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注文住宅を建てるときには「理想の家にしたい」と思うものです。しかしそもそもどんな家が理想なのか、はっきりしていなかったり、なにから考えればよいのか分からなかったりする人もいるでしょう。理想の外観や間取りの家はどうすれば建てられるのか、シミュレーションの仕方や実現する手順をPANDA:株式会社山本浩三建築設計事務所の山本浩三さんに伺いました。多くの人が憧れる「理想の家にあるスペース」例も写真付きで紹介します。
理想の暮らしを実現できる家を建てるには、設計事務所や工務店、ハウスメーカーなどに相談する前に、外観や間取りなどのイメージを固めておくのがおすすめです。具体的には以下のステップを踏んで進めるとよいでしょう。
ステップ1:自分にとって、家族にとっての理想の暮らしを考える
ステップ2:理想の家に必要な広さを検討する
ステップ3:理想の家の内装をイメージする
ステップ4:理想の家の外観デザインを決める
ステップ5:理想の家の間取りを考え、動線をシミュレーションしてみる
ステップ6:理想の家を実現してくれるハウスメーカーや工務店を探す
それぞれどのような内容なのか、次章から詳しく解説します。
どんなにおしゃれで素敵な家でも、自分たちのライフスタイルと合っていなければ理想の家にはなりません。そのためまずは、自分たちがどのような暮らしをしたいのかを考えることから始めます。
「ご夫婦のみだったり、お子さまがいたり、家族の形態はさまざまです。さらに家族ごとに考え方や価値観も異なります。そのため家を建てるときには『その家でどんな暮らしをしたいのか』を、家族でよく話し合っておくことが大切です」(山本さん/以下同)
例えば田舎暮らしをしたいのか都会に住みたいのかで、理想とする場所は違ってきます。平屋がいいのか、2階建てがいいのかによっても必要な土地の広さは変わります。
休日はどんな過ごし方をしたいのか、子どもがいるのか、ペットは飼うのかなど、自分たち家族の理想の暮らしに必要な条件を洗い出し、優先順位を付けていきましょう。

理想の暮らしが想像できたら、それを実現するためにはどのくらいの広さが必要になるのかを検討します。
「どのような暮らしをしたいのかを思い描いているうちに、必要な広さがなんとなく分かってくるものです。さらに現在住んでいる住居の広さから、あとどれくらい広ければ理想の暮らしを実現できるかを考えると、より具体的な数字が見えてくると思います。
とはいえ現実的には予算との兼ね合いもあります。どのように工夫すれば予算内で希望の広さの家を実現できるかについては、設計者とプランを考える段階で、一緒に検討することになるでしょう」
続いて理想の家の内装を、どんなデザインにしたいかを考えます。自然素材を使いたい、塗り壁にしたいなど、イメージを固めていきましょう。
「理想の暮らしを考えるときには、どんなモノに囲まれて暮らしたいかもイメージされているのではないでしょうか。置きたい家具やアイテムなどから、どんな色のどんな素材の床材や壁紙が合うのかを考えてみるとよいでしょう」
囲まれて暮らしたいものを思い描いたら、それを入れる「箱」である外観を考えていきます。外観デザインには種類があるので、自分たちの理想に近いものを探してみるとよいでしょう。ここでは人気の外観デザインを4つ紹介します。
シンプルな線で構成されるシンプルモダンは近年人気の外観デザインで、軒や庇(ひさし)を小さくするなど凹凸が少ないのが特徴です。色は白、黒、グレーなどのモノトーンやネイビーが多く、窓は小さく、あるいは窓がないなど、大胆なデザインも見られます。

切妻の大屋根や白と黒、あるいはアースカラーなど、和を感じさせるテイストを残しながらも現代風にアレンジされたのが和モダンです。

ナチュラルモダンは、オフホワイトやクリームなど柔らかな色の外壁に、レンガや木目など温かみのある自然素材を組み合わせ、すっきりと現代風にデザインされているのが特徴です。

南欧デザインは、白やオフホワイトなど明るい色の外壁に、赤やオレンジ色の瓦と木や木目の玄関ドアを組み合わせるのが特徴です。鋳物との相性がよく、アクセントに用いられます。

必要な部屋数は、家族の人数によって異なります。基本的には、LDKのほかに家族それぞれが自由に過ごせる個室があると、互いのプライバシーを確保できます。
あわせて自分たちの理想の暮らしをするために、どんな部屋が必要かも考えましょう。例えばリモートワークをするのであれば、仕事部屋や書斎があると便利です。将来家族の増減も考えられるなら、あらかじめリフォームしやすいように設計しておくのもおすすめです。
暮らしやすい家にするためには、動線がよいことも大切です。実際に暮らしたときに、家族がどのような動きをするのかをシミュレーションしてみましょう。自分たちで間取図を書けるアプリもあるので、使ってみるのもおすすめです。
「自分たちで間取りまで考えられなくても、家族の動線が思い描けていると、設計者が理想の間取りを実現しやすくなります。
例えば家族が多いので洗面と脱衣所は別がいい、ランドリールームとファミリークロークは隣接させたい。あるいは車庫からは収納を通って玄関にアクセスしたいなど、『具体的な動きのシーン』をシミュレーションし、伝えられるようにしておくとよいでしょう」

