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家の外観デザインは、素材や色の選び方で印象が大きく変わります。この記事では、外壁材の中でも耐用年数が長く、人気の「サイディング材」について詳しくチェック。塗装や張り替えメンテナンスの周期や費用の目安、最近のサイディングボードの種類や進化などについて、外装材メーカーニチハの日高康雄さんに聞きました。
サイディングとは、建物の外壁に張る仕上げ用の板材のことです。サイディングボードとも呼ばれます。
外壁の仕上げにサイディングが使われ始めたのは1964年に、後述する窯業系サイディングの生産が開始されてから。以前はモルタル(砂とセメントと水を練ってつくられる外装材)仕上げが主流でしたが、1990年代以降にはサイディングが外壁仕上げの主流になりました。
「一般的なモルタルを塗る場合に比べて、乾式工法のサイディングは簡易施工で工期が大幅に短くなるため工事費用を抑えることができます。また、さまざまな材料の製品があることでデザインが豊富です。工場で生産・管理されている工業製品であることから製品の品質が安定していることも大きな特長です。そして、重要なのが軽さです。モルタルに比べ、窯業系サイディングの重さは2分の1以下、金属系サイディングは約10分の1です。軽いほうが建物への負荷を減らせますし、耐震性も上がります」(日高さん、以下同)
住宅の外壁の主流となったサイディングは、材質によって大きく4種類に分類されます。それぞれどのような特徴があるのか、メリット・デメリットを比較してみましょう。
現在、新築戸建ての多くや店舗、公共施設などの中高層建築物にも採用されているのが「窯業(ようぎょう)系サイディング」。主原料のセメント質原料とパルプや木繊維といった繊維質原料を成型し、養生・硬化させて塗装をした外壁材で、高温・高圧の「窯」で硬化させてつくられることから「窯業系サイディング」と呼ばれるようになりました。
「今の主流は窯業系サイディング。一般的な戸建て住宅の約75%超は窯業系サイディングを外壁に使用しています」
デザインのバリエーションが豊富で、防火性能、耐久性能、品質の安定性に優れているのが魅力。また、切断や穴あけなどの加工がしやすく施工方法も簡易です。広い面積を塗っていくモルタルや漆喰(しっくい)での湿式工法に比べて、ボードを張っていく乾式工法である窯業系サイディングは工期が短く、メンテナンスも比較的容易といったさまざまなメリットがあります。
一方、窯業系サイディングは比較的メンテナンス周期が短く、長期的に見るとランニングコストが割高になるケースも。主原料の特性上、熱伝導率が高いため、夏場に外壁や室内が暑くならないよう断熱材や遮熱塗料を採用するといった工夫も必要です。
窯業系サイディングの次に広まっているのが、ガルバリウム鋼板などの「金属系サイディング」はガルバリウム鋼板などの金属を成型したもので、表面材と裏面材で断熱材でもある芯材を挟んだ三層一体構造が特徴です。
「窯業系サイディングの次に多いのが、金属系サイディングです」
「金属」と聞くと重さが気になるかもしれませんが、金属系サイディングの外壁の重さはモルタルの約10分の1。建物は軽いほうが地震の影響を受けにくく、既存の外壁に重ね張りをするリフォーム用の外壁材としても適しています。
表面材に使われるガルバリウム鋼板などは防錆(ぼうせい)性に優れており、さらに表面に焼き付け塗装を行っているため外観の美しさを長く保つことができます。表面が金属であるため、雨や雪の浸入を防ぐ効果も期待できるでしょう。寒冷地では、一般的な外壁材では外壁内に浸入した水分が凍ったり解けたりを繰り返す凍害が外壁材を劣化させるのですが、金属で吸水しないためその心配がありません。また、芯材に使われている断熱材や裏面材の輻射熱を反射させる機能で、高い断熱性能も得られます。
さまざまなメリットがある一方で、金属系サイディングはほかのサイディング材より原材料費が割高になるというデメリットも。また、専門性が高い工事になるため施工業者が限られてしまいます。
「木質系サイディング」は、その名のとおり「天然木」を材料に、表面に塗装を施したもの。木ならではの温もりのある雰囲気を重視する、外観デザインにこだわった住宅に使われています。
デザイン性の高さのほか、環境へのやさしさも木質系サイディングの魅力です。ただし、天然木は水に弱いのが難点。塗装が落ち、木材に多くの水分が含まれた状態で放置していると、外壁の劣化につながります。再塗装するなどこまめなメンテナンスが必要で、その分、メンテナンス費用もかかります。そのため、今は木目模様の窯業系サイディングが使われるケースが多いそうです。
「樹脂系サイディング」は、プラスチックの一種である塩化ビニル樹脂を板状に加工したもの。耐久性が高く凍害にも強いため、北米では普及している外壁材です。
さびたり、腐食したりの不安もなく、メンテナンスにかかる手間が少ないのが樹脂系サイディングの魅力。また、軽量で耐震性が高く、凍害や塩害に強いこともメリットとして挙げられます。
しかし、窯業系サイディングなどと比較すると色やデザインのバリエーションは限定的。また、日本では取り扱っているメーカーがそもそも少ないため、あまりなじみがありません。

| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 窯業系サイディング |
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| 金属系サイディング |
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| 木質系サイディング |
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| 樹脂系サイディング |
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前述したように、一口に「サイディング」といっても質感や色、デザインはさまざま。だからこそ、家の外観デザインやイメージに合わせて選ぶ楽しさがあります。色はシンプルなモノトーンからカラフルなもの、質感や模様はタイル調やレンガ調、木目調のものなど多彩です。複数の色や質感のサイディングを使えばデザインのバリエーションも広がります。
「一般的にサイディングはヨコに張るケースが多いですが、金属系はシャープなイメージを活かすためにタテに張るケースも目立ちます」
タテに張る場合と、ヨコに張る場合、どちらがコストがかかるかは、家の形状やデザインによって違うためケースバイケースだそう。一般的には材料に無駄が出ず、凹凸の少ない家やシンプルなデザインのほうがコストは抑えられる傾向にあるそうです。


なかには、窯業系と金属系を併用するパターンもあるようです。
「質感の違うサイディングを組み合わせることで、個性的な外観のコーディネートが楽しめます。ただし、窓に接する部分の処理方法が窯業系と金属系では異なるため、雨仕舞い(建物に雨が浸入しないようにする細部の処理)をきちんと行うことが大切です」
紫外線や雨風、暑さ寒さにさらされ、排気ガスやホコリなどの影響を受けるサイディング。耐候性のある塗装がされていても、その効果は永遠ではありません。では、どれくらいの周期でメンテナンスすればいいのでしょうか。
同じ外壁材でも日がよく当たる面の劣化スピードが速いなど、立地や家の形状、気候、外壁塗料の種類などによって状態は違ってくるため、最適なメンテナンス周期はケースバイケースです。あくまで目安ですが、既存の家の場合、新築から5~10年で塗り替えが、25~30年程度で張り替えが必要になる場合もあります。
また、サイディングの劣化はなくても、サイディングとサイディングの間に施工されているシーリング(コーキング)が紫外線などで劣化していることもありますから、施工会社による定期点検はもちろん、地震や台風の後のほか、年に1度は自分の目で確認して早めのメンテナンスをすることが大切です。

サイディングの劣化や不具合などは、自分でもある程度確認することができます。まずは、経年による反りやうねりがないか、目視で確認してみましょう。
また、触ったときに手が白くなったら要注意。これは「チョーキング(白亜化現象)」といって、外壁に塗られている塗料に含まれる顔料が粉化したものです。併せて、表面にクラック(ひび割れ)がないかも要チェック。これらは、補修か張り替えが必要なサインです。

