「大学生になって進学のために引越しした場合も、住民票を移さないといけないの? 何が困るの?」と疑問に思う人も多いでしょう。大学生が住民票を移さないメリット、デメリットについて、社会保険労務士の川部さんにお話を伺いました。詳しく紹介します。
「面倒だから移したくないと思う人も少なくない住民票の手続きですが、住所を移した場合、原則住民票を移さないと法律違反です。しかし、大学生の場合、移さなくていいケースもあります」と川部さん。住民票とは、住民基本台帳法に基づいて作成されている、住民に関する氏名、生年月日、性別、住所、世帯主との続柄などを記載した帳票のことです。
入学・就職・転勤等に伴う引越しなどで住所を移した場合、転居した日から、原則14日以内に、役所へ住民票の住所変更の届出が必要です。これは、法律上の義務で、正当な理由がなく住民票を移さないでいると、5万円以下の過料に処されることがあります(過料とは、行政法規上の義務違反に対して少額の金銭を徴収するという罰則です)。
住民基本台帳法より抜粋
・転入をした者は、転入をした日から十四日以内に、市町村長に届け出なければならない。
・正当な理由がなく、届出をしない者は、五万円以下の過料に処する。
原則として、引越ししたのに、住民票を移さないのは、法律違反ですが、「正当な理由」があれば、住民票を移さなくてもよいとされています。住民票の異動が任意となる「正当な理由」とは以下のふたつです。
・新住所に住むのが一時的な場合(元の住所に戻る見込みがある)
・生活の拠点が移動しない場合
大学生の場合、週末に実家に帰るなど生活の拠点が変わらなければ、住民票を移さなくてもよいとされています。
大学生が引っ越し後に住民票を移さない場合のメリットにはどのようなものがあるのでしょう。
■住民票を移さない場合のメリット
・成人式の知らせのハガキが実家に届き、事前の手続きなしで地元の成人式に参加できる
・自治体からの重要書類が実家に届く
・運転免許証更新のハガキが実家に届き、地元の運転免許センターで手続きできる
大学生が住民票を移さないメリットは、実家の家族との関係性にもよりますが、重要書類が実家に届くことが便利な場合です。
成人式は、住民票を移さなければ、案内状が実家に届くのでそのまま地元の成人式に参加できます(住民票を移しても、事前に案内状の送付先の変更を行えば、地元の成人式に参加できます)
「年金の通知書など自治体からの書類をきちんと自分で管理できるか不安な場合、実家に届けば、家族もチェックしてくれるため、安心です。運転免許証の更新については、新住所の免許センターが混雑しているから、地元の方が空いていてよかった! という声もあります。統計はありませんが、実態として、住民票を移す人と移さない人の割合は、半々位ではないでしょうか」(川部さん)
大学生が引っ越し後に住民票を移さない場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
住民票(住民基本台帳)は、国民健康保険、国民年金、児童手当、選挙人名簿への登録など各種行政サービスの基礎となっています。そのため、住民票を移さないと、住んでいる市区町村で、十分な行政サービスを受けられなくない場合があります。
■住民票を移さない場合のデメリット
・本人確認書類が旧住所のままになる
・住民票などの各種証明書が新住所の役所で発行できない
・新住所で選挙権、被選挙権が行使できない
・図書館などの福祉サービスや公共サービスが利用できない、または利用が制限される
・運転免許証の更新手続き(書き換え)などが旧住所でないとできない(案内も旧住所にいく)
「住民票を移さないままでいると、選挙の投票や免許証の更新手続き(書き換え)のために、実家のある旧住所地域まで行かないといけません。住民票の交付や印鑑証明書も、旧住所の役所での発行になります。遠方に引っ越した場合は、旧住所地に行くため、時間もお金もかかってしまうという不便があるのです」(川部さん)
一方、免許証の住所変更やパスポート申請は、住民票を移さなくても新住所で手続きができます。大学生でも給与収入が100万円を超えると課税される住民税については、その年の1月1日に居住していた市区町村で課税することになっていますので、旧住所と新住所の両方で課せられることはありません。
大学生は必ずしも住民票を移す必要なく、実態に合わせて柔軟に決めましょう。住民票を移さなくてもよいケースでも、デメリットや不便さが気になるようなら、住民票を移してください。届け出は、原則14日以内ですが、過ぎてしまっても、受理してもらえます。進学時住民票を移していなくても、不便に感じた時点で届け出をすることが可能です。
