賃貸物件を契約するときにかかる「初期費用」。大きな出費となるので、いつ・どうやって払うのか気になる人も多いよう。そこで、初期費用は何のお金なのか、分割払いできるのか、分割は何回までできるのか、クレジットカードは使えるのか、そもそも費用を抑える方法はあるのかなど、不動産会社SIRE代表の木津雄二さんに教えていただきました。
賃貸物件を借りるとき、敷金・礼金など最初にかかる初期費用。賃貸借契約までに用意し、不動産会社などに支払う費用です。どれくらいかかるのかは、地域などにより異なることもありますが、例えば首都圏では現在「トータルで家賃の5カ月分くらいになるのが一般的です」とSIRE代表取締役の木津さん(以下同)。
つまり家賃8万円の物件なら、初期費用はだいたい40万円くらいが目安。その内訳は、下の表にまとめたような費用のほか、「不動産会社によっては消毒代、消火剤、駆けつけサービスなどの附帯商品に費用がかかることもあります。また、敷金・礼金がかからない『ゼロゼロ物件』の場合、初期費用は家賃の3カ月分が目安と考えていいでしょう」
また、月の途中で賃貸契約を結んだ場合、その日から月末までの日数分の家賃「日割り家賃」も、初期費用と合わせて支払うのが一般的です。
内訳 | 目安 | 例:家賃8万円の場合 |
---|---|---|
敷金 | 家賃1カ月分 | 80,000円 |
礼金 | 家賃1カ月分 | 80,000円 |
仲介手数料 | 家賃1カ月分 | 80,000円 |
前家賃 | 家賃1~2カ月分 | 80,000円 |
保証委託料 | 家賃半月分 | 40,000円 |
火災保険(家財) | 1万5000円~2万円 | 20,000円 |
鍵交換代金 | 5000円~2万円 | 20,000円 |
合計 | 400,000円 |
賃貸借契約の際に不動産会社などに支払う初期費用のほか、引越し費用、家具・家電など新生活準備のための費用なども同じくらいの時期に支払う必要があるので、併せて見込んでおくと安心です。
「特に引越し費用は、時期によって金額に大きな差が出るポイント。例えばファミリータイプの引越しは、閑散期なら20万円くらいで済むところ、3月末などの繁忙期には100万円以上かかるなど、倍以上の金額になることもあります」。時期が決まっているなら、早めに見積もりを取って確認しましょう。
家具・家電については「ベッド、冷蔵庫、洗濯機など、何を買うかによって金額が大きく変わります」。この費用に関しては、家具・家電付きの物件を選ぶことで抑えられる可能性もあります。
家具・家電は、もともと持っているものを使ったり、知人などから譲ってもらったりする場合、費用はかかりません。ただし、カーテンやラグなどの敷物などは、間取りによって買い替え・新調が必要になるケースもあります。
反対に、持っていた家具・家電を処分する場合も費用がかかります。エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機を処分する場合は、製品のタイプによって数千円の家電リサイクル料金が必要に。粗大ゴミの対象となる家具・家電は、自治体ごとに決められた手数料を支払うことになります。
1人暮らしの初期費用や家具家電の総額についてはこちら
→一人暮らしの初期費用は最低どれくらい必要? 家具家電の総額を把握してシミュレーションしてみよう
2人暮らしの初期費用と生活費についてはこちら
→二人暮らし(同棲)の費用は「初期費用+生活費」分担プランやシミュレーション、実例を紹介
賃貸借契約の際にかかる初期費用を支払うタイミングは、不動産会社によって異なります。入居審査を通過してから3日以内、1週間以内、2週間以内、契約当日……さまざまなケースがあるので確認しましょう。
支払い方法は銀行振込が一般的で、現金は不動産会社によって受け付けてくれるケースも。「やりとりしている不動産会社が仲介だけの会社で、振り込み先が別の管理会社、などという場合、現金を持ち込まれても対応が難しいことがあります」。現金で支払いたい場合は、対応できるかどうか聞いてみましょう。
初期費用の分割払いができるかどうかは、不動産会社や物件によって異なりますが、クレジットカードでの支払いであれば対応可能、という会社が増えているようです。
初期費用は数十万円と利用金額が大きいため、クレジットカードのポイントが貯まるのも入居者にとってメリット。「決済手数料は不動産会社が負担することになるため、経費に敏感な会社などでは採用していないケースもありますが、入居者の立場からはあまり気にしなくて良いでしょう」
