理想の家を実現する手順とは?間取りや外観の考え方を6ステップで解説

公開日 2023年03月31日
理想の家を実現する手順とは?間取りや外観の考え方を6ステップで解説

注文住宅を建てるときには「理想の家にしたい」と思うものです。しかしそもそもどんな家が理想なのか、はっきりしていなかったり、なにから考えればよいのか分からなかったりする人もいるでしょう。理想の外観や間取りの家はどうすれば建てられるのか、シミュレーションの仕方や実現する手順をPANDA:株式会社山本浩三建築設計事務所の山本浩三さんに伺いました。多くの人が憧れる「理想の家にあるスペース」例も写真付きで紹介します。

理想の家を実現する手順は? 専門家が教える6つのステップ

理想の暮らしを実現できる家を建てるには、設計事務所や工務店、ハウスメーカーなどに相談する前に、外観や間取りなどのイメージを固めておくのがおすすめです。具体的には以下のステップを踏んで進めるとよいでしょう。

ステップ1:自分にとって、家族にとっての理想の暮らしを考える
ステップ2:理想の家に必要な広さを検討する
ステップ3:理想の家の内装をイメージする
ステップ4:理想の家の外観デザインを決める
ステップ5:理想の家の間取りを考え、動線をシミュレーションしてみる
ステップ6:理想の家を実現してくれるハウスメーカーや工務店を探す

それぞれどのような内容なのか、次章から詳しく解説します。

【ステップ1】自分にとって、家族にとっての理想の暮らしを考えよう

どんなにおしゃれで素敵な家でも、自分たちのライフスタイルと合っていなければ理想の家にはなりません。そのためまずは、自分たちがどのような暮らしをしたいのかを考えることから始めます。

「ご夫婦のみだったり、お子さまがいたり、家族の形態はさまざまです。さらに家族ごとに考え方や価値観も異なります。そのため家を建てるときには『その家でどんな暮らしをしたいのか』を、家族でよく話し合っておくことが大切です」(山本さん/以下同)

例えば田舎暮らしをしたいのか都会に住みたいのかで、理想とする場所は違ってきます。平屋がいいのか、2階建てがいいのかによっても必要な土地の広さは変わります。

休日はどんな過ごし方をしたいのか、子どもがいるのか、ペットは飼うのかなど、自分たち家族の理想の暮らしに必要な条件を洗い出し、優先順位を付けていきましょう。

理想の暮らしを考える親子
まずは自分たち家族がどんな暮らしをしたいのかを明確にしておこう(イラスト/青山京子)

【ステップ2】理想の家に必要な広さを検討しよう

理想の暮らしが想像できたら、それを実現するためにはどのくらいの広さが必要になるのかを検討します。

「どのような暮らしをしたいのかを思い描いているうちに、必要な広さがなんとなく分かってくるものです。さらに現在住んでいる住居の広さから、あとどれくらい広ければ理想の暮らしを実現できるかを考えると、より具体的な数字が見えてくると思います。

とはいえ現実的には予算との兼ね合いもあります。どのように工夫すれば予算内で希望の広さの家を実現できるかについては、設計者とプランを考える段階で、一緒に検討することになるでしょう」

【ステップ3】理想の家の内装をイメージしよう

続いて理想の家の内装を、どんなデザインにしたいかを考えます。自然素材を使いたい、塗り壁にしたいなど、イメージを固めていきましょう。

「理想の暮らしを考えるときには、どんなモノに囲まれて暮らしたいかもイメージされているのではないでしょうか。置きたい家具やアイテムなどから、どんな色のどんな素材の床材や壁紙が合うのかを考えてみるとよいでしょう」

【ステップ4】理想の家の外観デザインを決めよう

囲まれて暮らしたいものを思い描いたら、それを入れる「箱」である外観を考えていきます。外観デザインには種類があるので、自分たちの理想に近いものを探してみるとよいでしょう。ここでは人気の外観デザインを4つ紹介します。

シンプルモダン

シンプルな線で構成されるシンプルモダンは近年人気の外観デザインで、軒や庇(ひさし)を小さくするなど凹凸が少ないのが特徴です。色は白、黒、グレーなどのモノトーンやネイビーが多く、窓は小さく、あるいは窓がないなど、大胆なデザインも見られます。

シンプルモダンの家の外観
シンプルモダンの家は直線で描かれ凹凸や窓が少ないのが特徴(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

