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近年、物価の上昇とともに都心部の賃貸物件の家賃も上がっており、「コロナ禍前に入居したが、更新時期に家賃の大幅な値上げに驚いた」「新社会人や学生の部屋探しで、数年前と同じ条件で探しても物件が見つからない」「企業の社宅規定にある家賃上限が市場の価格に合わず、社宅となる物件が見つからない」といったことが起きています。この記事では、賃貸物件の家賃上昇の要因や家賃が高騰しやすい物件の特徴、家賃が高騰する中で私たちが備えておくべきことは何かなどを、ハウスメイトの伊部尚子さんに解説してもらいました。
近年、都心部の賃貸物件の家賃高騰が騒がれており、物価の上昇とともに家計を圧迫しています。
総務省発表の2025年12月の東京都の消費者物価指数において、「民営家賃」の前年同月比は+2.0%でした。過去1年間の民営家賃の指数の変遷を見ても、上昇を続けていることが分かります。
※「民営家賃」は既存の賃貸物件の賃料を対象としているため、新規(新築)の賃貸物件の価格高騰の推移は反映されていません

実際の現場ではどうなのでしょうか?
伊部さんが勤務されているハウスメイトでは、都内どの支店の現場でも家賃の上昇は顕著で、需要に供給が追い付いていない状況だといいます。具体的にどのような需要があり、物件の供給量が追い付いていないのでしょうか。
2020年以降コロナ禍でリモートワークが増え、都心部から離れた場所に住む人が増えましたが、2023年ごろから各企業のリモートワークが少しずつ解除され、都心部の住宅に需要が戻り始めました。また、企業だけでなく大学など学校もリモート授業から対面授業に戻ったことで都内に引っ越す学生が増え、「やはり通勤・通学に便利な都内がいい」と都内の賃貸物件の需要が増加していることが家賃上昇の一つの要因といえます。
「増える需要に対して入居できる物件数が限られているため、家賃・礼金などを値上げしても即満室になる状況が続いています」(伊部さん)
通常、賃貸物件は契約更新の際に更新料がかかることが多いため、それを避けて新しい物件に引っ越す人が一定数います。しかし、コロナ禍以前に安い家賃で物件を借りていた入居者は、周辺地域の家賃が高騰していることにより退去せず、そのまま住み続ける人が増えているといいます。
「周辺地域の家賃の上昇を見て、更新時期に貸主から家賃の値上げを打診されるケースも多いです。家賃の値上げを機に引っ越しを検討されるお客さまもいらっしゃいますが、実際に部屋探しを始めると、更新後の家賃よりさらに高額な物件が多く、更新料と値上げ後の賃料を払っても今の物件のままのほうがいいと引っ越しを断念することも少なくありません」
退去数が減ると市場に物件が出回る件数が減るため、需要に対して供給数が足りません。家賃を上げてもどんどん契約が決まるため、強気の家賃設定が市場に出回り、新築でなくても更新時に相場に合わせて家賃の値上げをする物件が増えています。
近年、人件費や材料費が上がり建築費やリフォーム費用全体の高騰が続いており、今までと同じクオリティの物件を提供するためには家賃に反映せざるを得なくなりました。共用部分の電気代などの光熱費の値上がりも、家賃上昇の一因となっています。
また、建築費が高騰していることで、家賃の平均額がそれほど高くないエリアでは、建て替えしても賃貸事業の採算が取れないため、仕方なく物件を売却するオーナーも増えています。立て替えが出来ないことで新築物件の供給が減っていることも家賃上昇の一つの要因といえるでしょう。

