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所有する土地の境界線を明確にしておかないと、注文住宅を建てる際にトラブルが発生する可能性があります。土地家屋調査士の松崎 光太郎さん(※「崎」は正式には「たつさき」)の話をもとに、土地の境界を確定する方法や注意点について解説します。
境界確定について解説する前に、境界とは何かについて説明します。
境界(土地境界)とは、土地と土地、もしくは公共用地と土地の境目のことを意味します。土地や道路の上に、御影石やコンクリート、プラスチックなどでできた境界標が設置されているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。

一般的に境界標で示された土地の境目を「境界」と呼ぶことが多いのですが、実は境界は「筆界」と「所有権界」という2種類に大別され、それぞれ意味が異なります。
「筆界とは明治時代の地租改正によって確定し、登記された土地の境界のことをいいます。地租改正の際、一般的に「公図」と呼ばれる「土地台帳附属地図」に線が引かれ、これを筆界としました。それ以降も大きな土地を分けたときなどに新しい線が引かれることになりますが、これも同様に筆界と呼びます。一方、所有権界とは土地の所有者同士の所有権の範囲を示す線になります」(松崎さん、以下同)
筆界は「公法上の境界」、所有権界は「私法上の境界」とも呼ばれています。
「所有権界は所有者同士の『ここまでが私の土地ですよね』という話し合いや確認によって変更することができますが、筆界はそれができません。筆界は所有権界とは異なり、土地の所有者同士の協議で定めることができない性質のものなのです。また、原則として筆界と所有権界は一致しているべきものですが、さまざまな理由により一致しないこともあります。そういった場合、越境物などが原因で土地の所有者同士のトラブルが発生する可能性が高くなります」

それでは次に、境界確定の意味について解説していきます。一般的に言われる「境界確定」とは、民有地と民有地、または道路や河川敷などの公共用地と民有地の境界を明確にする手続きのことです。
「土地の所有者同士が筆界線を確認し合うことや、新たな境界図を作成したり確認書を取り交わしたりする作業のことを境界確定と認識している人が多く、不動産業界でもそのように説明されているケースは珍しくありません。しかし専門家の間では、裁判官が土地の境界を確定させることを境界確定と呼んでいます。裁判官は曖昧だったり不明だったりした筆界(境界)を定められる唯一の人物であり、裁判以外の方法で境界を確定させることはできません。
なお、所有者間で境界を確認し合ったり確認書を取り交わしたりすることに関しては、土地家屋調査士の間で『筆界確認』と呼んでいます」

家を建てるにあたり、まずは敷地面積を正しく算定する必要があります。
「建築基準法において、住宅を建てる前に境界を確認しなくてはいけないという決まりはありません。そこまでやる必要はないと判断し、現況の測量のみに基づいて敷地面積を算定するケースが多いです。しかし、歴史の深い土地の場合は境界の標識が見当たらなかったり、法務局に公図や地積測量図がなかったりすることもあります。また、公共用地である道路との境界線が曖昧な場合、家の敷地だと思っていた部分が実は道路だったという可能性もゼロではありません。そういったトラブルを未然に防ぐためにも、筆界確認(境界確認)を行い、正しい敷地面積を明らかにしたほうが安心です」

近隣住民同士で所有権界の認識が異なることでトラブルになるケースがあります。
「筆界確認(境界確認)とは、言わば藪をつついて蛇を出すような作業であり、土地の境界を曖昧にしておいたほうが揉め事が起こらない可能性さえあります。そのため筆界(境界)の確認をすることに対して近隣住民が難色を示す場合もあります。しかし、筆界確認(境界確認)には、その土地が抱える潜在的なトラブルを明確にしたり、問題を解決へ導くきっかけができたりするメリットがあります。つまり、将来的な近隣トラブルを未然に防ぎ、安心して建築や土地の売買をすることができるのです。また、筆界確認(境界確認)をすることで近隣にどのような人が住んでいるのかも分かります。スムーズに筆界確認(境界確認)に応じてくれる協力的な隣人であれば、今後のトラブル発生リスクも低いと考えてよいでしょう」