和モダン

切妻の大屋根や白と黒、あるいはアースカラーなど、和を感じさせるテイストを残しながらも現代風にアレンジされたのが和モダンです。

和モダンな家の外観
和風テイストを残しつつ、アースカラーの塗り壁と木目を組み合わせたおしゃれな和モダンの平屋(画像/PIXTA)

ナチュラルモダン

ナチュラルモダンは、オフホワイトやクリームなど柔らかな色の外壁に、レンガや木目など温かみのある自然素材を組み合わせ、すっきりと現代風にデザインされているのが特徴です。

ナチュラルモダンな家の外観
白い外壁と木目の組み合わせがどこか温かみを感じさせるナチュラルモダンの家(画像/PIXTA)

南欧

南欧デザインは、白やオフホワイトなど明るい色の外壁に、赤やオレンジ色の瓦と木や木目の玄関ドアを組み合わせるのが特徴です。鋳物との相性がよく、アクセントに用いられます。

南欧デザインの家の外観
南欧デザインの家は白っぽい色の外壁とオレンジ色の屋根が青空に映える(画像/PIXTA)

【ステップ5】理想の家の間取りを考え、動線をシミュレーションしてみよう

家族構成から必要な部屋の数を考えよう

必要な部屋数は、家族の人数によって異なります。基本的には、LDKのほかに家族それぞれが自由に過ごせる個室があると、互いのプライバシーを確保できます。

あわせて自分たちの理想の暮らしをするために、どんな部屋が必要かも考えましょう。例えばリモートワークをするのであれば、仕事部屋や書斎があると便利です。将来家族の増減も考えられるなら、あらかじめリフォームしやすいように設計しておくのもおすすめです。

動線をシミュレーションしてみよう

暮らしやすい家にするためには、動線がよいことも大切です。実際に暮らしたときに、家族がどのような動きをするのかをシミュレーションしてみましょう。自分たちで間取図を書けるアプリもあるので、使ってみるのもおすすめです。

「自分たちで間取りまで考えられなくても、家族の動線が思い描けていると、設計者が理想の間取りを実現しやすくなります。

例えば家族が多いので洗面と脱衣所は別がいい、ランドリールームとファミリークロークは隣接させたい。あるいは車庫からは収納を通って玄関にアクセスしたいなど、『具体的な動きのシーン』をシミュレーションし、伝えられるようにしておくとよいでしょう」

間取図
家族の日常の動きを具体的に伝えられるようにしておこう(画像/PIXTA)

十分な収納を確保しよう

収納が少ないと、おしゃれな家を建てても散らかりやすくなってしまいます。間取りを考えるときには、十分な収納を確保することも大切です。

「広い土地を確保しにくい都市部では、広い収納が必要とはいえ、居室を優先したい場合もあるでしょう。そのようなときには、床下収納や小屋裏収納など、延べ床面積に算入しなくてよい収納を検討することをおすすめします。日常的に使わないものや季節物をそういった収納に保管すれば、居住空間内のクローゼットなどは最小限に抑えることが可能です」

通風や採光も考慮しよう

快適に暮らすためには、通風や採光も考慮する必要があります。

「通風や採光に関しては、立地条件に左右されやすい部分なので、思い通りにいかないこともあります。すべてを自分たちで考えようとせず、機能的な部分に関しては、設計者などプロに任せてしまうことも大切です」

風に揺れるカーテン
心地よく暮らすためには通風や採光計画も大切(画像/PIXTA)

【ステップ6】理想の家を実現してくれる建築会社を探そう

大まかな外観デザインや理想の間取り、動線まで考えたら、それらを実現してくれる工務店や設計事務所、ハウスメーカーなどを探しましょう。

ホームページの事例を確認する

建築会社を探すときには、ホームページを確認し、自分たちの理想の家と近しい事例があるところを選ぶとよいでしょう。

「希望のエリアで工務店や設計事務所を探すには、多くの会社が紹介されているポータルサイトなどを利用すると便利です」

モデルハウスを見に行く

気になる会社がモデルハウスを用意しているなら、積極的に足を運んでみましょう。実際に建てられた家を見ると、質感や雰囲気が分かります。担当者と直接話をして、家づくりの進め方や温度感など、相性を確かめることも可能です。

モデルハウスを見学する夫婦
モデルハウスを訪問すると実際の雰囲気や質感を確かめられる(画像/PIXTA)

工務店や設計事務所、ハウスメーカーなどを紹介してくれるサービスを利用する

予算や希望を聞いたうえで、理想の家をかなえてくれそうな会社を紹介してくれるサービスを利用すると、自分で探す手間が省けます。

【画像付き】多くの人が憧れる理想の家を実現する空間とは?