引越しをして住民票を移さないといろいろとデメリットや不便なことがあるとわかりました。住民票を移すためには、役所へ届け出をする必要があります。
住民票の異動に関する届け出には、転出届・転入届・転居届があります。どこからどこへ引越しをするかによって、それぞれ、手続きや提出する場所、提出期限が異なりますので詳しく紹介します。
現在住んでいる場所と別の市町村へ引っ越しをする人は、転出届が必要です。
手続き終了後に交付される「転出証明書」は、転入届時に必要になります。
届け出る場所 | 引越し前の市区町村の役所 |
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提出期限 | 引越し日前後2週間以内 郵送可。マイナンバーカードがあればオンラインで対応しているところもあるので、居住している自治体にご確認ください |
必要なもの | ・転出届(役所にあります) ・本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等) ・保険証や医療証等(元の市区町村役所が発行している場合のみ・返却や記載内容の変更が必要な場合があります) ・印鑑(自治体によっては自著で可) ・印鑑登録証(あれば) |
次の手続きは、住民票の届け出と一緒に行うと役所の訪問が一度で済むので便利です。
・マイナンバーカードの住所変更
住民票の届け出と同時に、マイナンバーカード(マイナンバー通知カード)の住所変更をする必要があります。提出期限は、引越しした日から14日以内です。もし、転出届の後、転入届を出していたのに、90日以内に住所変更手続きを行わなかった場合、マイナンバーカードが失効してしまいます。マイナンバーによる行政手続きや証明書の発行、マイナポイントの利用などができなくなってしまうので、忘れずに行いましょう。
・印鑑登録の抹消
印鑑登録は各市区町村で登録されているので、「転出届」を出す際に「印鑑登録証」を持っていけば、転出の届けと印鑑登録の抹消が同時にできます。抹消後は、転居先で新規登録してください。(「転出届」を出すと自動的に印鑑登録が抹消される自治体もあります。その場合も、新規登録は必要です)
・「世帯主変更届」の提出
引越しから14日以内に、「世帯主変更届」を提出する必要があります。届出人の本人確認書類の提示が必要です。
現在住んでいる場所と別の市町村へ引っ越しをする人は、転入届が必要です。
届け出る場所 | 引越し前の市区町村の役所 |
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提出期限 | 引越し日前後2週間以内 郵送・オンラインでの届け出不可 |
必要なもの | ・転入届(役所にあります) ・転出証明書(引越し元の役所で発行されたもの) ・本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等) ・印鑑(自治体によっては自著で可) |
現在住んでいる場所と同じ市町村内で引越しをする人は、転居届が必要です。
※同一市内の別区への引越しは、転入届のみでよい場合がありますので、引越し前に各自治体に確認しましょう。
各自治体によって必要書類が多少異なりますので、引越し前に届け出先の役所に確認をしておきましょう。
届け出る場所 | 引越し前の市区町村の役所 |
---|---|
提出期限 | 引越し日前後2週間以内 郵送・オンラインでの届け出不可 |
必要なもの | ・転居届(役所にあります) ・本人確認書類(運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、マイナンバーカード等) ・保険証や医療証等(市区町村役所が発行している場合のみ・返却や記載内容の変更が必要な場合があります) ・印鑑(自治体によっては自著で可) |
各種手続きの必要書類で、「住民票の写し」の提出を求められることがあります。「住民票の写し」とは、住民票原本に記載されている事項を写したものです。住民票原本は持ち出せないため、役所が発行するものは「住民票の写し」になります。したがって、そのまま提出すればよいのです。間違って、「住民票の写し」のコピーを提出してしまう場合がありますので、注意してください。
大学生が引越ししたら、住民票を移さないと、デメリットがあります。移さなくてもいいケースに該当しない場合、住民票を移さないと不便な場合は、速やかに手続きをしましょう。
頻繁に帰ったり、卒業後実家に戻る大学生は住民票を移さなくてもよい
住民票を移さない場合、新住所地の行政サービス利用に制限があるなどデメリットがある
住民票異動の手続きには、転出届、転入届、転居届があり、提出先や期限が異なる