トイレ先進国ともいわれる日本。その日本のトイレの進化の歴史と、最新トイレのすごい機能などをご紹介します。今ではなかなか見られなくなった &ちょっとめずらしいユニークなトイレもありますよ。トイレをリフォームする際は、ぜひ参考にしてみてください。
日本のトイレ、輝かしいその進化
日本のトイレの進化について、「水洗トイレの普及」「洋式便器の普及」「節水トイレの進化」「温水洗浄便座の普及」の4点に絞り、一般社団法人 日本トイレ協会の佐竹さんに伺いました。
水洗トイレの普及
「1887年、日本初の下水道敷設により、横浜の外国人居留地に英国製の水洗トイレ(洋式)が設置されたのが、日本の水洗トイレのはじまりです。日本製の和式の水洗トイレが開発・設置されたのは、その15年後の1902年のこと。日本独自の和式水洗トイレが初めて設置されたのは、帝国ホテルでした」(佐竹さん)
日本の和式水洗トイレの元祖は、100年以上も前に生まれていたのですね。
「1923年の関東大震災の復興を契機に、下水道の整備が進みました。下水道が普及していくとともに、トイレも汲み取り式から水洗式へ入れ替わるようになっていきました。汲み取り式の使用禁止区域なども設け、資金援助により水洗化が促進されたのもこのころです。便器はほとんど和式。天井近くに水槽があり、紐を引くことで水を流すハイタンク式洗浄装置が使用されていました」(佐竹さん)
このように、下水道が普及し下水処理場が次々に設置されると同時に、水洗トイレの利用が広まっていったのだそうです。
【画像1】国産初の腰掛水洗大便器(1914年)(画像提供:TOTO株式会社)
洋式便器の普及
「そもそも、和式トイレはしゃがみこんで用を足すもの。腰掛ける洋式のほうが用をたすのが楽であること、さらに詰まりの処理もスムーズに行えることから、和式より洋式が主流になって現在に至ります」(佐竹さん)
では、具体的にいつごろから洋式が普及しだしたのでしょうか。
「1960年に、住宅公団の団地建設にあたって、洋式トイレが標準装備になりました。ここから一気に洋式便器が普及していき、1980年には洋式トイレが全体の出荷量の60%を占めるようになり、1990年にはついに85%と大きく上回るようになりました。現在では全体の出荷量の99%が洋式となっています」(佐竹さん)
節水便器の進化
水洗トイレが出始めたころは、1回流すごとに大量の水が必要だったようです。トイレが進化するにつれ、どのくらい節水できるようになったのでしょうか。
「水洗トイレが出始めたころは、1回流すごとに20Lもの水が必要でした。1970年代に入り、1回16Lで済むよう機能がアップ。その後もどんどん節水が進み、現在では1回につき5Lから4L、最先端のものでは3.8Lで済むようになっています。当初と比べると、約80%も節水できるようになりました」(佐竹さん)
温水洗浄便座の普及
現在、一般家庭にも広く普及している温水洗浄便座。日本ではどのような進化を遂げてきたのでしょうか。
「もともと、欧米で医療用として販売されていた製品を、1964年に輸入販売したのが始まりとされています。1967年には伊奈製陶(現・LIXIL)により国産化され、1980年には抜本的に改良したTOTOの『ウォシュレット(※)』が登場します。当初はおしりを洗浄・乾燥するほか、寒い季節でもおしりがヒヤッとしないよう便座に暖房機能をもたせたものが主流でした。その後、1988年に着座センサーがついた便座が、1992年には脱臭機能がついた便座が、そして2003年には便座オート洗浄機能がつくなど、日本の温水洗浄便座は年を追うごとに進化を遂げています」(佐竹さん)
【画像2】温水洗浄便座(画像:fotolia)
最新トイレはこんなにすごい!
