SUUMO(スーモ)は、住宅・不動産購入をサポートする情報サイトです。

住宅や土地を購入する際、その価格よりも多く借りたり住宅ローンの残債が多かったりするのがオーバーローンです。「返済に無理がなければ大丈夫」「少しなら大丈夫」だと考える方もいますが、いくつかの注意点があります。将来後悔しないためにも、オーバーローンについてファイナンシャルプランナーの菱田雅生さんにお聞きしました。オーバーローンについて知りたい方、オーバーローンによるリスクを知りたい方などは、ぜひ参考にしてみてください。
オーバーローンは、実際にどういったときに起こるのでしょうか。ここでは、起こり得るパターンを詳しく解説していきます。
まず、住宅の価格よりも借り入れた金額のほうが多く、家を買ったそのときからオーバーローンになっている状態について解説しましょう。
かつては、住宅の価格の80~90%を住宅ローン融資額の上限としている金融機関が多かったのですが、現在は、住宅価格の100%を借りられるのは一般的です。さらに、金融機関や借り入れる人の返済能力によっては諸費用分も含めて借りることも可能なため、十分な自己資金を用意せずに家を購入する人がオーバーローンになりがちです。
例えば、マンションの価格(代金)だけでなく、価格の3~5%程度の諸費用分も加算して借りることが可能です。
マンション価格:5000万円
購入時の諸費用:150万~250万円(価格の3~5%程度)
計 5150万~5250万円 の借り入れが可能
自己資金なしで家を取得できる、ローンの年末残高が多い分、住宅ローン控除(住宅ローン減税)の控除額が多くなる場合があるなどがメリットといえます。しかし、借入額が多ければ多いほど返済額は多くなりますから購入してから大変になることも。

住宅を取得する際の諸費用として、住宅ローンの中に含めることができる項目は金融機関や住宅ローン商品によって違ってきます。例えば、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している住宅ローンの【フラット35】で、マンション購入費用を借りる場合、融資の対象となる主な諸費用は下の表のようになります。
・マンション修繕積立基金
・マンション管理準備金
また、注文住宅の建設費用を借りる場合、融資の対象となる主な諸費用は下の表のようになります。
・建築確認、中間検査、完了検査の申請費用
・建築確認などに関連する各種申請費用
・適合証明検査費用
・住宅性能評価関係費用
・長期優良住宅の認定関係費用
・認定低炭素住宅の認定関係費用
・建築物省エネ法に基づく評価、認定に係る費用
・土地購入に係る仲介手数料
・融資手数料
・金銭消費貸借契約証書に貼付する印紙代
・請負契約書、売買契約書に貼付した印紙代
・火災保険料、地震保険料
・登記費用(司法書士報酬、土地家屋調査士報酬、登録免許税)
※【フラット35】ホームページより抜粋
民間の金融機関の場合も上記の項目のほか、保証会社に支払う保証料やローン事務手数料も融資対象になるなど、融資の範囲はかなり広いといえます。
頭金を入れて、住宅や土地の取得価格よりも少ない金額の住宅ローンを借りた場合でも、返済スタート後にオーバーローンになってしまうことがあります。
立地などに恵まれていて、資産価値が落ちにくいマンションや戸建ての場合を除き、多くの住宅は新築後、徐々に資産価値が下がっていきます。住宅ローンの残債も徐々に減っていきますが、資産価値の下がり方のほうがスピードが速いと、資産価値よりもローンの残債のほうが多いオーバーローン状態になってしまいます。
「土地の暴落による資産価値の低下は、大きな災害などがあった場合を除き、あまり心配しなくても大丈夫でしょう。注意したいのは物件価格に占める建物と土地の割合が重要です。一般的には、建物価格は土地に比べて価値が下がりやすいため、建物の割合が高い物件※ほどオーバーローンになりがちです」(菱田さん、以下同)
※都心の好立地にある住宅に比べると、郊外の土地の安いところに建てた住宅のほうが、価格に占める建物の割合が高い
物件価格以上の融資を受けるため、オーバーローンは違法なのではないかと疑問に感じる方もいるはずです。ここでは、オーバーローンの違法性について解説していきます。
結論からいうと、オーバーローン自体は違法ではありません。住宅価格+諸費用の借り入れであることを金融機関にしっかりと申告し、それを許可してもらえれば違法とはなりません。
