初めての賃貸生活。部屋探しはワクワクするけれど、実際に借りるのにはどのくらいのお金がかかるのか、初期費用はいつ支払えばいいのか、と不安になる人も多いはず。そこで約700組に賃貸住宅を紹介してきたアエラスグループの菅谷さん、明光トレーディングの武澤 和哉さんにお話を伺いました。敷金・礼金から引越しなど賃貸に関わる初期費用の基本知識から相場情報、交渉テクニックやおトクに安く支払う方法、引越し費用などを一挙にご紹介します!
賃貸物件を借りて生活をはじめるときには、月々支払う「家賃」だけでなく、敷金や礼金、仲介手数料など、入居前にまとまった資金が必要になります。これをまとめて、「初期費用」といいます。内容を一つずつ解説していきましょう。
家賃1カ月分が目安。契約を終えて部屋を退去するときの原状回復費用に充てられます。基本的には原状回復にかかった金額が差し引かれて戻ってきます。
家賃1カ月分が目安。部屋を所有する大家さんに対して、お礼の意味を込めて支払います。敷金との違いは退去時に返還されないこと。最近では礼金なしの物件も増えています。
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家賃1カ月分が目安。入居する月の家賃を前払いで支払います。例えば、2月に契約し、3月から住む場合、3月分の家賃をあらかじめ支払うかたちになります。また、月の途中から入居する場合は、日割り家賃が発生します。
家賃0.5カ月~1カ月分+消費税が目安。物件の案内や契約手続きを行った不動産会社に支払います。法律で上限は「家賃の1カ月分」と決められています。
シングルで約1万円~約1.5万円、カップル・ファミリーで約2万円程度。火災や水漏れトラブルなどに備えて、損害保険に加入する必要があり、損害保険会社に支払います。不動産会社に案内された保険ではなく、個人で選んだ保険に加入することも可能ですが、加入証明を求められるケースが多いようです。
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家賃+共益費0.5カ月が目安。家賃保証会社を利用する場合に支払うお金で、退去時には戻ってきません。万が一、家賃を払えなくなった場合の備えになります。
距離と持っている荷物の量、引越し時期によって異なります。シングルで3万~10万円、カップルで8万~30万円と幅があるので、見積もりをとりましょう。3月後半の入学・就職・転職シーズンや連休前後を避け、可能な限り平日を狙うと割安に引越しできます。
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※このほかに、鍵の交換料、害虫駆除代、消臭費用などが発生するケースもあります。分からない項目については、不動産会社に確認しましょう。
これに加えて、家具や家電を持っていなければ、購入する必要があります。予算を考えながら進めるといいでしょう。
費用を抑えたい場合、友人・知人などから安く譲ってもらうという方法もあります。
武澤さんによると「近年、賃貸では競争が激化してきており、初期費用はだんだんと減る傾向にある」といいます。詳しく見ていきましょう。
契約する物件やエリアの特性などによって初期費用は変化しますが、ざっくりとした目安は以下の式で算出できます。
初期費用の総額(目安)=家賃×4.5~5
初期費用の総額については、多めに見積もって、家賃の4.5倍~5倍程度と考えておくと安心です。ここには敷金、礼金、仲介手数料、前家賃それぞれ1カ月分、保証料や火災保険料などが含まれています。以前は「敷金1カ月、礼金1カ月」と定められていることが一般的でしたが、現在物件によっては、礼金がない物件や仲介手数料がないという物件も増えています。
「背景として、借り手側の初期費用を抑えたいという需要が高まっていることがあげられます。そのため、物件を所有する大家さん、不動産管理会社も敷金礼金をなるべく抑え、できるだけ早く入居してもらうようにしているのです」(武澤さん)
ただし、敷金礼金や仲介手数料ゼロの物件が必ずしも“初期費用がかからない物件”とは言い切れません。「契約手数料」などの名目で加算されていることもあるため、契約内容について分からないことがあれば、一つずつ内容を確認していきましょう。
実際に、初期費用を計算して具体的な出費をイメージしてみましょう。三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)での一人暮らしの家賃・共益費の平均(7万8737円/共益費4614円)(※)から初期費用の目安を試算したところ、およそ以下の金額になりそうです。
項目 | 費用 |
---|---|
敷金 | 7万8737円 |
礼金 | 7万8737円 |
前家賃 | 7万8737円 |
仲介手数(家賃1カ月+消費税) | 8万6610円 |
保証料 | 4万1675円 |
火災保険料 | 1万5000円 |
鍵交換費用 | 1万5000円 |
合計 | 39万4496円 |
