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「地役権」とは、「ある一定の目的の範囲内で、他人の土地を自分の土地のために利用する権利」のこと。しかし「他人の土地を自分のために利用するってどういうこと?」「なぜそんな権利が必要なの?」など、分からないことも多いでしょう。
地役権に詳しい、司法書士の清水さんに教えてもらいました。
地役権とは、一定の目的のために他人の土地を利用する権利のこと。どんなときに地役権が使われるかというと、「一番多いのは、他人の土地を通ったほうが駅に出やすいなど、通行のために他人の土地を利用する場合に地役権を設定するケースです」と清水さん。これを「通行地役権」と呼ぶことがあります。
このとき、通行するために他人の土地を利用する側の土地を「要役地」、利用される側の土地を「承役地」と呼びます。
▼「地役権」の用語解説を読む
地役権とは|SUUMO住宅用語大辞典

通行の目的以外では、「水道管やガス管の埋設目的」や、「承役地(図1のB)に高い建物が立つと要役地(図1のA)の日当たりが悪くなるため高い建物を建てないようにする目的(日照地役権)」などがあります。
通行地役権と似たような権利に「囲繞地(いにょうち)通行権」というものもあります。この2つの違いを見ることで、さらに地役権が分かりやすくなるでしょう。
囲繞地通行権とは、公道に接していない土地(袋地)を所有する人が、周囲を取り囲む土地(囲繞地)を通行できる権利のことです。囲繞地の所有者にとって最も損害の少ないところを選んで通行できます。

では、通行地役権と何が違うのでしょうか?大きな違いは、通行地役権の場合は承役地(図1のB)を通らなくても要役地(図1のA)から公道に出られますが、囲繞地通行権では袋地のため、他人の土地を通らない限り公道に出られないことです。
次は、契約や登記などの違いについても見ていきましょう。
| 通行地役権 | 囲繞地通行権 | |
|---|---|---|
| 契約の要件 | 当事者の合意 | 袋地に備わる権利のため契約は不要だが、実際は契約することが多い |
| 通行できる範囲 | 当事者の合意で決定 | 囲繞地にとって損害が少ない範囲 |
| 登記 | 必要 | 不要 |
| 通行の対価料金 | 当事者の合意で決定 | 必要 ただし、もともと公道に接していた土地の分筆(※)によって袋地になった場合は不要 |
| 通行が有効な期限 | 当事者の合意で決定 | 期間の制限はない |
このように(通行)地役権はほとんどが当事者同士の合意で決まるのに対して、囲繞地通行権は民法によって袋地の所有者に当然に認められる権利です。地役権は当事者同士の合意であることから、「合意さえできれば、例えば通行範囲を車で出られる幅にしたり、通行料金を無料にしたりということもできます」(清水さん)。
ただし繰り返しますが、当事者同士の合意は必須です。「承役地の所有者が、要役地側の求める範囲や利用料金などに応じてくれれば」可能ということになります。
いつまで地役権を設定するかは契約で設定しますが、設定した期限内でも地役権が消滅する時効があります。
「地役権の行使を妨げる事実が生じたときから20年で地役権が消滅します」(清水さん)。
この行使を妨げる事実とは、例えば通行地役権の場合、合意した通行部分に建物が立つなど、事実上通行できない事実が生じたかどうかで判断します。これを「地役権の消滅時効」といいます。
当事者同士が合意できたら、地役権設定の登記を行います。
「登記をしないと、例えば承役地の土地所有者が売買などで変わった場合、それまでの合意内容を新所有者に対抗できない(地役権が設定されていることを主張できない)ケースがあります」(清水さん)。
登記すれば、次の所有者は要役地・承役地とも、期限内であれば引き続き設定されている内容を順守しなければなりません。つまり、「土地の所有者が変わったから通行できなくなる」あるいは「今まで通行料をもらっていたのに支払われなくなった」といったことを防げます。
逆にいえば、購入した土地の登記簿に地役権が設定されていた場合、それを順守しなければなりません。
地役権設定の登記申請には、下記のような書類を用意します。当事者が登記してもよいのですが、素人では書類や図面の作成が難しいので、司法書士にお願いするといいでしょう。
地役権の登記で必要になる主な書類は、下記のとおりです。
| 登記原因証明情報 | 当事者の合意内容をまとめた契約書など |
|---|---|
| 登記識別情報または登記済証(ない場合は本人確認情報) | 登記簿上に記載されている土地が、承役地の所有者が有する土地であることを示す書類 |
| 印鑑登録証明書 | 3カ月以内のもの(承役地の所有者) |
| 地役権図面 | 承役地のどの部分に地役権を設定するのかを示した図面 |
| 代理権限証明情報(委任状) | 司法書士などに依頼する場合に必要 |




