キッチンでよく見る床下収納。何をどう入れたらよいのか、使い方に困っている方も多いのでは?そこで今回は、床下収納の設置場所別に収納に向いているものを紹介。さらに、新築時に選ぶ際のポイントや、リフォームでの設置について解説しよう。
床下収納とは、建物の床の下に設けた、収納のためのスペースのこと。
建築基準法では、一般的な木造建築物の場合、地面から床の上面までを45cm以上確保することが定められているため、床下にはスペースが生じる。このスペースには給排水管や電気線などが配されているが、ほとんどがデッドスペースになっているため、ここを活用して床下収納を設けるケースが多い。
キッチンや洗面室のほか、和室やウオークインクローゼットなどが一般的。注文住宅やリフォームで新たに床下収納を設けるなら、造作でつくるのもよいが、使いやすさが考慮されている設備メーカーの床下収納ユニットを採用するのもよいだろう。賃貸住宅で既に設けられているなら、市販品のカゴやファイルボックスを活用して、どこに何をしまったのか分かりやすくするとより便利に使える。
ちなみに、床下収納は戸建住宅の1階で多く見られるが、リフォームなどで床を一部分だけ高くする小上がりを造作し、その下を収納にすれば、戸建住宅の2階やマンションでも取り入れられる。ただ、小上がりの造作には工事費や工事日数がかかるので、より手軽に取り入れたいなら、設備メーカーや家具メーカーが販売している、床に据え置いて使う『置き型タイプ』を活用する方法もある。
戸建て住宅の場合、床下や天井裏の状態の点検や、不具合があった際に修理をするために、人が出入りできる大きさの点検口を設けることが一般的。点検口は家の状態を管理するために非常に重要な部分で、長期にわたって住み続けるための措置を講じた『長期優良住宅』を建てる場合、認定を受けるには「点検口の設置」が義務付けられている。
床下収納は、通常、点検口を利用して設けられていることが多い。「戸建住宅の場合、床下の点検口は給排水管が多く集まる水まわり空間に設けられます。当社では、点検口の開口サイズ、床下空間の深さ、フタの種類などのバリエーションを豊富にそろえているので、設置場所や使い勝手に応じて選んでいただけます」(パナソニック広報担当者、以下同)
キッチンの床下収納には、お酒や瓶ビール、油や缶詰などのストック品を収納するのがオススメ。「網カゴやつるカゴが付いたタイプなら、ビン類のような重いモノも出し入れしやすいです。フタは、バネの働きにより軽い力で開閉できる自立式と、取り外しができる置きフタ式があります。どちらが使い勝手がよいと感じるかと、フタを置く場所の有無で選択するとよいでしょう」
洗面室の床下収納には、洗剤や入浴剤、シャンプー、掃除用具などのストック品を入れるとよいだろう。これらのアイテムには高さがない上、小さくてこまごまとしているため、収納ボックスが浅いタイプのほうが使い勝手がよいといえる。
住宅の基礎構造との兼ね合い、点検口は目立たない場所に設けたい、などの理由により、床下点検口を和室の畳の下に設けるケースもある。「和室用として、畳1枚分を床下収納に使えるタイプがあります。普段あまり使わない大皿や花器、座布団や衣類など大きなモノを入れるスペースとして重宝すると思います」
床下収納は、設置する場所によって入れるべきものが大きく変わる。そこで、設置場所別に、どのようなものを入れるとよいか具体的に紹介しよう。
缶詰やレトルト食品、しょうゆやマヨネーズなどの調味料、ペットボトルや瓶入りのお酒など、長期保存できる食品・飲料。手づくりの梅酒やみそなどを入れるのもよいが、床下の温度や湿度は一定に保たれているわけではないので、定期的にチェックした方がよいだろう。
床下収納はしゃがんで使うので、一般的な収納よりも出し入れを面倒に感じやすい。そのため、毎日使うものの収納は避け、卓上コンロやホットプレート、正月用の重箱、来客用の食器など、使用頻度が低い調理器具や食器などを入れるのがおすすめ。
洗剤や柔軟剤、シャンプーや入浴剤などの日用品を、特売日にまとめ買いしてストックしている家庭は多いはず。未開封なら湿気の影響を受けないので、日用品のストック場所として活用を。洗面室や浴室で使うものをしまえば、無くなったときにいちいち取りに行かなくて済むので便利。
クリスマスの飾りやこいのぼりなど年1回のイベントにしか使わないもの、花器やパーティーグッズなど、かさばるけれど使用頻度が低いものの収納場所に。
ティッシュペーパーや除菌グッズ、掃除用シートなど、主に居室で利用する日用品を収納したい。
水や非常食、簡易トイレ、衛生用品や医薬品、懐中電灯やヘルメットなど、必要なものが多い防災グッズ。防災グッズをまとめた「防災セット」はサッと取り出せる場所に置くのが望ましいが、置き場所に困ったときは床下収納にしまう方法もある。そして、可能なら持ち出し用と自宅避難用に分けて収納するのがおすすめ。自宅避難用の方には、家族全員が数日間は生活できるくらいの点数をしまっておくとさらに安心。
床下収納をより便利に使うには、いくつかのコツがある。
