マンションの10階の高さなら虫や蚊は来ない？8階、9階も含めた10階周辺の住戸の住み心地をチェック！

マンションの10階や、その下のフロアの8階、9階、上階の11階～12階、より高層の15階～20階では住み心地は違うのでしょうか？この記事では、マンションの10階の暮らし心地を紹介。気になる蚊やゴキブリなど怖い虫の侵入についても解説します。物件探しの参考にしてください。不動産仲介の経験も豊富な不動産エージェントの山本直彌さんに話を聞きました。

マンションの10階は高層階？11階～12階建てや15階～20階建てのマンションはタワーマンション？

低層階、中層階、高層階は何階から何階？

マンションの10階の住戸は実際に住んでみるとかなりの高さを感じます。また、周辺の環境にもよりますが、遠くまで見渡せる眺望の良さも感じることができます。では、10階は高層階なのでしょうか？そもそも、マンションの低層階、中層階、高層階には定義があるのでしょうか？

建築物の低層階、中層階、高層階という言葉には法的な定義はありません。
「建物を3分割して低層階、中層階、高層階とするのが一般的な傾向です」（山本さん、以下同）

つまり、そのフロアが中層階なのか高層階なのかはマンションの高さによって違ってくるということ。10階建てのマンションなら10階の住戸は高層階ですが、20階建てのマンションなら中層階ということになります。

タワーマンションは何階建て以上？10階建てはタワマンではないの？

一般的なマンションに比べて高層のマンションがタワーマンションですが、何階以上、高さ何メートル以上といった定義はあるのでしょうか。実は、タワーマンションにも法的な定義や決まりはありません。ただし、一般的には20階以上のマンションがタワーマンション（タワマン）と呼ばれています。

これは、建築基準法で高さ60m超の建築物が「超高層建築物」とされているから。マンションの場合、1フロア当たりの高さはおよそ3mですから、60mの場合は20階建て程度になります。そのため、一般的に20階建て以上のマンションがタワーマンションと呼ばれているのです。

つまり、10階建てや11階～12階建てはタワーマンションではなく一般的な板状型マンション。15階～20階建てのマンションでも、20階建てはタワーマンションですが、それよりも低いマンションはタワマン（超高層マンション）とは定義されないことになります。

マンションの10階は何メートル？

マンションの1階当たりの高さは平均3m。ですから10階の住戸は、地上から約27mのところに床があります。地上から約30mのところは11階の床になり、床下のコンクリート部分の厚さを引いた29.5m～29.8mの高さが10階住戸の天井の高さになります。

「ただし、1階のエントランスホールの天井が高さ4～5m程度の吹き抜けになっているケースが、分譲マンションでは多く見られます。エントランスの上を1階住戸と表記する物件もありますし、住戸は2階から始まる設定の物件もあります。そのため、各フロアが地上何メートルのところにあるのか、実際の高さはケースバイケースです」

（イラスト／いぢちひろゆき）

マンションの10階と8階、12階では住み心地に違いはある？高さや眺望、価格を比較

マンションで10階から2フロア分下がると、または上がると高さや眺望、価格に違いはあるのでしょうか？

高さは1フロア当たりの高さが約3mですから、10階から9階では3m、10階から8階では6m、視線の高さが下がることになります。逆に、10階から11階は3m、10階から12階は6m高いところからの眺望になります。眺望の良さは、周辺の建物の高さや距離など環境に左右されますが、視線の高さが3m上下すると特に近い距離にある建物の見え方などは違ってきます。新築マンションのモデルルームでは、主なフロアの窓からの眺望のイメージをCGで見せてもらえるケースがあります。中古マンションでも同時期に異なる高さのフロアが売り出されていることもあります。購入を検討している住戸以外もチェックして、自分にとって住み心地の良さそうな高さを探してみましょう。

では、価格にはどのような違いがあるのでしょうか。一般的にマンションは上層階に行くほど人気があり、価格も高くなります。

「新築分譲マンションでは、『1フロア上がるごとに50万円くらい価格が上がる』という設定も見られます。この場合、10階と8階を比較すると8階の方が100万円安く、10階と12階では12階の方が100万円高くなります」

