近年人気が高まっているおしゃれでかっこいいガルバリウムの家。今回の記事では、ハーバーハウスで設計を担当する冨田陽平さんにお話を伺い、ガルバリウムの素材の特徴や性能、ガルバリウムを建材として使用するメリット・デメリットを解説します。外壁にガルバリウムを採用したおしゃれな外観実例も併せてご紹介します! ぜひ家づくりの参考にしてくださいね。
ホテルライクなインナーガレージ ハウスの実例です。外壁にはガルバリウムと木やタイルなどの異素材をバランスよく組み合わせて、スタイリッシュに仕上げています。夜には玄関の前の明かりがともり、昼間とは異なる雰囲気を楽しめます。
黒いガルバリウムの外壁に無垢(むく)材のルーバー(羽板状の部材を平行に並べた目隠し)が映える、和モダンな住まいの実例です。ブラックガルバリウムを基調とし、玄関の周りや掃き出しの柱などに無垢材を取り入れ、外観を和モダンに仕上げています。
広いインナーガレージを設けた住まいの実例です。ホワイトのガルバリウムを外壁に使用し、ガレージに停めた愛車が映えるシンプルで洗練された外観になっています。夜に室内の明かりがともると昼とはまた違った表情を楽しむことができます。
ホワイトガルバリウムを外壁として使った住まいの実例です。無垢材、セメント、天然石調タイルなど異素材を組み合わせてデザイン性をアップ。個性のある住まいに仕上がりました。
外壁にブラックガルバリウムを使用した家の実例です。建物の裏側にある芝生が黒の外観と調和し、スタイリッシュながらもイキイキとした印象に。ガルバリウムの素材感は植栽の緑とも調和します。
ガルバリウムは、アメリカで開発された「ガルバリウム鋼板」という金属製の建築素材のことで、正式名称は「溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板」になります。メッキの膜で鋼板を覆っているのが特徴で、メッキを被せることによって内側の鉄が腐食しにくくなり、耐久性に優れた素材です。厚みは0.3~0.4mm前後が一般的で、ほかの壁材よりも薄いのが特徴です。
ガルバリウムはもともと、屋根に使用する建材として普及していました。耐久性が高い素材のため、建物を守る屋根にはぴったりの素材です。屋根だけでなく外壁材としても注目され始めたのは今から7~8年ほど前のことです。
「無垢材やタイルなど異素材との相性がよく、屋根に使えるほど丈夫な素材であることが人気の理由でしょう。ガルバリウムは基本的に家の外装材として採用するケースが多いです」(冨田さん、以下同)
建築素材として市場に出ているガルバリウムはメーカーごとに名称が異なり、近年はデザインの幅がますます広がっています。中には特殊な塗装料によって遮熱性を高めたものや、表面に凹凸を表現したものなども存在します。
現在、外壁用のガルバリウムには多様な色の選択肢があります。
ガルバリウムが外壁材として普及し始めた当初、色の選択肢は白や黒しかなかったのですが、近年はアッシュグレーやモスグリーン、グレージュなど、メーカーごとにトレンドに合わせた幅広いカラー展開がなされています。さまざまな色の中から好みに合ったものを探せるようになってきたので、以前に比べて家の外観に個性を演出しやすくなりました。
ガルバリウムを外壁に用いる場合、張り方は縦張り工法と横張り工法の2種類があり、張り方によって外観の印象が変わります。
デザイン性を重視する場合はガルバリウムの水平のラインを美しく見せることができる横張り工法が人気です。
メンテナンス性を重視するなら水が溜まりにくい縦張り工法にしたほうがよいとされています。大雨や台風などによって外壁内部に雨水が浸入する可能性もゼロではありません。雨水が外壁の中に入ることでサビや雨漏りが発生することもあります。縦張り工法であれば、そういったリスクを減らすことが可能です。
耐久性の高さは、ガルバリウムが外壁材として人気である理由の一つです。ガルバリウム鋼板には酸性雨に強いという特性があり、ほかの外壁材と比較すると耐用年数が長いのです。
