塀・ブロック塀のリフォーム費用相場。アルミフェンスの新設、大谷石を使った塀のリフォームも解説

塀・ブロック塀のリフォーム方法や費用相場を、一級建築士の柏崎文昭さんに話を聞いてまとめました。危険な古いブロック塀をアルミフェンスに変える方法や、古くなった大谷石の塀のリフォームについても説明します。リフォーム実例も費用付きで紹介しますので参考にしてください。

ブロック塀とアルミのフェンス

ブロック塀とアルミのフェンス(写真提供/ダイク)

記事の目次

ブロック塀とは?

ブロック塀の材料はコンクリートブロックです。
コンクリートブロックはセメントと骨材(砂・砂利)を混ぜて、ミキサーで水や顔料とともに練ってから成形機で一つ一つのブロックの形にしたものです。
そのブロックを積み上げたものがブロック塀です。
コンクリートブロックが劣化すると、地震の揺れや自動車の振動などによってひび割れてきたり、穴が空いたりしてきます。
そうなるとブロック塀の補修やつくり直しが必要になります。

劣化して欠損ができたブロック塀の写真

劣化して欠損ができたブロック塀(写真/PIXTA)

古くなったブロック塀の補修費用

古くなって欠損したり、美観的にも悪くなったブロック塀は劣化が軽度であれば補修でもたせることができます。その方法や費用を見ていきましょう。

ブロック塀の補修はDIYでも可能

ブロック塀の小さな欠損や細いひび割れの場合は、DIYで補修することも可能です。
ホームセンターなどで売っているコンクリートのひび割れ補修材でひび割れ箇所を埋め、ヘラで表面をならします。

自分でやる場合は費用も材料費だけで済みますが、欠損が大きくなるとリフォーム会社に相談してプロに依頼したほうがよく、その場合は1㎡あたり1万5000円~2万円の費用を見ておきましょう。

古いブロック塀をつくり直す費用

ブロック塀をつくってから30年前後経過し、劣化が進んでいるや欠損がひどい場合は、塀そのものをつくり直す必要があります。その場合のリフォーム方法と費用を見ていきましょう。

古いブロック塀はつくりなおさないと危険な場合も

ブロック塀が古くなると、倒壊の危険も出てきます。

「古いブロック塀の中には、倒壊を防ぐための鉄筋が入っていない場合もあります。1995年の阪神淡路大震災後に基準が厳しくなりましたが、それ以前のものは鉄筋が入っていなかったり、現在の基準どおりに入っていなかったりと耐震性に問題のあるブロック塀が多いです」(柏崎さん 以下同)

内部に鉄筋が入っていないなど倒壊のおそれがあるブロック塀はつくりなおさなければ危険です。
鉄筋が入っていても大きなひび割れがあってそこから雨水が入るような状態だと中の鉄筋がさびて、塀の強度が損なわれます。そうなるとやはりつくり直したほうがよいでしょう。
また、傾いていたり、ぐらついているようなブロック塀も危ないです。

ブロック塀が倒壊して事故にならないよう、安全点検を行い、問題があればすぐにつくり直しましょう。

ブロック塀をつくり直す工程

ブロック塀をつくり直す工程は以下のとおりです。

なお、ブロック塀の設置工事は安全面に考慮しなければいけないなどDIYでは難しいです。そのためリフォーム会社などに依頼しましょう。

●工事前に近隣に挨拶
工事が始まると騒音が出たり、ホコリが舞うなど近隣に迷惑をかけることになりますので、事前に挨拶まわりをしておきましょう。

●解体・撤去
既存のブロック塀を解体して撤去します。
ブロック塀は基礎からつくり直さなければならないので、地中に埋まった基礎も解体・撤去します。

●基礎・鉄筋工事
元の基礎があったところに新たに配筋を行い、型枠をはめてコンクリートを流し、表面を平らに仕上げます。1週間程度の養生期間を経て型枠を外せば基礎のできあがりです。

●コンクリートブロックの積み上げ
ブロックに縦の鉄筋が通るように、コンクリートブロックを積み上げていきます。
4段以内ごとに横の配筋ができるブロックを積み、縦・横の配筋を緊結します。