分譲マンションや一戸建てを購入したくても価格高騰で手が出ないという人たちが、将来的には購入したいが今は仕方なく購入を見送り、一旦は賃貸物件を選んでいることも、賃貸物件の需要が増加している一因です。
分譲マンションや一戸建ては自宅として購入するほか、転売したり賃貸に回すなど投資目的も多く、需要が落ちないことも価格高騰の理由です。特に都心部では価格高騰が続いており、自宅として探していた人が購入を見送るという選択が増えているようです。
オフィス街や商業地域、ターミナル駅などに近い、大きな公園や学校が近くにあり利便性などの条件がよく、ニーズが高いのに周辺の物件より割安感がある物件は家賃が上がることが予想できます。
「既に物件に住んでいる方は、同じ物件の空き部屋や周辺の同条件の部屋の募集家賃をチェックしておくと、次の更新でどのくらいの値上げが提案されるか予測できます」

新築物件は建築費や家賃高騰の市況に伴い、はじめから家賃を高く設定するケースが多くなってきています。一方中古物件は、退去後に周辺の相場や共用部の光熱費や修繕費の上昇を家賃に反映させ金額を上げる傾向があります。
「住みたいエリアがある場合、普段から市況をチェックしておくことです。エリアによっては需要と供給のバランスでそれほど家賃が上昇していないこともあります」
次の章で、実際にどんなエリアの物件の家賃が上昇しているのか具体的に見ていきましょう。
まず、東京都23区の賃貸物件の家賃(管理費込み)の中央値を比較してみます。(賃貸物件が大きく動く繁忙期の賃料データを2021年2月~4月と2025年2月~4月で比較)
2021年は月ごとの中央値はほぼ横ばいですが、2025年は月を追うごとに金額が上がっています。
また、2021年2月~4月の3カ月の中央値は9万円、2025年2月~4月の3カ月の平均中央値は約10.58万円で、4年間で約1.58万円上昇しています。
※SUUMOに掲載された東京23区の賃貸物件データを抽出し、データをまとめています。
※コロナ影響が緩和された2021年2月~4月の繁忙期と昨年の繁忙期期間である2025年2月~4月を比較しています。
※直近のデータではないことをご留意ください。
次に、同じく2021年2月~4月と2025年2月~4月の築年数ごとの賃貸物件・家賃(管理費込み)の中央値を月別に比較してみます。
築年数が20年以上の物件は4年を経てもそれほど変化は感じられませんが、5年以上10年未満、10年以上20年未満の物件では、なだらかに上昇していることが分かります。また、新築~1年未満、1年以上5年未満の物件に関しては、4年間で大きく上昇しています。

平均中央値を見てみると、築年数5年以上では0.5万円から1.4万円程度の上昇に留まっていますが、新築~1年未満は11.1万円から15.6万円と4.5万円の上昇、1年以上~5年未満は11.1万円から15.2万円で4.1万円の上昇をしており、新築~築年数5年未満の築浅物件で上昇率が高いことが分かります。この後データを紹介していきますが、特に上昇率が高いのはファミリー物件で、シングルとカップル物件に関しては、ここまでの上昇は見られません。
| 2021/2~4月の平均中央値 | 2025/2~4月の平均中央値 | |
|---|---|---|
| 新築~1年未満 | 11.1万円 | 15.6万円 |
| 1年以上~5年未満 | 11.1万円 | 15.2万円 |
| 5年以上~10年未満 | 10.2万円 | 11.6万円 |
| 10年以上~20年未満 | 9.4万円 | 10.8万円 |
| 20年以上 | 7.4万円 | 7.9万円 |
上のデータは東京23区のデータですが、シングル、カップル、ファミリー別に見るとファミリー物件の家賃上昇率が高い傾向にあります。
さらに詳しいデータで解説します。
駅からの徒歩分数別の平均値はどうでしょうか。
2021年2月~4月と2025年2月~4月の駅徒歩分数別の賃料(管理費込み)を示した下の表(3カ月の平均中央値)で、上り幅が一番大きいのは、駅から徒歩5分以内の物件で平均1.8万円上昇していました。次に徒歩7分以内が1.7万円と続き、駅から近いほど上昇率は大きいですが、全体的に急激な上昇は見られませんでした。コロナ禍が明け、通勤・通学をする人が増えて利便性の需要は戻ったものの、駅徒歩分数よりも物件の築年数の新しさのほうが価格上昇の値は大きいようです。

