施工:JS Reform(日本総合住生活)
【坪単価77万円】子どもの独立を機にLDKを日当たりのよい2階に
子どもが独立し夫妻だけの生活になったことを機に間取りを見直し、日中過ごすリビングや水まわりを日当たりのよい2階に集中させ、寝室を3階へ移設し書斎を併設しました。1階は収納やフリースペースとして利用しています。
【DATA】
リフォーム費用:2596万円
リフォーム面積:109.97m2
工期:90日
種別:一戸建て
築年数:34年
家族構成:夫妻
設計・施工:ナサホーム
まとめ
- 坪単価はかかった費用を面積で割って1坪当たりに換算したものです。
- 坪単価は建築費用の目安として使われてきましたが、リフォームでは主に内外装、設備交換、躯体工事を含むフルリフォームの費用の目安を示すために使われます。
- 坪単価は面積や仕様で変動するものなので、あくまで費用の目安として使いましょう。
監修/一級建築士 柏崎文昭さん(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/林直樹
イラスト/中村久美