●控え壁の設置
塀の支えとなる控え壁を一定間隔(3.4m以内)で設置します。

●仕上げ塗り
見栄えを考慮してジョリパットなどで仕上げ塗りを行う場合もあります。

コンクリートブロック積み上げ工事のイラスト

コンクリートブロックを基礎の上に積み上げていきます。穴の空いた部分には鉄筋を通し、モルタルを充填します

ブロック塀の安全性に配慮するポイント

ブロック塀をつくるときは地震や台風などによる大きな力が加わっても簡単に倒れることのない強さが求められます。

そのためにブロック塀の設計については最低限の基準が建築基準法で決められています。さらに日本建築学会がより安全性を考慮した設計基準などを決めています。

これらの法律や設計基準から抜粋したブロック塀をつくる際のポイントを以下に紹介しましょう。

ブロック塀をつくるときに注意するべきポイント
鉄筋コンクリート造の基礎を設ける 家を建てるときの基礎と同様に逆T字型にするかL型にして、転倒に対する抵抗力を高める。
基礎は地中深く設ける 基礎は下端から上端までの高さを40cm以上。用いる鉄筋も規定どおりの太さと間隔で配置。
縦および横方向の鉄筋で塀を一体化 縦方向と横方向の鉄筋を配して塀を強固に一体化(下図参照)。配筋の間隔も80㎝以下などにするといった基準が設けられている。
ブロックはJIS規格品または同等以上の品質のものを用いる コンクリートブロックはJIS規格品(JISマーク表示)か、同等以上の品質のものを規定の厚さで用いる。コンクリートブロックの厚さは塀の高さにより厚さ12㎝、15㎝以上と規定されている。
控え壁は3.4mごとに設置 控え壁は、塀の転倒に対する抵抗力を増すために、塀の長さ3.4mごとに設ける。塀と同じコンクリートブロックや鉄筋でつくり、必ず塀の鉄筋とつなぎ一体化する。
ブロック塀の高さは2.2m以下 建築基準法では、安全面を考慮してブロック塀の最大高さは地盤面より2.2mと定めている。塀の高さはこれ以下にしなければならない。

ブロック塀の耐震性確保の図

ブロック塀は地中につくった鉄筋コンクリートの基礎の上にコンクリートブロックを積み上げ、鉄筋を入れて、かつ一定間隔で控え壁を設けて、耐震性を確保します

ブロック塀をつくり直すリフォーム費用は10mで約42万円~50万円

「ブロック塀を作り直す費用の内訳は、既存のブロック塀の解体・撤去費用や基礎工事費、ブロックを積む費用などです。例えば、高さ1m長さ10m程度のブロック塀を解体・撤去する費用は約7万円~10万円、基礎工事とブロック積み工事を合わせて約35万円~40万円となり、合計すると約42万円~50万円ほどみておきましょう」

ブロックの表面に装飾をした化粧ブロックを用いると材料費が一般のブロックより高くなります。化粧ブロックのデザインによっても価格は変わります。またブロックの表面にタイルを張ったりしても費用はアップします。詳細はリフォーム会社に見積もりをとって確認しましょう。

ブロック塀の塗り壁費用の相場は10mで約10万円~15万円

ブロック塀に左官工事でジョリパットのような仕上げ塗り材を塗って、きれいに仕上げる方法もあります。
築年数が浅く、耐震性に問題のないブロック塀ならこの工事を行うだけできれいになります。

「ブロック塀に仕上げ塗りを行う場合は、まずブロック塀を洗浄してきれいにしたり、欠損部分を補修したりして、最初にモルタルで下塗りをします。その上にジョリパットなどで仕上げて完成します。全ての工事を合わせて費用相場は、高さ1m長さ10m程度のブロック塀で約10万円~15万円です」

ブロック塀塗り壁のイラスト

ブロック塀に左官工事で表面を仕上げてきれいにします

ブロック塀リフォームの注意点

ブロック塀のリフォームを正しく行ってもらうために、次のことに注意しましょう。

施工図面のチェックポイント

●基礎
ブロック塀の基礎はできあがると土の中に隠れてしまうので、基礎の形状が逆T字型かL字型になっていることを確認しましょう。

●配筋
ブロック塀を積んでしまうと鉄筋は見えなくなってしまいます。配筋図を確認しておきましょう。

工事中のチェックポイント

●根入れ深さ
基礎が埋まるところを「根入れ」といいますが、その深さが地面から35cm以上あることを確認しましょう。

●配筋状態
鉄筋が塀の高さまで立ち上がっていることを確認しておきましょう。

ブロック塀のリフォーム実例

ブロック塀リフォームの実例を費用付きで見てみましょう。

※表示されているリフォーム費用は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

ブロック塀と門扉を新設し統一感のあるデザインに

以前はポールとチェーンのみで仕切っていましたが、ブロック塀と門扉を新設し、併せて表札や郵便受け、インターホンも設置しました。ブロック塀の一部はアルミフェンスも組み合わせて圧迫感をなくしています。