ただし、物件の担保評価以上の額で融資を実行するのは、貸し倒れする可能性があるため、金融機関にとってはリスクの高い融資です。そのため、融資の審査は厳しくなり、オーバーローンを許可する可能性も低いと考えられます。金融機関の中には、物件の担保評価の70%~80%程度を融資上限額とするところもあるため、フルローンすら厳しい状況なのです。
なかには住宅価格+諸費用分までまとめて借り入れが可能な住宅ローン商品も存在するので、諸費用分も同時に借りたい場合には、オーバーローンが可能な住宅ローン商品を探してみましょう。
オーバーローンには違法性はないと説明しましたが、なかには違法性のあるオーバーローンもあります。その手口としては、不動産会社といった事業者による書類の偽造です。
通常、売買契約書は1枚のみ作成され、金融機関に対しては写しを提出します。しかし、不正に融資を契約させようとする場合、不動産会社が銀行に提出する契約書を1枚別に作成するのです。住宅価格を水増しした額を記すことで、審査が通れば実際の住宅価格以上の借り入れができる仕組みとなります。
上記の方法以外にも、融資を依頼する顧客の源泉徴収票や預金残高を修正し、融資額を引き上げるケースもあります。融資を多く受けられるので魅力的だと感じますが、違法な手口なので、こうした方法でオーバーローンを検討する不動産会社とは契約しないよう注意してください。
違法性のあるオーバーローンは、書類が偽造されているので金融機関が不正だとわからずに融資を通してしまうケースもあります。しかし、一部の金融機関で不正融資問題が発覚してから融資審査がより厳しくなりました。その結果、不正がバレる可能性が高くなっています。バレる理由を詳しく解説していきます。
・審査時にバレる
融資の審査の際には、不動産売買契約書や工事請負契約書の提出を金融機関は求めます。それと同時に金融機関は物件の資産価値評価も実施するため、建物の資産価値に対して融資の申込金額や契約書の価格が高い場合、不正な申し込みがされていると疑います。
・金融審査でバレる
金融庁では、金融機関に対して金融検査を行っています。検査官による店舗の立ち入りや業務や資産内容の調査となり、その検査によって融資の不正がバレるケースがあります。
違法性のあるオーバーローンが発覚すれば、ローンの一括返済を求められるほか、家の差し押さえ、詐欺罪で訴えられるといった危険性があります。人生を左右するリスクが潜んでいるため、違法性のあるオーバーローンには手を出さないようにしてください。
ここからは、オーバーローンを利用するメリットを解説していきます。不正な手口ではなく、正しい方法でオーバーローンをすれば、さまざまなメリットがあるので理解しておきましょう。
頭金や諸費用を手持ちの自己資金で支払える場合でも、住宅ローンを組む際に使用すれば手元のお金が減ってしまうため、不安を抱く方もいるでしょう。例えば、預貯金していた資金を頭金や諸費用を支払うためにほとんどを使ってしまった場合、生活に支障が出るケースもあります。
日々の生活費や子育てのためのお金、教育費やマイカーローンの支払いなど、あらゆる費用が必要になりますが、支払う余裕がなければカードローンや教育ローンなどを利用することになります。その結果、返済する額が多くなれば支払いができずに悩んでしまうケースも考えられます。
その不安を払拭するためにもオーバーローンはオススメです。オーバーローンをすれば、諸費用分なども融資を受けられるため、手元の資金を多く残しておけます。預貯金にも余裕が生まれるため、急な出費にも対応しやすいでしょう。
住宅を購入するとなれば、登記費用や仲介手数料、火災保険料など、物件そのもの以外にも、多くの費用が発生します。オーバーローンでは、これら諸費用も住宅ローンに組み込めるため、低金利で融資してもらえる点が魅力です。
諸費用分のみを他のローンで借りるとなれば、金利が高めに設定されている商品も多く、返済の負担も大きくなってしまいます。しかし、住宅ローンに含めて借りられれば金利の負担を抑えつつ必要な費用をまかなうことが可能です。
ただし、対象となる費用は住宅ローンの種類や金融機関によって異なるので、契約前にしっかりと確認し、比較することが大切です。
住宅ローンを契約する場合、一定の条件を満たせば住宅ローン控除を受けることが可能です。借入額に応じた金額が所得税などから控除される制度となり、年末時点で残っている住宅ローンの借入額に基づいて控除される金額が決定します。