なお、不動産会社や物件によって、分割払いに対応できるのは敷金・礼金のみ、前家賃・日割り家賃や仲介手数料には対応できない、利用できるカードが限定されているなどといった違いもあるよう。分割払いを希望する場合は早めに確認しておくと安心です。
クレジットカードでの分割払いが何回まで可能かは、カード会社などによって異なりますが、大手カード会社のほとんどが24回払いまでとしています。ただし、分割の回数が増えると、手数料が増えてしまうので注意が必要。一般的に2回払いまでなら手数料無料で利用できます。
実際の手数料はカード会社の公式サイトなどでチェックできます。
また、クレジットカード以外にも、エリアや物件などによっては初期費用の分割払いサービスを利用できるケースがあります。
入居者に代わって、初期費用を立て替え払いしてくれるというサービスで、入居者は立て替えてくれた会社に分割で返済していく、という仕組み。ある会社では、6回払いまでなら手数料は無料で、12回以上なら手数料がかかるというシステムになっています。
どのような方法を選ぶにしても、金額の大きい初期費用を分割払いにすることにはリスクも伴います。慎重にシミュレーションしましょう。
初期費用を分割で支払って契約時の負担を軽くできるのはいいけれど、そもそも初期費用の金額を抑えることはないのでしょうか。少しでも安く抑えるための、部屋探しのポイントを紹介します。
敷金・礼金がかからない「ゼロゼロ物件」なら、初期費用の負担を大きく減らすことができます。同じ家賃で敷金・礼金ともに家賃1カ月分という物件と比べると、家賃2カ月分の初期費用を抑えられるということです。
ゼロゼロ物件の注意点についてはこちら
→賃貸のゼロゼロ物件とは? 何がゼロで初期費用はかかるの? デメリットや注意点はある?
家賃が一定期間無料になる「フリーレント」付き物件を探してみるのもいいでしょう。フリーレントの期間は1カ月と設定されていることが多く、例えば「1カ月フリーレント」などと広告に表示されている物件の場合は、家賃1カ月分が無料になります。
フリーレントの仕組みや注意点、交渉についてはこちら
→賃貸の「フリーレント」とは?1ヵ月無料?物件のメリットや注意点は?
賃貸の仲介手数料は、慣例的に借主が家賃の1カ月分を請求されることが多いもの。ところが一部の不動産会社では、最初から仲介手数料は家賃の0.5カ月分とうたっているところもあります。
賃貸の仲介手数料の相場・上限・交渉についてはこちら
→賃貸の仲介手数料とは?相場と計算方法は?法律で上限が決まってるってホント?不動産屋との値引き交渉のコツ
敷金・礼金の値引きや、フリーレントの期間を長く設定してもらうなど、交渉ができるケースもあります。ただし「交渉は、相手にメリットがある場合に限ります。例えば閑散期で次の入居希望者がすぐに現れる可能性が低い、長期入居を約束する(短期解約の違約金を設定する)など、相手が喜ぶ内容なら、受け入れてくれる可能性もあります」
相手にとってメリットがない交渉は、あまりよくない印象を与えてしまうもの。面倒な入居者になりそうと思われ、審査で落とされてしまうなどのリスクもあるので注意しましょう。
賃貸物件の初期費用を直接抑えるアイデアではありませんが、家具・家電付き物件を選ぶというのもひとつの方法。手持ちの家具・家電がなく、新たに揃える必要がある場合、家具・家電付きの物件を選ぶことで、新生活準備にかかる費用を抑えることができます。
初期費用の分割での払い方、初期費用そのものを抑える方法などを紹介してきましたが、まとまったお金を用意するのが難しい場合は、不動産会社に早めに相談するのが安心といえそうです。
また、部屋探しのときには家賃だけでなく、初期費用も計算に入れて検討することが大切。不動産ポータルサイトで情報を収集する際、入居から契約更新までの期間でかかるコストを計算してみましょう。
賃貸の初期費用の相場について詳しくはこちら
→賃貸契約に必要な初期費用(敷金礼金など)の相場はどのくらい? 安くする方法は?引越し費用は?
初期費用は、不動産会社やエリアなどによって分割払いできるところもある
分割の回数は選べることが多いが、回数が増えると手数料も増えるので注意
初期費用を抑えるには、敷金・礼金のないゼロゼロ物件を探すと大きな負担減に
株式会社SIRE代表取締役。マンションデベロッパー、賃貸管理会社、リクルート住まいカンパニー(現リクルート)での勤務を経て、不動産の開発から売買、賃貸と幅広い実務経験を積む。現在は賃貸オーナー向け募集支援サービス「ECHOES(エコーズ)」を運営。大家団体等でのセミナー講演実績も多数。