【After】

ブロック塀や門扉、ポストなどを新設した事例の写真

玄関前に化粧ブロックの塀や門扉、ポストなどを新設、一度に施工することで統一感のあるデザインになっています

【DATA】
リフォーム費用(ブロック塀、門扉、フェンス):63万円
築年数:16年~20年
工期:10日
設計・施工:アート住宅

古いブロック塀をアルミのフェンスにリフォームする

ブロック塀が古くなったのを機に解体・撤去して、アルミフェンスに変えるリフォームもよく行われています。そのメリットやリフォーム費用を見ていきましょう。

アルミフェンスのメリットとデメリット

アルミはさびにくい素材なので、アルミフェンスは耐久性に優れているのが特徴です。軽量なので地震の揺れの影響も受けにくく、強風などで倒れない限り、半永久的にもつともいわれています。
メンテナンスもラクで、再塗装の必要もなく、ランニングコストも安い素材といえるでしょう。
開放的な反面、目隠し効果が低い場合もあるので、気になる人は目隠し効果のあるデザインのフェンスを選ぶようにしましょう。

アルミフェンスの高さ制限

ブロック塀の高さは前述のように2.2m以下と法律で定めています。
アルミフェンスもブロック塀を基礎にしてその上に設ける場合は、地盤面から2.2mが最大高さとなります。

ブロック塀を基礎としない場合は、独立基礎といって各々コンクリートでできた基礎を一定間隔で埋め込みます。その上にフェンスの柱を立てます。

独立基礎の場合は、高さに法的な制限はありません。
ただしフェンスが高くなるとそれだけ風の影響を受けやすくなります。安全性を考慮した高さを選びましょう。

全面アルミフェンスを設ける費用は10mで約50万円~100万円

アルミフェンスは製品自体がコンクリートブロックより高く、材料費を含む設置費用はブロック塀よりも割高となります。
全面をアルミフェンスにするためには、フェンスを下から支えるコンクリートの角型の独立基礎を用います。
ブロック塀を基礎から解体・撤去した後に、フェンスの柱を支えるために独立基礎を地中に埋め込みます。

「高さ1m、長さ10m程度のフェンスとして、ブロック塀の解体・撤去費用は約7万円~10万円、独立基礎を含むアルミフェンスの材料費と施工費用は約50万円~100万円です」

上記はアルミ形材の製品を用いた標準的なフェンスの場合です。アルミフェンスには形材のほかに、より高価なアルミ鋳物の製品もあります。鋳物製品のほうがデザイン的に凝ったものが多いようです。

アルミフェンスは価格もデザインも多種多様なので、メーカーのカタログを見ながら検討するのがよいでしょう。

既存のブロック塀の上にアルミフェンスを設置する方法も

アルミフェンスは独立基礎の上に施工して全面をアルミフェンスにするもののほかに、背の低いブロック塀の上にアルミフェンスを取り付ける方法もあります。

ブロック塀とアルミフェンスの併用は塀の下部に安定感が出ること、ブロック部分に目隠し効果もあることなどから比較的多く用いられている方法です。

この場合、既存のブロック塀を解体・撤去して新たに高さを抑えたブロック塀をつくり、その上にアルミフェンスを取り付ける方法と、既存のブロック塀を何段か撤去して高さを低くしてその上にアルミフェンスを取り付ける方法があります。

既存のブロック塀を活かす場合は、基礎工事が不要な分、費用は割安になります。ただ、既存のブロック塀の状態をよく調べて、基礎としての安全性を確認しておきましょう。

ブロック塀にアルミの目隠しフェンスを設置した事例

ブロック塀を積みなおした上にアルミの目隠しフェンスを設置(写真提供/藤本窯業)

ブロック塀をアルミや人工木のフェンスにリフォームした実例

古くなったブロック塀をアルミフェンスに交換した実例を見ていきましょう。

※表示されているリフォーム費用は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

古いブロック塀を撤去してアルミフェンスに

家の建築時から補修していなかったブロック塀。通学路に面しているので地震などでブロック塀が万一崩れたらと心配で、古くなったブロック塀を撤去。フェンスの基礎には新たにブロックを2段積み上げ、その上にアルミフェンスを取り付けました。ブロック塀の撤去には岐阜市の補助金制度を利用しています。