「サイディングに劣化の症状が見られた場合、補修がいいのか、張り替えたほうがいいのかは状況によります。例えば、多少の反りが見られる場合には、必要に応じて浮いてきている箇所をビスやクギを打って押さえるだけで済むこともあります。あまりにうねっている場合は下地状況の確認も兼ねて部分的な張り替えをオススメしています。そのままにしておくと、隙間から雨水がまわり、サイディングの裏面からの吸水や乾燥の繰り返しで反りを助長する原因にもなります。今は躯体とサイディングの間に通気層が設けられているため、雨水が躯体の中に浸入することは抑えられますが、サイディングの美観と性能を保つためにも、日常のお手入れや適切なメンテナンスが重要です」
そのほか、サイディングにクラックや欠け、汚れなどが見られた場合はパテで埋めることや、部分的な張り替え、塗装補修が行われます。またシーリング(コーキング)に亀裂やはく離、目地やせ、汚れなどが見つかったら、部分補修や洗浄が必要です。
また、建て替えも視野に入れている古い家の場合、費用がかかる張り替えよりも、補修にとどめておくのも現実的な選択。あと何年住むのかも考えて、メンテナンス方法を選択するのもいいでしょう。
定期的に発生するからこそ、補修のコストは気になるポイントです。サイディングに塗装を行う場合、いくらくらいかかるものなのでしょうか。
費用は塗料のグレードや家の形状、施工地域など条件によって違ってくるので、ここで挙げるのはあくまでも目安ですが、2階建てで外壁面積約170m2の住宅(延床面積は約120~150m2)の場合、一般的なアクリルシリコン塗料を使用しサイディングの塗装を行うと、費用は約125万円。内訳はシーリング(コーキング)の打ち替え約30万円、再塗装約60万円、仮設足場代約35万円となります。

築年数が古い家で、サイディングを一新する場合は、外壁材のグレードのほか、施工方法によってコストが大きく違ってきます。
サイディングを「張り替え」する場合、基本的には既存のモルタルや古いサイディングを撤去して新しいサイディングを設置します。張り替えずに、既存の壁に直接サイディングを張る「重ね張り」という方法もありますが、コストや工期を抑えられる一方で、施工前よりも建物が重たくなる、施工後に水濡れなどのトラブルが起きた場合に原因を見つけるのが難しくなるなどの難点もあります。
コストばかりに目を向けず、どの施工方法を選ぶのが最適か、専門業者にじっくり相談してみましょう。
最近のサイディングの進化には、大きく3つのポイントがあります。それぞれのポイントを見ていきましょう。
少し前までサイディングは塗料のこまめな塗り替えが必要でしたが、近年は耐久性が大幅にアップ。メンテナンスにかかる費用も抑えられる傾向になっています。
「今は住宅そのものの寿命が長くなっています。ロングライフ住宅が主流の時代、外壁材も寿命の長いものをつくり、長期保証もしようというのが、業界全体で当たり前の流れになっています。昔は10年保証が一般的でしたが、30年保証の商品も出ています。窯業系や金属系サイディングなどは何十年使っても、大きな穴があいたり、崩れ落ちたり、ということはないでしょう。高耐久性をうたう最近のサイディングは塗膜の変色・褪色(かっしょく)やひび割れなどに強く、塗装の塗り替え費用が抑えられます」

“むく材を使った木製の外壁だと思ったら実はサイディングだった”ということがあります。最近のサイディングは塗装の技術が進化して、よりリアルな質感が再現されているのです。
「次世代インクジェットによる塗装で、細かな模様や絵柄を印刷できるようになりました。木目柄やレンガ柄など、奥深い色調と自然な凹凸感で、本物の木やレンガなどと区別がつかないくらいです」
また、サイディングとサイディングをつなぐシーリング(コーキング)材が不要な商品も登場しています。
「サイディング同士を直接つなぐシーリング(コーキング)レスは、どこがつなぎ目なのかが分かりにくく一体感のある美しい仕上がりになります。シーリング(コーキング)の打ち替えが不要なので、メンテナンスコストの削減にもつながります」

「雨が当たると外壁に付いた汚れが落ちるセルフクリーニング機能のあるサイディングが、今では一般的です」
空気中の水分子で外壁表面に薄い膜をつくり、雨が降ると水分子膜に付いた汚れごと洗い流すものや、太陽光が外壁の汚れを分解して付着力を弱め、雨水で洗い流すものなど、メーカーや商品によって仕組みは違いますが、新築時やリフォーム後の美しさが長い間保てるのがメリットです。
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