「一般的に外壁は10年ごとのメンテナンスが推奨されていますが、ガルバリウムは傷やサビが付かなければ20年ほど修繕不要とされています。メーカーによって素材の仕様が異なり、中には25~30年ほど長持ちするガルバリウムもあります。外壁のメンテナンスコストを抑えたい場合は、ガルバリウムはおすすめです」
防水性に優れている点もガルバリウムの強みです。張る際に目地が外に出にくい施工をするため、ほかの外壁材に比べて雨水が浸入しにくいという特徴があります。防水性を高めたい場合は横張りよりも縦張りのほうが優位になります。ほかの素材との組み合わせ方や施工の工夫によっても防水性は異なるため、心配な場合は建築会社に相談しましょう。
「素材自体が軽いガルバリウムは、耐震性に優れた建材です。地震が発生して建物が揺れた際にも家屋倒壊などのリスクを少なくすることができます」
ガルバリウムは金属なので重いというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、タイルやサイディング、モルタルなどほかの素材と比較すると軽量です。
そのため地震発生時には建物にかかる負担が少なく、揺れにも強いという長所があります。耐震性の高い家を建てたい場合は、外壁の重さを考慮して素材を選択するとよいでしょう。
「意匠性の高さはガルバリウムの大きな魅力の一つです。シンプルながらもスタイリッシュであり、おしゃれなデザインの家になると好評です。色や素材の組み合わせ方によって、かっこいい外観も可愛い外観も表現できます」
シンプルなデザインのガルバリウムハウスは、都会的な街並みにも自然の多い風景にも調和します。
ガルバリウムを異素材と組み合わせる手法も可能です。
「特に木の素材感との相性がよく、無垢材や木目柄の素材などと組み合わせたデザインが人気です。植栽などのグリーンともマッチします」
といったように組み合わせる木の風合いとガルバリウムの色によってさまざまなテイストを表現できます。
ガルバリウムは金属のため表面温度が上がりやすく、夏場は日射を浴びることによって高温になるので注意が必要です。
高温になるのが心配な場合は、遮熱塗装を施したガルバリウムもあります。
ガルバリウムには傷が付きやすいという特性があります。表面のメッキが剥げてしまったり、傷が付いてしまったりすると、雨水や外気に触れて赤サビが発生します。劣化や傷が見られたら、早めに修繕したほうがよいでしょう。
サビといえば赤サビをイメージする方が多いと思いますが、ガルバリウムが特に注意したほうがよいのは白サビなのです。白サビとはガルバリウムの表面に付着した白い斑点のようなもので、表面のメッキに含まれる亜鉛が空気中のゴミや埃によって酸化することで発生します。ベランダの隅や軒下など雨がかからない場所では特に発生しやすいので注意しましょう。白サビの予防法は、外壁に水をかけて付着したゴミや埃を落とすことです。
黒やネイビーのガルバリウムだと白サビが発生したときに目立つ傾向がありますが、早期発見しやすいのはメリットといえます。
「ガルバリウムの外観はかっこいいと評価されている一方で、好みによっては工場の倉庫を想起する方もいます。特有の素材感があるためデザインを工夫しないと外観の見た目が単一化しやすいのはデメリットといえるでしょう。しかし、異素材を組み合わせてアクセントにするなど設計次第でオリジナリティを出すことも可能です」
ガルバリウムと異素材を組み合わせるときにはバランスに注意が必要です。テイストや質感がバラバラな素材を何種類も組み合わせると雑多な印象の外観になってしまう可能性もあります。
「複数の色のガルバリウムを外壁に使用する場合は2色以内にしたほうがガルバリウムのスタイリッシュなイメージを保てるでしょう。素材や色の組み合わせに関しては、設計者やデザイナーなどプロの意見を頼りに決めましょう」