負担を減らすことに役立つ制度ですが、オーバーローンによって借入額が増えれば、対象となる金額が増える可能性もあります。ただし、控除には上限があり、すべての借り入れが対象になるとは限りません。住宅の条件や入居時期によって適用されないケースや控除額も変わるため、住宅ローン控除について理解する必要があります。
制度は定期的に見直しがされるので、最新の情報をチェックするほか、必要書類も併せて確認しておきましょう。
正しい方法でオーバーローンを行えば、さまざまなメリットを受けられますが、注意すべきデメリットも存在します。後悔するケースも考えられるため、事前に確認しておきましょう。
オーバーローンをすれば借入額が増えるので、毎月の返済額も多くなります。住宅ローンの返済は長期間にわたって続くため、今は支払いに問題がなくても、後々負担に感じてしまいオーバーローンを後悔する可能性もあります。
オーバーローンを検討する際には「今は支払える」と今だけの状況を考えるのではなく、将来の収支の変化を見越して、無理のない範囲で返済ができる借入額を検討することが大切です。
オーバーローンを利用する場合、借入額が本来の住宅価格よりも多くなるので金融機関によっては金利が高めに設定してあるケースもあります。特に自己資金が少なく、住宅ローンの割合が高い場合は返済リスクが高まると予想されて、金利が上乗せされるケースも多いです。
例えば、【フラット35】では借入額が住宅価格の9割を超えると、審査が慎重になるほか、金利も高く設定されています。下記は、2025年8月時点での【フラット35】の金利です。
金利が高くなれば返済総額も増えるので、オーバーローンを利用する際には、しっかりとシミュレーションをしてから契約するようにしてください。
オーバーローンを利用する場合、住宅価格以上の融資を行うため、審査が厳しくなる傾向にあります。住宅ローンの審査は、年収や雇用形態、年齢や業種、返済比率などが重要になりますが、給与が安定していると考えられる大企業に勤めている方や公務員は、オーバーローンでも比較的借りやすいです。
しかし、年収が低い会社員や収入に不安定さのある個人事業主、自営業者などは、審査が厳しい可能性が高いです。その場合、自己資金を準備してから契約する必要があります。
住宅の価格に加えて、諸費用分も借り入れを行うオーバーローン。物件価格分のみを借りた場合や頭金を入れた場合と比較して、毎月の返済額や総返済額は高くなります。これは、借り入れをした金額が多いだけではなく、頭金の有無によって適用される金利が変わる住宅ローンがあるためです。
下記では、5000万円の新築マンションを購入して【フラット35】で住宅ローンを借りる場合の返済額をケースA・ケースB・ケースCに分けてご紹介していきます。条件は以下のとおりです。
比較条件は以下のようになっています。
| ケースA 物件価格100%+諸費用分※2を借り入れ |
ケースB※3 物件価格100%を借り入れ |
ケースC※3 頭金10%で物件価格の90%を借り入れ |
|
|---|---|---|---|
| 借入額 | 5250万円 | 5000万円 | 4500万円 |
| 返済期間 | 35年 | 35年 | 35年 |
| 適用金利※4 | 1.980% | 1.980% | 1.870% |
| 毎月返済額 | 17万3374円 ケースCよりも毎月約2万7291円支払いが多くなる |
16万5118円 | 14万6083円 |
| 総返済額 | 7281万7121円 | 6934万9647円 | 6135万4926円 |
| 諸費用・頭金分を加えた総支払額 | 7281万7121円 | 7184万9647円 | 6385万4926円 |
諸費用分も借り入れをしたオーバーローン状態のケースAをもとに、ケースBとケースCを比較すると、どの程度多く支払うことになるのか解説していきましょう。
・毎月の返済額
物件価格100%で借り入れを行うケースBよりも、Aのほうが8256円毎月の返済額が高くなります。これは、ケースBよりもAは借入額が250万円多いためです。また、頭金として物件価格の10%を用意したケースCと比較すると、毎月の返済額は2万7291円多くなります。ケースAのほうが、借入額が多いだけではなく、適用金利も異なるため、差が大きく開いています。