ここから地役権のある土地(要役地・承役地)を購入するメリットを解説します。これらを購入した場合、どのようなメリットが得られるか知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
要役地の前所有者と承役地所有者との間で地役権設定契約が締結していれば、要役地の利便性を高められます。例えば、承役地を通行することにより、最短時間で目的地へ到着できる場合などです。
通行地役権契約を締結していれば、要役地の購入者は前の所有者と同様に、承役地を通行できます。地役権は要役地と承役地の利用関係を調節するために存在するため、設定行為に特段の定めがない限り、地役権は所有権とともに移転するためです(民法第281条第1項)。また、地役権は要役地から分離して譲り渡すことはできません(民法第281条第2項)。
承役地に通行地役権が設定されていて、当事者間で通行使用料が定められていた場合には、承役地所有者は要役地所有者から通行使用料を受け取ることができます。
電気事業者と承役地所有者との間で送電線路敷設地役権の設定契約が締結していれば、承役地所有者は電気事業者から使用料を受け取ることが可能です。送電線路敷設地役権とは、電気事業者が他人の所有する土地の上空に電線を設置するとき、電気事業者と土地所有者との間で設定される地役権を指します。
ただし、地役権を設定することにより承役地の一部または全ての利用が限定されるため、売買時の土地の評価額が下がる点は留意したいところです。
ここからは、地役権のある土地(要役地・承役地)を購入するデメリットを解説します。後悔しないために、これらの購入を検討している人はぜひ参考にしてください。
地役権設定契約において通行使用料を支払うことが定められていれば、通行使用料を承役地所有者に支払う必要があります。
要役地の前所有者と承役地所有者が地役権設定について合意していなければ、地役権は成立しません。そのため、地役権が設定されていない場合、要役地購入者は地役権を行使できないことになります。要役地購入者が地役権を行使するためには、承役地所有者との間で地役権設定契約を締結すべき点には留意しましょう。
通行地役権が設定されている箇所には、承役地所有者は建物を建てられず、通行を妨げるものを置くことができません。
電気事業者と承役地所有者との間で送電線路敷設地役権の設定契約が締結されている場合、建物の高さが「○○メートル」などと限定されているため、承役地所有者が建てたい建物を建築できないこともあり得ます。
要役地所有者の利便性を図るため、水道管などを地下に埋めて設置している状態で承役地所有者が地下室を作りたいと思っても、地下室の面積や位置などが制限される可能性があります。
まずは、土地の登記簿で地役権が設定されている土地かどうかを確認しましょう。また現地を必ず見に行くようにしてください。登記簿に記載されていなくても、長年使用することで地役権が認められる場合があるからです。
「使用者の善意・悪意により異なりますが、使用する側が自ら道路を敷き、10年か20年間(継続的に使用し続けていた場合、時効によって地役権を取得できるケースもあります」(清水さん)。
これを「地役権の時効取得」といいます。この場合、知らずに承役地側を購入してしまうと、要役地の所有者の通行による使用を拒否できない可能性もあります。購入前なら再検討をしたほうがいいですし、購入後は今後のトラブルを防ぐためにも速やかに地役権を登記しましょう。
また日照権確保のための地役権の場合、現地を見ただけでは分かりにくいため、登記簿を確認したり、仲介している不動産会社に確認したりしてください。
地役権設定は、登記後でも、期間や使用料金などを変更することが可能です。ただし、当事者同士で改めて変更する事項に合意する必要があります。時期や使用料金の変更などは、承役地の所有者次第です。
地役権が設定されている土地は評価減の要素といわれていますが、その評価はケースバイケースです。購入時に、土地の売主から使用状況や前年の固定資産税の課税明細などを見せてもらって判断したほうがよいでしょう。
通行地役権のように、設定することで要役地側は暮らしが便利になり、承役地側は契約内容次第で一定の収入が得られます。契約や登記をしないで「ご近所さんだから」と口頭などの合意で済ませてしまうと、後にトラブルを招くことになるかもしれません。上記の内容を理解し、難しい手続きは司法書士などに任せてスムーズに地役権の登記を行いましょう。
地役権とは「一定の目的で、他人の土地を自分の土地のために利用する権利」のこと
当事者同士の合意によって契約を結び、登記を行う。登記を怠るとトラブルが発生する恐れも
地役権の設定された土地を購入する場合は、登記簿と現地の確認が重要