理想の家は人によって異なっても、多くの人が憧れる空間はある程度共通しているものです。ここでは多くの人が「家にあったらいいな」と思うスペースを紹介します。

開放感あふれる吹抜けのある「リビング」

リビングに吹抜けをつくると、家の中に開放感あふれる縦空間を生み出せます。

「吹抜けをつくると、1階部分は窓を小さく取りプライバシーを確保しつつ、2階部分から光を取り入れられるのもメリットです」

吹抜けのあるリビング
吹抜けの2階部分に大きな窓を設けると、外からの視線を気にすることなく光あふれる空間を生み出せる(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

家族のコミュニケーションが活性化する「オープンキッチン」

家族がキッチンカウンターを取り囲んで楽しく家事をしたり、友人を招いてホームパーティーを楽しめるオープンキッチンも人気です。

「とくにアイランドキッチンは、両側を通れて動線がよいのもポイントです。ただしフルフラットの場合、ものを置いたままにすると散らかって見え、デザインが台無しになってしまうので、きれいに片づけられるかどうかは大切だと思います」

アイランドキッチンのあるLDK
LDKの中心に存在感のあるアイランドキッチンを据えるとおしゃれ度が上がる(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

アウトドアを楽しめる「ウッドデッキ」

ウッドデッキがあると、家にいながらBBQをするなどちょっとしたアウトドアを楽しめます。

ウッドデッキのある家
リビングの外にウッドデッキを設置すると、連続性が出て空間に広がりが感じられるようになる(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

「近年は、ベランダやバルコニーの床材としてウッドではなく高級感のあるタイルを選ばれる方も多いです」

ウッドの代わりにタイルが張られたバルコニー
60cm角の大判のタイルが張られたバルコニーは高級感を感じられる(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

プライバシーを守り、通風と採光をよくする「中庭」

中庭を設けると、外からの視線を気にすることなく通風と採光を確保できるようになります。

「中庭があると、1階と2階、3階が縦の空間でつながり、家族の存在を感じられるのもメリットだと思います」

中庭のある家
中庭があると家の中にいながら自然を感じられるようになる(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

ホテルライクでおしゃれな「バスルーム」

自宅にいながら、まるでホテルのようにおしゃれなバスルームを設けたいと考える人も多いです。

ホテルライクなバスルーム
まるで高級ホテルのような、白と黒のコントラストが美しい洗面所とバスルーム(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

利便性が高まる「土間」

近年は、自転車を置いたりシューズクロークを設置できる広々とした玄関土間や、外から土足で入ってこられる土間リビングも人気です。

土間リビング
床が土間になっていると、汚れを気にせずに過ごせる。無機質な雰囲気もおしゃれ(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

広々とした「収納スペース」

理想の暮らしをするときには、家の中をすっきりと片づけられる広々とした収納スペースも欠かせません。

「ロフトは収納としてだけでなく、多目的なスペースとしても有効活用できるのでおすすめです」

広々としたロフト
ロフトの縁に設けられた棚は施主の趣味であるコミック本を収納できるサイズに設えてある(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

「収納はウォークスルーにすると、家族の動線もよくなります」

ウォークスルーの収納
回遊性が高くなる広々としたウォークスルーの収納(画像提供/PANDA:山本浩三建築設計事務所)

理想の家の実現には、家族でイメージを共有することが重要

最後にあらためて山本さんに、理想の家を実現するためのポイントを伺いました。

「理想の家を実現するためにもっとも大切なのは『こんな家にしたい』という方向性がぶれないことです。そのためには、最初に家族でよく話し合い、共通認識をもつ必要があります。そのうえで、それぞれが譲れない場所を分担して受け持ち、その人の意見を優先すると決めておくと、家族の中で意見が分かれたときにもめにくくなります。

また自分たちができることと、プロに任せることの線引きも大切です。イメージは明確に伝えた上で、任せる部分は潔く任せると、提案の質が上がり理想の家づくりを進められると思います」

まとめ

自分たち家族にとっての「理想の暮らし」を具体的に思い描く

自分たちの「動きのシーン」を設計者に説明できるようにしておく

プロに任せる部分は潔く任せて提案を受けることも大切

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/青山京子
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