では、最新のトイレにはいったいどんな機能が搭載されているのでしょうか。TOTO株式会社の広報部 桑原さんに、TOTOの独自機能について伺いました。
きれい除菌水(2011年〜)
「きれい除菌水」とは、水を電気分解して、除菌成分(次亜塩素酸)を含む水に変化させたものだそうです。「日本のみならず、海外でも除菌効果を発揮することが確認されています。時間が経つとただの水に戻るので、環境にも優しい機能です」(桑原さん)
「きれい除菌水」を使った機能は、以下の3つです。
(全てのトイレ商品に搭載されているわけではありません)
・ノズルきれい(2011年〜)
使用後のウォシュレットのノズルを、「きれい除菌水」で自動的に除菌する機能。ウォシュレットを使っていない場合にも、8時間ごとに自動でノズル除菌をしてくれます
・便器きれい(2012年〜)
洗浄後の便器に「きれい除菌水」のミストを噴霧することで、便器ボウル面を自動で除菌する機能。こちらも、8時間ごとに自動噴霧してくれます。便器を除菌することで、黒ずみや黄ばみ汚れを抑えることができるので、お掃除も楽チンに
・においきれい(2015年〜)
トイレ空間の気になるにおい(アンモニア・トリメチルアミン)を除菌水フィルターがキャッチし、脱臭する機能。除菌水フィルターがキャッチしたにおい成分は、1日に1回「きれい除菌水」が洗浄・除菌してくれるので、フィルターも長持ちします
セフィオンテクト(1999年〜)
「『セフィオンテクト』は、便器の表面をナノレベル(100万分の1ミリ)で滑らかにしたTOTOの独自技術のこと。表面がツルツルなので、ミクロレベルのカビや汚れが付着しにくくなるというメリットがあります」(桑原さん)
普通の釉薬だけで仕上げた便器の表面は、ミクロレベルでは凹凸が目立ちます。この凹凸に、便器の汚れの原因となるカビや汚れが付着してしまうことも。その点、「セフィオンテクト」はナノレベルでツルツルなので、きれいが長持ちするというわけです。
「『セフィオンテクト』 は、約1200°Cの窯でじっくり焼き付けているので、通常のトイレ掃除器具(ブラシ・洗剤)でのお手入れでは傷ついたり剥がれたりしません」(桑原さん)
「セフィオンテクト」は、現在のTOTOの衛生陶器(便器・手洗器・洗面ボウル)のほとんどに採用されているとのこと。いつまでもきれいが長持ちするのは、うれしいですよね。
トルネード洗浄(2002年〜)
「トルネード洗浄」とは、便器のボウル面の洗浄方式を一新させた、画期的な洗浄方式です。
「トイレを使うみなさまが長年悩んでいる『フチ裏汚れ』をなんとか解消したい……という思いで開発されたのが、『トルネード洗浄』です。汚れの原因であるフチをなくしたのはいいものの、水をボウル面全体に行き渡らせる方法にみんな頭を抱えていました。そんななか、当時の開発者が思いついたのは、ボウル上端奥の1カ所の吐水口から水平方向に勢いよく水を供給し、水をボウル内にジェットコースターのようにぐるぐる駆け巡らせよう、という発想でした」(桑原さん)
この発想を実現するには、水の勢いやボウル内の形状などをバランスよく構成する必要があったのだとか。開発に数年をかけ、業界に先駆けて2002年に誕生したのが、「トルネード洗浄」というわけです。
「現在では、TOTOの大半の便器に『トルネード洗浄』が採用されています。フチなしなのでお手入れのしやすさはもちろん、少ない水で効率的に洗うのでトイレの節水にも貢献しています」(桑原さん)
【画像3】TOTOネオレストAH(画像提供:TOTO株式会社)
一風変わったユニークなトイレも
輝かしい日本トイレの歴史。なかにはこんな個性的なトイレがあるのをご存じですか?
真っ黒なトイレ!?
トイレというと、白系色のイメージが強いのではないでしょうか。しかし、進化を続ける日本のトイレでは、なんとこんな真っ黒なトイレも販売されているんです。一般的な家庭のトイレは、ほかの部屋に比べて狭くつくられているもの。そのため、白やパステルカラーなどの色調で明るく広く見せるよう心がけている家庭も多いのでは? でも、「トイレもシックに装いたい」「ほかとは違う個性的なトイレにしたい」という人には、この真っ黒なトイレがオススメ。つや消しのマットな黒なので、落ち着いた高級感も感じられます。もちろん、便器の中は白色なので、汚れも確認しやすく安心です。
【画像4】LIXIL サティス:Gタイプ/ブラック(画像提供:株式会社LIXIL)
和式にもウォシュレットがあった!?
TOTOのウォシュレットに、和式用があったことをご存じですか?発売時期は、1996年7月から2003年3月まで。長年使い慣れた和式トイレを、洋式トイレに改造することなくウォシュレットを設置できるという、画期的な商品だったそうです。「ウォシュレットを使ってみたいけどうちは和式トイレだし……」というご家庭にとっては、うってつけの商品だったのかもしれません。
【画像5】TOTO ウォシュレットW(画像提供: TOTO株式会社)
まとめ
日本のトイレの歴史、そして最新のトイレをご紹介しました。日本のトイレの進化の舞台裏には、開発者たちの血の滲む努力が隠されているもの。最初期のトイレに比べると、最先端のトイレの機能はすばらしい進化を遂げています。トイレのリフォームを検討する際は、ぜひ参考にしてみてください。
※「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標です。
●取材協力:
・一般社団法人 日本トイレ協会 事務局 佐竹さん
・TOTO株式会社 広報部 桑原さん
●画像提供:株式会社LIXIL