もちろん、家賃を下げる、礼金ナシやフリーレントの物件であれば、もう少し初期費用を抑えることができますが、首都圏で一人暮らしをはじめるのであれば、およそ40万円の初期費用が必要だと考えておくのがよさそうです。
また不動産では、地域によって費用の項目名や地域の慣習が異なることがあります。たくさん物件を見て、引越先のエリアの相場観を養うとよいでしょう。(アエラスグループ・菅谷さん)
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賃貸物件の初期費用については、申し込みの7~14日前後に支払い期限が設定されるケースが多いです。基本的には銀行振り込みもしくは現金での一括払いですが、物件によってはクレジットカード払いや分割払いが認められるケースもあります。数カ月以内に費用を工面できる場合やクレジットカードのポイントをためたい方は、不動産会社に確認してみましょう。
初期費用を抑えたい、安くしたいという需要にこたえ、全体では敷金礼金ゼロ、仲介手数料ゼロという物件も増えています。探し方の工夫をすることで、初期費用をより抑えられるかもしれません。以下にその方法を紹介しましょう。
礼金ゼロ、敷金ゼロという物件は増えています。敷金礼金ともにゼロではなくても、礼金のみゼロ、敷金ゼロという物件もあります。家賃1カ月分に相当するので、探してみる価値はあるでしょう。ただし、敷金は家賃の滞納や部屋の損傷に備えて預けておくお金です。退去時に精算され、部屋をキレイに使えば返却されることもあります。そのため、入居時に敷金がゼロだったとしても、退去時に退去時クリーニング代が別途必要になることもあります。敷金と礼金、それぞれの性質を理解したうえで探すとよいでしょう。
近年、不動産会社の競争も激化し、仲介手数料ゼロ、仲介手数料半額など、小額を打ち出す不動産会社も増えてきました。しかしながら、繰り返しになりますが、「仲介手数料無料」とうたっていても、物件によって適用されないこともあるため、注意も必要です。
初期費用を抑えたいのであれば、まずは、不動産会社の担当者に相談するのがいちばんよいでしょう。『貯金があまりないので10万円以内に抑えたい』『8万円以内に抑えたい』などとはじめに条件として話しておき、礼金や仲介手数料ナシ・フリーレント、前家賃ナシ物件などを紹介してもらうといいでしょう。
フリーレントとは、入居後の一定期間(当初1カ月など)であれば家賃が発生しない物件のことです。前家賃を含めた初期費用は必要になりますが、入居後のフリーレント期間は家賃が発生しないので、トータルでみると初期費用を減らすことができます。ただし、退去期間など制約があることも多いので、条件をよく理解して契約してください。
次に考えられるのが、貸主である大家さんへの交渉です。初期費用そのものが全体に減少傾向にあるので、交渉も難しくなってきているといいます。
もしトライするのであれば、必ずこの物件に住むと正式に入居申込をしたうえで、
(1)入居日までの日割り家賃やフリーレント
(2)礼金
(3)家賃 の順番で交渉してみましょう。
また、交渉が成立したとしても、家賃が1万円安くなるということはほとんどなく、交渉が成立しても3000~5000円程度。大きく期待しすぎないほうがいいでしょう。
初期費用を抑えたいという人にオススメなのが、クレジットカードを使った分割払いです。初期費用の一部もしくは全額をクレジットカードで支払うことができます。上手に使えばポイントやマイレージもたまります。ただ、「火災保険料は現金のみ」「敷金はクレジットカード対応」といった不動産会社ごとの条件があるので、注意してください。またクレジットカードで分割払いにすれば、利子が発生するので、支払い総額でいうと高くつくことがあります。
単身赴任や数週間~半年くらいの短期滞在であれば、家具家電付き物件を選ぶという手もあります。向いているのは、単身赴任や時期が決まっている出張など、数週間~半年くらいの短期滞在の人です。また、およそ月1万円程度、家賃が割高であることが多くなっています。ただ、自分の好みの家具家電を選べないと、ライフスタイルに合わない住まいとなり大きなストレスになるそう。長く暮らすのであればストレスになるといいます。
新しい生活をはじめるのに欠かせない、「初期費用」。以上の情報&テクニックを踏まえて、賢く抑え、新生活を満喫したいですね!
家を借りるときには家賃のほか、敷金・礼金、仲介手数料、火災保険料などの初期費用がかかる
初期費用は「家賃×4.5~5」が相場
最近は敷金礼金ゼロの物件も多いが、別名目で加算されているケースもあるので注意
●取材協力
株式会社アエラス
武澤 和哉さん
株式会社明光トレーディング 賃貸管理部 部長
不動産業界に携わられてから15年余り。完全歩合制の賃貸仲介営業に約4年従事した後、現職である株式会社明光トレーディングに入社。管理部課長、賃貸営業部署立ち上げ責任者を経て、現在は管理部部長として管理部全体のマネジメントを行う。
宅地建物取引士・相続診断士・FP3級
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