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土地や住宅を所有すると「固定資産税」が発生します。家を建てる土地を探す際には、土地の価格だけでなく固定資産税についても知っておいたほうがよいでしょう。不動産コンサルタントの田中歩さんにお話を伺い、土地の固定資産税の計算方法や調べ方、建物を建てず土地のみを保有する場合の注意点など、役立つ情報を紹介します。これから土地を購入して家を建てようとしている人はぜひ参考にしてください。
固定資産税とは、土地や家屋、償却資産などの固定資産にかかる税金のことです。この記事では、土地にかかる固定資産税について解説していきます。
「固定資産税は1月1日の時点で土地や建物を所有している人が納める決まりになっています。なお、固定資産の一つである償却資産は機械や工具などの事業用資産を意味するため、自己居住用の住宅にかかる固定資産税を算出したい場合は関係ありません」(田中さん、以下同)
固定資産税についてもっと詳しく
→固定資産税とは?計算方法や安くなるコツ(減免措置)、いつ、どのように払う?
固定資産税の税額は、固定資産税評価額、または課税標準額に自治体が定める税率をかけることで算出できます。
固定資産税評価額とは固定資産評価基準に基づき各自治体が個別に決める評価額のこと。不動産登記法によって定められた現況の土地の用途、地目(ちもく)に応じて評価されます。
一方、課税標準額とは税率をかけて固定資産税を算出するもとになる金額のことを意味します。
通常、固定資産税評価額と課税標準額は同額となりますが、住宅用地の特例などが適用される場合は課税標準額が固定資産税評価額よりも低くなります。その場合は固定資産税評価額の値を使用して固定資産税を算出します。
課税標準額は各市町村から土地や家屋の所有者に届く納税通知書の「価格」欄に記載されています。これから土地を購入して家を建てる場合は、不動産会社の担当者に聞くと課税標準額の目安を教えてもらえる可能性があります。
固定資産税評価額についてもっと詳しく
→固定資産税評価額とは?知っておきたい計算方法や見方、調べ方
土地の固定資産税の金額を把握するうえで、住宅用地の特例についても把握しておいたほうがよいでしょう。
一戸建てやマンションなど、人が居住するための家屋の敷地として利用される土地を「住宅用地」といいます。(※)住宅用地には「住宅用地の特例」という措置が適用され、固定資産税が軽減されます。
土地に住宅用地の特例が適用される場合、課税標準額は以下の通り減額されます。
「住宅の建設予定地であったとしても、1月1日の時点で家屋が完成しておらず、登記も完了していない土地は住宅用地として認められず、特例措置の対象外となるため注意が必要です。
ただし、住宅の建て替えのために家屋が建築中である土地に関しては、一定の要件を満たせば住宅用地として認められる場合もあります。詳しくは土地のある市区町村の担当窓口に確認してみましょう」
※東京都では、その土地の上に存する建物面積の10倍までの土地とされています。また併用住宅の場合にはいくつかの要件があります。
小規模住宅用地・一般住宅用地についてもっと詳しく
→固定資産税・都市計画税とは。小規模住宅用地や一般住宅用地の軽減措置を解説/住まいのお金・制度のマニュアル#18
都市計画税もまた、土地や建物を所有している人に毎年課税される税金です。固定資産税と同じく、固定資産税評価額(課税標準額)に税率をかけて算出されます。都市計画税の税率も市区町村ごとに定められ、上限は0.3%と定められています。
また、都市計画税にも下記の通り住宅用地の特例が適用されます。
例えば、面積が180m2・固定資産税評価額が900万円の住宅用地の場合は以下のように算出します。
1.課税標準額を求める
900万円×1/3=300万円
2.都市計画税の計算式に当てはめる
課税標準額×税率
300万円×0.3%=9000円
都市計画税=9000円
都市計画税についてもっと詳しく
→固定資産税・都市計画税とは。小規模住宅用地や一般住宅用地の軽減措置を解説/住まいのお金・制度のマニュアル#18
固定資産税評価額は3年に一度の周期で全国的に見直しが行われます。この見直しのことを「評価替え」、評価替えをする年度を「基準年度」といいます。
「令和6(2024)年度は評価替えが行われるので、基準年度となります。令和7(2025)年度、令和8(2026)年度は原則として基準年度の価格が据え置きになります」
基準年度でなくても、建物の新築や増築などが発生した場合は評価替えが行われる場合があります。
土地の固定資産税を算出する計算式は以下の通りです。
課税標準額 × 税率
税率は各自治体が自由に決めることができますが、多くの自治体では国の標準税率である1.4%を採用しています。
500万円(課税標準額) × 1.4%(税率)=7万円
固定資産税=7万円