【After】

新設したアルミフェンスの写真

目隠し効果もあり通風もできるデザインのアルミフェンスを採用。和風の外観にマッチしています

【DATA】
リフォーム費用(塀のつくり直し):245万円
工期:1カ月
設計・施工:ヤマガタヤ

既存ブロック塀を基礎にアルミフェンス取り付け

既存のブロック塀を一部解体・撤去して低くし、それを基礎にして新たにアルミフェンスを取り付けました。ブロックの部分はオレンジ色に塗装し、イメージを一新しました。

【After】

目隠しタイプのアルミフェンスを設置した事例

アルミフェンスは目隠しタイプを採用、明るい印象になりました。塀の軽量化ができたので地震の際も安心できます

【DATA】
リフォーム費用(フェンス):50万円
工期:1カ月
設計・施工:東洋堂ハウスSP

人工木のフェンスに変える費用は20mで約130万円~265万円

樹脂に木粉を混入して見た目を木材のようにした人工木のフェンスもあります。天然木のように腐食の心配がないのがメリットです。商品価格はアルミ形材の2倍程度と高くなります。
高さ1m、長さ20m程度で、基礎を新規のブロックとした場合に約130万円~265万円が費用相場です。

木粉入り樹脂のフェンスにリフォームした事例

木粉入り樹脂のフェンスにリフォーム(写真提供/アンドクリエイト)

大谷石を使った塀をリフォームする

大谷石もブロック塀の素材として使われてきました。コンクリートブロックとの違いや特徴について説明しましょう。

大谷石は古くから塀に使われてきた材料

大谷石は栃木県大谷町で産出される自然石で、塀の材料としても古くから使われてきました。20年~30年と長持ちする材料ですが、経年変化で劣化し、表面がボロボロと剥がれ落ちてしまいます。
現在ではそういう状態になっている大谷石の塀が多く見られます。

大谷石の塀は鉄筋が入ってない

これまで説明してきたように、ブロック塀は鉄筋が入ることなどで耐震性を確保しています。ところが大谷石の塀やレンガを積んだ塀のように鉄筋が入らない塀は組積造といいます。

「大谷石の塀は本来鉄筋が入っていないのが特徴です。非常に重い材料ですので、地震の際には倒壊のおそれがあり危険です。塗装などで美観の向上や耐震補強はできますが、劣化が進んでいるなら鉄筋入りのブロック塀や軽量なアルミフェンスにつくり変えたほうが安心でしょう」

古くなった大谷石の塀に関しては、リフォーム会社に相談して耐震補強が可能かどうかを確認し、より安全な方向にリフォームを検討したほうがよいでしょう。

大谷石の塀をリフォームした実例

大谷石の塀をブロックなどの塀にリフォームした実例を紹介します。

※表示されているリフォーム費用は施工当時のもので、現在の価格とは異なる場合があります。

古い大谷石の塀をブロックとアルミフェンスにリフォーム

古くなった大谷石の塀を化粧ブロックとアルミフェンスにリフォーム。

【Before】

古くなった大谷石の塀の写真

古い大谷石の塀
【After】

目隠しタイプのアルミフェンスの実例写真

フェンスは通風ができる目隠しタイプを選択しました

【DATA】
リフォーム費用(塀のリフォーム):130万円
工期:10日
築年数:30年以上
設計・施工:ライツ

補助金を使ってブロック塀をリフォーム

倒壊のおそれのあるブロック塀や大谷石などの塀を安全な塀にリフォームするために補助金を出している自治体があります。一部を紹介します。
住んでいる自治体にブロック塀リフォームの補助金制度があるかどうかを確認し、あれば活用しておトクにブロック塀のリフォームをしましょう。

 

まとめ

  • ブロック塀は1995年の阪神淡路大震災以降に基準が厳しくなりました。それ以前にできたブロック塀は耐震性に問題がある場合が多いので、リフォームを検討しましょう
  • ブロック塀は逆T字型などの安定した形の鉄筋コンクリート基礎の上に鉄筋を縦・横に入れてコンクリートブロックを積み上げ、さらに支えとなる控え壁を設けて安定させます
  • ブロック塀のリフォームは、アルミフェンスにつくり変えるケースもあります。その場合は下部をブロックに、上をアルミフェンスにする方法もよく見られます
  • 古いブロック塀の撤去工事などブロック塀のリフォームには、多くの自治体で補助金を出すケースが見られます

取材協力・監修/一級建築士 柏崎文昭さん(甚五郎設計企画)
構成・取材・文/林直樹
イラスト/むらたゆか