「筆界確認(境界確認)によって将来的なトラブルを抑制できるので、安心して住める土地であることの担保になります。立地や面積や地質も重要ですが、トラブルなく安心して暮らせることも土地の価値の一つと考えてよいでしょう。筆界確認(境界確認)をした土地、していない土地ではその価値に大きな差があると思います」
「土地家屋調査士は、土地の筆界を扱う専門家です。土地や家屋に関する調査、測量を行うほか、登記申請手続きなどを代理で行うことができる唯一の国家資格者です。筆界のことで相談をする場合はまず土地家屋調査士に依頼をしましょう」
また、依頼内容や地域によって費用には大きな幅があります。
「日本土地家屋調査士会連合会が、全国の土地家屋調査士を対象に行ったアンケートに基づき業務報酬統計資料を発表しています。費用相場を知る際の参考にしてみてください」

「土地家屋調査士と混同されやすいのが測量士です。測量士も測量を行い、境界確認書を作成して取り交わすことがありますが、筆界のプロではありません。測量士が作成した図面に基づいて取り交わした約束はあくまでも私人間同士の所有権界の領域の話であり、その図面をもとに登記を行うことはできないのです。測量士が作成した確認書があったとしても筆界は不明のままなので、将来的に改めて土地家屋調査士による筆界確認が必要になる可能性もあります」
ただし、費用面で比較をすると測量士に依頼したほうがリーズナブルなケースが多いようです。登記簿と土地の面積が合っているか確認したいだけの場合や図面作成だけしてほしいといったことであれば、測量士に依頼する選択肢もあります。

法務局が管理する登記事項証明書(登記簿謄本)や地積測量図を確認することは、最も手軽に筆界(境界)を調べる方法です。登記事項証明書には、土地の所有者、抵当権、所在、地番、地目、土地の面積が記載されています。また、地積測量図が備え付けられている場合は、その土地の寸法、位置関係、土地の面積の算定根拠なども記載されています。
「登記事項証明書や地積測量図は個人でもインターネットで取得可能です。ただし、住所(所在)と地番が異なるケースなどもあり、調べるのに多少コツが要る場合もあります。そして、それだけでは境界を明確に知るには不十分かもしれません。自身で調べるのが難しい場合は、土地家屋調査士や法務局に相談するとよいでしょう」

次に、土地家屋調査士に調査を依頼した際のおおまかな手続きや流れについて説明します。なお以下は、土地の所有者が隣接する道路と民有地に対して筆界の確認をしたい場合を想定した流れになります。
土地家屋調査士に依頼をします。事前に調査内容について相談し、見積もりを取りましょう。不動産会社等を介して土地家屋調査士に依頼する場合もあります。
道路の筆界確認を行う場合は市区町村に調査の申請を出します。市区町村の担当者は調査・確認に立ち会います。
民有地同士の筆界を確認するために、土地家屋調査士が近隣の人に挨拶と立ち会い依頼を行います。その際、できるだけスムーズに協力してもらえるように、依頼者本人からも近隣の人々に調査の背景等についても丁寧に説明しておくとよいでしょう。
測量を開始します。並行して土地に関連する図面を収集し、情報を照合していきます。その土地に昔から住んでいる人が古い図面を持っているケースもあり、そういった図面も借用して調査に使います。
道路との筆界に関しては、市区町村の職員の立ち会いのもと確認を行います。後日、市区町村に対して明らかになった筆界に関する書面を提出します。
民有地の筆界に関しては、土地の所有者など近隣住民と立ち会いのもと確認を行います。立ち会った全員が筆界を認知することが重要です。
立ち会った全員が納得したら、図面を添付した境界確認書を取り交わします。また、筆界(境界)の目印となる標識がない場合は新たに標識を設けます。
土地が明確になり、認識していた境界と実際の境界(筆界)が違った場合、新たに登記申請を行った方が良いと思われるケースもあります。土地の面積が変わることで固定資産税の金額にも関わってくるため、正しい情報を登記事項証明書に残すことが大切です。依頼者本人が申請を行うこともできますが、地積測量図の作成などが必要となるため、土地家屋調査士に代理での申請依頼をするのが一般的です。
以上、すべての流れが完了すると、登記簿と図面の情報が一致します。
筆界確認をしてもお互いに納得せず不成立になってしまう場合があります。または、確認に応じない住人もいます。そういった場合は裁判に発展することもありますが、その前段階として筆界特定制度というものを利用できます。
「筆界特定制度は法務局が筆界を特定し、特定されれば登記までは行えるというものです。もしもこの結果に対して不服であれば訴訟を起こすことができます。筆界特定制度は裁判による境界確定ほどの効力は持たないものの、この制度があることで境界確定の訴訟の数が以前よりも減りました」