| 2021/2~4月の平均中央値 | 2025/2~4月の平均中央値 | |
|---|---|---|
| 5分以内 | 9.7万円 | 11.5万円 |
| 7分以内 | 9万円 | 10.7万円 |
| 10分以内 | 8.8万円 | 10.2万円 |
| 15分以内 | 8万円 | 9.6万円 |
| 15分超 | 7.4万円 | 8.3万円 |
最後に間取り別の中央値の上り幅を見てみましょう。
まずシングル間取り(1R, 1K, 1DK)は2021年と2025年で差異がそれほど大きくはなく、平均中央値は0.5万円アップに留まりました。カップル間取り(1LDK, 2K, 2DK)は平均中央値の12.5万円が15.1万円と2.6万円アップしています。一番大きな上げ幅だったのはファミリー間取り(2LDK, 3K, 3DK, 3LDK以上)で、16.9万円だったものが22.5万円と、上げ幅は5.6万円でした。
「ファミリー(2LDK, 3K, 3DK, 3LDK以上)はどのエリアも値上げ幅は大きいです。
これは、分譲マンションや戸建てを購入したいけれど価格の高騰で見送った人たちが賃貸物件に流れてきているのに加え、新しく建築される物件は利回りを考慮してシングル(1R, 1K, 1DK)向けの間取りが多く、2LDK, 3K, 3DK, 3LDKなどファミリー向けの間取りは需要に対して供給が追い付いていないことが考えられます。
ファミリー向けの間取りは家賃を上げてもすぐ契約が決まるので、値上げが止まらない状況です。一方シングル向けの間取りは供給数がある程度あるため、それほど大きな上昇をしていないのだと思います」

| 2021/2~4月の平均中央値 | 2025/2~4月の平均中央値 | |
|---|---|---|
| シングル | 8.1万円 | 8.6万円 |
| カップル | 12.5万円 | 15.1万円 |
| ファミリー | 16.9万円 | 22.5万円 |