「植物とも相性がよいガルバリウム。シンボルツリーや大きめの鉢植えなどをエクステリアに加えると外観のアクセントとして有効です。硬質なガルバリウムに植物の瑞々しい見た目が映え、家全体の意匠性をぐっと引き上げてくれるでしょう」
北欧風、アメリカン、和モダンなどテーマを決めると、デザイン性に統一感が出て、よりおしゃれなガルバリウムハウスになります。「ガルバリウムを外壁に使ってこんな家をつくりたい」というイメージがあれば、建築会社との打ち合わせの際にぜひ共有してみましょう。SNSや施工事例などの写真があると、イメージがより伝わりやすくなります。
海に近い土地に家を建てる場合は注意しましょう。海風には多くの塩分が含まれ、金属の酸化を促進させます。そのためガルバリウムをはじめベランダやバルコニーなど建物の外側の部分に赤サビが発生しやすくなるのです。
一般的に、海岸から2km以内が塩害地域といわれています。海が近い場所に家を建てる場合は、短いスパンで大規模修繕が必要になる可能性がありコストもかかるため、特に大きな面積を占める外壁材選びには慎重になったほうがよいでしょう。
塩害のない地域であればガルバリウムは20年ほどは大規模修繕の必要がないといわれています。しかし、白サビから守るために定期的に水をかけたり、傷や穴が空いていないかをチェックする必要はあります。家の見た目をいつまでも美しく保つためには、こまめな手入れと確認が重要です。
建築会社ごとに得意とする外壁の仕様があります。ガルバリウムの外壁が気になっている場合は、施工実績の豊富な建築会社に依頼するとよいでしょう。過去の施工事例をもとにさまざまな提案を受けることができ、工事品質に関しても安心です。また、施工実績の少ない建築会社の場合は工事価格が高くなる可能性もあります。
また、ガルバリウムはサイディングなど一般的な外壁材よりも少し高くなる傾向にあります。ただし建築会社やメーカーによっても価格幅があり、ガルバリウムが他の素材よりも大幅に高い、安いという可能性は低いです。
耐久性や防水性に優れ、軽くて地震にも強い特性を持ったガルバリウム鋼板は、従来は屋根材として使用されてきました。似た素材にトタン板がありますが、トタンと比較するとサビにくいのがガルバリウム屋根の特徴です。
「ガルバリウムはさまざまな形状に加工でき、多様な屋根の形を実現できます。そのためデザイン性の高い屋根の形状を実現でき、外観もおしゃれになります。また、瓦屋根と比較すると軽い素材であるため耐震性の高い屋根になるというメリットがあります」
耐用年数は瓦屋根のほうが長いものの、価格を比較すると瓦屋根よりもガルバリウムのほうが安価なものがあることもメリットといえます。
メーカーによっては表面を樹脂でコーティングしたガルバリウムの屋根材も開発されています。こちらは紫外線に強いのが特徴です。外壁と同じくメーカーごとにさまざまな種類のガルバリウムが存在するため、ニーズや予算に合わせて検討しましょう。
最後に、ガルバリウムを住まいの外壁に使うときのポイントについて、富田さんに伺いました。
「ガルバリウムは丈夫で長持ちするメリットの多い素材です。デザインのバリエーションが出しにくいという課題はあるものの、異素材を組み合わせるなど工夫の仕方によりおしゃれでかっこいい家に仕上げることが可能です。また、各メーカーからもさまざまな仕様のガルバリウムが登場しているため、ガルバリウムハウスの選択肢の幅は以前よりもずっと広くなりました。ガルバリウムハウスに興味がある方は、ぜひ建築会社に相談してみてください」
ガルバリウムとは鉄の鋼板にメッキの膜を被せてつくられた金属製の建材
薄くて軽いことや、耐久性・防水性・耐震性に優れた素材
ガルバリウムの色や異素材との組み合わせにより、おしゃれでかっこいい外観に仕上げることができる
傷が付くと赤サビが発生しやすいので注意。白サビの発生を予防するために定期的に水をかけるとよい