なお、1フロアごとの価格差は物件のグレードやエリア、立地条件などによって幅があり、なかには100万円以上の差がある場合もあります。

マンションの10階にはどんなメリットがある？

眺望が良く開放的な住戸が探しやすい

マンションの10階は10階建てや15階建てのマンションの場合は、高層階にある住戸です。高層階といえば期待できるのが眺望。マンションが広い公園や学校、幅の広い川や海など、今後、高層の建物が立ちにくい場所に面していたり、一戸建てが中心のエリアに隣接していたりする場合は、眺望の良さや開放感が得られます。住まい探しで眺望や開放感を優先するなら、10階以上の住戸を中心に検索してみるといいでしょう。

ただし、マンションが多く立っているエリア、これから再開発などでタワーマンションなどが増えそうなエリアの場合、窓の外の景色が遮られる可能性があることは覚えておきましょう。

採光や通風が期待できる

リビングが東南や南、南西を向いていて、10階よりも高い建物が近くに立っていなければ採光が期待できます。通風は、周辺の建物との距離や位置関係に影響されますが、採光と同じように周囲の環境によっては満足できる通風が得られるといえます。

低層階よりも防犯面での安心感が高い

1階や2階などの低層階の住戸に比べると、外部からの侵入犯に狙われる可能性は低いといえます。

しかし油断は大敵。マンションは居住者だけでなく、居住者の友人知人、デリバリーや宅配、工事関連会社のスタッフなど、さまざまな人が出入りします。業者を装ってマンション内部に入ってくる人もいます。また、外部から屋上に立ち入ることのできるマンションでは、屋上からバルコニーを経由して入ってくる侵入犯もいます。10階だからと油断せず、玄関ドアや窓の施錠を忘れないことが大切です。物件選びの際には、セキュリティ対策はどうなっているかなども忘れずにチェックしましょう。

外からの視線が気にならない

低層階の住戸に比べると、道路を歩く人の視線や気配は気になりません。また、4～5階建てのマンションなどの窓から見上げる人がいても、10階の高さなら室内の様子はほとんど見られることはありません。気になる場合は、少し離れた道路や、誰でも出入りできる商業ビルなどから10階の窓を見てみると、視線がどこまで届くのかというイメージができそうです。

ただし、隣接しているマンションが同じくらいの高さの場合は、カーテンなどで目隠しをしないと向かい合う部屋の様子がお互いに見えてしまうので注意しましょう。

高層階は人気なので売却がしやすい

10階が高層階にあたるマンションで、眺望や採光など、高層階ならではのメリットが得られる住戸は、売り出し価格や住戸の状態などにもよりますが、同じマンションの低層階、中層階もスムーズな売却が期待できます。

マンションの10階でも虫や蚊は出る。思わぬデメリットや知っておきたい注意点は？

ゴキブリ、コバエなど虫は高層階でもやってくる

地面と接していないフロアなら、住戸に虫が入る可能性は低いのではないか、と期待する人も多いでしょう。しかし、マンションだからといって虫が出ないとはいえません。

「マンションは3階までは虫が入りやすく、4階、5階以上になるとハエなどの飛ぶ虫も含めて虫の侵入はかなり減るといわれています。しかし、タワーマンションの超高層フロアでも虫が全く出ていないという物件はほぼないでしょう。排水管を伝って上がってきたり、人や荷物について部屋に入ってきたり。エレベーターに侵入してやってくる虫、非常階段を上ってくる虫もいます。マンション＝虫が出ない、とは考えない方がいいですね」

では、虫の発生を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

「虫は衛生環境が悪いところや、植物などの緑が多いところを好みます。ゴミ置き場やマンションの建物周辺の清掃、植栽の適切な管理は必須条件です。排水管清掃も年に1度は行って衛生状態を保つことで虫の発生率を下げられます。管理会社と協力して、マンションの衛生状態の維持管理を行うことが大切です」

（イラスト／いぢちひろゆき）

高いところが怖い人は、高層階は避けた方が暮らしやすい

入居してから自分が高所恐怖症だと自覚。レースのカーテンを常に閉めて眺望が目に入らないようにしたり、窓の近くには近寄らないようにしたりしている、というケースがあります。

「高いところは好きだと自分では思っていても、日常生活をおくる場所が高層階でも大丈夫かどうかは、実は体験してみないとわからないものです。検討している物件が内見できる場合は、エレベーターから玄関までの廊下や、住居のバルコニーを確認しましょう。バルコニーのフェンスが格子状なのか、コンクリートの壁で外が見えにくくなっているのかでも印象が違います。未完成のマンションなら、同じくらいの高さの商業施設やオフィスビルなどで高さを確認することが大切です」

