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健康的に暮らすためには、良質な睡眠が大事なのは周知の事実。とはいえ、忙しい現代人は睡眠時間が短くなっているし、睡眠の「質」も落ちがちだ。今回は心地いい眠りを誘う室内環境を住宅設備から紐解きたい。杏林大学医学部名誉教授の古賀さんにお話を伺った。光、色、音、温度・湿度といった要素をもとにリラックスできる寝室のつくり方を伝授しよう!
「眠りの『質』を左右する要素は光、色、音、温度・湿度、ニオイです。光とは主に照明のことですが、青白い蛍光灯を天井から浴びると脳が覚醒してしまいます。そこで、寝室ではオレンジ色の明かりを使った間接照明がベターです。また、真っ暗な状態だと人間は緊張してしまうので、眠る前はほの暗い明るさがよいでしょう。目安としては、枕の周辺に置いてある時計や物などがぼんやりと見える程度です」(古賀良彦さん)
色に関しては、光と同じく明る過ぎるのはよくないとか。
「実は白い色は人を覚醒させたり、緊張させたりするので、本来、寝室の壁や寝具にはふさわしくありません。パステルカラーやアースカラーといった淡い色がオススメです。ちなみに、ホテルや病室などの壁やシーツが白いのは、汚れを目立たせるためです」
そして、音は騒音も無音もよくないのだとか。
「騒音は脳を覚醒させて心地よい眠りを邪魔します。逆に無音も人を緊張させるので好ましくありません。一般的に図書館くらいの音の40dB(デシベル)以下が、寝室にはよいとされています。また、睡眠に適した室温は夏なら25℃~27℃、冬は18℃~23℃。湿度は50%~60 %が理想的です」
ニオイは、ほのかに眠りを誘う香りを寝室に漂わせておくのがよく、ラベンダーなどのアロマにリラックス効果あり。その際、自分でニオイを調合するとその時間も癒やしにつながるのだとか。次の段落では、古賀先生のアドバイスをもとに、住宅設備を駆使した快適な寝室をレクチャーしよう。
寝室というと寝具に目がいきがちだが、実は「箱」となる室内環境も重要だ。住宅設備で理想の寝室をつくってみよう

窓からの朝日を浴びると脳が覚醒してスッキリ目覚めることができる。ここで断熱性の高い窓を採用すれば、外から入る夏の日射や冬の寒気を和らげてくれる。部屋の温度が一定になるうえに、エアコンの効きもよくなるはずだ。防音効果もアップするので、眠りやすい静かな環境をつくってくれる。

寝室の壁は素材がもつ機能に注目したい。例えば、調湿効果のある珪藻土(けいそうど)の塗り壁は、寝室の湿度を快適に保ち、ベタベタとした不快な湿気を解消してくれる。また、漆喰(しっくい)の壁には抗菌作用があるので、清潔な室内環境に。同様の機能をもつ機能性壁紙もある。

人間は日中の太陽光のような青白い光を頭上から浴びると活動的になり、沈む夕日のようなオレンジの光を低い位置で浴びると心が和む。眠る前は天井の照明を消し、目線よりも低い位置にオレンジ色の照明を置いてみよう。沈む夕日を演出してリラックス効果は抜群だ。照明を置くためのコンセントの位置は、施工時から考えておこう。

例えば、深夜に目が覚めてトイレに行くとき。照明をつけて急に明るい光を浴びると、脳が覚醒して目が覚めて、その後に寝られなくなることが……。そこで寝室や階段などに、ぼんやりと明るいフットライトを配置すれば、照明の明かりで目を覚ますことはない。暗闇の中での転倒防止の効果もある。

眠りを誘う寝室をつくるためには、箱となる空間の色にこだわりたい。人間は重心が下にあるので、床は濃い色のほうが落ち着くといわれている。床、壁、天井と色がグラデーションで薄くなっていくのがベター。天井や壁が淡い色だと空間に広がりを感じ、圧迫感が少なくなる。壁や天井の間接照明の効果も高まるので、リラックス効果がアップするはず。

夏場の寝室は25℃~27℃の温度で、50%~60%の湿度が眠りやすいといわれている。24時間空調システムを採用すれば、寝室の温度を一定に保ちつつ、除湿もしてくれるので眠りやすいはず。また、エアコンを使用する場合は、隣の部屋のエアコンをつけると体への負担が少ないからオススメだ。

断熱材を入れて、寝室の断熱性を高めておくと、部屋の中と外で熱の出入りが少なくなる。そうすると、夏の日射や冬の寒気の影響を防いでくれて、エアコンの効きもよくなる。より快適な温度を保つことができるので、眠りやすい寝室に。断熱材は防音効果もアップするので、騒音対策にもなるのだ。

実は人間が眠るときは、脳や内臓など、体の中の深部体温が下がって睡眠に入る。入浴すると深部体温が上がるため、それを下げるために2時間ほど必要だ。良質な睡眠を得るためには、入浴は就寝の2時間前までに済ませよう。40℃前後のお風呂でゆっくり半身浴をすると、深部体温が下がりやすくなり、眠りやすい

▼お話を伺った人
杏林大学医学部 古賀良彦さん
医学博士。杏林大学医学部精神神経科名誉教授。日本催眠学会理事長、日本ブレインヘルス協会理事長。2011年に発足した「睡眠改善委員会」の主要メンバーであり、睡眠の重要性の啓発に務める。主な著書に『睡眠と脳の科学』(祥伝社新書)など