最も大事なのが、上から見たときにどこに何があるのか把握しやすいように、並べて収納すること。カゴや仕切りを利用して並べると収納しやすい。取っ手の付いたカゴなら取り出しやすくなり、さらに便利に使えるだろう。
取り出しやすくするためには、しまうものを可能な限り小さくしたり、軽くしておくことも大切。キッチンの床下収納に手づくりの梅酒や漬物をしまうケースは多いが、意外と重たいので、長期保存するなら小さめの保存瓶に移し替えておくとよいだろう。
クローゼットやパントリーとは違い、床下の未利用空間を使う床下収納は、住空間を狭めることなく収納スペースを確保することができる。特に狭小住宅の場合、空間を有効利用できる収納として、点検口がある部分だけでなく、複数箇所に取り入れるという選択もある。
収納を増やすために収納家具を置いたり、造作収納を設けたりすると、視線や動線の邪魔になることがある。その点、床下に設ける床下収納なら、ある程度の収納スペースを設けても邪魔にはならない。
床下収納は湿気の溜まりやすい床下に設けるため、どうしても湿気によるカビやニオイが気になりやすい。「当社の収納ユニットは、収納ボックスに防カビ剤を塗布することで、湿気によるカビの発生や繁殖を抑制できます。また、気になる方は収納ボックスを取り外し、定期的にお掃除されるとよいでしょう」
新築住宅を建てるとき、気密性や断熱性の高い構造を選択しても、床下収納部分から空気や熱が逃げると期待する性能が得られないことがある。「高気密・高断熱住宅を建てるなら、専用の商品をオススメします。フタ裏に断熱材が取り付けられており、床下の冷気や隙間風が侵入しにくい構造なので、足元への冷え込みも軽減できます」
※「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断と基準」及び「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計及び施工の指針」によって定められている性能基準。1地域から8地域までの8つに区分されていて、地域によって要求基準が異なる
ここまで紹介したメリット・デメリットを踏まえると、どの場所に設けたとしても、床下収納に入れてはいけないものや避けた方がよいものは以下になる。
床下は室内と比較すると湿度が高くなるので、ものが腐りやすくなる。特に気密性の高い住宅は、腐ったりカビたりしやすいので注意したい。
地面よりも低い場所からものを取り出すため、ものの出し入れには一定の力が必要。腰や膝への負担も大きいので避けた方が無難。
一般的な収納と比べると、ものの出し入れが面倒で身体に負担がかかるので、使用頻度が高いものを収納すると煩わしく感じやすい。
ものの出し入れが面倒だと感じると、開閉するタイミングが少なくなりがち。賞味期限が短い食品は避けた方が無難だろう。
床下収納をつくりたい場合、戸建住宅の新築時なら依頼先に伝えればOK。床下の構造との兼ね合いや点検口の位置決めにもかかわるので、できるだけ早めに伝えよう。
「床下収納は1階にしかつくれないというイメージがありますが、収納ボックスが浅いタイプなら、専用金具を用いれば2階に設置することも可能です。2階にLDKやサニタリールームがある間取りの場合、まずは依頼先に相談するとよいでしょう」
床下収納の大きさ(容量)は、しまいたいモノの種類と量に合わせて選ぼう。ただ、壁面造作収納や収納家具と比べると出し入れが若干不便なので、ストック品や季節アイテムなど使用頻度の低いモノをしまうスペースとしてイメージしておくとよいだろう。
床下収納を戸建住宅に後付けする場合、点検口があれば、そこに床下収納ユニットを取り付けられるが、点検口がない場合は床に穴をあけて設置することになる。いずれにせよ、床と、根太や大引などの床組の状態によるので、まずはリフォーム会社に相談しよう。
マンションの場合、床下がすぐにコンクリ―トになっている構造では設置が難しい。床とコンクリートの間に空間がある二重床の構造なら、空間の深さによっては設置が可能だが、床下に配管が通っている場合もあるので、リフォーム会社に現状を慎重に確認してもらおう。
床下収納は、リフォームで後付けが可能であっても、工事費用も日数もかかるケースがほとんど。手軽に設けたい方には、床の上に収納ユニットを置く『置き型タイプ』を選択するという方法もある。『置き型タイプ』は、住宅設備メーカーや家具インテリアショップ、通販会社などで購入できる。
「弊社で扱っている『置き型タイプ』は、基本的に居室への設置となります。たっぷりと収納スペースを確保できますし、開口もフタ式や引き出し式が選択できるので、使い勝手のよい床下収納がつくれるでしょう。工事会社に搬入や組み立てをしてもらう必要はありますが、半日~1日あれば終了します」
パントリーやクローゼットなどと異なり、床面積をとらずに収納スペースを確保できる床下収納。床面積が限られている狭小住宅こそ積極的に検討したい収納といえるだろう。キッチンだけでなく、洗面室や和室で使えるタイプもあるので、しまいたい物の量や種類を考慮したうえで、わが家に最適なタイプを選択しよう。