「土地家屋調査士に依頼した際の費用には地域差があり、都市部よりも地方のほうが安い傾向にあります。それなら都市部でも地方の土地家屋調査士に依頼したほうがよいのではないかと思うかもしれませんが、あまりおすすめはしません。正確な境界を知るためには、その周辺地域の土地の測量に精通している専門家を頼ることが重要です」

「境界標は見えるところにしっかりと設けることがポイントです。以前設置した標識がある場合は、塀などで隠れないようにします。境界標を設置するのも土地家屋調査士の仕事なので、設置の仕方や場所に要望がある場合などは事前に相談してみてください」
境界標は土地を守るための大切なものです。簡単に移動できないように設置することや長期間風雨にさらされても朽ちない耐久性のある素材を使うことが大切です。また、一度設置した後も消失したり見えなくなったりしていないか定期的にチェックする習慣をつけましょう。

建物の一部や樹木などが隣の敷地に越境している土地を売買する際は注意が必要です。
「購入する土地に越境物がある場合は、不動産会社から事前に重要事項説明があると思います。きちんと約束が取り交わされているので大丈夫です、と説明をされた場合であってもシビアに考え、不明点について細かく確認するようにしましょう。また、越境を解消したい場合は土地を購入する前に要望を出しましょう」

「必ずしも筆界(境界)を確認しなくてもよいケースがあります。例えば、公有地の道路に面している土地で、筆界(境界)がある程度類推できる場合です。公有地の調査となると民有地よりも広い範囲の測量を行ったり、自治体との手続きが必要となりコストもかかります。筆界確認(境界確認)が本当に必要なのか迷った場合は土地家屋調査士に相談してから決めるとよいでしょう」

「登記をしなくても借地権は設定できるため、その土地に借地権があるかどうかは登記簿上では分からない場合が多いです。もしも、この土地には借地権があると言われた場合は、借地の範囲や金額をしっかりと確認することが大切です。借地権の境界線は筆界とは異なる性質のものですが、必要に応じて調査を行い明確にしたほうがよいでしょう」

最後にまとめとして、家を建てる前に筆界(境界)を確認することの大切さについて松崎さんに伺いました。
「境界を確認しないまま土地が売買されトラブルになった事例は珍しくありません。土地を購入して建築をスタートしてから土地境界のトラブルが発覚し、そのせいで何度も設計変更を余儀なくされたり、せっかく家を建てたのに裁判が落ち着くまで何年も入居できなかったりという事例もありました。
土地家屋調査士に依頼をして境界を確認することは必須ではありません。調査費用もかかります。しかし、潜在的なトラブルを解消した上で家を建てることで、結果的には裁判費用などの余計な出費を抑えられたという考え方もできるでしょう。土地の境界確認が必要かどうか迷った際は、ぜひ私たちのような専門家を頼ってください」
境界には公法上の境界である「筆界」と、私法上の境界である「所有権界」の2種類が存在する
境界確定とは裁判官が裁判によって行うもの。測量調査や立ち会いをして筆界を確認・認知することは「筆界確認」という
筆界を確認し合うことで将来的なトラブルを予防し、安心して暮らせる土地になる
土地の筆界を調べる場合は、筆界を専門的に扱い登記申請まで行うことができる土地家屋調査士に依頼するとよい