住宅用地のうち、住戸一戸あたり200m2までの部分が小規模住宅用地にあたるため、この土地の場合は土地全体が小規模住宅用地となり、課税標準額が1/6に軽減されます。
約933万円(課税標準額)×1.4%(税率)=約13万円(13.062)
固定資産税=約13万円
この土地は、265m2のうち200m2が小規模住宅用地、65m2が一般住宅用地にあてはまります。両方の課税標準額を合算することで、土地全体の課税標準額が算出できます。
土地の購入前と購入後では固定資産税の調べ方が異なります。
土地の購入前は正確な固定資産税評価額を調べることはできません。しかし、不動産会社の担当者に聞くと目安となる金額を教えてくれる可能性があります。
「土地購入前にそのエリアの固定資産税の目安を知りたい場合は、一般財団法人資産評価システム研究センターの『全国地価マップ』を利用することをおすすめします。このサイトでは、全国の固定資産税路線価を調べることができます。固定資産税路線価とは、各自治体が道路ごとに算定した、公示地価の約70%の価格のことです。固定資産税路線価は評価替えの年度の6月頃に発表されるため、1~5月頃に調べると前年の固定資産税路線価が出てくるため注意しましょう」
すでに土地を所有している場合は、以下の書類を確認することで固定資産税評価額を調べることができます。
固定資産の評価額を証明する書類です。所有者の住所、氏名、土地の所在地や面積、そして評価額が記載されています。市区町村の担当窓口(市民税課など)に申請することで取得可能です。所有者本人以外が申請する場合は、委任状が必要です。
固定資産評価証明書に記載された内容に加えて、課税標準額と税相当額が記載されています。記載内容は課税明細書とほぼ同じです。市区町村の担当窓口(市民税課など)に申請することで取得可能です。所有者本人以外が申請する場合は、委任状が必要です。
毎年4月頃に納税通知書とともに送付されてくる書類です。課税明細書には固定資産税が課税される土地や家屋の所在、地番などが記載されています。固定資産税評価額は「価格」の欄に記されています。
固定資産税の調べ方についてもっと詳しく
→固定資産税評価額とは?知っておきたい計算方法や見方、調べ方
土地に住宅を建てる場合は、住宅用地の特例が適用されます。上述した通り、小規模住宅用地の特例と一般住宅用地の特例があり、土地面積によって特例率が変わります。200m2以下の部分は固定資産税評価額を1/6に抑えることができるため、土地を購入する際は面積が200m2を超えるかどうかを確認してみましょう。
土地のみ所有している人は注意が必要です。
「土地が更地のままになっていると住宅用地の特例が適用されず、高い固定資産税を払うことになってしまいます。1月1日の時点でその土地上に建築した建物の登記が完了していれば住宅用地とみなされます。土地を購入したら、できれば年内に建物の登記まで済ませておくと、翌年の固定資産税が安くなります」
住宅用地の特例以外にも、自治体ごとに固定資産税の減免措置が設けられている場合があります。例えば東京都では、災害などによる被害を受けた場合や生活保護を受けている場合などは、一定の要件を満たすことで固定資産税の減免措置を受けることができます。
詳しくは自治体の窓口に問い合わせてみましょう。
「固定資産税の税額は、毎年4月頃に送付されてくる納税通知書を見ると分かります。納付回数は一括または分割(4回)を選択できます。納付書に記されている期限までに納付しましょう。納付期限を過ぎた場合、自治体から延滞金を請求される可能性もあります」
固定資産税は、納税通知書に同封されている納付書を使ってコンビニや金融機関で支払うのが一般的です。自治体によってはクレジットカードで納付することも可能です。コンビニや金融機関まで足を運ぶ手間は省けますが、手数料がかかる可能性もあります。
また、手続きをすることで口座振替も利用できます。口座から自動的に固定資産税が引き落とされるため、納付忘れを防げるというメリットがあります。
家を建てる前に、固定資産税の計算方法や調べ方、納付の仕方について把握しておくと安心です。
「家を建てると土地と建物の両方に固定資産税が発生します。不動産を所有している人であれば、固定資産税について正しく知っておいたほうがよいでしょう。分からないことがあれば、不動産会社の担当者をはじめ、税理士やファイナンシャルプランナー、不動産コンサルタントといった専門家を頼る方法もあります。自治体の窓口に問い合わせてみるのもよいでしょう。この記事で紹介した内容を参考にして、固定資産税について正しい知識を深めてください」
土地や家屋などの不動産を所有している人は、固定資産税を納付する義務がある
住宅用の土地であれば「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が軽減される
固定資産税の不明点は自治体の窓口や専門家に相談するとよい