洗濯物を外に干せないルールがあることも

採光や通風がよく、洗濯物がよく乾きそう！と期待していたのに、管理規約でバルコニーに洗濯物が干せないマンションもあります。高層階から洗濯物が落下して、人や車に当たった場合はとても危険ですから、そのリスク回避のためもありますが、グレードの高さを売りにしているマンションでは、低層階であっても外干しが禁止されていることも。タワーマンションの場合は洗濯物を外に干せないケースがほとんどだと思っておきましょう。なお、バルコニーに干せない場合は、部屋干しになりますが、乾燥機や浴室暖房乾燥機などを活用することで梅雨時期でも快適に過ごせます。

地震のときの揺れは低層階、中層階より大きい？

「高層階は地震のときに揺れやすいというのは、あくまでもおおまかな傾向です。揺れに影響するのは、まずは建物の耐震性能。耐震構造なのか、制震構造なのか、免震構造なのかによって揺れ方は違ってきます。免震構造は建物の揺れを吸収する装置が入っているため大きくは揺れず、東日本大震災の時の関東エリアのマンションでは『揺れていることには気づいても、あまり気にならなかった』といった声もありました。しかし、免震構造だとしても地盤によっては体感する揺れは大きくなる可能性があります。

上層階は揺れやすいということのほかに、揺れている時間が長いということもあります。これは長周期地震動によるもの。長く揺れることで乗り物酔いのような状態になる方もいらっしゃいます」

高層階は気圧が下がって体調を崩すというのは本当？

気圧は上空に行くほど低くなります。例えば山を100m登ると気圧は約10ヘクトパスカル下がります。高さ60mのタワーマンションの20階なら地面よりも6ヘクトパスカル、マンションの10階なら3ヘクトパスカル下がるということ。これは、私たちが天候の変化の中で日常的に体験している気圧の変動の範囲です。

「雨が降ってくると頭痛がする、という方もいらっしゃるので気圧の変動の影響には個人差があります。しかし、高層階で暮らすと生活に支障が出るかというと、そこまでの影響はないと考えられます。気候による気圧の変動と同じくらいのレベルの変化ですから、気圧差の影響を受けづらい方は、特段気にする必要まではないと考えられます」

過剰に心配することはありませんが、気になる人は晴れている日だけでなく、雨や雪の日などお天気条件の違う日に何度か物件見学に行ってみるといいでしょう。

住んでから後悔しないためにマンションの10階住戸はここもチェック

眺望と採光の良さが、暑さというデメリットになることも

周辺に遮る建物などがなく、採光の良い住戸の場合、眺望と明るさは大きなメリットです。しかし、それが表裏一体のデメリットになることも。

「タワーマンションが多く立ち並んでいるエリアを歩くと、車のフロントガラスに置くような遮熱シートが窓にはられていることがあります。日当たりが良すぎて、西日がまぶしすぎる、夏になると部屋が暑くなりすぎることがあるわけです」

中古マンションを検討しているなら同じ方角の住戸の窓を、新築マンションの場合は近隣の高さや方角、周辺環境が似ている既存のマンションの窓を見てみましょう。日差しによって部屋の中がどれくらい暑くなるかは、採用されている窓ガラスやサッシの性能にもよりますが、近隣に太陽の熱を防ごうとしている住戸が多い場合は注意が必要です。

（イラスト／いぢちひろゆき）

ゴミ置き場が各フロアにあるマンションだと快適

ゴミ置き場がどこにあるかでも、暮らしの快適性が違ってきます。

「エレベーターを使って1階まで降りることになりますが、ゴミ袋を持っているとエレベーターを待っている間や、乗っている途中で同じマンションの人に会うのが意外と気まずいもの。ゴミ出しのときには、誰にも会いたくないという心理が働くため、各フロアにゴミ置き場がないマンションの場合は、夜間や早朝にゴミ出しを行うなど配慮するといった声はよく聞かれます」

大規模なマンションで各フロアにゴミ置き場がある場合、ゴミが出しの際のストレスが軽減されます。物件探しの際のチェックポイントの一つにするといいでしょう。