シングルの間取りで家賃の中央値平均の伸び率が大きかったのは、1位が中央区、2位千代田区、3位台東区でした。
「コロナが明けて出社率が上がり、企業の近くに通勤に時間をかけたくない方が集まります。しかし中央区や千代田区は商業地域でもあるため賃貸物件の供給量がもともと少なく、需要と供給が合わず家賃が上昇しているのでしょう」
台東区は比較的投資用マンションが多いのも、家賃上昇に影響していると考えられます。
一方、伸び率が小さかったのは練馬区、世田谷区、江戸川区です。
「シングルは古い物件を建て替えた新築件数が一定数あり、需要と供給のバランスが取れているため伸び率も小さいです。その中で世田谷区などはエリアが広いことで供給が一定数あると考えられ、家賃もそれほど上昇していないのでしょう」
| 1位 | 中央区 | 2.10万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 千代田区 | 1.60万円 |
| 3位 | 台東区 | 1.38万円 |
| 1位 | 練馬区 | 0.18万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 世田谷区 | 0.25万円 |
| 3位 | 江戸川区 | 0.27万円 |
カップルの間取りでは、港区や目黒区、江東区で伸び率が高くなっています。
「港区や目黒区は、カップル入居に限らず収入に余裕がある単身世帯も広めの1LDKに住む傾向があります。特に築浅の1LDKの間取りに関しては、10%以上の家賃値上げが数年続いている印象です」
江東区もコロナ禍以降、都心部への需要が戻ったことや、コロナ禍前の安い家賃で住んでいる入居者が退去しないことにより需要に対する供給数が追い付いておらず、強気の家賃を設定したとしても契約が決まる状況が続いています。
伸び率が小さい区に関しては、需要と供給のバランスが取れているため、家賃上昇は抑えられているようです。
| 1位 | 港区 | 3.87万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 目黒区 | 3.77万円 |
| 3位 | 江東区 | 3.56万円 |
| 1位 | 葛飾区 | 1.30万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 中野区 | 1.48万円 |
| 3位 | 江戸川区 | 1.53万円 |
ファミリー間取りで価格の中央値の伸び幅が大きいのは北区で7.07万円、続いて港区が6.83万円、荒川区6.53万円でした。もともと城東エリアは交通の便もよく住みやすいエリアにもかかわらず割安感がありましたが、近年見直されて家賃も上昇しています。
「北区はもともと交通の利便性がよく、生活環境もいいので人気が高いエリアでしたが、近年豊島区など周辺区の家賃高騰に伴い、割安感のある北区に需要が集中する傾向があります。結果、北区の家賃相場が上昇し、これまで以上に物件の確保が難しくなっています」
「荒川区は山手線内で交通の便がよく、伸び率は大きいです。ファミリー物件は市場に枯渇気味な上に家賃が高騰しており、荒川区で部屋探しをスタートしても、予算の関係上北区や足立区、葛飾区で着地するケースが増えています」
「伸び率が小さい文京区、中央区、渋谷区はもともと家賃の価格帯が他の区より高いのに加え、その利便性から区内外への住民の移動が比較的少ないエリアです。また、建築費の高騰や土地不足、建て替えがしやすいアパートエリアではないこと、アスベスト問題などでRC構造の建築物の建て替えが進まず新築物件が増えないことから、家賃の上昇が抑えられている可能性があります」
また、法人利用が高いエリアであり、家賃上昇に踏み切る貸主がそれほど多くないことも考えられます。
| 1位 | 北区 | 7.07万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 港区 | 6.83万円 |
| 3位 | 荒川区 | 6.53万円 |
| 1位 | 文京区 | 1.30万円 |
|---|---|---|
| 2位 | 中央区 | 2.23万円 |
| 3位 | 渋谷区 | 2.47万円 |
以前は契約更新時や退去時に家賃が上がることは多くはありませんでした。しかし家賃が高騰している今、新しく入居する際や現在住んでいる物件も次の契約更新時に家賃が値上げされる可能性が高いと考えておきましょう。その上で、家賃の値上げを提案されたけれど交渉したい場合に備え、自ら情報や知識を収集しておくことが重要です。
「値上げをされたとき交渉できる情報や知識を得るためには、入居や更新の半年前くらいから住んでいる(住みたい)物件の空き部屋や、同じエリアの賃貸物件の家賃をSUUMOなどでチェックして相場観を養っておくといいでしょう。また、賃貸契約書の更新に関する条項や、賃料増減額請求権に関する内容が記載されている借地借家法(第32条)に目を通しておくこともおすすめします」
参考▶
SUUMOお役立ち「家賃が値上げ 拒否や交渉はできる?値上げされる正当な理由って?」

家賃の高騰は、賃貸物件の管理や清掃などにも影響が出ているといいます。
「賃貸経営が厳しくなり物件管理に優先順位を付けた結果、植栽やゴミ置き場など共用部の清掃や管理が行き届かない物件も出てきています。VRやオンライン内見などもありますが、ポータルサイトには掲載されない共用部を内見の際にチェックしておくと、『家賃は高いのに共用部が汚くて住みにくい』といったことが回避できると思います」
「今のところ家賃の高騰はまだまだ止まる兆しがありません。最近では団地のDIY可能な物件やリノベーション物件のニーズも上がっており、家にかけるお金を抑えようとする傾向も見られます」
現在、管理、清掃などにも以前より負担がかかっており、健全な賃貸経営を行うためには家賃を上げざるを得ない状況です。家賃が高騰しているから物件管理側が潤っているわけではなく、管理する側も厳しい状況であると物件を借りる側も理解しておくと、家賃高騰にもうまく対応ができるはずです。