・総返済額
ケースAが最も高く、Bと比較すると96万7474円、Cと比較すると896万2195円多いです。
長期返済となると、将来オーバーローンになる可能性があります。残債がなかなか減らないので、住宅の価値が下がるスピードのほうが早くなることが要因です。同じ金額を借りても、返済期間が異なれば、ローン残高に大きな影響があります。ここでは、返済期間によって異なるローン残高についてまとめていきましょう。比較条件は以下のとおりです。
その他の条件は前述した条件と同様です。返済期間の違いで、10年後、20年後の残高には大きな違いがあります。返済期間が長いケースDは、ケースEよりも10年後は614万1555円、20年後は1362万円
6657円と残高が多くなっています。
| ケースD 返済期間35年 |
ケースE 返済期間25年 |
|
|---|---|---|
| 借入額 | 5000万円 | 5000万円 |
| 適用金利※2 | 1.980% | 1.980% |
| 毎月返済額 | 16万5118円 | 21万1440円 |
| ローン残高 | 10年後3904万6114円 20年後2569万5916円 20年後のローン残高はケースEよりも約1363万円多い |
10年後3290万4559円 20年後1206万9259円 |
| 総返済額 | 6934万9647円 | 6343万2064円 |
「物件の価格に対して多く借り入れを行うのは、事業用の運転資金が必要な自営業者や手元の資金を減らしたくないと考える方など、どうしても多めに借りたい理由がある方であれば仕方のないことといえます。しかし、オーバーローンにはリスクもあるので、繰り上げ返済をして、できるだけ早い段階で残高を減らしたほうがオススメです」
家を売却したいと考えても、実際にはできない可能性もあります。ここでは、オーバーローンの注意すべきポイントについて解説していきます。
「最初からオーバーローンのケースも、途中からオーバーローンになってしまったケースも、完済まで無理なく返済していけるのであれば、それほど大きな問題はないのです。問題になるのは途中で返済が苦しくなったとき」
教育費が予想以上にかかったり、収入が減ったり。長い返済期間の間には、家計の収支に思いがけない変化が起こることがあります。それまで無理のなかった住宅ローンの返済が、苦しくなる時期が来ることもあるかもしれません。
「家を売ればなんとかなるかなと思っても、住宅ローンの残高よりも家の価値のほうが低いと、普通の売却ができません」
残高を一括で返済できなければ金融機関は設定している抵当権を解除しません。抵当権が設定されたままで不動産を売買することは法律上ではできるのですが、自分がお金を借りたわけでもないのに抵当権が設定されている家をわざわざ買う人は現実的にはいないでしょう。つまり、ローン残高以上で売れる、ローン残高と売却額の差額を埋める現金がある、という場合以外、家を売ることが難しいのです。
「返済ができず、売却もできなければ、任意売却や競売になってしまいます。任意売却で少しでも高く売れればよいですが、ローンが残った場合は金融機関と相談して返済をしていかなくてはならなくなります」
しかし、任意売却で家を手放したあと、賃貸住宅の家賃を払いながら残ったローンの返済も続けるとなると負担は大きいもの。そのため自己破産を選ぶことになるケースもあるのです。

抵当権についてもっと詳しく
抵当権とは? 不動産も相続できる?手続きの流れ・必要書類・費用などを分かりやすく解説!
「自分の資金計画がオーバーローン状態になっていることに気がついていない人も多くいます。その場合、離婚や住み替えをきっかけに家の売却を考え、査定価格を調べてローン残高のほうが多くてびっくり!ということも」
オーバーしている分を現金で準備できなければ、売却ができず、離婚の場合も住み替えの場合も次の段階に進むことが難しくなります。
今は、自己資金ゼロでも家が買えますが、住宅価格を上回るローンを組んだときは要注意。また、返済中にオーバーローンになる可能性も考えて、慎重に資金計画を立てることが大切です。

住宅の価値よりもローン金額のほうが多いのがオーバーローン
諸費用分も含めて借りるなど、はじめからオーバーローンの場合もある
住宅や土地の価値が下がることで、知らないうちにオーバーローン状態になることも
オーバーローンの場合、売却しにくくなる点に注意が必要