生活動線・家事動線についてはこちら→
間取りプランの最重要ポイント「生活動線」「家事動線」がよい間取り22選!
収納が少ないと、おしゃれな家を建てても散らかりやすくなってしまいます。間取りを考えるときには、十分な収納を確保することも大切です。
「広い土地を確保しにくい都市部では、広い収納が必要とはいえ、居室を優先したい場合もあるでしょう。そのようなときには、床下収納や小屋裏収納など、延べ床面積に算入しなくてよい収納を検討することをおすすめします。日常的に使わないものや季節物をそういった収納に保管すれば、居住空間内のクローゼットなどは最小限に抑えることが可能です」
小屋裏についてはこちら→
小屋裏ってなに?注文住宅に小屋裏を設けるときのポイントを解説
床下収納についてはこちら→
床下収納(床下収納庫)にはどんなものを入れられる?上手に使って収納力アップ
快適に暮らすためには、通風や採光も考慮する必要があります。
「通風や採光に関しては、立地条件に左右されやすい部分なので、思い通りにいかないこともあります。すべてを自分たちで考えようとせず、機能的な部分に関しては、設計者などプロに任せてしまうことも大切です」

採光についてはこちら→
採光を知って快適に暮らす 窓を工夫して、光と風を取り入れよう!
大まかな外観デザインや理想の間取り、動線まで考えたら、それらを実現してくれる工務店や設計事務所、ハウスメーカーなどを探しましょう。
建築会社を探すときには、ホームページを確認し、自分たちの理想の家と近しい事例があるところを選ぶとよいでしょう。
「希望のエリアで工務店や設計事務所を探すには、多くの会社が紹介されているポータルサイトなどを利用すると便利です」
気になる会社がモデルハウスを用意しているなら、積極的に足を運んでみましょう。実際に建てられた家を見ると、質感や雰囲気が分かります。担当者と直接話をして、家づくりの進め方や温度感など、相性を確かめることも可能です。

予算や希望を聞いたうえで、理想の家をかなえてくれそうな会社を紹介してくれるサービスを利用すると、自分で探す手間が省けます。
理想の家は人によって異なっても、多くの人が憧れる空間はある程度共通しているものです。ここでは多くの人が「家にあったらいいな」と思うスペースを紹介します。
リビングに吹抜けをつくると、家の中に開放感あふれる縦空間を生み出せます。
「吹抜けをつくると、1階部分は窓を小さく取りプライバシーを確保しつつ、2階部分から光を取り入れられるのもメリットです」

家族がキッチンカウンターを取り囲んで楽しく家事をしたり、友人を招いてホームパーティーを楽しめるオープンキッチンも人気です。
「とくにアイランドキッチンは、両側を通れて動線がよいのもポイントです。ただしフルフラットの場合、ものを置いたままにすると散らかって見え、デザインが台無しになってしまうので、きれいに片づけられるかどうかは大切だと思います」

ウッドデッキがあると、家にいながらBBQをするなどちょっとしたアウトドアを楽しめます。

「近年は、ベランダやバルコニーの床材としてウッドではなく高級感のあるタイルを選ばれる方も多いです」

中庭を設けると、外からの視線を気にすることなく通風と採光を確保できるようになります。
「中庭があると、1階と2階、3階が縦の空間でつながり、家族の存在を感じられるのもメリットだと思います」

自宅にいながら、まるでホテルのようにおしゃれなバスルームを設けたいと考える人も多いです。

近年は、自転車を置いたりシューズクロークを設置できる広々とした玄関土間や、外から土足で入ってこられる土間リビングも人気です。

理想の暮らしをするときには、家の中をすっきりと片づけられる広々とした収納スペースも欠かせません。
「ロフトは収納としてだけでなく、多目的なスペースとしても有効活用できるのでおすすめです」

「収納はウォークスルーにすると、家族の動線もよくなります」

最後にあらためて山本さんに、理想の家を実現するためのポイントを伺いました。
「理想の家を実現するためにもっとも大切なのは『こんな家にしたい』という方向性がぶれないことです。そのためには、最初に家族でよく話し合い、共通認識をもつ必要があります。そのうえで、それぞれが譲れない場所を分担して受け持ち、その人の意見を優先すると決めておくと、家族の中で意見が分かれたときにもめにくくなります。
また自分たちができることと、プロに任せることの線引きも大切です。イメージは明確に伝えた上で、任せる部分は潔く任せると、提案の質が上がり理想の家づくりを進められると思います」
自分たち家族にとっての「理想の暮らし」を具体的に思い描く
自分たちの「動きのシーン」を設計者に説明できるようにしておく
プロに任せる部分は潔く任せて提案を受けることも大切